サイケデリック・奇譚

永遠の日常は非日常。

カテゴリ:非日常への扉 > 百物語

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239 : わらび餅 ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 03:23:38.55 ID:AgCPeYID0.net
Big ◆iq3nGde8rU 様 

宿舎のほうと野外炊飯場は電撃柵に囲まれてるんです。
これは熊用のもので、まだ大きな事故は起きていませんが 
その施設から続く山には熊は普通にいるんです。

私らが山に入って作業するときには、熊よけの鈴をつけますし、
宿舎の建物のすぐ近くで、熊が木につけた縄張りのしるしを見たこともあるんです。
それで、宿舎と炊飯場は食べ物をあつかうでしょう。
ですからね、臭いにつられてこないよう柵で囲ったわけです。

電撃は三千ボルトで、これで熊が死ぬということはありません。
やつらも学習しますしね。だんだん自分から近づかないようになりますから、
今ではね、バチッとなるのは年に数回のもんです。

で、その夜はわたしが宿直だったんです。
郊外にあるので、警備保障が来るまで時間がかかる。
それで宿直制度が残ってるんですが、翌日は休みです。
その日はどこの学校も来てなくて、飲酒等はもちろんできませんが、気楽なもんでした。

でね、夜10時の見回りのときでした。
懐中電灯をつけて宿舎の外を歩いていると、バチバチ音がしたんです。
そっちに回っていくと緑色の光が明滅してるのが見えたんで、
何か動物が柵にひかっかって動けなくなり、電撃を浴び続けてるんだろうと思ったんです。
建物の東側でしたね。
光ってる柵の正面にいくと、外側で何が起きてるのかはっきり見えました。
熊・・・でしたけど、
立ち上がって両腕で何かを抱えてたんです。


240 :  わらび餅 ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 03:24:13.81 ID:AgCPeYID0.net 
で、それを電撃柵に押しつけている。
熊自身も感電してるんだろうけど
その抱えてるものを通してだから、たいしたことはないんです。

最初、抱えているものは狸だと思いました。それくらいの大きさでしたから。
ところが、バチッと光るたびに、柵に押しつけられたそいつの顔が見えて・・・

体つきは猿に見えましたが、顔に木の面を被っていたんですよ。
つるつるした材質の無表情なお面です。
面の目の穴から、本来の猿の目がのぞいてて、それは白目になってました。
もう電撃で気絶してたんでしょう。

熊のほうはわたしが来たのに気がついたようで、その生き物を抱えたまま
後じさりするようにし、生き物を口に咥え直して
四つんばいに戻って駆け去っていきました。

ねえ、変な話でしょう。
あの生き物が猿だとして、誰が何のために面をかぶせたんでしょうか?


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206 : わらび餅 ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 01:56:00.36 ID:AgCPeYID0.net 
チッチママ ◆pLru64DMbo

地元に有名なお化けトンネルがあります
峠の急なカーブで事故が多発するそうです

私は以前はバスガイドをしていました
よく運転手さんから、そこのお化け話を聞きました
テレビも取材に来たことがあります

貸切の観光の仕事でした
日帰りで帰りは夜中です
二台での仕事で先輩が2号車、新人の私は1号車です
それぞれのお客様を所定場所まで送り届けます
予定では2号車のが早く本社に帰路するはずでした

バスの規定でお客様を降ろしたバスは車内の電気を消すという決まりがありました
例のお化けトンネル内で2号車とすれ違ったのです
2号車は車内灯を消しており先輩はガイド補助席に座っていました

私「あ、先輩だ。あれ?電気消えてるのに後ろに誰かいますよね?}
運転手「だな?冷蔵庫前の席に女の人が座ってる」


207 : わらび餅 ◆jlKPI7rooQ:2015/08/30(日) 01:57:23.39 ID:AgCPeYID0.net
老人ばかりのお客様だったはずですが、確かに私と運転手さんは
客席の入口側の前の一番前のバス冷蔵庫の席に若い女性が乗っていたのを見ました

運転手「本社に家族が迎えに来る客は本社まで乗せていくから、それだろうな」
私「ですね、予定表にはなかったけど、たまに飛び入り変更ありますし」
とバス同士がすれ違いにクラクションを鳴らしてすれ違いました

