映画監督を含め、クリエイターという人種は常に面白い発想にとりつかれるらしい。
シャレで製作・公開された映画の中で公開された、別のシャレの映画予告が本当に製作され、低予算であるにもかかわらず大ヒットとなった作品がある。


ロバート・ロドリゲスとクエンティン・タランティーノがそれぞれ監督を務める「グラインドハウス」(2本立て)が公開されたのが2007年。

「プラネット・テラー」・・・ロドリゲス監督
「デス・プルーフ」・・・・・タランティーノ監督

ともにメチャクチャで破天荒なB級映画であるが、4本の予告編までノリで製作・発表した中の1本が、
実際に2010年に公開され、パート2、パート3まで現在製作予定となっている事に驚く。


映画「マチェーテ」(Machete)はロドリゲスとイーサン・マニキス監督によるアクション映画であり、悪人面のダニー・トレホの初の主演作となる。
しかし、内容はとことんB級のキワモノ映画にこだわった作品であるので好き嫌いは激しく別れるだろう。
だが、キワモノ扱いだからこそ扱えるネタがちりばめられていることも確かである事も記載しておく。


⁂ネタバレ含む蛇足ながら。
すでに映画内でメキシコからの不法入国ビジネスが取り上げられており、白人主義者の政治家が登場することから、当時から複雑な社会問題化していたことがうかがわれる。


1作目にはロバート・デ・ニーロやスティーヴン・セガール、2作目には、レディーガガ、チャーリー・シーン、メル・ギブソンなどB級映画とは思えないほどの面々が登場するが、ここでは1作目のみをとりあげる。


【以下、閲覧注意】




因みにマチェーテとは山刀であり、日本ではR-15指定映画となった。
製作にタランティーノが参加しているだけあってか、ところどころに日本の時代劇的な小ネタが見て取れる。


【ストーリー】
・強面のコルテスはメキシコの捜査官であり、麻薬捜査のために動いている。
この国の麻薬組織は強大で、警察でさえ無力に近い。上司の言葉に逆らい、捜査を進めたコルテスを待っていたのは、妻と娘の死だった。
麻薬王トーレス(スティーヴン・セガール)と、警察は繋がっていたのだ。
自らも重症を負ったコルテスは姿を消す。

犯罪大国メキシコから自由を求めて、多くのメキシコ人が不法にアメリカに逃げ込もうとしていた。
移民ビジネスは儲かる。もちろん不法だが。
ようやく国境を超えたメキシコ人を待っていたのは残酷な人間狩りだった。そのスナッフビデオもまた、巨万の富を産む。

「マチューテ」の画像検索結果


・数年後。
コルテスは国を捨て、不法移民としてテキサスで日雇い労働者として暮らしていた。
自らをマチェーテと名乗り、身分を証明する者は何もない。国にも帰れず、アメリカ国民にもなれず、行き場のない他のメキシコ人らとともに日々流される毎日。
やがて、マイケルという男が現れコルテスにある上院議員(ロバート・デ・ニーロ)の殺害を依頼する。
そのマクラフリン上院議員こそ、メキシコ人の生命ビジネスで富を築き上げた人物であった。

狙撃ライフルを手に、コルテスは指示された場所に向かう。
マクラフリンは更なる名声を求め、人々に移民の不法を訴え、国境沿いに巨大な塀の建設を提案するべく熱弁をふるっていた。スピーチに熱狂する白人の裕福層達だが、その生活は移民の弱い立場につけ込んだ低賃金・長時間労働といった搾取の上に築き上げられてきた矛盾に気づいていない。

狙いを定めたコルテスは、ふと自分を狙う狙撃手に気づいた。
「?」
その瞬間銃声が響き、檀上の議員が凶弾に倒れる。
「犯人はあそこにいる!」マイケルが現れ、コルテスを指して叫ぶ。
全ては仕組まれた狂言であり、メキシコ人に狙撃された上院議員が、命懸けでメキシコからの不法移民を阻止する政策を打ち出すというパフォーマンスだったのだ。
あらかじめ潜んでいた部下たちがコルテスの口を封じるべく襲い掛かる。傷を負いながらも、再びコルテスは逃げおおせた。

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・アメリカの麻薬捜査官であるリヴェラは、メキシコ人でありながら不法メキシコ人の監視という任務に葛藤していた。
噂では、ルースとう女性が犯罪シンジゲートと繋がっているというが、証拠がない。
コルテスの狙撃事件以来、メキシコ人に対する弾圧は強まり、水面下で何かが起きつつあることにリヴェラは怯えている。

病院含め、行く先々で命を狙われるコルテスは、兄である神父に助けを求めた。信仰を理由に、兄はコルテスを拒絶する。しかし、家族として彼を守ることを決意。

復讐に燃えるコルテスは、マイケルの妻と娘を誘拐した。
マイケルの館でコルテスが発見したもの、それはかつて自分の妻と娘を殺したメキシコの麻薬王トーレスとの癒着を示す証拠だったのだ。


・トーレスから失敗を指摘されたマイケルは、報復として神父であるコルテスの兄を殺害。
一方、コルテスはルースを介してアメリカ社会に溶け込んでいたメキシコ人の巨大ネットワークに接触していた。
何事もなく、平穏に暮らすのが一番。しかし、誰も助けてくれないのであれば、自分達で戦う他にない。

追い詰められたマイケルは、ルースの左目を打ち抜き、ネットワークを率いていた彼女は倒れた。

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・マクラフリン上院議員も、マイケルも、最早ただの小物でしかなくなった。
メキシコ国内で麻薬王として君臨し、移民として逃げ出したその命を後も食い物にしてきたトーレスこそが全ての元凶となる。
メキシコ人ネットワーク自警団率いるコルテスと、政治家及び警察をも操るトーレスとの因縁の対決が始まった。

医者も、看護婦も、シスターでさえ全てのメキシコ人が誇りのために立ち向かう。

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左目を失ったルースも参戦する。

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マイケルが死亡。

リヴェラも、誇りを持ったメキシコ人として捜査を開始した。

激しい銃撃戦のなか、コルテスはトーレスとの一騎打ちに挑む。

「マチューテ」の画像検索結果

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悪人ではあるが自分なりの美意識を持つトーレスは、コルテスには勝てないことを悟り、無様に負ける事よりはと自ら切腹して命を絶つ。

たったひとり、メキシコ人に成り済ますことで逃げおおせたマクラフリンは、今度は自分が国境で射殺され、虫ケラのように死んでいった。


・ラスト。
全てが終わった後、リヴェラはコルテスにグリーンカードを渡す。
コルテスはバイクに乗ったまま、夜の闇の中へと消えてゆくのだった。


繰り返しになるが、この作品はB級映画もいいところであり、エロ・グロ・ツッコミ所満載のネタ映画であり、本気にしてはいけない。

最も、このような映画を大真面目につくりあげてしまうあたりがアメリカの懐の大きさなのかもしれない。

⁂続編にあたる「マチェーテ・キルズ」にはチャーリー・シーンが合衆国大統領役で出演しているが、クレジットには本名のヒスパニック系の名前が公開された。


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