http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1406644704/


1 :名無しさん@おーぷん:2014/07/29(火)23:38:24 ID:kNh0mpNg5
「父さんの再婚相手な、大学生なんだよ」


父の口からそれを聞いたとき、思わず鼻で笑ってしまった。
つまらない冗談だと思った。
それが本当のことだと、私が知ったのは今から半年前だ。


夏には眠れない夜が、ふと訪れたりする。
そして、そんな日は怖い話を聞いたり話したくなったりする。
 
今日がまさにそんな日だ。

怖い話が聞きたいって人は、よかったら私の話につきあってほしい。

 




 3 :名無しさん@おーぷん:2014/07/29(火)23:42:54 ID:kNh0mpNg5
実はさっきまで会社の後輩と飲んでたんだ。
だから今でもすこし酔ってるけど、話すのに支障はないと思う。

 
後輩にも『母親』とそれに関係することを話をした。

「俺でよかったら、いくでも話聞きますよ」

気立てのいい後輩はそう言って、グラスをかかげた。

 
店員にすすめられたカクテルに口をつけたあと、
私は私の年下の母親について、後輩に語った。



6 :名無しさん@おーぷん:2014/07/29(火)23:47:51 ID:kNh0mpNg5
私と彼女が出会った場所は喫茶店だった。
もちろん、その場には父もいた。


「どうもはじめまして」

私の母親になる女が頭をさげる。
明るい髪が肩からすべりおちて、甘ったるいにおいがした。
その女の見てくれは、いかにも女子大生といった感じだった。


「先生から話は聞いてます。私はカホって言います」

先生……父のことだ。私の父は大学教授をしていた。


 
7 :名無しさん@おーぷん :2014/07/29(火)23:50:18 ID:qQB11HuhG
支援


 
8 :名無しさん@おーぷん:2014/07/29(火)23:51:57 ID:kNh0mpNg5
「見てのとおり、カホはお前より年下だ。
だけどお前の母親になる女性だ。
最初は戸惑うこともあるだろうが、大丈夫。すぐ慣れるさ」

 
私はなにも言えなかった。
カホという女が理解できなかった。


なぜこの女は、こんなろくでもない父親と結婚したいと思うのか。


このことに関しては、今でも知らない。
そして、一生知ることもないと思う。



11 :名無しさん@おーぷん :2014/07/29(火)23:55:15 ID:eejKDjVkz
親が年下とか想像できん



12 :名無しさん@おーぷん:2014/07/29(火)23:56:04 ID:kNh0mpNg5
私の本当の母が死んだのは一年前。
事故死だった。


母と父の関係は、はっきり言って最悪だった。
ふたりが家にいるだけで空気は張りつめ、肌に突き刺さった
父と母が口をきくのは、口論のときだけ。


母の死が悲しかったのはまちがいない。

だけど安心もしていた。

住人がひとり欠けたことで、私の家は平穏になったのだから。


もっとも。
私の家は新しい母親によって、ゆがんでいくことになる。


 
13 :名無しさん@おーぷん :2014/07/29(火)23:57:05 ID:GZoRoaCPN
>>1は女か



15 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:00:02 ID:3SI4oKKea
そんなに年いってても性欲あるもんなん?




17 :名無しさん@おーぷん:2014/07/30(水)00:01:39 ID:X0Nc9eZGV
やることはやってたみたい
洗濯機にふたりの下着がまとめて入ってたりしたし


喫茶店で会ってから一週間後には、カホは我が家に住むようになった。


「最近はユイちゃんの味の好みもわかってきたつもりだけど、どう?」

カホの質問に私は「うん」とだけ答えた。


カホがこの家で寝泊りするようになって一ヶ月。
このわずかな期間に彼女は、私の好みを正確に把握していた。

私の予想とは裏腹に、彼女は良妻と言っていい働きをしていた。
家事はきちんとやるし、気配りも申し分ない。
大学生活と主婦業をきちんと両立させていた。


「本当に? なんだか歯切れが悪いけど」

カホの言葉に私は首をふるだけで答えた。



18 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:03:13 ID:R29y0fSGy
>>1はいくつ?