こちらの仕事を終えて本社に帰り
バス車内の清掃や報告書・明日の予定確認と
色々していると先輩が明るい声で「おつかれー」と声を掛けてくれました

私「ああ、先輩、あの女性はどうしたんです?車こっちに迎えにきたんですか?」
先輩「あんた何言ってるの?」
話が噛みあいません

そうです
先輩は誰も乗ってなかったと…2号車先輩の運転手もいなかったとの事
なので私と私の運転手さんの見た・いた・いなかったで少し揉めてしまいました

でも気になったんでしょうね
次の日に2号車担当の運転手さんが塩を持ち込んでいました

それを見た私に
「まー仕事柄よくある事だしなぁ、いちいち気にしてたら仕方ないけど粗末にできんわな」
と苦笑いしていました

仕事関係でよく仏閣や訳あり旅館にも行くので
ちょっと怖い話は割と体感できる職場だったかも知れません


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278 : わらび餅◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 04:18:31.35 ID:AgCPeYID0.net 
雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM 様 

知り合いの話。

彼女が夏祭りに出かけたある夜のこと。
屋台を冷やかしていると「ママ」と呼ぶ声が耳に届いた。
娘の声だ。彼女を呼んでいる。
慌てて姿を探すも、人混みのどこにも見つからない。

人がいない寂しい方へ進む内に、友人たちと出会う。
「娘を探しているの! 探すの手伝って!」
とパニックになりながら伝えると、不思議そうな顔で聞き返された。
「誰の娘のこと? あなた、まだ結婚していなかったよね?」

そこで我に返る。
自分には彼氏も旦那もいない。未婚だし、子供など当然産んだこともない。
そもそも、誰と一緒に祭りへ来たのか、それさえも思い出せない。

 




279 : わらび餅◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 04:19:45.16 ID:AgCPeYID0.net
別のパニックに襲われた彼女を見て友人たちは只事ではないと感じたらしい。
彼女を落ち着かせようとする者、彼女の家へ連絡する者に別れ、場は騒然とした。

皆に送られて家へ帰ったのだが、そこで母親から奇妙なことを聞かされた。
「あれ貴女、一緒に出かけた男性と女の子はどうしたの?
え、誰のことかって? 家の前を三人で並んで歩いていたじゃない。
”知り合いなの?”って声を掛けても振り返らないから、そっとしといたんだけど」

すると父親がこれまたおかしなことを言う。
「わしが車で帰ってきた時、お前と擦れ違ったんだが、気がつかなかったみたいだな。
でもお前、どう見ても一人だったんだが」

家族間で言い争いになりかけたが、友人たちが取りなしてくれてその場は治まった。
その後は、特におかしなことも起こっていないそうだ。

しかし、今でも気になって仕方がないのだという。
あれは一体、誰の声だったのか。
彼女はあれ以来、夏祭りがどうにも恐ろしく感じられるのだといっていた。



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177 : 猫虫 ◆5G/PPtnDVU :2015/08/30(日) 01:06:13.24 ID:slHZZ5U50.net 
俺の従兄は生霊をやたらと見てしまう体質だ。
死者の霊を見る事は稀だが、生霊はほぼ毎日見てしまうのだという。

従兄はたいてい、生霊と普通の人間の見分けがほとんどつかない。
呼び出されて一人で来た俺にも「おっ、彼女連れてきたの?」と言ってきた。
俺の斜め後ろに女性がいるのだという。
従兄が説明した風貌に俺は非常に心当たりがあったのでその時は心底肝を冷やした。
数日前、彼女と別れて自分と付き合え
ダメなら二股でもいいから付き合えと無茶を言ってきた女性だ。
勿論、従兄とは何の面識もない女性だし彼女についての話を俺がした事もない。

そんな従兄と飲みに行った帰りの事だ。
住宅街の細い路地を並んで歩いていると前から車が走ってきた。
歩道のない細い道だったので
俺と従兄は道路脇の塀にくっついて車が通り過ぎるのを待った。
スピードを落として横を通り過ぎる派手な赤のアルファロメオを横目で見遣ると
チャラそうなカップルが乗っていた。

無事に通り過ぎたので歩き出そうとした瞬間
前方にいた従兄が塀に手をついて座り込んだ。

「なんだよ、酔った?」
吐きそうになっているのかと思い
隣にしゃがんで従兄の顔を覗き込むと従兄は真っ青な顔で口元を押さえていた。
「…ヤバイの見た」
「見たって、何を?」
「生霊」

もはや生霊を見る事が慣れっこになっているはずの従兄が震えている。
これは余程のものを見たのだろう。




178 : 猫虫 ◆5G/PPtnDVU:2015/08/30(日) 01:11:27.67 ID:slHZZ5U50.net 
「ちょっと待ってね」と言って従兄は二三回深呼吸をしてから立ち上がり
「よし」と言ってから何事もなかったかのように歩き始めた。

