サイケデリック・奇譚

永遠の日常は非日常。

カテゴリ:サイケデリック・カルチャー > 映画

現代はCG技術が発達し、アナログな特撮技術は逆にマニアックなファン扱いされることも多い。
だが、日本の特撮技術が世間を圧巻した時代もあった。
今の感覚からすれば拙い映像のように感じるかもしれないが、当時は日本の特撮技術は世界に引けを取らぬほど先端をゆくものでもあり、日本の独特のストーリー感覚から生まれる物語は、現在でも海外にすらファンを持つ。

「大魔神」シリーズは、1966~1969年に製作された大映映画会社(現・KODOKAWA )が手掛けた特撮時代劇3部作であり、大魔神とは物語中に登場する守護神を指す。

1作目「大魔神」2作目「大魔神怒る」3作目「大魔神逆襲」ともに、ストーリーは至ってシンプル。
古代信仰の象徴であった武人の石像が、人々の願いとともにその怒りを爆発させ、神罰を与えるというもの。
各エピソードは独立しており、同じ石像が登場するというよりは、各地に残る信仰を各々の土地の人々が崇拝しているといった設定を持つ。

しかしそのシンプルさと対照的な重厚で深みのあるリアリティに満ちた時代劇ワールドは、かえって時代や権力に翻弄される人々の願いや必死に生きる様を見事に描き出した。

とはいえ娯楽性の高い作品であり、無表情の武人神が両腕を振ると怒りに満ちた表情に変わるといったパターン性は多くのファンを獲得し、現在でもパロディ的なサブカルチャーを生みだしている。
海外名はそのものズバリ「DAIMAJIN」。



ここでは1作目を取り上げる。


【ストーリー】
・時は戦国時代。
丹波の国には、決して人は登ってはならないという神山があった。
魔神「阿羅羯磨(あらかつま)」が山に封印され、さらに武神が魔神を抑え込んでいるという。
山鳴り(地鳴り)の響くなか、村人達は神の怒りを鎮める為に祭り(儀式)を綿々と行ってきていた。

ある夜、再び地鳴りが響く。
村人達は神を鎮めるために集まり、不安にさいなまれながらも祭りを行う。
その祭りは独特のもので、古代信仰色が強く、巫女・しのぶを中心とした炎の儀式だった。
一方、領主の花房家では幼い息子と姫が怯えていた。父親である領主は、村人の不安を取り除くために祭りへと使いを走らせる。

しかし、その夜は花房家最後の夜でもあった。
家老・大館左馬之助は下剋上を企んでおり、既に多くの家臣が左馬之助に寝返っていた。
花房家の者は次々と惨殺されてゆき、わずかに残っ花房家臣らも、幼い兄弟・忠文と小笹を忠臣・小源太に託して囮となる。「生き延びたら、10年後に会おう」と約束して。

小源太は、魔神の巫女しのぶの甥にあたる。
花房の生き残りの兄弟を抱え、必死に国超えを図るも包囲網は厚く、仕方なくしのぶは3人を魔神の住む山へと導いた。

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・10年後。
野心家の左馬之助は領土を拡げ、領民達は次々と作られる砦の建設に苦役を強いられていた。
左馬之助は人々が団結することを警戒し、魔神の祭りも禁じている。
男達は全員徴収され、村には女と子供しか残らず、作物も満足に育たない。
怪我をした者、病気の者も満足に手当てを受けることもできず、人々は生きる希望を失っていた。

幼い男の子・タケは病気の母のために父親を探しに砦に紛れ込むが、作業の遅れを気にやむ上役は殺してしまえと命じる。老いた祖父の助けをかりてタケは脱出するが、母親は死んでしまった。

タケの父親もまた、病気の仲間を気にかけたことで上役の怒りを買っていた。
さらに、花房家の家臣の生き残りが未だにウロウロと姿を現す。領民達もまた、かつての領主を慕っている。
現領主である左馬之助の怒りは納まらない。

阿羅羯磨が封印される山奥にて、花房の生き残りの兄弟は立派に成長していた。
阿羅羯磨は巨大な武人の石像に封印されており、その石像のすぐ側らにある祭壇の洞穴に暮らしながら、兄弟と小源太、しのぶは密かに御家再興の機を伺っている。

里に偵察に出た小源太は左馬之助らに捕まり、拷問を受けた後、見せしめのために吊るされたという。
助けに行った忠文が見たのは、小源太ではなく、半殺しにされたタケの父親だった。忠文をおびき出すための罠だったのだ。

小源太としのぶの関係は秘密のままだったが、しのぶは巫女の立場から、領民達の苦しみは神の怒りに触れると左馬之助に忠告し、圧政をやめるように嘆願。
しかし、左馬之助は「神罰があるなら見せて見よ」と、しのぶを斬り殺してしまった。
血を吐くような呪いの言葉とともに、魔神の巫女は死ぬ。

領民共が素直に従わないのは、魔神の信仰のせいだ。この世に神などいない。
人々の団結の源となっている信仰を打ち砕くため、左馬之助は神山にあるという神の像の破壊を配下に命じた。
従わねば、自らの身が危うい。
祟りを信じる者、笑い飛ばす者、様々な心中を抱えながら、人々は石像の破壊に向かう。

・神山には、母を亡くしたタケが神に助けを求めて入り込んでいた。
タケを人質に取られ、小笹は仕方なく武人神の元へと左馬之助配下を案内する。
巨大な神の石像に人々は畏れ戦くが、命令通りに破壊せねばならない。
ついに、石像の額に鏨(たがね)が打ちこまれた。深々と刺さるその傷跡からは、鮮血がしたたり落ちた。

人々がパニックに陥るなか、突然地震が起き、地面がぱっくりと開いた。
ゆっくりと、石像の全身があらわになる。
左馬之助の配下の者達は、次々と地割れの中にのみこまれていった。

怒れる神に、小笹は自らの命をかけて兄の助けを乞う。
憤怒の表情を浮かべた魔神は、光となって飛び去った。

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・砦の建設現場。
花房家最後の生き残りである忠文と、小源太、そしてタケの父が磔で殺されようとしていた。

花房の殿様が生きていれば、いつかこの圧政は終わる。そう信じていた領民達の希望も打ち砕かれ、左馬之助は勝利に酔う。かつて、放浪していた自分を取り立て、家臣とした花房家を出し抜いて藩を奪った時のように。

だが突然、突風が吹き荒れて天から光が舞い降りた。それは巨大な魔神の姿と化し、ゆっくりと、砦と城を踏み潰しながら歩き出した。
逃げ惑う人々を次々と踏み潰し、魔神はひたすらに左馬之助を追う。
こっそりと忍び込んでいた花房家の残党により、小源太と忠文、タケの父親は助け出された。

ついに追い詰められた左馬之助は、魔神の手により磔にされた。
額に打ちこまれた鏨を引き抜き、魔神は左馬之助の胸に突き刺したのだ。

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・神の怒りに村人達は怯えた。
怒れる魔神の歩みは止まらない。全てを破壊し踏み潰してゆく魔神の祟りは領民達にも及びかねない。

再び小笹が身を投げ出した。
人とはどこまで身勝手なものなのだろう、神の祟りを願い、今度は鎮めようとする。
しかし、罪のない領民達を苦しませるわけにはいかない。
自らの命と引き換えに怒りを鎮めてくれるよう懇願し、はらはらと涙を流す。

・ラスト。
魔神は小笹を見ている。
そして、怒りの表情を拭い去ると、もとの無表情な武人の石像に戻り、やがてさらさらとした土に戻ってゆく。
完全に崩れ去った神像は、静かに風の中に消えてゆくのだった。


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「予告犯」は2015年公開の日本映画。
筒井哲也原作の同盟コミックを映画化したものであり、生田斗真が主演を演じる事でも話題になった。
監督は中村義洋。

殆どの場合原作つきの映画化は批判が大きく別れるが、その作品に観る側が何を求めるかによってその差は拡大するだろう。
その作品を全く別物と捕える事ができるかどうかで娯楽度が決まると言ってもいい。
過去と現在を同時に進行させてゆく演出法は珍しくないが、最後にそのパズルがピタリと嵌った時の爽快感は心地よくさえある。



【ストーリー】
・ネットの動画サイトで新聞紙を頭からかぶったアカウント名「シンブンシ」が、犯行声明を発信した。
「明日の予告を教えてやる」

1番目の被害者は、働いている飲食店でイラズラでゴキブリを揚げ、その様子をSNSに乗せた人物。
当然大炎上を起こし、その店は廃店寸前に追い込まれた。
「シンブンシ」は被害者の個人情報を公開し、「彼には制裁が必要だ」と宣言。
その予告通り、翌日の配信には本人がゴキブリのカラアゲを無理矢理食べさせられる動画がUP。

2人目の被害者は、強姦事件がらみで「ホイホイついて行った女が悪い、自業自得だ」とツイートした人物。
やはり翌日には、口車に乗せられ、監禁され、レイプされる様子が動画にUPされた。
全ての情報がネット公開された上に就職の内定も取り消され、被害者だとわめく本人は、「ホイホイついていったのだから、自業自得でしょう?」との言葉に黙り込む。

3番目の事件は食中毒事件を起こした食品会社。謝罪会見では逆切れし、世論の怒りを買っていた。
翌日、工場から出火しニュース映像が全国をかけめぐる。
その片隅には、親指を立てた「シンブンシ」の姿があった。

