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703 :師匠と八番目の弟子 ◆JuhF/R5.eU:2010/03/12(金) 10:21:04 ID:1bk4myGcO
①
これは3ヶ月前。
リアルバイオハザードな部屋に住んでいた時の事。
ある日、師匠の様子がおかしくなりました。
『ここはどこ?早く大学行かなきゃ』
どうやら師匠の身体に、私の通う大学生の霊が乗り移ったようです。
私の住むアパートは私の通う大学生御用達のアパートなんで…
ですが、まだ分からないので、
大学の先生の顔写真付き科目表を見せ、顔写真に指差し聞いてみることに。
『この先生は知らない、この先生は話が長い、この先生?授業退屈。…』全部当たり。
ですが、ある先生を指差すと、苦しい、苦しいというのです。
恐らく年代は私より二つ上。
その先生となにかあって自殺したみたいです。
しばらく聞くと思い出してきたらしく、部屋は隣の空き部屋で首吊り自殺したそうです。
…ならば私の一年の時の先輩を知ってるかも…?
~先輩って知ってる?ときくと、
『あいつは背が小さいから、入学時はよくからかってた。
で、取り巻きの××先輩とも、ちょくちょく入学時は話していた。あいつ変な奴で面白かったし。
しばらくして疎遠になったけど。』
…当たり。
勿論、師匠は先輩達はおろか、先生の事も知りません…
②
で、その幽霊先輩はしきりにある事を気にしていらっしゃいました。
『~は?~は元気?』
その人は一つ上の先輩で、隣のこの部屋よりも、
リアルバイオハザードな空き部屋に住んでいた女性の大学の先輩。
前々からその先輩は不思議でした。
その先輩以外は、3ヶ月と経たずにその部屋から出ていくのに、一年間もその部屋に住めたのですから。
話を聞くと、その先輩は幽霊先輩の恋人で、
私が入学する前に幽霊先輩が首吊り自殺したから、その先輩が今も元気か不安とのこと。
幽霊先輩にその先輩は隣の部屋に住んでいて、
私が二年のとき全国的に有名会社に就職きまりましたよ、と伝えました。
幽霊先輩曰く
『彼女は俺の(首吊った)姿を見て泣き崩れたんだ。彼女が第一発見者だった。
で、いつの間にか彼女が俺の部屋にいたんだ。何度か彼女に話しかけようとしたけどダメだった。』
私は話をきいて、ある事に気が付きました。
もしや、あの女性の先輩は、幽霊先輩が首吊りした後、わざと卒業するまで隣の部屋に住んだのでは?
普通、首吊り自殺があった部屋なんか住みたくない。
だが、恋人がそこで死んだから、亡くなった恋人を身近に感じたくて、
わざとその部屋を借りたのでは?
恐らく自殺があった部屋だ、しかも恋人の自殺。
彼女の両親は反対されたはずだ。
勿論彼女のご両親は恋人の自殺は知っているはず。彼女が第一発見者なのだから。
そんな事があった部屋に住ませる親なんか、いないだろう。
だが、彼女は恋人が自殺した部屋だからこそ、
身近に感じたくて両親の反対を押し切って住んだのでは…
そういえば、あの先輩、彼氏がいる気配なんかなかった。
男の人が出入りしていた所なんかみたことなかった。
あの先輩に彼氏がいなかったのは、幽霊先輩が自殺したから、
だけど自殺されてもなお、幽霊先輩の事が好きで、身近に感じていたからではないか?
あくまでも推測だが、私が一年の頃はどことなく影のある先輩だった。
卒業する頃にはなんとか落ち着いたみたいだが…
③
幽霊先輩にその事を(推測だが)伝えたら、
『そうか、ありがとう…彼女は元気なんだね。』と告げ、師匠の体から抜けた。
その後、面白がり、私や師匠に取りついた。彼も寂しかったのかもしれない。
彼は晩年、彼女以外との人との交流はないようだったから。
そんなある日。
ひどい雨の日で、私が近所のたち悪い幽霊お持ち帰り、
私の部屋に幽霊ワンサカ、
どうにかベッド(隣のリアルバイオハザード空き部屋側にあります)に結界張れたけど、
多すぎて師匠も私も大変な日がありました。
私に取りついたのは祓えたけど、
壁に寄りかかろうものなら、壁から無数の手がうようよというピンチになったのです。
そんな時。
あの幽霊先輩が壁から出てくる無数の手を
全身を使い、私に手がとりつかないように庇ってくれたのです。
私はもういいよ、危ないよ!と話しかけましたが、
幽霊先輩は、
『彼女は部屋では彼氏も作らず寂しそうだった。
だが君たちのお陰で彼女が幸せになれた事を知った。
すこしの間だったけど相手をしてくれた。』というのです。
彼は頑張ってくれていましたが、
いち幽霊が無数の手を押さえ込むのは無理があります。
私は大丈夫、もう無理しないでといいましたが、
最後彼は、『ごめん、もう体が持たない。押さえきれないけど…ありがとう』と言って消えたようでした。
涙が止まりませんでした。
ちょくちょく取りつかれたけど、
私と師匠にとっては、短い間だったけども、友人のような存在だったから。
その後、師匠が頑張って、部屋はどうにかなりました。
涙目の私に師匠は、
『彼は、無数の手が押さえ込むのは無理だと分かっていて、お前を助けた。
お前が彼の彼女が幸せになった事を知らせてくれたから。
多分、彼女の所に行って守護霊にでもなったさ』と告げました。
今でもふと彼の事を思い出します。
彼の風貌はフードをかぶって人を拒絶しているようでした。まるで昔の私みたいに。
だけど彼はいい奴だったなぁ、元気かなぁ、と思います。
彼はもう会えないだろうけど、私にとっては大切な友人でした。