885 :本当にあった怖い名無し:2010/03/31(水) 00:51:57 ID:6JUst0aG0
爺ちゃん最後の正気編
それから5年は経過した頃かな。
地域でお祭りがあった。毎年あるんだけどさ。
そのお祭りのルールはシンプル。
先述した神社に奉納されているあるものを地域の子供が全員で運び、地域を回るというもの。
もともとその神社は○氏のある有名人物とゆかりがあると言われている。
神社名を見れば納得すると思う。
これもググると出てきたので、これ以上詳細は書けません。
しかしその奉納物は扱いも管理も難しい。歴史的にみて保護されるべきものだ。
そこでウチの爺ちゃんがあるものを作り奉納した。
結構前に書き込んだ通り。
それ以降は本当の奉納物は格納したまま、
爺ちゃん作のあるものを子供達が運び地域を回るルールに変更。
最終的に本家がゴール。
そこで爺ちゃんに挨拶をして、みんなでご飯やお菓子を食べるんだ。
子供達はイミフだよね。
車椅子の痴呆老人に挨拶するんだから。
地域の人は昔の爺ちゃんを知ってるから色々と優しい言葉を掛けてくれる。
886 :本当にあった怖い名無し:2010/03/31(水) 00:52:44 ID:6JUst0aG0
爺ちゃんが亡くなる最後の年のお祭り。
何故か俺も手伝いに行っていた。
どのような経緯だったかは覚えていない。
本家で待っていると遠くから祭り囃子と子供達の声が聞こえてくる。
こちらに向かってきている。
俺は車椅子の爺ちゃんを庭にセット、そしてスタンバイ。
お菓子やご飯も用意。
お赤飯と決まっていた。お赤飯を炊いたのは現嫁。
子供達本家に到着。
お菓子にもそんなに喜ばない。なんつーか用意したお菓子が旧いんだろうw
ここ数年でジャンクフードも田舎に増えたし、子供の舌が肥えたんだろうな。
当然お赤飯にも誰も手を付けなかった。
俺はちょっと悲しかったな。現嫁に申し訳無いと思ったし。
保護者の方々が気をつかって
「私頂きます。○○ちゃんも食べなさい。」なんてちょっと変な空気になった。
俺は現嫁に目で合図をして
「いえいえ無理しないで下さい。ママの料理の方がいいよねボクー」
なんて誤摩化していた。
すると気配を感じた。
爺ちゃんが仁王立ちして、歩き出した!
887 :本当にあった怖い名無し:2010/03/31(水) 00:53:40 ID:6JUst0aG0
そして地域の大人達に頭を下げ、
「毎年有り難うございます。」という内容の言葉をかけ握手までしている。
そして一際大きな声で地域の子供達に声を掛けた。
「○○祭りは~の歴史があり、皆の健康をお祈りしているんだよ。
ご飯が食べられる事を○○様に感謝しなさい」
現嫁超ビックリ。驚愕。え?え?って感じ。
俺はあの夏を思い出した。
今思えば神仏どちらを信仰していたのかは不明。神棚もあったしな。
すると子供達は「頂きます」といってお赤飯や煮物を平らげた。
爺ちゃんはニコニコしていた。
それが爺ちゃん最後の正気でした。
爺ちゃん最後の正気編、了。
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