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ここにきて、ようやく警察が動き出す。
動画がUPされるネットカフェ「ピットボーイ」はセキュリティ保護のため、専用のトークンを使用しなければPCが起動しない。パスワートは毎回変わる。にも関わらず、犯行は続く。

4番目の被害者は、会社の面接にきた中年男性を面白おかしくネット実況で笑い者にした人物。
相手の事情も知らず笑い物にした人物に、24時間以内に制裁を下すという。
警察が動いたた時には、本人はすでに拉致された後だった。

深夜0時を過ぎて実況動画の配信が始まった。
縛られ怯える被害者はバットを構える「シンブンシ」の姿に泣きながら必死に画面に助けを求めるが、ネットの向こう側では面白半分にからかい嘲笑われるだけ。
バットは金属バットではなくただのオモチャであり、初めから殺害意志はなかった。
「シンブンシ」の目的はネット上で彼を笑い者にすること。

・やがて、世論の流れは変化した。
「シンブンシ」を支持する者達が多数現れ出す。模倣犯まで登場した。
分析の結果、複数犯であることは突き止めたがそれ以上はわからない。
警察のサイバー課は頭を抱えるが、何故か「シンブンシ」達はタイミングよくいくつかの痕跡を残してゆく。

メディアはネットの危険性を指摘し、国会議員の設楽木は、匿名性ネット掲示板の閉鎖を宣言。
しかしそれはあくまで政治活動のパフォーマンスに過ぎないことを見抜いた「シンブンシ」達は、24時間以内に設楽木の抹殺を予告。
配信先のネットカフェを突き止めたサイバー課は店に乗り込み、新聞紙をかぶった男との追跡劇が始まった。
他の客たちはは興奮して、警察と男の追跡劇をSNSに投稿。
SNSでは「シンブンシ」への注目が高騰する。

結局、新聞紙をかぶった男は逮捕されたものの、それはその店の受付係。
実は「シンブンシ」の1人、通称「ゲイツ」は以前の犯行時に店内カメラに姿を現しており、面影のある証拠写真を残していた。さらに、毎回同じ「ネルソン・カトー・リカルテ」の名前を残している。
各「ピットボーイ」店舗に貼られたそのポスターから、店員は相手が「シンブンシ」だと知り、身代わりを買ってでたのだ。
黙秘を続ける店員もまた、「シンブンシ」に共感を感じた者の1人だった。

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・この世は決して公平ではない。堂々と不条理がまかり通る。
「シンブンシ」達の正体は元派遣プログラマーの奥田(ゲイツ)、葛西、寺原、木村の4人。
様々な事情で人生に数年間の空白がある彼らは、履歴書に空欄があるだけで就職できずに、仕方なく日雇いのタコ小屋に閉じ込められた仲間だった。
そこにはもう1人、フィリピンの父親を探しに来たネルソン・カトー・リカルテがいた。

彼らの仕事は不法投棄されたゴミをこっそりと地中に埋めること。充分な教育を受けることができなかったネイサンはその金さえもピンハネされていた。
危険な医療器具も山積みになったゴミの山のなかで、人間扱いされない彼らはそれでも人生に希望を持っている。派遣先で社内イジメにあい血を吐いて休職したために、人生の転落者とならざるを得なかった奥田にとって、彼らは大切な友人で初めての仲間だった。

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しかし、ネイサンは日本への渡航金をつくるために内臓を売却していた。
倒れても救急車は来ない。介抱すれば仕事の手を休めるなと叱責の言葉が飛ぶ。
ネルソンが苦しみぬいて死んだ時、彼らは作業監督をなぐり殺し、タコ小屋に火をつけて粗末なネルソンの墓を作った。

死んだ気になれば何でもできる。
全ての計画は奥田が立て「シンブンシ」集団が結束した。
ピットボーイのトークンは、かつてネルソンが働いていたネットカフェのもの。
奥田はあえてこのトークンを使用する。

・一方、サイバー課の班長を務める吉野絵梨香はこの事件に異様に執着を示していた。
奥田は何度も警察とのニアミスを意図的に繰り返しており、奥田に気づいた絵梨香との長い逃走劇のすえに言葉を交わす。

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抹殺予告の翌日、設楽木はイベント会場にいた。
野次馬や調味本位の人々が皆SNSに注目している。
「シンブンシ」達がやった事は、ネット上によくあるイタズラでイベントを中止させること。
様々なSNSが飛び交うなか、先日の設楽木議員のテレビ出演の際のヤラセ映像が突如流失。彼の議員生命は終了する。

SNS上では、実際に殺人がなされるものだと期待していたユーザーからの批判が噴出している。
「シンブンシ」達は最後の予告動画をUPした。
世間を騒がせた罪として、彼ら自身がターゲットとなる。4人全員が新聞紙をはずし素顔を晒した。

奥田の目的は、社会的制裁でも、SNSで注目を浴びることでもない。
ただ、死んだネルソンの希望を叶えてやることだけ。
最後の日に、4人は海でパーティを開く。

・「シンブンシ」の素顔が割れた事で事態は大きく変化する。
ネルソンの存在も発覚し、父親の存在も確認された。
動画配信と同時に、公安含む警察は父親所有の廃工場に踏み込む。が、そこに彼らの姿はなかった。

サイバー課の絵梨香のみが奥田の足取りを追い、ゆっくりと真実に近づきつつあった。
タコ小屋の火災と人1人いなくなった程度では、誰も気にしない世界現実にある。
絵梨香自身、貧しい家庭に育ち虐めにあい自殺しようとした子供時代を持つ。
それでも、未来への道はあるはずだ。そうつぶやく絵梨香に奥田の幻がささやく。
「そう思えるだけ、幸せだったんだ」と。

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・焼け落ちたタコ小屋に辿りついた絵梨香たちは、そこに倒れた4人を発見した。集団自殺配信動画では、「地味www」と揶揄する書き込みが。
絵梨香はカメラを蹴り飛ばした。

致死量の毒物を飲んだ奥田は死亡。しかし、他の3人はまだ生きていた。

残されたスマホの中の映像には、目隠しをされた寺原と使い走りをさせられる木村、言うことを」聞けと叫ぶ奥田の記録が残っていた。
それは、奥田が仕掛けた最後の計画。
寺原へのサプライズ誕生パーティの映像が、全く別の意味を感じさせる動画として残されていた。

葛西の望みはでっかい事をやること。
寺原の望みは廻らない寿司を食べること。
木村の望みは恋人をつくること。
葛西は有名人になり、寺原は仲間達と寿司を食べ、木村には淡い恋心が芽生えつつあった。

奥田の望みは友人が欲しい、ただそれだけ。
自分の望みが適った奥田は、友人達に恩返しをしたのだ。

「もし生き残ったら」
「その時は全部死んだ奴のせいにすればいい」
冗談混じりの奥田の言葉は、まぎれもない本心だった。

人はわかりやすい事しか信じない。
病院で奥田の本心に気づいた3人は、そのの意志を尊重し、涙を流しつつ脅されていたと認めた。
その思いに気づく者は誰もいない。

・ラスト。
絵梨香あての最後の動画が奥田のスマホに残っている。
最後に奥田はネルソンの骨を父親に届けてくれと頼んでいた。
(ネルソンの望みは、ただ父親に会いたいということだけ)

奥田の計画を全て理解した絵梨香は、最後までつき合うことを決意。
不法投棄の産廃業者にはいずれ警察の調査が入る。



「冷たい熱帯魚」は、2010年公開の日本映画。園子温が監督・脚本を務めたホラー映画。
1993年に起きた埼玉愛犬家連続殺人事件をベースに製作された物語。
R18+指定の作品である。



【ストーリー】
・「社本熱帯魚店」の経営者社本信行の家庭は破綻している。
前妻が死に、若い後妻・妙子と年の近い娘・美津子はソリがあわない。夫であり父親でもある社本はどうして良いかわからず、問題を「ないこと」にして現実を見ない。
妙子はそんな夫に興ざめし、投げやりな毎日を送っている。

美津子の万引きが発覚したことで、社本ら家族は村田という人物と知り合った。
村田の取り成しで通報を免れた美津子は、村田の営む熱帯魚店「アマゾンゴールド」で住み込みながら働きだす。
村田は顔が広く、話術が巧みで他人の信頼を得る事に長けていた。
実は社本は魚よりも星空(プラネタリウム)を好む小心者のロマンチストであり、妻の妙子の方が生物好きなリアリスト。夫婦のズレを見抜いた村田は、美津子を預かったその日に妙子と肉体関係を持つ。


・一方、村田に呼び出された社本はいきなりピラルク養殖業の共同計画者として紹介されるが、面と向かって「違う」と言うことができない。
最初は一千万円の出資を渋っていた出資者・吉田も、説得されて信頼し、金を渡す。
その直後、村田の妻・愛子が「お疲れ様」といって大量の栄養ドリンクを運んできた。

程なくして吉田が苦しみだす。
ドリンクには毒物が混入されていたのだ。
パニックになる社本に対し、村田と妻の愛子は平然としたまま。
「生き死にを決めるのは俺だ。俺が決めるんだ」
やがて吉田の呼吸が止まると、村田と愛子は遺体を毛布にくるみ、山頂にある教会跡地へ社本に運ばせた。