慌てて後を追いながら何を見たのか問いただすと
従兄はあまり言いたくなさそうな様子ながらもぽつりぽつりと話してくれた。

「車の屋根にね、女が乗ってたんだよ。
白っぽいヒラヒラした半袖着て、茶色いスカート穿いた若いコ。
それが髪振り乱しながら、運転席の上を包丁でメッタ刺しにしてんの。ありゃマズイよ」

従兄曰く、生霊はたいてい手ぶらなのだそうだ。
それが包丁なんか持って車をメッタ刺しにしているというのは
ただの執着を超えて明確な殺意を抱いている証拠だという。

「お前も早く後ろのコなんとかした方がいいと思うよ。今はまだ手ぶらだけどさ」
そう言われ、俺は改めて肝を冷やした。


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163 : 猫虫 ◆5G/PPtnDVU :2015/08/30(日) 00:40:36.06 ID:slHZZ5U50.net
俺のじいちゃんは漁師だった。
10歳の時から船に乗り家族の反対を押し切って80歳まで現役を続けた生粋の海の男だ。
これはそんなじいちゃんから聞いた話だ。

夜に沖へ船を出していると奇妙な事象に出くわすのはそう珍しくもない事なのだそうだ。
霊と思しきものや人魂のようなものばかりではなく
もっと謎めいたものも多く見たという。
それらは恐らく神や妖怪に分類されるものと思われるが
そういったものについてじいちゃんは多くを語らなかった。
一度その理由を尋ねたら「人が触れちゃなんねぇ領域ってもんがあるんだ」と言っていた。
ちなみに、じいちゃん基準で人が触れてもいい領域の
端っこにあたるのが幽霊だったらしく海で見た霊のことはたまに話してくれた。

じいちゃん曰く、霊というものは光を求めるものなのだそうだ。
霊といえば夜に出るという概念があるから闇の方が好きそうに思えるが
霊にとって光は生者の世界の象徴であり
そちらに戻りたいという思いが彼らを光に惹き付けるのだろう。
特に海で死んだ者は真っ暗な海に取り残されている事がつらくて仕方ない。
そんなわけでじいちゃんのイカ釣り漁船にはそういった霊が時折寄ってきたらしい。

いつの間にか甲板に乗ってきていたり
引き揚げてくれとばかりに海の中から手を伸ばしてくる者もあったそうだ。

といっても、じいちゃんはそこまで霊感が強い訳ではない。
顔かたちまではっきり見えるようなことはほとんどなく
霊の声も聞こえないから話もできない。
半端に相手をすると厄介な事になるので基本的にじいちゃんは霊に対して無関心を貫いていた。
海中から助けを求める霊は気の毒だが無視し船に乗ってきた霊にも気付かないふりをした。
そうする事がお互いのためなのだそうだ。




164 : 猫虫 ◆5G/PPtnDVU :2015/08/30(日) 00:43:42.82 ID:slHZZ5U50.net 
ある時、じいちゃんの仲間が海で事故に遭った。
同じ船に乗っていた者がすぐに引き揚げて病院へ運んだのだが
残念ながら助からなかった。

頼れる兄貴分だったその漁師の死を悼み
多くの仲間達が彼の葬儀に集まった。
悲しみを抱えながらも漁師達は翌朝からまた海へと出ていった。

葬儀から半年ほど経った頃。
沖に停めた船の中でじいちゃんがあぐらをかいて作業をしていると
突然猛烈な眠気が訪れた。
寝ちゃいかんと思いながらも瞼が重くて仕方ない。

必死で睡魔と戦っていると背後に誰かが立っている気配がした。
眠くて振り返れないじいちゃんの頭の上から
テツ、とじいちゃんのあだ名を呼ぶ聞き覚えのある声が降ってきた。

「テツ、悪いがちょっと陸まで乗っけてくれな。俺、足がなくて戻れんから」
夢うつつのじいちゃんは声の主である漁師が亡くなった事を忘れていた。
「ああ、兄貴か…どうした?」
じいちゃんの問いに背後の人物は答えず「悪いな、頼むよ」と返した。
ああ、分かった…と呟いた時、じいちゃんは唐突に覚醒した。

