【百物語も】短編怪談大募集!【話が進む】


83 :名無しさん :2014/04/09(水)07:49:04 ID:???
暗くなるころあの海で


64.タイノシマ

伊勢湾口に位置する神島は、三重県の最東端にあたり、
伊勢にとっては「沖の島」として信仰の一部をなす重要な島である。

この神島には、今でも語り伝えられる「タイノシマ」という不思議な伝説がある。


かつて、神島よりさらに沖合に大きな島があり、
そこには数百人の暮らす村も大寺院もあって一大集落を形成していたが、
あるとき不意の大津波でなんと島ごと水没してしまったという。

今となっては島の名前も定かではないが、
このとき滅んだ村にちなんでこの島は永く「絶えの島」と呼ばれていたそうだ。
このとき、かろうじて災害を逃れた者のうち、
11の家族が神島に移り住み、6家族が知多半島の内海に移り住んだので、
その土地は「引っ越し」と呼ばれ、やがて「吹越」に変わったと伝説は伝えている。


気の遠くなるような年月の果てに伝説も忘れられ、
「絶えの島」はその海域が鯛の良い漁場として知られたことから
いつしか「鯛の島」と呼ばれるようになった。


生き残りの家族たちが現在でも血筋を残しているかどうかはあいにくと聞きそびれたが、
まるでアトランティスのようなこの伝説を聞くにつけ、
海底に沈んだ村がいつの日にか
その全貌を現してくれることを願ってやまない。