浴室に遺体を運びこみ、証拠隠滅の為の解体が始まった。
村田と愛子が笑いあいながら遺体に包丁をふるう最中、何度も嘔吐を続ける社本。
「うまいコーヒーを煎れてくれ」の言葉通り、吐きながらも素直にお湯を沸かし、コーヒーをいれた。

浴室は血で染まり、肉片は細かく分断されている。
「ボディを透明にすりゃあいいんだよ」
返り血で真っ赤に染まった村田は、コーヒーを飲みながら社本をからかい、愛子はケタケタと笑っている。
ドラム缶の焼却炉の用意をする社本。
「吉田さ~ん!」と叫びながら、分解した吉田の骨を焼却してゆく村田。
どこまでがジョークで、何処からが本気なのか。
遺灰は山中にばらまかれ、細かい肉片は川に捨てられた。
「魚が食べてくれる」「お魚さんも喜んでくれてるよ~」


・吉田の弟分だという集団が「アマゾンゴールド」へ押しかけてきた。
ガラの悪い連中の態度に半泣きになって震え上がる村田と愛子は、まるでヤクザに因縁をつけられて怯えきった夫婦そのもの。
しかし社本は前日口裏合わせの為に何度も証言を練習させられていた。
「アマゾンゴールド」の顧問弁護士が場を取り成しその場は収まるが、自由自在に人格を変えてみせる村田という人物に、微妙に影響を受けてゆく社本。

しかし、駐車場で川尻という刑事に呼び止められる。
以前、村田の元で働いていた男性とその家族が全員行方不明であることと、何かあったら連絡をくれと名刺を渡しながら「まさか貴方ももう共犯者ではないですよね?」
麻痺している社本には動揺の色すら浮かばない。

その直後、大久保の運転する車の後部座席で愛子と顧問弁護士の筒井がキスしながら通り過ぎた。
2人とも社本に手を振りながら。
社本はどう反応すれば良いかわからない。

愛子と筒井は肉体関係にあった。
筒井は村田に嫌気が差しており、いずれ資産を乗っ取るつもりでいる。


・愛子は何処にいる?怒り狂った村田は社本を呼び出し、心当たりの場所へと車を走らせた。
警察の尾行に気づくが、社本に振りきれと命令。「ボディがなきゃ証拠はないんだよ」

部屋へ踏み込むと、散乱する栄養ドリンクの中で筒井が死んでいた。
「本当に救急車呼んだのかよ!」
錯乱する大久保に落ちつけと栄養ドリンクを渡す村井。咄嗟に「飲むな!」と叫んだ社本は蹴り飛ばされた。
なかなか死なない大久保の首に村田はコードを巻き付け、愛子が反対側を引っ張る。
「力を緩めるなよ!」息のあった2人の行動で、大久保は窒息死した。

舞台は再び山頂の廃教会へ。
今度は2人。「見てらんねぇだろうから、向こうへいって休んでていいぞ!」不思議な気遣いを見せる村田。
そして、やはりコーヒーを沸かす社本。遺体を解体する2人は心底楽しそうに笑いあっている。
「要は慣れなんだよ」
解体の仕方を教えてやるという村田。「俺達がいなくなっちまったら、やり方がわからなくなっちまうだろ」

社本は証拠となる衣服を燃やし、肉片を川にばら撒いた。
拡がってゆく血の色を、「キレーだなぁ」と眺める村田は、社本に妙子と寝た事を打ち明ける。
とうとう、社本がキレた。が、そのパンチは弱く、村田はさらに挑発する。
「もっとかかって来い!」
「何もしないお前のような奴が一番悪い」
「やりたいことをやれ!」
「俺はやりたいことをやっている。警察もヤクザも関係ねぇ!」

泣きながら、社本は愛子に無理にセックスさせられた。
どんなに抵抗しても、刺激されれば勃起する。感情とは関係なしに。


・社本は覚醒した。
愛子の首にペンを突き刺し、驚く村田の上にのしかかり、ペンを突き刺す。何度も、何度も。
血塗れの自分達に、タガが外れたように笑いだす愛子。

社本は廃教会に戻り、血塗れの愛子に村田を殺させ、「ボディを透明に」しろと命令する。
愛子はうっとりと嬉しそうに社本にキスをした。

「アマゾンゴールド」に向かった社本は反抗的な娘をひっぱたき自宅に連れ帰った。
ついに、自分の望む家庭を実現させるために初めて彼は行動を起こしたのだ。

川尻に廃教会の場所を伝えてから、社本はすべての決着をつけるために廃教会へと向かう。
愛子1人では解体は半分しか終わっていなかった。
村田から流れ出た血だまりの中で、社本は愛子に包丁を突き刺す。
上半身のみの村田に寄り添うようにして、愛子は絶命した。

廃教会に警察が到着した。
凄惨な現場に言葉を失くす川尻たち。警察車両の中には、妙子と愛子も保護されている。
2人に気が付いた社本は軽く手を振る。

妙子は全身に血を浴びた夫の元へと駆け寄り、抱きついた。
社本はそのまま、自分を裏切った妻を刺し殺す。声もなく、妙子は崩れおちた。

ついで、愛子のもとへと近づく社本。どこまでも反抗的な娘に、父親は叫ぶ。
「生きるって痛いんだよ!」
そして、ゆっくりと自分の首を掻き切った。


・ラスト
うつろな瞳の父親の頸動脈から、どくどくと血があふれ出す。その体を蹴りつける娘。
「ざまーみろ!くそじじい!」
ロマンチストの父親は、自分の命と引き換えに娘にメッセージを伝えようとした。
しかし、娘には決して届かない。



人体実験といえば、何を思い浮かべるだろうか?
さらに「恐怖の~」の冠詞がつけば、ほとんどの方はマッド科学者か、狂った医者による血みどろのスプラッターを連想される事と思う。


ところがこの作品はサイキック(超能力)スリラーとでも言うべきものであり、ノスタルジックな記録映像が淡々と流れるだけでありながら、その巧みな構成が観る者を捕えて離さない。


本作「THE ATTICUS INSTITUTE」邦題「恐怖の人体実験所」は「死霊館」を手掛けたピーター・サフランによって2014年に製作されたもの。
1970年代に密かに行われた、超能力開発のための人体実験の記録映画である。



因みに、この作品内で実際に悪魔らしきものが登場することはない。
彼女の周囲の人間が「悪魔憑き」だと主張しているだけである。


【ストーリー】
・荒れ果てた研究所。星型・四角・波型などの模様が印刷されたESPカード(ゼナーカード)がホコリにまみれ、大量の種類がそのままに散乱している。
字幕
『ヘンリー・ウェスト博士は超能力研究のため、アティカス研究所を設立した。
研究所は約10年間にわたり活動を続けたが、1976年に突如アメリカ政府によって閉鎖された』

その後は記録映像と現在の回想証言が交互に繰り返され、徐々に全体像が浮かびあがってゆく。

現在 ヘンリー博士の息子娘・妻の証言
サイキック(超能力)研究に没頭する真面目な博士の思い出が、当時のホームビデオの映像とともに語られる。
娘との数少ない交流、「魚の目は何個?」「2つ!」「では、リスの・・・・・猿の・・・・クジラの・・・・・」幼かった娘は、必死に父親の質問に答え、嬉しそうに笑っている。

当時の記録映像
1970年代、超能力が大真面目に研究されていた時代。
ソ連(現ロシア)の女性超能力者、ニーナ・クラギナが世界的に取り上げられており、アメリカは第2のニーナの獲得に躍起となっていた。
アティカス研究所では、ESPカードを使った透視・念動力・予知能力の研究が行われており、カードを使った透視実験では、通常正解率は20%であるのに対し、研究の結果30%にまで正解率を挙げる事に成功していた。

しかし、その最中に有力なサイキッカーとして注目されていた人物のイカサマ詐欺が発覚する。
研究所の権威は地に落ち、研究員らには無自覚のあせりが湧きあがりつつあった。

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・1976年。姉に連れられた40代前半の地味な女性・ジュディスが研究所を訪れた。
ジュディスは転倒して頭を打ち、歩行困難や体の痺れなどの症状を抱えている。
自然と引きこもりがちになったジュディスは、ある本にのめり込むようになり奇行が目立ちはじめたという。

ジュディスは面談中も体を揺すり続け、情緒不安定で、自傷行為を繰り返す。
ところが、彼女の超能力実験は100%の正解率を示したのだ。研究員らは今度こそ本物だと意気込む。

だが研究員らが熱心になればなるほど、彼女は反抗的になってゆく。
時には暴れ出す事もあり、手に負えなくなったジュディスの姉に連絡を取ると、家族は行方をくらましていた。

家族に捨てられた彼女はますます凶暴化し、研究員らは恐怖を感じるようになった。
彼らを守る立場であるヘンリー博士もまた追い詰められていった。

それでも連日繰り返される実験にジュディスは苛立ち、念動力(サイコキネシス)で鬱憤を晴らすかのように不気味な現象を引き起こす。

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とうとう研究所は軍に協力を頼む事を決定。
国防省の役人の前で彼女は自然発火現象まで引き起こしてみせた。
さらに実験を強いられた彼女は、仕返しとして研究員の心を透視する。トラウマを刺激された研究員は泣き叫びながら彼女に掴みかかった。
大声で笑いだすジュディスに周囲は凍りつく。