辺りを見回すが、気配はすっかり掻き消えている。
それでもじいちゃんは兄貴の霊がこの船に乗っていると確信し
同じ船に乗っている仲間達に今見た夢を話した。
その場所が偶然にも兄貴の落ちた海域だった事もあり
仲間達はじいちゃんの話に納得するとすぐに漁を打ち切って港へと戻ったのだそうだ。
じいちゃんが『無関心』の鉄則を破ったのは
それが最初で最後だった。

じいちゃんによれば
人は命を落とした場所に魂まで落っことしてきてしまう事があるらしい。
そうなると体は埋葬されても魂はそこから帰れず
誰かに連れ帰ってもらう必要があるのだろう。

「幽霊に足がないってのは上手いこと言ったもんだな。
足(交通手段)がなきゃ、生きてるもんでも遠くからは帰れんもんなぁ。
タクシーやらバスやらに出る幽霊ってのも案外そんな理由なのかもしれんね。
俺の船は幽霊のタクシー代わりだったわけだ」
そう言って笑った後
じいちゃんは海の方を向いて深いため息をついた。

「死ぬ瞬間まで俺は海の上にいたい」と言って
なかなか漁師をやめずに家族を困らせたじいちゃんは
海に魂を落っことした彼らの事を少し羨んでいるようにも見えた。



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158 : わらび餅 ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 00:31:46.60 ID:AgCPeYID0.net 
まんじゅう ◆PP2Ugyol5s 様 

同僚の父Kさんは山歩きが趣味で
よく休日を利用し関東近郊の山へ赴いていたそうです。
数年前ひょんな事からカメラに凝り始めたKさんは
山歩きのついでに四季折々の自然をカメラに納めるようになりました。

そんなある日の事。
いつもの様にトレッキングを楽しんでいたKさんは
山道から少し外れた場所に咲いた一輪の野花にカメラを構えました。
何枚か撮影してみたもののなかなか思うようなアングルで写真が撮れません。
焦れったくなったKさんは思わず身を乗り出し
その拍子に足を滑らせ数メートル下の斜面に滑落してしまいました。

幸い怪我もなくカメラも無事です。
「しまったなぁ。しかし夏も終わりとはいえまだまだ暑いし
この山は気軽なトレッキングが楽しめる初心者向けの山。
遭難した話も聞かないし、まぁ大丈夫だろう」
そう楽観的に考えたKさんは一旦休憩し
山道に戻ろうとめぼしい場所に向けて道なき道を進みました。

しかし何の手入れもされていない山の中を進むのは難しいものです。
ましてやKさんは山歩きが趣味とはいえ藪漕ぎの経験などありません。
ようやく山道らしきものに行き着いた頃には
日は暮れかかり辺りには夜の気配が漂い始めていました。

Kさんは心細く不安になる気持ちを何とか奮い立たせ
リュックの中に入れていた携帯用ライトで先を照らしてみました。
山道は随分荒れており長い間人が通った形跡は見当たりません。
野草が繁茂し大きな石が転がる道を見失わないようにKさんは必死で歩きました。

どれくらい歩いたでしょう。
同じ様な風景が続く山の中、ふとKさんは自分の後方に何かがいる事に気づきました。
草を踏みしだく音、時折石にあたる爪の「チャッ」という音。
微かに聞こえる息遣い。
狸か狐か。それとも何か他の野生動物でしょうか。
ここいらに熊が出る話は聞きませんがKさんはライトを向けて確認してみました。

薄ぼんやりした明かりに照らされた後ろには見た感じ生き物はおらず
荒れた山道しか見当たりません。
隠れたか逃げたか、まぁ良い先を急がなければ。
Kさんは明かりを前に戻し歩き続けました。

 



159 : わらび餅 ◆jlKPI7rooQ:2015/08/30(日) 00:32:45.18 ID:AgCPeYID0.net
一向に麓に近づく雰囲気がなく暗い山道を足を取られながら進むうち
Kさんの中で少しづつ焦りと恐怖が膨らんできます。
後ろに先程と同じ気配をまた感じましたが
好奇心旺盛な狐か何かが自分を窺っているのだろう、そう思ったKさんは相手にしませんでした。

「疲れた…」
滴る汗を拭い水分を補給しようと立ち止まったKさんですが
ふいに嫌な事に気付きました。
後方の気配は未だ変わらず「ザサッ、チャッ…チッ」という足音に
「…ハッ、ハッ…フーっ」という吐息。
明確にKさんの後をつけてきている意思を感じます。
更に、最初に感じたよりも、かなり大きい。
足音の重さや雰囲気で姿を確認せずとも人は大体の大きさを察することが出来ます。
少なくとも大型犬くらいはある、そう感じたKさんは
追いつかれる事に恐怖を感じ歩みを早めました。

