日本だけでなく、世界各地にも土着信仰は多い。
個人の信仰心は自由であるが、何に神性を感じるかにもよって第三者の印象は大きく変わる場合がある。不条理極まりない話ではあるが、様々な価値観がある以上ある程度はやむを得ないのかもしれない。

【由来】
・クロ宗とは、鹿児島の一部でのみ信仰されている土着信仰である。
一説によれば「クロ」とは「クロス」(十字架)からきており、隠れキリシタン信仰と土着信仰が融合した独特の信仰といえよう。
クロ教と称されることもある。

【伝説】
日本の宗教史においてフランシスコ・ザビエルがキリスト教を布教した事は多く知られている。
このザビエルの通訳を務めた人物がおり、彼もまたキリスト教弾圧が始まると逃亡している。
彼の名は「ヤジロウ」。
(漢字は不明であり、実際にはアンジロウといった名の可能性もある。
また単にアンジェロ(天使)と呼ばれていただけの可能性もあり詳細は不明)

ヤジロウはかつて海賊で人を殺しており、逃亡のためにポルトガル船で国外脱出し、ザビエルに出会い感銘を受けたという。日本人で最初に洗礼を受けキリスト教徒になった者であり、その後ザビエルに従事し通訳を務めた。

この地域でキリスト教弾圧が始まり教徒の処刑が行われたのは1638年。
この地にはヤジロウの墓であるという天上墓が残る。
(最もヤジロウの死は海外逃亡や中国で死亡など諸説が残る)
このヤジロウが伝えた信仰がクロ宗の祖となった。

・また、島原の乱幕府の追及を逃れた者達が信仰の祖となった説もある。

いずれにせよ、極秘宗教として受け継がれた信仰は現在のキリスト教とは大きく異なり、全く異なる側面を持つ。


【因習と風評被害】
・歴史的に過酷な環境下が続いたためか、この信仰地域には排他的要素が強いらしい。
隠れキリシタンであったことから秘密主義が強いことも当然ではある。
弾圧側は密告を奨励していたことから、狭い地域内で複雑な結束力や揉め事もあたかもしれない。
そのため、クロ宗の詳細は不明である。

が、この地域には土着の因習(信仰?)があったと思われる。
元々中国では人の生き肝は薬になると信じられてきた。日本各地でも人間の一部が薬のような役割を果たすと信じていた時代がある。
貧しく病気の治療もままならぬ時代、人々がそのような風習にすがった事は想像に難くない。

クロ宗には「サカキ(サカヤ)」と呼ばれる独特の因習がある。
人の臨終の際に腹を捌き生き肝(肝臓)を抜き、場合によっては生き血を抜く時もあるらしい。
それらは昔から伝わる薬であり、必要な伝統であり、その因習なくしてクロ宗は先祖からの信仰理由を失う。宗派にもよるが、そもそもキリスト教でもワインはイエスの血パンはイエスの体(肉)を指す。
外部からの援助を受けず彼らは独自に生き延びてきた。

*念のために記載すると、「生き肝」は死の直前に抜かなければ意味がない。死者の内臓は毒にこそなっても薬にはならない。

・一方、秘密主義でショッキングなこの儀式は一部のオカルト紙で紹介されるやいなや、熱狂的なオカルトファンが興味本位で押し寄せた。
西洋の悪魔教の生け贄を思わせるような記事でもあったためでもあるが、悲惨な歴史的事件「島原の乱」の生き残りがアンチ・キリスト的になっていってもおかしくはないといったの人々無意識下の納得もあったと思われる。

また江戸時代から恐ろしげなイメージがつきまとっている事から、キリスト教弾圧のために藩が悪評を流布させていた可能性も高い

現在も信者の人々の口は堅いという。
ストリートビューで個人宅がネット上に晒されるなど、その被害はかなり深刻である。


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