・やがて、本格的に国防省が研究に乗りだしてきた。ジュディスはもはや人間とは見做されなくなった。
人間の行動をコントロールすることもできるその能力は危険視され、常に拘束された彼女はトイレにも行かせてもらえない。

彼女の血液は調べられ、徹底的に体内組織が調べ上げられる。
結果は不可解なものだった。
血液は異常に電解質値が高く、未知の分子化合物が発見される。つまり、彼女の中に何かが潜んでいる可能性が高いということ。
しかし、それは病気のウイルスでもなく、寄生虫でもない。
ホワイトハウスにまで報告が届くころ、人々は彼女の中に恐ろしいものがいると信じ初めていた。

・ソ連の超能力者・ニーナが手を触れずにカエルの心臓を止めたとの発表があった。
国防省は負けじと拘束したままのジュディスに同じ実験に挑戦させる。
彼女はカエルの心臓を吹き飛ばした。
同時に、控えていた軍用犬も苦しみ出す。
パニックになる中、明かりは消え、縛り付けられていたはずの彼女は人間にもとびかかった。

再び拘束された彼女は、今度は密閉された透明な部屋に閉じ込められた。
軍はガスを使用する事を決定。部屋はそのままガス室となる。
ヘンリー博士はジュディスの命の危険から反対するが、国防省には逆らえない。

国防省の目的は、ジュディスの軍事利用。
彼女の謎を解明できれば、敵の心臓を止める事も可能となる。
科学は暴走し、人々はジュディスという人間の存在を忘れた。研究員に発言権はなかった。
くりかえされる電気ショックで彼女の体はボロボロになってゆく。

だが同時に人々の周囲で不吉な事が起こり始め、関係者だけでなくその親族や友人にも死がちらつき始める。

ある時、1人の研究員がジュディスの部屋の床からクリップを拾った。
何気なくズボンのポケットに入れたまま、彼はクリップの存在を失念してしまう。
5日後に甥っ子の誕生パーティーに呼ばれた彼は、たまたまクリップの入ったままのズボンを穿いて訪れ、たまたまクリップが床に落ち、たまたま幼い甥っ子がクリップを拾いコンセントに突っ込んで感電死した。
これらは全て偶然なのだろうか。
研究員はジュディスの悪意を感じずにはいられない。

あるシンクロ実験。
ジュディスは被験者の口を操り言葉を話させるように命令されていた。
当然のように相手の指示を無視する彼女。
被験者を操り、全く別の言葉を話させる。
「魚の目は何個?」
凍りついたヘンリー博士を嘲笑う彼女。

もう制御不能となった彼女の中にいるのは、はっきり「悪魔」だと人々は確信していた。
24時間、椅子に縛り付けられたまま、讃美歌のテープを延々と聞かせられ続ける彼女。
それでも、ヘンリー博士は彼女が眠れるようにテープのスイッチを切ってやっていた。


現在の映像
息子の証言。
その日の朝、博士は丸くなって泣いていたという。

当日の記録映像
人体実験は、人間への電気インパルスの影響へと移行していた。
「悪魔」は制御できなくとも、人間の体を持つ女性の身体を虐待することで彼女の中の「悪魔」はおとなしく言うことを聞くようになる。遠く離れた人間の呼吸を操ることは可能か?
できなければ電気ショック。相手が苦しみだすと(死ぬと困るので)やはり電気ショックで彼女を失神させる。
彼女は叫び、意味不明の言葉を喚き散らしていた。

しかし、言葉には意味があった。言葉で相手の行動を操っていたのだ。

ついに、エクソシストが行われることになった。
彼女の中の「悪魔」を、訓練された素直な軍人の中に入れ替えてしまおうというのだ。
ガスマスクをつけた神父は、うなだれたジュディスの隣に立つ。
聖水を振りかけると、彼女は絶叫した。同時に、拘束された身代わりの若い軍人も苦しみ出す。

突然、神父が倒れた。ガスが充満する透明な部屋の中は良く見えない。
倒れた神父は引きずり出された。

ガスが晴れると、暴れた拍子にはずれたのか、気絶したジュディスの額の電極が床に落ちていた。
このままでは彼女に電気ショックを与える事ができない。
責任者は電極をつけ直すために、更にガスの量を増やす事を指示。ガスは致死量に達しつつあった。

マスクを着けた軍人が部屋に入り、ぐったりしたジュディスの額に電極を付けた途端、彼女は絶叫した。
同時に、失神していた身代わりの軍人も絶叫し、どす黒い血を吐きだす。
介抱していたヘンリー博士はまともに血を浴びた。
現場は混乱し、何が起きたのか映像でははっきりしない。


・ラスト。
全員が死んでいる。
血しぶきが飛び散る部屋の中で、正気に戻ったジュディスが泣き叫んでいた。
「これはなに?」「なにがあったの?」
突然、助けを求めるジュディスの心臓がはじけ飛んだ。
部屋の中には死体のみ。
たった1人、ゆっくりと立ち去ってゆくヘンリー博士の姿が見える。

字幕『博士はその後、40年経った現在でも見つかっていない』

「恐怖の人体実験...」の画像検索結果
 

自分の記憶は、間違いなく正しい自分の記憶なのだろうか。
もし自分の記憶が何者かに改竄されたものであるとしたら、自分は何を信じれば良いのだろう?

「THE 4TH KIND フォース・カインド」は、2009年公開のアメリカ映画。
原題は、そのまま「The Fourth Kind」。
少々ネタバレになるが、この場合はエイリアンアブダクションを指す。

⁂エイリアンアブダクション(Alien abduction )
abductionとは、拉致・誘拐の意。宇宙人による人間の拉致事件を指す。
アメリカでは非常に恐れられている現象であり、被害者は数万人にのぼるともいう。
被害者の中には深刻なトラウマを抱く者も多い。


2000年の10月、アラスカ州ノームで起きた不可解な事件の記録映像と実際の音声を基に、ミラ・ジョヴォヴィッチが再現ドラマとナビゲーターを務めるドキュメンタリータッチの作品である。
オラントゥンデ・オスサンミが監督・脚本ともに担当しており、記録フィルムの中にも本物のアビゲイル博士にインタビューする姿で登場する。

キャッチコピーは、「信じられないのは、信じたくないからなのか」
その言葉通り、記憶の不確かさ・曖昧さ、自我の崩壊につながりかねない存在の危うさが恐ろしい。
UFOや宇宙人系といったジャンルはイマイチ・・・という方にも、「究極のハイパー・ショッキング・スリラー」の宣伝文句は伊達ではなく、非常に怖く、気味が悪い。

65時間に及ぶ記録映像と音声はリアルで恐ろしく、かなり衝撃的な映像も含まれる。
再現ドラマと記録映像が交互に流れる画面構成は斬新であるとともに、演出としても素晴らしい。




【ストーリー】
・映画の冒頭はアビゲイル・タイラー博士本人とオスサンミ監督とのインタビュー映像から始まる。
窶れて恐ろしい程に生気のない表情をしているタイラー博士は、監督の問いに淡々と語りだす。

・2000年10月。
アラスカ州ノームの町に暮らす心理学者タイラー博士・アビー(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は、不眠に悩む人々のカウンセリングを行っていた。
この町では行方不明者が多数出ており、60年代以降FBIによる訪問は2000回を超える。また、不眠を訴える患者も続出していた。

不眠に悩む人々は、すべて共通する現象に悩まされていた。
曰く、「午前3時になると白い大きな眼をしたフクロウが見ているので眠れない」というもの。
全員が白いフクロウの夢をみて、内容を思い出せないという。

「フォース・カイ...」の画像検索結果

アビーにも思い当たる点があった。
2ヵ月程前、夜中に何者かが寝室に侵入し、夫を刺殺したのだ。だが、それが誰なのかどうしても思い出す事ができない。記憶がすっぽりと抜け落ちている。
友人のエイブル博士はアビーに休暇を勧めるが、この奇妙な符号をアビーは無視することができない。

夫の死後、娘のアシュリーは心理的ショックから失明しており、息子のロニーは母親であるアビーに不信感を強く抱いている。「ママは、誰も助けることなんかできない」と。だからこそ、アビーは必死だった。

エイブル博士とともに、アビーは不眠患者のトミーに催眠療法で記憶を引き出そうとする。(記録映像)
しかし催眠中にトミーは錯乱状態となり、「あれはフクロウじゃない!」と叫ぶ。
アビーの指示で催眠状態から覚めたトミーは憔悴しながら、「何も思い出していない」と言い逃げるように帰っていった。

・その夜。通報を受けたパトカーがトミーの家に向かう。(パトカーの記録映像)
家族を人質に、アビーが呼び出された。驚くアビーに「自分が何をされたか思い出した。止める方法はこれしかない」と叫び、トミーは家族を次々と撃ち殺し、自殺した。

その後、アビーは保安官の取り調べを受ける。
催眠療法が無理心中のきっかけになった可能性はないのか?
保安官はアビーの夫の死も知っており、同情的だが同時に疑いを隠さない。
アビーは不眠によりトミーの精神が不安定だった事を指摘。

ようやく解放されたアビーは自宅の寝室にて、リラックスしながらもう一度検証を試みる。
テープに録音しながら、思いつくままキーワードを呟く彼女はそのまま眠ってしまった。
彼女の夫もまた心理学者であり、もともと住民の不眠は夫・ウィルの研究テーマでもあったのだ。