「チッ、チャッ…ハッ、ハッ…」
これだけの大きさのある野生動物。
Kさんはこの音の主に当てはまりそうな動物を片っ端から考えましたが思い当たりません。
恐怖で散漫になる思考に、じわりと嫌な、嫌なイメージがKさんの脳裏に浮かびました。

「ガサッ、チャッ…チャッ」
石にあたる爪は、マニキュアの剥げたボロボロの女の爪。
「…フーッ、ハッハッハッ…」
ざんばら髪の合間から覗く、裂けたような大きな口から漏れる荒い吐息。

そんな訳ない!そんな訳ない!
自分はアイツを見ていないのだからこれは疲労と恐怖が見せる何かだ!!
そう必死に自分に言い聞かせるKさんですが
何故か後ろにいるのはアレに違いないと確信していました。
まるで自分の頭の後ろに目の様な器官があって
後ろの映像をKさんの脳内に流し込んでいる。
そんな感覚でした。


160 : わらび餅 ◆jlKPI7rooQ:2015/08/30(日) 00:33:36.13 ID:AgCPeYID0.net
ボロボロの爪の赤いマニキュア。泥だらけの汚い長い髪。
四つん這いの体もどこかおかしく、ギクシャクと部分がどこか欠損しているよう。

違う!違う!
恐怖のあまり走り出したKさんですが
歩き詰めの体は限界でのろのろと歩く速度でしか進めません。
太ももや脹ら脛がビキビキと痙攣しているのが分かりました。

「…、…◯◯ぁ◯ー…」
ゆっくりとですが確実に後ろの気配はKさんに近づき
吐息に混じって何事か呟きが聞こえてきます。
痛いほど乾いた喉から嗚咽が漏れ視界が滲んでいるのに
Kさんは自分が泣いているのに気づきました。

走って逃げ出したいのに今にも止まってしまいそうな身体。
もう無理かもしれない。後ろを振り返って終わりにしてしまいたい。
Kさんがそんな事を思った時
鬱蒼とした木々の先にぼんやりとした明かりと人の気配がしました。

「おーい!…おーい!誰かっ」
弱々しい嗄れた声でしたが、Kさんの助けを呼ぶ声は幸いにも聞き届けられました。
Kさんに気づいた1人がライト片手に
木々の合間を縫ってこちらに向かって来てくれます。
どうやら壮年の男性のようでした。


161 :わらび餅 ◆jlKPI7rooQ:2015/08/30(日) 00:34:44.19 ID:AgCPeYID0.net 
「どうしましたー?」大丈夫ですか?
そう言おうとしたであろう相手はライトに照らされたKさんを見て絶句しました。
相手の恐怖に固まった顔と視線から
「あぁ、後ろのアレを見たなこの人…」そう思ったのを最後に
Kさんは気を失ってしまいました。

Kさんが意識を取り戻した時、既に時刻は明け方でした。
痛む体を引きずって寝かされていたテントから出ると、そこは見知ったキャンプ場で
どうやらKさんはここの裏手に辿り着き倒れたところを介抱されていたようです。

心配していた周りの人が車で病院まで送ってくれる事になり
ほっとしたKさんですが
皆の中に1人だけKさんと視線を合わさず遠巻きにしている人がいます。
昨夜、Kさんを発見してくれた、あの男性でした。

爽やかな早朝の光の中ではあの夜の事が嘘の様に感じられ
Kさんは一言お礼を言おうとその男性に近づきました。

口を開きかけたKさんは、しかしその男性に遮られ
「あのね。あなたもう山に入らないほうが良いと思うよ。私ももう行くことはないと思う」

そう一方的に告げられたそうです。



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58 : わらび餅◆jlKPI7rooQ :2015/08/29(土) 21:07:33.47 ID:uO4SmEpe0.net 
コワリ ◆ityfMlfdbA 様 

高校生の時プリクラを撮るのが好きな子と仲が良かった。
私とも沢山一緒に撮ったけど
他の子と遊んだ時も必ずと言っていいほど撮っていたので
月曜の朝なんかは学校に到着するやいなや真っ先に
彼女から新しく撮ったプリクラを何種類かもらうっていうのが挨拶みたいになっていた。

