日本の作家・山田風太郎の伝奇小説を原作とした作品。

同小説は人気作品でもあり、現在でも映画のほか演劇・アニメ・漫画・ゲーム化されている。
この記事では、1981年版の角川映画版監督 : 深作欣二 主演 : 千葉真一・沢田研二)を取り上げる。




物語は、寛永十五年のキリシタン弾圧に端を発する。
島原の乱で、天草四郎時貞を始めとする2万人近い信者が惨殺された事件より、物語は始まる。

キリシタンとして信仰のために蜂起、結果として多くの信者らとともに死んだ苦しみ抜いて天草四郎は、最後に幕府を呪い、禁呪により魔界の力を得て蘇った。
徳川幕府へ復讐を果たすため、四郎は同じ様に無念を抱え、憎悪に捕らわれて死んでいった者達を次々と蘇らせ、仲間・魔界衆へと引き込んでゆく。

細川忠興に見捨てられ、火の海に取り残された細川ガラシャ
柳生但馬守宗矩柳生十兵衛光厳親子と、戦いあってみたいという妄執に取り憑かれた宮本武蔵
女性への煩悩を捨てられず、自殺した宝蔵院胤瞬
甲賀組頭・玄十郎が率いる甲賀衆に伊賀の隠れ里を襲われ、殺された伊賀の忍者・霧丸

徳川幕府の滅亡を謀るこの四郎を中心とした魔界衆と、柳生十兵衛との戦いの物語である。


【ストーリー】
・忍びの隠れ里が襲われた報を受け、柳生十兵衛は隠れ里へ向かうも破壊尽くされた里を目にし呆然とした。人々は惨殺され、焼き払われ、人の住める地ではなくなっている。
この時、異様な風体の集団に遭遇する。
彼らこそ、四郎率いる魔界衆であった。
霧丸の無念を晴らすべく、甲賀の里を襲ったのである。

集団の中に、先年亡くなったはずの武蔵や胤舜がいることに十兵衛は驚愕した。
江戸幕府殲滅を宣言し、四郎らは立ち去る。

十兵衛は彼らが魔界衆だと知らぬもその異様・不穏な雰囲気に圧倒され、江戸城にいる父宗矩に至急書状を送った。

一方、徳川に恨みを抱く細川ガラシャは、巫女として日光東照宮に入り込んでいた。
参詣した四代将軍徳川家綱はガラシャに強く惹かれ、「お玉の方」として側室として既に江戸城に潜り込む。ガラシャに籠絡された家綱は、政治に無頓着となり、太平の世が崩れてゆく。

家綱の様子に危機感を募らせた松平伊豆守は、秘かに玄十郎に「お玉の方」暗殺を命ずる。
しかし、四郎と霧丸が出現し、2人は殺された。
暗殺阻止のためでもあったが、これで四郎は島原の乱で幕府司令官出会った松平伊豆守を、霧丸は甲賀忍者組頭玄十郎に、それぞれ復讐を果たす。

だが、恨みは消えない。
目的は徳川幕府の滅亡である。

死んだはずの人間が魔界衆として蘇り、復讐を果たそうとしている。
俄かには信じられない話ではあるが、実際に死んだ者が討幕を目論んでいる。

お玉が生前は細川ガラシャであり、蘇った魔界衆と知った柳生宗矩は、刀匠村正にお玉を斬るための刀造りを依頼した。
息子・十兵衛の到着を待っていては、間に合わない。
宗矩は刀を手に乱心を装い、自らの命と引き換えにお玉・ガラシャを斬ろうと江戸城へと向かう。

その頃、入れ代わりに柳生家は蘇った宮本武蔵に襲われていた。
武蔵の望みはただひとつ。宗矩か十兵衛との決闘だ。
十兵衛の弟・柳生左門友矩が立ち向かうが、頭を叩き割られて死んだ。

一方、登城中の宗矩には胤瞬が立ちはだかっていた。
ともに天才的な武人である。
激しい戦いのすえ、結果は相打ち。かろうじて胤瞬を倒したものの、宗矩も死地を彷徨っていた。
四郎は全てを見通している。
息子・十兵衛の天才的な剣豪の才能を熟知していた宗矩は、最後の無念を晴らすべく、あろうことか魔界衆に転生した。

宗矩の目的はただひとつ。
息子・十兵衛と本気で戦いたい。

十兵衛は父親が魔界衆に加わったことにショックを受ける。
かつての武蔵の恋人・お通の姪のおつう(同名)を養女にしていた村正に、魔界衆を斬る妖刀を打ってもらうよう再び依頼した。

刀匠・村正は一旦は断るものの、蘇った武蔵を知り、因縁を知り、結局は引き受けた。
こうして妖刀・村正がこの世に誕生することとなるのだ。
  
やがて四郎呪いにより、社会は不穏になっていった。
作物が実らず不作が続き、年貢を巡って幕府と農民側の溝は深まってゆく。一揆が頻発し、農民は圧を受け始めた。
今こそ時は来たれり。
四郎は農民を扇動し、彼らを率いて江戸城へ向かう。
それは、かつての島原の乱の再現であった。

剣士としての執念に燃える宮本武蔵は、執拗に十兵衛との戦いに拘り続ける。
村正の養女、おつうの笛の音に助けられ、苦戦の末にからくも十兵衛は勝利した。
そのまま、急ぎ江戸城へと向かう。


江戸城では相変わらず家綱が寝所でガラシャに溺れていたが、思わずガラシャは憎い愛しい忠興の名を口にしたため、諍いが起きていた。
もみ合っているうちに灯を倒したことで出火し、これが凄まじいばかりの紅蓮の炎となり、江戸城のみならず、江戸の町ものみこんでゆく大災害となる。
これがを引き起こし、江戸中が崩壊した。

クライマックスは燃え盛る江戸城の中での十兵衛vs宗矩・四郎との最終決戦。

ちなみにその炎はCGではなく、実際にセットそのものを燃やして撮影されたものであり、時代劇としても屈指の名シーンである。俳優陣は衣装のまま実際に水をかぶり、その重みに耐えながら殺陣を演じた。
(実際に火傷している)
実在の人物を大きく配置し、物語に大胆に組み込んだこの作品は、今でも海外でも多くの作品に影響を及ぼしている。


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