・翌日。
スコット夫妻がアビーのもとを訪ねてきた。スコットも不眠に悩まされており、自分自身に何が起きているのか知りたいと言う。再び催眠療法を行うことにアビーは消極的だったが説得され、エイブル博士の立ちあいのもとスコットにも催眠療法を施行。するとスコットは凄まじい叫び声をあげ、またしてもアビーは催眠を中断。

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昨夜の録音テープを再生したアビーは愕然とした。夜中に自分の怖ろしい悲鳴が録音されていたのだ。
だが、彼女にそんな記憶はない。

何度もテープを聞き返しながら、慎重に、しかし確実にアビーは記憶を辿ってゆく。
夜中に何者かが侵入し、ドアの向こうにいた。眠っていたアビーは何者かに引きずられ、連れ去られて・・・。
床に残る爪跡がアビーの記憶を裏付けた。
アビーの肩には、三角形の奇妙な傷跡らしきものの痕跡があった。

アビーはエイリアンアブダクション・・・宇宙人による誘拐・人体実験の可能性を思いつく。
が、確証はない。しかし、亡き夫の書斎にあった1冊の本から、その本の著者に連絡を取る。
著者はアウォロワ・オデュサミ博士。
シュメール文化を研究する言語学者であり、夫もまた彼にコンタクトを取っていた。

アビーの話に興味を持ったアウォロワ博士はノームを訪問。
記録された映像から、意味不明とされてきた言葉が古代シュメール語である事が判明した。
複数の単語の意味が解読され、不気味なメッセージが浮き上がる。

・スコットの妻からアビーに緊急の電話が入った。スコットの様子がおかしいと。
エイブル博士、アウォロワ博士とともにスコット宅に向かうと、彼は酷く怯えながらアビーに伝えることがあると縋り付いてきた。
どうしても恐怖で思い出せないが、絶対に思い出さなければならないことなのだと。
スコットの腕にも、かすかな三角形の痕跡があった。
アビーはスコットを落ち着かせ、浅い催眠をかける事を提案。(記録映像)

催眠時、突然スコットの体はベッドから宙に浮きあがり、謎の言葉を発するがその声はまるで別人だった。
記録映像は乱れ、よく見えない。
さらに、絶叫とともにスコットの体はベッドに落下。彼の体は頸椎がねじ曲げられていた。

記録映像には、ノイスとともに謎の言葉も録音されていた。古代シュメール語である。
懐疑的であったエイブル博士も、目の前で見た現象に言葉を失くす。

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・アビーの催眠療法を受けた1人が自殺し、もう1人は頸椎骨折により全身麻痺となった。
保安官はその治療法に疑問を抱き、彼女を重要参考人として監視下に置く事を決定。
第三者のエイブル博士の証言がなければ彼女の逮捕は免れなかったほど、アビーは窮地に立っていた。

・その夜。アビーの自宅を監視していた警察官は、不思議な現象を目にする。(パトカーの記録映像)
通報を得て保安官が現場に向かうが、記録映像は役に立たず、警察官の証言も「家の上空に光る物体を見た」と言うだけ。
家の中ではアビーが半狂乱になって叫んでいた。盲目のアシュリーがエイリアンにさらわれたと。天井をすり抜けて連れて行かれたと。しかし、保安官は信じない。
娘をどこにやったのか、家中を探すとともに息子のロニーを保護の名目でアビーから引き離した。

・すべてを失ったアビーは、友人のエイブル博士に催眠をかけて自らの記憶を引き出して欲しいと頼む。
当初から同情的だったエイブル博士は、躊躇いながらも彼女の頼みを叶える。
アビーの催眠療法が始まった。(記録映像)

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他の患者同様、錯乱状態に陥り絶叫するアビゲイル・タイラー博士。しかし、奇妙な映像も写りこむ。
他の映像と同じように古代シュメール語も録音されていたが、その内容は全ての人類にかかわる戦慄に満ちた恐ろしいメッセージであり、博士は気を失った。

アビーが目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。側らにはエイブル博士が居る。
ようやく自らがエイリアンアブダクションの被害者になった記憶を取り戻した彼女は、エイブル博士に催眠療法の結果を尋ねた。しかし、エイブル博士の表情は沈んだまま。
保安官が病室に現れ、アビーに同情の意を表すとともに真実を告げると告白。1枚の写真を取りだした。

アビーの夫、ウィルが拳銃自殺を遂げた写真。
保安官は始めからウィルは自殺だったと告げ、すべて心が病んだアビーの妄想だと説明する。

しかしアビーの記憶では、何度も胸を刺されて夫は絶叫しながら死んでいった。
彼女は常に同席していた友人に、一連の現象の目撃証言を頼む。
だが彼もまた、現実を受け入れる事ができない。
エイブル博士は信じられるものがなくなったと告げ、アビーは友人を失った。

「一度壊れた心はそう簡単には元には戻らない」との保安官の言葉通り、アビーの心は拠り所を完全に失った。
写真が真実なら、夫の死の記憶は何なのか。
息子は家族がバラバラになった原因はアビーにあると、成長した現在でも母親を憎んでいる。
そして、娘のアシュリーは行方不明。
記憶の中では、アシュリーはエイリアンに拉致されたはず。
しかし、その記憶は正しいのか?

・ラスト。
涙を流しながら、タイラー博士本人がつぶやく。
アシュリーが何処へ行ったか、生死すら私にはわからない。でも、私にはその記憶しかないのだ、と。
その記憶が本物であろうと偽物であろうと、最早その記憶を信じるより他に彼女に生きる術は残されていないのだった。


映画「ヴィジット」(原題:The Visit)は、2015年公開のアメリカ映画。
「シックス・センス」のM・ナイト・シャラマンが監督・脚本・製作を全て手がけた低予算の映画作品。

ナイト・シャラマンといえば、正直「シックス・センス」以来あまり日本では人気の出にくい監督ではある。
なぜ、この監督がこれほど人気かと言えば、おそらく日本ではあまり馴染みがないがその分アメリカ社会においてはリアルすぎるテーマを取り上げているからではないかと思う。



【ストーリー】
・シングルマザーにし育てられた15歳のベッカと13歳弟タイラーが主人公。
母親は10代で年上の男と駆け落ちし、以来実家には連絡を取っていない。
その夫は、やはりまた別の女性と駆け落ちし、行方知れず。

母親の両親(兄弟の祖父母)はコンタクトを試みるが、彼女は病院の相談員(カウンセラー)をしているという両親に会うつもりは一切ない。
しかし、兄弟2人は興味を持ち、ペンシルバニアの祖父父母の家に遊びに行きたいという。

流行の記録映画を撮りたいという姉と、得意のラップで動画をユーチューブにupしたいという弟。
自分自身が自由奔放に生きてきた母親は、2人が祖父母の元へ行きたいという希望を止めない。
イザとなれば、ネットでスカイプもできるのだ。

・列車に揺られ、兄弟だけで祖父母の元に向かう2人はフレンドリーで行動力に満ちている。
車掌とともに得意のラップでノリノリで歌うタイラー。芸名でネット上にもあげている。
だが、実はタイラーは父親が出て行ってからは極度の潔癖症にも悩まされていた。

・雪深いペンシルバニア。駅についた2人を待っていたのは、大きな旗を振る老夫婦が1組。
これから、1週間の滞在がはじまるのだ。
優しい祖父と、料理が得意な祖母。
早速ベッカは記録映画作りに精を出す。タイラーはカメラ目線を気にしている。
祖父は一言、「地下室はカビだらけなので行かないように」と指示。
すっかり祖父母が気に入った兄弟は、母親へ恋人とのバカンスを勧める。

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・田舎の年寄りの夜は早い。9時30分には寝室へ。
だが、現代っ子たちは中々眠れない。夜中にお腹のすいたベッカは、こっそり台所へ。
「きっとママも、子供の頃にはつまみ食いをしてたはず」
しかし、そこで見たのは部屋を徘徊し、たったまま嘔吐する祖母。驚いたベッカは寝室へ逃げ込む。

・徐々に祖父母の奇行が目立ちはじめる。
家の縁の下で兄弟がふざけて遊んでいると、突然四つんばいの女が襲い掛かってきた。
顔は見えず、凄まじいスピードで追いかけてくる。
パニックになった2人は、慌てて縁の下から飛びだすが、追いかけていたのは祖母だった。
ニッコリと立ち上がり、「楽しかった?」と聞く。

失禁症の祖父は庭の小屋へこっそりと汚れたオムツをため込んでいる。
夜、全裸で壁をひっかく祖母。彼女は認知症なのだと、祖父は説明。夜になると、悪化すると。
祖父は自分のスケジュールを勘違いし、見知らぬ人に殴り掛かる。
「監視するな!見るな!」と。

こんな祖父母でごめんなさい、という祖母。

・パソコンのカメラにはバターがこぼされ擦り付けられ、スカイプの映像は一方通行のみ。
不安がるタイラーは、ベッカの静止もきかず、祖父母の奇妙な行動を訴えた。
母親は困ったように、彼らは老人なのだと答える。
「彼らは異常だ」とリビングに隠しカメラを設置しようとするタイラー。姉のベッカは弟を止めた

