原作は小説「We Need to Talk About Kevin」
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自由奔放に生きてきた作家のエヴァは、キャリアの途中で子供を授かった。
ケヴィンと名付けられたその息子は、なぜか幼い頃から母親のエヴァにだけ反抗を繰り返し、心を開こうとしない。
やがてケヴィンは、美しく、賢い、完璧な息子へと成長する。
しかしその裏で、母への反抗心は少しも治まることはなかった。
そして悪魔のような息子は、遂にエヴァのすべてを破壊する事件を起こす―――
少年は残酷な弓を射る [ ティルダ・スウィントン ]
家族だからといって、全員が仲良しとは限らない。
長男ケヴィンの悪意は母親にのみ向けられるため、夫も誰も母親・エヴァの苦悩に気づかない。
いわゆるスクールシューティングもの。
他の家族には微笑みかけ母親のみ睨みつけるケヴィンだが、取り繕うのが上手い為に他の誰も気が付かない。何とか彼の心に触れようとするエヴァを嘲笑うかのように、ケヴィンは「母親のように」自由奔放に人間関係を手玉に取りつづける。
物語の時間軸は現在だが、回想により物語は進む。
街の中で嫌がらせされ、家を汚され、誰ひとり友人のいないエヴァは収監されているケヴィンに面会に行っても互いに無言のまま。
親子であっても、心の交流はなく重苦しい時間だけが過ぎていく。
母親に抱かれると泣き叫ぶ乳児のケヴィン。
エヴァを睨みつけながら、父親には(母親以外の人には)天使のような笑顔を向ける。
ロビン・フッドに夢中になって、おもちゃの弓矢で遊ぶ子供時代のケヴィン。悪魔のような微笑みで、窓越しに母親に弓矢を向ける。
やがて、彼は学校の扉に鍵をかけ逃げ惑う友人たちを次々と射殺してゆく。(父親と妹はすでに殺されている)パニックになった街の人々と警察の前に、犯人として堂々と優雅に姿を現しつつ、やはりケヴィンは母親を嘲笑する。
何が悪かったのか・なにがあったのかわからないエヴァは途方にくれながらも、同じ街に住み続けた。被害者の親族も住むその街に。
自らが起こした大事件にも関わらず他人事のように罪悪感をまったく感じていない息子の身代わりのように
、エヴァは無言で人々の嫌がらせを受け入れる。
やがて刑の執行が始まり、ようやく現実感をもったケヴィンが初めて母親に助けを求めるのだがもう遅い。
犯罪者の息子の母親であるエヴァは、今度は息子の苦悩を思って苦しみながら生きてゆくのだった。