『ゲシュタルト崩壊』という現象がある。
鏡を使った方法が有名だが、その内容からも鏡というものに人は興味を抱かずにはいられないらしい。
鏡の構成は単純であり、ただの光線の反射でしかなく、そこに意味を見出すのは人間側の都合だろう。

1926年、江戸川乱歩が発表した短編怪奇小説に「鏡地獄」がある。


(こちらは電子書籍)

あらすじは単純だ。


主人公の友人は幼い頃から鏡・レンズ・ガラス等に大きな興味を抱いている。やがて物理学を学んだ彼は、さらにそれらの虜になり、病的なほどに研究にのめり込む。
成長し、大人になった彼は自宅に研究室を作り、ひたすらに鏡やレンズの世界に没頭してゆく。
とうとう彼は、巨大な人間が入りりこめる球体を作り上げた。
内面は全て鏡張り。完全な鏡の世界が完成する。


ある日、主人公は彼の使用人に助けを求められ、彼の屋敷に向かう。
実験室の中には、巨大な球体の中で笑い続ける彼の姿があった。

「彼」は球形の鏡の中で発狂していた。


2005年には、オムニバス形式ではあるが映画『乱歩地獄』映画化された。
映像化されたのは
・蟲
・鏡地獄
・芋虫
・火星の運河



人によってはイメージの違いがあると思うが、鏡の世界に取り憑かれた狂気が解りやすいと思うのでこちらをUPした。

実際の小説は乱歩の淡々とした描写の中で静かに狂気が進行してゆく。
興味のある方はこちらもご覧になると良い。