・客人が訪ねて来る。
先週の会合をすっぽかした祖父の体調を心配していた。
また、病院でちょっとしたトラブルがあったからゴシップ好きの祖父は話を知りたがるだろうとも。

・しかし、祖父母の異常行動はエルカレートしてゆく。
誰もいない壁に向かって、大声で笑い続ける祖母。
銃口を自分に向けて、茫然としている祖父。

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・また1人の客が訪ねてくる。相談員の夫婦2人にお世話になったからと言って、パイを焼いてきたのだ。
ベッカは、彼女も記録映画に残した。

家族の縁とはなになのか。
ベッカ自身も、父親が去ったトラウマに直面する事を決意。
そして、とうとうベッカもリビングに隠しカメラを置く。

・夜。リビングのカメラに映るのは、ウロウロと歩きまわる祖母の姿。
隠しカメラに気づくと彼女は激高、包丁を持ち出し、2人の部屋へ。
カギのかかった寝室のベッドの上で、兄弟は恐怖で抱き合っていた。

・兄弟は、もう限界だと感じる。
今夜の遅くには母親が帰ってくる。そのまま迎えに来てもらおう。
パソコンのカメラのバターは、何とか取れた。
ふと気づくと、窓の下でパイを持ってきた客人と、祖父母が言い争いをしている。

何かがおかしい。

母親とスカイプが繋がった。今夜、すぐに迎えに来てほしいと頼む。
パソコンを窓際に移動させ、両親の奇妙な行動をスカイプで送る。途端に、母親が青褪めた。
「あれは両親じゃない」「別人だ」と。

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では、いままで暮らしてきた祖父母は誰だったのか。兄弟に恐怖が走った。
すぐに迎えに行く、と母親は立ちあがった。

・できるだけさりげなく、家の外で遊ぶフリをする2人。
夕食後、怪しまれない様キッチンで祖母の手伝いをするベッカ。タイラーが傍でカメラを回す。
「オーブンの中も掃除して」という指示に、ベッカは上半身を入れて掃除していたが、急にオーブンの蓋が閉められ、一瞬ベッカは閉じ込められる。が、すぐに蓋は開き、ベッカはオーブンから飛びだした。
少年時代のトラウマに縛られたままのタイラーは、姉のピンチにも茫然と立ち尽くすのみ。

外の景色を撮って来ると2人がドアを開けると、見覚えのある服を着た人間が木の枝からぶら下がっていた。
パイを持って来てくれた女性の変わり果てた姿を隠すように、祖父がドアを閉めサイコロで家族ゲームを誘う。
ベッカは、カメラのバッテリーが切れそうだから、と理由をつけて席を離れた。
本物の祖父母はどこに?ベッカは、地下室に向かう。

・リビングでは、3人でサイコロゲームをしておいたが、9時30分を過ぎ祖母の様子が激変。
祖父はタイラーにそのまま待つように命令。どうしていいかわからないタイラーは動けない。

・地下室。
カゴの中に捨てられてれていたのは、上品な老夫婦のポートレート。精神病院のロゴが入った作業着。
その下には惨殺された遺体が2体。
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偽の祖父が現れた。
「君達の事は2人から聴いた。最高のもてなしをすると約束した」
ベッカは引きずり出され、狂った偽の祖母の部屋に閉じ込められる。
狂ったように笑いながらベッカに襲い掛かる老女。首を絞められたベッカは反撃し、狂女は気を失った。

・リビング。笑いながらオムツの汚物をタイラーに擦り付ける狂った男。
心因性の潔癖症タイラーは身動きできない。
ベッカが飛びだし、狂男を引き倒す。
弟の手を引き、、家の外へ。

ラスト。
・外。
数台のパトカーと、兄弟の母親が車から飛びだした。
「もう、大丈夫」母親は強く2人を抱きしめるのだった。


だが、本当のラストはエンドロールで流れるタイラーのふざけたラップ動画だろう。
兄弟たちは、家族が壊れたトラウマをついに克服したのだ。

子供達は自分の親には心の傷を隠すもの。
そして、他人になりすます狂人たち。
人生をやり直したい、出来すはずと考えている人間は少なくないだろう。
その気になれば、他人になりすますのは案外簡単なのかもしれない。
誰でもカメラで動画配信できる昨今、ネットで特定の誰かを探す事もまた可能なのだ。


「シェラ・デ・コブレの幽霊」は、原題The Ghost of Sierra de Cobre、単にThe Hauntedと称される事もある。
1964年にアメリカ合衆国で公開予定のホラー映画だったが、あまりにも怖すぎるとの理由で封印されてしまった幻の作品。

もとはテレビシリーズ「The Haunted」から始まった企画であり、45分ほどの中編作品。
だが、その試写会で体調が悪くなる者が続出し、その結果公開に適さずと判断されてしまった。

その一方で、製作の資金を回収するためにアメリカ国外へのフィルムの貸し出しが行われており、日本やヨーロッパ、オーストラリアなどではテレビ放映もされており、お膝元のアメリカのみで禁止という不思議な現象を引き起こした。
日本では、1967年に「日曜洋画劇場」の怪奇特集として「ミイラ男の呪い」と2本立てで放映された。

⁂「日曜洋画劇場」で、未公開作品が放映されたのは本作が最初で最後となる。
言わずもがな全国放送であり、視聴率も20%近い高視聴率だった。

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現在では、フィルムの貸し出し期間は終了し「シェラ・デ・コブレの幽霊」作品自体を観賞することは難しい。
現存するフィルムは世界に2本のみ。
1本は個人所蔵として日本国内にある。

⁂余談ではあるが、2009年には「探偵!ナイトスクープ」に取り上げられたので、覚えておられる方もいるだろう。

だが、60年代当時には考えられなかったほどのホラー映像が、現在ではごく普通に解禁されていることを鑑みては、そろそろ公開されても罰はあたらないのではないかと映画ファンとしては希望を持ちたいところ。
とはいえ相当難しいらしいので、やはり、契約トラブルによるところが大きいのかもしれない。



【ストーリー】

・主人公は建築家でありながら、心霊探偵でもあるネルソン・オライオン。
ある時、彼の元にひとつの依頼が舞い込んだ。

依頼主は盲目の資産家ヘンリー・マルドール。死んだ母親から、毎晩電話が来るという。

調査に出向いたネルソンは、ヘンリーの妻とともに母親の遺体が眠る納骨堂に確認に向かった。
確かに、母親の棺の蓋が開いており、すぐそばに電話機があった。
その時、恐ろしい姿をした女性の霊が現れ、恐怖のあまりヘンリーの妻は気絶してしまった。
ネルソンはヴィヴィアンを自宅に連れ帰る。


・ネルソン宅で気が付いた妻は、ネルソンの自宅に自分の故郷の絵が飾られていることに気が付いた。
その故郷の名は「シェラ・デ・コブレ」(コブレ山)。
実は、その場所で殺された女性の幽霊による殺人事件が起きており、その事件の調査をしたのがネルソンだったのだ。
ヘンリーの妻、ヴィヴィアンはシェラ・デ・コブレ出身。
そして、マンドール家の家政婦もまたシェラ・デ・コブレ出身だった。

やがて、心霊探偵ネルソンは、マンドール家で再び幽霊と対峙することになる・・・・・。


らしい。
これ以上のことは無責任に書き散らすことはできないので、ご想像にお任せするしかない。

だが、当時のアメリカとしては珍しい足(下半身)のない幽霊や、演出や効果音など、あまりにも斬新すぎた手法が受け入れられなかったのではないかと思う。
非常に残念ではあるが、「ナイトスクープ」で知名度が多少上がったことにより、少しずつ物語が知られてきているようである。
日本国内において、何度か上映会も行われている。
ネタバレ感想をアップしている方もいらっしゃるようなので、探してみても面白いかもしれない。






「女優霊」という映画作品がある。
1996年公開の中田秀夫監督の日本のホラー映画であり、中田監督のデビュー作となる。
脚本は高橋洋。

現在でこそジャパニーズホラーの先駆者として評価の高い中田秀夫監督ではあるが、デビュー作である「女優霊」は当時はあまり評価されなかったらしい。

とはいえ、実際に見てみると、非常に恐ろしく現代でも充分に通用する作品であることがわかる。
ジャパニーズホラーの礎となった映画でもあり、後に評価が高まったことを考えると、早すぎた傑作であった可能性もあった。
しかし、その反動か中田・高橋コンビが次に仕掛けたホラー映画はあの世界的な反響を引き起こした「リング」であり、「女優霊」で否定された部分をキッチリとリベンジした演出が「リング」ブームを巻き起こした。
そういった観点から見れば、「女優霊」なくしてジャパニーズホラーの台頭はなかっただろう。

⁂「リング」は原作は鈴木光司の小説。
ストーリーはそのままに、中田・高橋コンビの独自のアレンジ部分は、日常的なものであるが故に意味不明な現象(冒頭の、無人のリビングで突然テレビがつく等)、何気ないからこそ後を引く気持ち悪さ、煽られる不安感等がある。血走った眼球を髪の間からのぞかせ静かに追いつめる貞子の原型は、「女優霊」で派手に笑いつづけながら引きずり込む女性の霊のビジュアルにあるとも言われている。

予告編 (DVD)