 

23 :名無しさん@おーぷん:2014/07/30(水)00:06:52 ID:X0Nc9eZGV
今年で27


「お父さんもいっしょにご飯、食べればいいのにね」とカホが言った。

父は私たちと食事をしないことがよくあった。
正直、私には父のことなんてどうでもよかった。

 
昔は仲のいい親子だったと思う。

だけど、気づくと私と父の関係はいびつなものになっていた。


「どうして?」と私が聞くと、カホはこう答えた。

「だって、私たちは家族でしょ?」

「家族?」

「ちがうの? 私、なにか変なこと言ったかな?」


無性に反論したくなったが、言葉は出てこなかった。



19 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:03:21 ID:3SI4oKKea
年上なんだからユイちゃんはないよな。



20 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:03:30 ID:j2139cNVR
>>1が男だったらエロ方面一直線なのに!


 

25 :名無しさん@おーぷん:2014/07/30(水)00:10:55 ID:X0Nc9eZGV

「まだあの人とは結婚してないから、正確には家族ではないけど」

カホが私の顔を見る.
なぜかゾクッとした。


「いずれは家族になる。あなたともね」

「……あなたは私よりも年下なんだよ? なにも思わないの?」

「ちょっと特殊かもね。でも、それになにか問題が?」


「想像してよ」
そう言った私の声はふるえていた。


「母親が自分より年上の、娘のきもちを」

「奇妙に感じるかもね。でもそれも、ひとつの家族のかたちでしょ?」

「そんな簡単な言葉ですまさないで」


カホと同居するようになってから、はじめて私は本音を口にした。



26 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:11:03 ID:vU9kbVvId
女っていうのは最初だけは良妻なんだよなぁ...



28 :名無しさん@おーぷん:2014/07/30(水)00:16:02 ID:X0Nc9eZGV 
「ずっと前から疑問だった。あんなおっさんと結婚しようなんて、本気で考えてんの?」

カホの表情がわずかにくもった。

「年齢だって三十は離れてるでしょ。どう考えたっておかしいじゃない」

 
なぜこんなに彼女に突っかかるのか。
自分でも不思議だった。
でも彼女と同じ空間にいてはいけない、本能がそう言っていた。


「だいたい。家族やまわりの人たちは、このこと知ってるの?」

「家族はいない」レミが目をふせた。

家族がいない。
その一言で、私は次の言葉を見失ってしまった。



29 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:18:39 ID:3SI4oKKea
カホなのかレミなのか、はっきりさせて!


 
30 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:19:13 ID:yB5NRpEMO
何かありそうだな


 
31 :名無しさん@おーぷん:2014/07/30(水)00:21:47 ID:X0Nc9eZGV
「このことは友達にも知り合いにも、誰にも話してない」

「あなたもおかしいって自覚はあるんでしょ?」

「……」

「だから誰にも言えない。私の言ってること、まちがってる?」

カホが押しだまる。


「そうね、ユイちゃんにはわからないだろうね」

「わかりたくもないね」

 
私は席を立った。
料理はまだ残っていたけど、食欲は完全に消え失せていた。


部屋を出る直前に背後で「おやすみ」と聞こえたが扉をしめてそれをさえぎった。

この日はさっさとベッドで寝て、最悪な夜を短くした。


 
32 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:22:29 ID:3SI4oKKea
レミはどこに行ったの?



34 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:23:24 ID:JQ8iUjnY5
レミは間違いだろ


 
35 :名無しさん@おーぷん:2014/07/30(水)00:24:09 ID:X0Nc9eZGV
今から考えれば、まだこのときはよかった。

すくなくともカホは、私の中で非常識な女で終わっていたから。

その認識がまちがっていたと気づいたのは、次の日からだった。



36 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:30:23 ID:X0Nc9eZGV
次の日。
満足に眠れなかった私は、寝ぼけたまま一階へおりた。

リビングに入ろうとドアを開けたら、カホが扉の前にいた。
思わず出そうになった声を、なんとか飲みこむ。

「おはよう」

私はカホを無視して、そのまま彼女を横切ろうとした。
だけどカホに腕をつかまれて、とまらざるをえなかった。


「おはよう、ユイちゃん」

カホがにっこりと笑った。
昨日のことなど、まるでなかったように。

「おはよう」とさらにもう一度、彼女が言う。


 
37 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:31:33 ID:R29y0fSGy
怖くなってきたなwwwww