彼女(名前をPとします)には高校で離れてしまった幼馴染のCがいた。
私とCは直接面識は無いものの
PはCとよく一緒に遊びに行き撮ったプリクラも私にくれるため
私のプリクラ帳の結構な割合をPとCのペアが占めていた。

さて、そんな平和な日常を過ごしていたある朝。
いつも通りPはCと撮ったプリクラを私含む仲良しメンバーと交換していたんだけど
1人が妙な事に気が付いた。
「あれ、なんでこのプリクラだけ3人なの?」

プリクラは一枚のシートに何種類かの小さな写真がついてくる。
問題のプリクラは、同じシートの他のものはPとCの二人っきりなのに対し
一種類だけ三人で写っている…ように見えるのだ。

いや、ぱっと見では2人なのだが、PとCが並んだ肩の間から短い髪の毛が生えていて
それを辿ると頭の形をしており生え際とおでこの部分のような部分が確認できた。
Pは「肩にかかった私の髪だよ~」と笑っていた。

しかし、見れば見るほどPの頭部からの髪の流れとは全く別物にしか見えない。
当時よくプリクラを撮っていた私たちは機種もよく知っていた。
細かい落書きはできないしこんなリアルなホラースタンプだって無い。
それに、撮影スペースだって知らない人がこっそり紛れ込んで
イタズラできるようなものじゃない。
何よりPは超が付くほどの人見知りなので他人と撮るなんてありえないのだ。
「これ、心霊写真じゃね?」




59 : わらび餅◆jlKPI7rooQ :2015/08/29(土) 21:09:05.17 ID:uO4SmEpe0.net
心霊写真もとい心霊プリクラをめぐる騒ぎを聞きつけた
他のクラスメイトも集まってきてちょっと騒然となったけど
もう朝のHRが始まる時間だったのでチャイムと共にそこで騒ぎは収束した。

しかし気になって朝のHR中自分のプリクラ帳とにらめっこをしていた私は
もう一つの発見をしてしまった。
それはその当時からさらに遡ること2、3ヶ月前にPがみんなに渡していたプリクラだった。
それも例によってPとCのものだったがPの指が9本あったのだ。

ここで私は別の考えに至る。
(ひょっとして気付かないだけでプリクラって近くのものが滲んだり増えたりして
心霊写真みたいに撮れちゃう現象がよくあるのかも?)
そう思い、自分の持ってる数百枚のプリクラが収められたプリクラ帳を頭から全部見返した。
しかしその推理とは裏腹に…不思議な写りをしたプリクラはこの2枚だけしか存在しなかった。

Pは怖がってる様子ないし
私たちへのドッキリなのか?
それともCがホラー好きでPを怖がらせるためにやったのか?
HRが終わり、私たちの中から様々な憶測が出たものの
結局本物の『心霊プリクラ』ではないかいう結論に落ち着いた。

よくある怖い話だとこの後そのプリクラ機を皆で一緒に検証しそうなものだが 
グループの人々はクールでオカルト好きな人も居なかったので
『そういえばPって心霊写真みたいなプリクラとってたよね~』みたいな話題が
笑い話として出る程度で、その後深い追求はされなかった。


60 :  わらび餅◆jlKPI7rooQ :2015/08/29(土) 21:10:32.04 ID:uO4SmEpe0.net
それから月日は流れ、10年ほど経った去年の春。Pは結婚し第一子を出産した。
私は出産祝いも兼ねて当時の友人達とPを訪ねていた。
そこでふと高校時代の心霊プリクラの話題になったのだ。

改めて聞いてみたが、やはり撮ろうと思って撮ったトリックではなかったらしい。
「もし撮ろうと思って撮ったものなら、皆と撮る時にもやりまくったよ~!」と。

アレがなんだったのか改めて見てみたいねーという話になり
Pは当時のプリクラ帳を持ってきてくれた。
懐かしいプリクラが沢山あって話が弾んだ。
そして呆気なくプリクラ帳は最後のページまで来てしまった。

盛り上がりすぎて見過ごしてしまったのか?
もう一度、最初から。
今度は当時の話題に逸れることなく純粋にPとCの撮った奇妙なプリクラを探す。
しかし、やはり見当たらない。

Pに確認してみると
「記憶にはないし、自分はそんなことしないと思うけど…
ひょっとしたら当時気持ち悪くなって捨ててしまったのかもしれない」と言っていた。
まあ、当事者はそうだよね。という話になり
心霊プリクラの話はそこまでで、後は違う話題になっていった。