また、2010年にはハリウッドでリメイク版が公開されている。

【ストーリー】
・主人公・村井は新人の映画監督。
デビュー作を製作中だが、経費削減のために仲間内に頼んで余ったフィルムをかき集めて撮影している。

意欲を燃やす村井は、この作品で駆け出しの女優・沙織を本格的な女優に押し上げようと考えていた。
一方、事務所の移籍問題で悩んでいたた女優・ひとみは個人的に出演を決定、所属事務所の怒りを買う。

カメラテストのためのフィルムを現像していたところ、途中から全く違う古い映像が再生され始めた。
未現像のフィルムの上に重ねて撮影していたためだ。
村井はその映像に記憶があった。
子供の頃にテレビで見た怖い映画だったような気がする。が、記憶は定かではない。

ある日、ひとみの所属事務所の所長が怒りに任せて乗り込んできた・・・・ところが、彼女は現場の第8スタジオを見て青褪め、ひとみにお守りを渡してそのまま帰って行く。

やがて、撮影時に異変が起きるようになった。


・村井はロケバスの中に白い服を着た女性の姿を見るが、当然そんな人物はいない。
ひとみは1人で練習中に、女性の声を聞く。
カメラトラブルが多発し、他にも誰かの気配を皆、感じ始めていた。

撮影所で長く働く映像技師がいる。
村井は気になっていた例の古い映像に見覚えはないか聞いてみた。
はかばかしい返事はなかったが、打ち切られた古い映画の映像ではないか、との答え。
思い出したら教える約束だったが、技師はその映像を「良くないもの」として村井に無断で焼却してしまった。

村井の中で、テレビでみた映像を必死に思い出そうとするが、ひどく怖かった記憶はあるものの、内容が全く思い出せずすっきりしない。


・一方、撮影は順調に進み、初めは表情の硬かった沙織も現場に慣れ、緊張感も薄れたのがスタッフとも慣れあいしつつあった。村井は気にしつつ、そろそろ釘を刺すべきか考えている。

撮影も佳境に入った頃、撮影中に沙織が天井近くの通路から転落、死亡する事故が起きた。
沙織は、転落前にはふざけて上から手を振っている。調子に乗った彼女が、面白半分で危険個所に登った事は明白だった。

が、村井は沙織の転落前に白い服を着た女性の姿を見たような気がする。
スタッフの中にも、沙織に抱きつく人影を見たという者もいた。

沙織の死は事故として処理された。
映画会社の判断で、撮影は続行された。勿論、沙織役には代役を立てることになったが。

「女優霊」の画像検索結果


・村井はどうしても例の古い映像が気になって仕方がない。
実家の母に連絡を取ると、村井が小学3年の年に、非常にテレビを怖がっていたことが告げられた。
それは昭和46年のこと。
図書館でテレビ欄をしらみつぶしに探していった村井は、その映画番組は実は放送されなかったいう事実を知る。ならば、この記憶はなんだろう?
また、同時にある女優が第8スタジオで転落死したという事実を知る。死んだ沙織と全く同じ状況で。


・撮影は進む。
沙織の代役は吹き替えもこなしている。
ストーリーの中で、ひとみ役の女性が匿っていた男性を殺してしまう場面を、娘役の女優が目撃する場面を撮影中。
ひとみは死んだ沙織の生首の幻を見て絶句する。
途端、ケタケタと沙織の代役の女優が笑い出した。あの古い映像の中の女性と全く同じ笑い方で。


・スタッフの中にも動揺が走っている。
何が起きているのか、釈然としない村井は、それでも今更知らん顔して引き返す事ができない。

放送されなかった番組は、死んだ女優の出演するはずの番組だった。
そのストーリーは、母子家庭の親子が「うちの天井裏には誰かがいる」設定で2人だけの遊びを楽しんでいたが、やがて母親には恋人ができ、息子が邪魔になってゆくという物語・・・・。
母親は本当に天井裏に誰かがいると思い込みはじめるという設定だった。

「女優霊」の画像検索結果

・監督である村井は、怖気づくスタッフ達を横目に深夜まで編集作業を続けていた。
フィルムには、ところどころ不思議なものが写りこんでいるような気がする。

帰り際、ふと撮影所である第8スタジオに寄ってみた。
すると、沙織が転落した天井近くの通路に、先に帰宅したはずのひとみの姿が見える。

慌てて通路にかけ上る村井に、ひとみは手招きした。
・・・その背後には、うっすらと女性らしき人影が見える・・・・。
と、ひとみの姿は消え、髪の長い、白いワンピースを着た女性が村井の前に立っていた。

必死で逃げる村井は、ようやく例の古い映像の内容を思い出していた。
少年が、同じように恐怖に怯えながら、女性から逃げ続ける・・・・。

最後に村井が逃げ込んだのが、見覚えのある一室だった。
この部屋は・・・・・・。
記憶の中の少年が最後に逃げ込んだ場所。
そして。
扉は打ち破られ、禍々しくケタケタと笑う女に、村井は引きずられて行った。


・村井監督は失踪した。
映画は監督不在のまま、笑い声をカットするなど様々な処理の上、無事に完成した。

ひとみを含む仲間スタッフは、心配して村井の部屋を訪ねる。失踪の手がかりがあるかもしれないからだ。
だが、何もない。
何が起きたのか、誰にもわからない。

ラスト。
ふと、洗面所に入ったひとみは人の気配を感じる。が、誰もいない。
だが、洗面台の鏡には女の影が映りこんでいた。

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蛇足ながら。
この作品には心憎いばかりの演出がこれでもかと散りばめられている。
エンドロールにて、天井通路で見下ろしながらケタケタと笑う女の姿など、最後まで気が抜けない。

また、この作品のモチーフに使われた、テレビで見たけれどタイトルの不明なホラー映画というのはアメリカで実際に作られた「シェラ・デ・コブレの幽霊」を元にしている。
実際にアメリカ国内ではあまりの怖さにお蔵入りとなったが、1度だけ日本のテレビで放映されている。
(1967年 日曜洋画劇場)

関連記事
映画「シェラ・デ・コブレの幽霊」

映画監督を含め、クリエイターという人種は常に面白い発想にとりつかれるらしい。
シャレで製作・公開された映画の中で公開された、別のシャレの映画予告が本当に製作され、低予算であるにもかかわらず大ヒットとなった作品がある。


ロバート・ロドリゲスとクエンティン・タランティーノがそれぞれ監督を務める「グラインドハウス」(2本立て)が公開されたのが2007年。

「プラネット・テラー」・・・ロドリゲス監督
「デス・プルーフ」・・・・・タランティーノ監督

ともにメチャクチャで破天荒なB級映画であるが、4本の予告編までノリで製作・発表した中の1本が、
実際に2010年に公開され、パート2、パート3まで現在製作予定となっている事に驚く。


映画「マチェーテ」(Machete)はロドリゲスとイーサン・マニキス監督によるアクション映画であり、悪人面のダニー・トレホの初の主演作となる。
しかし、内容はとことんB級のキワモノ映画にこだわった作品であるので好き嫌いは激しく別れるだろう。
だが、キワモノ扱いだからこそ扱えるネタがちりばめられていることも確かである事も記載しておく。


⁂ネタバレ含む蛇足ながら。
すでに映画内でメキシコからの不法入国ビジネスが取り上げられており、白人主義者の政治家が登場することから、当時から複雑な社会問題化していたことがうかがわれる。


1作目にはロバート・デ・ニーロやスティーヴン・セガール、2作目には、レディーガガ、チャーリー・シーン、メル・ギブソンなどB級映画とは思えないほどの面々が登場するが、ここでは1作目のみをとりあげる。


【以下、閲覧注意】




因みにマチェーテとは山刀であり、日本ではR-15指定映画となった。
製作にタランティーノが参加しているだけあってか、ところどころに日本の時代劇的な小ネタが見て取れる。


【ストーリー】
・強面のコルテスはメキシコの捜査官であり、麻薬捜査のために動いている。
この国の麻薬組織は強大で、警察でさえ無力に近い。上司の言葉に逆らい、捜査を進めたコルテスを待っていたのは、妻と娘の死だった。
麻薬王トーレス(スティーヴン・セガール)と、警察は繋がっていたのだ。
自らも重症を負ったコルテスは姿を消す。

犯罪大国メキシコから自由を求めて、多くのメキシコ人が不法にアメリカに逃げ込もうとしていた。
移民ビジネスは儲かる。もちろん不法だが。
ようやく国境を超えたメキシコ人を待っていたのは残酷な人間狩りだった。そのスナッフビデオもまた、巨万の富を産む。

「マチューテ」の画像検索結果


・数年後。
コルテスは国を捨て、不法移民としてテキサスで日雇い労働者として暮らしていた。
自らをマチェーテと名乗り、身分を証明する者は何もない。国にも帰れず、アメリカ国民にもなれず、行き場のない他のメキシコ人らとともに日々流される毎日。
やがて、マイケルという男が現れコルテスにある上院議員(ロバート・デ・ニーロ)の殺害を依頼する。
そのマクラフリン上院議員こそ、メキシコ人の生命ビジネスで富を築き上げた人物であった。

狙撃ライフルを手に、コルテスは指示された場所に向かう。
マクラフリンは更なる名声を求め、人々に移民の不法を訴え、国境沿いに巨大な塀の建設を提案するべく熱弁をふるっていた。スピーチに熱狂する白人の裕福層達だが、その生活は移民の弱い立場につけ込んだ低賃金・長時間労働といった搾取の上に築き上げられてきた矛盾に気づいていない。