 
38 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:32:13 ID:JQ8iUjnY5
こy


 
42 :名無しさん@おーぷん:2014/07/30(水)00:37:10 ID:X0Nc9eZGV
手をふりほどこうとしたが、彼女の力は予想外に強くてふりほどけない。
おはよう、とまたくりかえす。
本気でこの女がなにを考えているのか、想像できなかった。


「おはよう」

声の調子も表情も、なにひとつ変わらない。私は無意識に息をのんでいた。


「おはよう」

「……」

「おはよう」

私は気づいたらあいさつを返していた。


「おはよう」

「今日もいい天気だね。あっ、冷蔵庫にサラダあるから食べるんだよ」

カホはもう一度にっこり笑って言った。


「じゃあ『お母さん』は大学、行ってくるから」



46 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:43:19 ID:yB5NRpEMO
確かに不気味だ


 

45 :名無しさん@おーぷん:2014/07/30(水)00:43:02 ID:X0Nc9eZGV
あの日からカホは変わった。


「ご飯を食べるときは、いっしょにいただきますをしようね。
『お母さん』より先に食べたらダメだよ」

「洗濯機にものを入れるときは、下着や靴下はべつべつで洗うって言ったでしょ?」

「床にものは置いちゃダメだよ。 この前も『お母さん』言ったよね?」


小言が増えただけのように思えるけど、それは誤解だ。
最初のころは、意地になって私はカホの言葉を無視しつづけた。

普通の人間だったら、あるていど無視されれば怒ったりあきらめたりするはず。

だけど彼女はちがった。


 

48 :名無しさん@おーぷん:2014/07/30(水)00:47:42 ID:X0Nc9eZGV
延々と同じことを言い続けるのだ。
一文一句、完全に同じことを。同じ調子で。

 
一度、根比べのつもりで彼女の言葉をずっと無視した。
だけど一時間経過しても、彼女は同じ言葉を繰り返しつづけた。
最後には私が根負けして、彼女の言葉にしたがった。

 
そして今も。

「使わないコンセントはぬいて。前にもそう言ったよね?」

「……」

「使わないコンセントはぬいて。前にもそう言ったよね?」

 
いつもの笑顔で、同じ言葉を吐きつづけるカホ。
我慢の限界だった。

気づいたときには、私は彼女の言葉をさえぎるように叫んでいた。


 
49 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:48:50 ID:yB5NRpEMO
これはキツイわぁ


 
50 :名無しさん@おーぷん:2014/07/30(水)00:52:03 ID:X0Nc9eZGV
「なんなのあんたは!?
注意するなら普通に注意すればいいじゃない!?
なんでそんな同じことをずっと言っていられるわけ!?頭おかしいんじゃないの!?」

みっともなく声は震えていた。
カホの唇が止まる。


「私に構う暇があるなら、あの人の面倒を見ればいいでしょ!?」

言葉は吐き出すほど不安に変わって、私にのしかかっていく。
必死でカホをにらむ。
 
私の叫びなど聞こえていないかのようだった。
カホの笑顔は微塵も崩れることはなかった。そして。


「使わないコンセントはぬいて。そう言ったよね?」

カホは言った。
さっきと寸分変わらないトーンと微笑みで。



54 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:55:08 ID:yB5NRpEMO
これは怖ひ


 
55 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:58:13 ID:X0Nc9eZGV ×
声にならない声が喉から漏れ出た。
私はリビングを飛び出して自分の部屋へと逃げた。
扉を勢いよく閉めて、鍵をかけた。
布団へと潜りこんで耳を塞ぐ。

「お母さん……!」私は祈るようにそうつぶやいた。
 
扉をノックする音が、耳を塞いでいるのにも関わらず聞こえた。

『使わないコンセントは抜いて。そう言ったよね?』

 
あの女の声が扉越しに私を追い詰める。
目をきつく閉じる。
なのにまぶたの裏では鮮明に、カホが微笑んでいる。

『使わないコンセントは抜いて。そう言ったよね?』


「……はい。ごめんなさい」

私は声をしぼり出した。
扉のむこうでカホが満足そうに笑った気がした。


 
56 :名無しさん@おーぷん :2014/07/30(水)00:58:29 ID:q8LWO2Yy1
ガチでヤバいやつじゃん


関連記事
夏だし自分より年下の不気味な母親について話したい 1
夏だし自分より年下の不気味な母親について話したい 2