61 :  わらび餅◆jlKPI7rooQ :2015/08/29(土) 21:12:25.80 ID:uO4SmEpe0.net 
それから。Pの家から帰宅し、私も心霊プリクラを探してみた。
しかし、見つけられなかった。
私のプリクラ帳からも、消えていたのだ。

年代や顔ぶれからこの時代のプリクラ帳で間違いない。
大学生になってから、例の心霊プリクラを複数の友人に見せた事もある。
びっしりと貼られたシール台紙に後から剥がしたような隙間は無く
ページごと破られた形跡だって無い。
まるで初めから存在しなかったかのようだった。

しかもその消失現象は私とPの身だけに起こったのではない。
Pの出産祝いに一緒に行ったた内の1人がプリクラ帳を確認したが
やはり見つけられなかったというのだ。
「見つけたら写メを撮ってグループLINEに載せようと思ったのに…」
と悔しそうにコメントしていた。
そのコメントを受け「実家にプリクラ帳置いているから帰省したら探してみる!」と
言っている友人が他にもいるが
…個人的にはもはや、見つかってほしいような欲しくないような。
背中が薄ら寒い気分だ。

ちなみにその『心霊プリクラ消失騒動』から1年以上経過しているが
見つかったという報告は今のところ無い。


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296 : わらび餅◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 04:42:05.08 ID:AgCPeYID0.net 
こげ ◆b9EIe80Jrg.5

私はサバイバルゲームのチームに所属しています。
サバイバルゲーム中、変なモノを見てしまうことが良くあります。
昼間も見ますが…数はやっぱり夜の方が圧倒的です。

管理されていない雑草や樹木が伸び放題の公園で春先に夜戦をやったとき、
元は芝生だったと思われる草むらを挟んで決戦の場となったところを
ふらふらと歩く人影が横切っていきました。
人がいると分かった時点で
即座にゲームを中断してその人影の動向を見守っていたのですが…

背を弓のように反らせてケタケタと笑い始めたんです。もう、狂ったように大声をあげて…
もしかしたら気の毒な人かもしれないと
チームリーダーが立ち上がって草むらに一歩踏み入れた途端
その場へ仰向けで倒れこむようにして…
そして、消えてしまいました。
BB弾がヒットして安全地帯で待機している人以外が見守っている中で…

夏の夜に同じ公園でのことです。
ゲームを始めてから30分足らずで雷雨になってしまい
駐車場前の東屋に避難して雨が止むのを待っていました。
叩きつけてくるような雨に雷鳴と雷光がひっきりなしで…

そこでメンバーの1人が雨の中、誰かいるぞと
元は芝生だったと思われる草むらを指をさしました。
私には全然、見えません。
誰かが警察や軍の特殊部隊が使っている強力な懐中電灯で
草むらを照らしてみましたが見つかりません。
雷が光った時だけ見えると、指をさした人は言いました。

十数秒後、目に焼き付き現象が起こるほどの眩い白光で周囲が塗りつぶされ
草むらの中ほどで、ネガとポジが反転したような真っ黒い人が立っているのが本当に見えました。
全部で9人います。
さっきはもっと遠くにいたと
最初に見た人が雷鳴に声がかき消されない為か、大声で叫びます。
それからまた、辺りが白く染まるほどの雷光…

草むらを四分の三ほど進んだところに黒い9人がいます。
確かに、稲光を放つ度に近づいてきています。




297 : わらび餅◆jlKPI7rooQ:2015/08/30(日) 04:43:14.64 ID:AgCPeYID0.net 
次でたぶん私達がいる東屋へかなり近づいてきている筈です。

そして、雷光が周囲を覆い尽くして
草むらの端にずぶ濡れで立つ9人の女性を浮かび上がらせました。
この世のものとは思えない程の酷い表情をしてます。
彼女等が草むらの端まで到達した姿を浮かび上がらせた後、雷雨はぴたりと止みました。

彼岸を過ぎた秋の夜、河川敷でゲームを行っていたときのことです。
川辺に近い枯れ草の後ろでVSR-10を構えてアンブッシュしている時
子供のはしゃぎ声を聞いた気がしました。
気のせいだと思うことにして30mmチューブのスコープへ目を戻します。
すると、また声が…
1人とかじゃなくて複数で…楽しく遊んでいるような声…
確かに聞きました。
私の背後から…

射撃体勢を一時中断して振り返ってみました。
おかしなところは別に…
いえ、なんだか後の方の川面が明るくなって…枯れた水草もほんのり明るく…
それを見た途端に悪寒が…ゾクゾクと背筋が…