狙いを定めたコルテスは、ふと自分を狙う狙撃手に気づいた。
「?」
その瞬間銃声が響き、檀上の議員が凶弾に倒れる。
「犯人はあそこにいる!」マイケルが現れ、コルテスを指して叫ぶ。
全ては仕組まれた狂言であり、メキシコ人に狙撃された上院議員が、命懸けでメキシコからの不法移民を阻止する政策を打ち出すというパフォーマンスだったのだ。
あらかじめ潜んでいた部下たちがコルテスの口を封じるべく襲い掛かる。傷を負いながらも、再びコルテスは逃げおおせた。

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・アメリカの麻薬捜査官であるリヴェラは、メキシコ人でありながら不法メキシコ人の監視という任務に葛藤していた。
噂では、ルースとう女性が犯罪シンジゲートと繋がっているというが、証拠がない。
コルテスの狙撃事件以来、メキシコ人に対する弾圧は強まり、水面下で何かが起きつつあることにリヴェラは怯えている。

病院含め、行く先々で命を狙われるコルテスは、兄である神父に助けを求めた。信仰を理由に、兄はコルテスを拒絶する。しかし、家族として彼を守ることを決意。

復讐に燃えるコルテスは、マイケルの妻と娘を誘拐した。
マイケルの館でコルテスが発見したもの、それはかつて自分の妻と娘を殺したメキシコの麻薬王トーレスとの癒着を示す証拠だったのだ。


・トーレスから失敗を指摘されたマイケルは、報復として神父であるコルテスの兄を殺害。
一方、コルテスはルースを介してアメリカ社会に溶け込んでいたメキシコ人の巨大ネットワークに接触していた。
何事もなく、平穏に暮らすのが一番。しかし、誰も助けてくれないのであれば、自分達で戦う他にない。

追い詰められたマイケルは、ルースの左目を打ち抜き、ネットワークを率いていた彼女は倒れた。

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・マクラフリン上院議員も、マイケルも、最早ただの小物でしかなくなった。
メキシコ国内で麻薬王として君臨し、移民として逃げ出したその命を後も食い物にしてきたトーレスこそが全ての元凶となる。
メキシコ人ネットワーク自警団率いるコルテスと、政治家及び警察をも操るトーレスとの因縁の対決が始まった。

医者も、看護婦も、シスターでさえ全てのメキシコ人が誇りのために立ち向かう。

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左目を失ったルースも参戦する。

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マイケルが死亡。

リヴェラも、誇りを持ったメキシコ人として捜査を開始した。

激しい銃撃戦のなか、コルテスはトーレスとの一騎打ちに挑む。

「マチューテ」の画像検索結果

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悪人ではあるが自分なりの美意識を持つトーレスは、コルテスには勝てないことを悟り、無様に負ける事よりはと自ら切腹して命を絶つ。

たったひとり、メキシコ人に成り済ますことで逃げおおせたマクラフリンは、今度は自分が国境で射殺され、虫ケラのように死んでいった。


・ラスト。
全てが終わった後、リヴェラはコルテスにグリーンカードを渡す。
コルテスはバイクに乗ったまま、夜の闇の中へと消えてゆくのだった。


繰り返しになるが、この作品はB級映画もいいところであり、エロ・グロ・ツッコミ所満載のネタ映画であり、本気にしてはいけない。

最も、このような映画を大真面目につくりあげてしまうあたりがアメリカの懐の大きさなのかもしれない。

⁂続編にあたる「マチェーテ・キルズ」にはチャーリー・シーンが合衆国大統領役で出演しているが、クレジットには本名のヒスパニック系の名前が公開された。


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 「縞模様のパジャマの少年」(原題:The Boy in the Striped Pyjamas )は2008年に公開された。
イギリス・アメリカの合作映画となる。
実際に撮影が行われたのはハンガリーにて。
映画公開はアメリカが先んじて2008年の9月、次いでイギリスでは11月の公開となった。
(日本公開は翌年の2009年)

原作はジョン・ボインの同名小説。
第二次世界大戦のホロコーストを背景に描く。
映画作品は日本ではPGー12に指定されている。

(⁂PGー12・・・・・12歳未満(小学生以下)の鑑賞には、成人保護者の助言や指導が適当とされる)



この作品では、あえてセリフのない場面がいくつか登場する。
劇中歌「Smile When You Say Good Bye」は、日本語吹き替え版においてもそのまま英語で歌い上げられた。


【あらすじ】
・舞台は第二次世界大戦中のドイツ・ベルリン。
父親の仕事の為にベルリンの郊外へっ引っ越してきた8歳の少年、ブルーノが主人公。
近くにはユダヤ人収容所があったが、収容所の意味をブルーノは知らないでいる。

やがて、ブルーノは鉄条網越しに1人のユダヤ人少年・シュムエルと出会い、話をするようになった。
8歳のシュムエルは、いつも同じ縞模様のパジャマを着ている。

「縞模様のパジャ...」の画像検索結果

・一方、ブルーノの父親は実は厳格なナチ党員であった。
収容所の所長になるために栄転してきたのが、ブルーノの父親だったのだ。

父親の仕事に家族は全く疑問を抱いていない。
母親は子供達のために夫と衝突することはあっても、それ以上の事は感じていない。

ブルーノの姉もブルーノ自身も、まだ幼いごく一般的な子供。
自らの家族とともに幸せにくらしながらも、収容所の人々との差異をそのまま受け入れている。

・ある日、ブルーノの父親は1人の青年将校・コトラー中尉をディナーに招待した。
ディナー上で亡命したコトラー中尉の父親を強く追及したブルーノの父親は怒りがおさまらず、ユダヤ人の使用人を殴りつける。
その後、コトラー中尉は最前線の戦場へと送られる事となる。

・やがて、ブルーノの祖父が亡くなった。
初めて死というものを認識するようになったブルーノだが、相変わらずシュムエルとの奇妙な友情は続いていた。
鉄条網をはさみ、その価値観と住む世界の違いからチグハグな会話ではあるが、確実に少しずつ2人の友情ははぐくまれてゆく。

「縞模様のパジャ...」の画像検索結果

・収容所の煙突からは異臭が立ち上る。
ブルーノは疑問に思うようになり、両親に尋ねるようになった。

母親は収容所で行われている事をまったく知らないまま、子供達の環境を考えて夫を残し転居することを決意する。

・引っ越しの前日。
いつものようにブルーノはシュムエルと話をしていた。

シュムエルの父親は、収容所内で行方が分からなくなっていた。
父親を探したいというシュムエルは、ブルーノに協力を頼む。

ブルーノは収容所の敷地の地面が柔らかく、掘れば自由に出入りできるのでは?と考えた。
抜け出すのではなく、一緒に父親を探してくれと頼むシュムエルに、ブルーノは約束を承諾する。

忍び込みがバレないように、囚人と同じ縞模様のパジャマをシュムエルが用意し、ブルーノはスコップを用意する。2人の秘密の計画が始まった。

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・引っ越しの当日。
ブルーノの家はバタバタとしており、その隙をついて少年は家を抜け出した。

サンドイッチを持参したものの、落としてしまい、それでもシュムエルの待つ鉄条網へと急ぐ。
勝手に物を持つことが許されないシュムエルは、パジャマを重ね着することでこっそりと持ち出していた。

・パジャマに着替え、髪の色をごまかすためにナイトキャップをかぶったブルーノは、生まれて初めて収容所に足を踏み入れた。
その恐ろしさに怖気づくブルーノだったが、「お父さんを一緒に探してくれる約束だろう?」とのシュムエルの言葉に勇気を振り絞る。

シュムエル自身も父親を探すために何をどうしたら良いのかもわからず、その捜索方法も建物を一棟ずつのぞいて探す他に考え付かない。

シュムエルの父親を探すうちに、建物内にある命令が下った。
全員、外に出るようにと。

ブルーノは驚くが、シュムエルは慣れている。
時々、こういうことがあるのだと。
心配はいらないと。

大人達に混ざり「行進」してゆくブルーノとシュムエル。
衰弱した人間はついてゆけず、倒れればその上を他の者が踏み潰してゆく。
体力が衰え、歩くことすらやっとな状態である彼らは、同胞をいわたり避ける力さえ残っていない。

やがて集められたユダヤ人達は全員、服を脱ぎシャワーを浴びるように告げられた。


・ようやく母親はブルーノの不在に気が付いた。
半狂乱となった母親は夫に息子が消えたことを相談。

父親は収容所の職員をも巻き込み、息子の捜索に乗り出す。

そして、収容所の鉄条網の外に脱ぎ捨てられていたブルーノの服を、警察犬が発見した。

・収容所内。
集められた人々はシャワー室に閉じ込められていた。
ブルーノとシュムエルは2人で、手を握り合っていた。

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天井に開けられた穴から、防護マスクをした者が薬物を投入し、蓋が閉じられた。


・ブルーノの父親は半狂乱となって、収容所内を捜索している。
母親は鉄条網の外で、息子の服を抱きしめて号泣している。


・ラスト。

映像はシャワー室の扉のみ。
ゆっくりと明かりが消え・・・・やがて、エンディングロールへと続く。


 


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