思わずライフルを抱いて場所移動を行おうとしたところで
チームリーダーが突然、現れ…今夜はこれでゲームは中止だと宣言しました。
あれが出たからだと川面を指さします。

明かりが川を下ってきます。まるで月が水面に映っているみたいに…
そこでまた、子供達のはしゃく声が聞こえてきました。
今度はかなり大きくはっきりと…

丸い明かりが私とリーダーの目の前を通り過ぎていきます。
黄色く光る輪の中で小さな髑髏が幾つも浮き沈みを繰り返してました。
溺れて助けを求めているみたいに見えます。
はしゃぎ声じゃなくて、悲鳴でした。

遥か昔に川で死んだ子供が子供を呼び…同じように溺死させる
…それがまた、子供を呼んで溺死させる…
連綿と続く死の鎖がアレなのだと…
アレを見てもゲームを続けると、お持ち帰りの確率が高くなるんだとか


298 : わらび餅◆jlKPI7rooQ:2015/08/30(日) 04:44:19.66 ID:AgCPeYID0.net 
廃校となった小学校で凍えるような寒い冬の晩にゲームをしたとき 
何故かゲーム開始早々に激しい射撃音が聞こえてきました。

2チームに分かれて旗の取り合いをする…俗に言うフラッグ戦なので…
私達の方はスタート地点からほとんど動いていないというのに…
相手が何か策を弄しているのかも…
でも、自分達がいる場所を教えているようなものだし…
何人かが突出し、釣られてホイホイ寄ってきた私達を待ち伏せする作戦でしょうか?

でも、射撃音なんですが…あちらの全員で行っているみたいで…
只事じゃないと、それで全員で向かったんです。
一応、警戒はしながら…

相手チームは全員、スタート地点の部屋から一歩も出ずに…
運動場に面した窓に向かって狂ったように射撃してました。
話しかけられる雰囲気じゃありませんでした。

結局、彼等は弾切れになっても引金から指を離さず撃ち続けてて…
私達のチームのリーダーが大きな拍手を打ったんです。
それで、相手チームの人達は我に返り…

窓の外に、鈴なりとなった子供がいて、部屋の中を覗き込んでたそうです。
というか、窓を抜けて中へ侵入しようとしていたみたいだったと…

あるチームのお話なのですが、河川敷で夜戦をしていた時…
最終ゲームを終えたらメンバーの一人がフィールド中央にある木へ
パラコードを巻き付け… 首を吊って亡くなられていたそうです。

昔からその木でかなりの数の方が自殺されているそうで
首吊りの木と呼ばれているのだとか…
ゲーム中にいつ、その方がいなくなったか覚えている人は誰もいなかったそうです。

私は心霊スポット探検を趣味としていまして
その話を知って見に行ってみたいと言ったら…
その木を見に行く為にはサバイバルゲームフィールドの中にあるのだから
サバイバルゲームをやらない人間には絶対に見せてやらないという掟があるという
考えてみればすぐ分かる嘘に引っ掛かってサバイバルゲームを始めました。



http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1440842362/

247 : わらび餅 ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 03:41:47.26 ID:AgCPeYID0.net 
チッチママ ◆pLru64DMbo
 
結婚時代の話です
夫の実家は私の田舎よりさらに田舎(高速道路もまだでした)
けれど古い歴史だけはある山奥でした
そんな夫の実家で初めての正月を迎えた時の話です

夫の家は先祖が武士だったらしく、姫をかばって山奥に隠れ住んだとの事
その末裔だとかいう話を上の空で聞いていました
夫の祖母が「生まれた村に私の親神様がある、あんたを新しい嫁として紹介したい」との事で
夫も初めて廃村である祖母の生まれ故郷に行くことになりました

確か午前中に出発しました
地図のうえでは隣の村で、地図明記はただの山地で
祖母の記憶だけを頼りに車も通れるのか?という獣道(舗装されていない)を
一時間もかけてグルグルと向かいました
途中で霧のようなのも出てきて視界も悪くなり崖も多くて危険でした
印象的だったのは、奥の山のところどころに赤い布きれが巻かれていました

人気もなく生き物の気配がしない場所に突然と崩れかけた木造の建物が見えました
数はそんなに多くなかったと思います、ボロボロの家
見た時に「えっ?ここに降りるの?」と怖くなってしまいました

 



248 :わらび餅 ◆jlKPI7rooQ:2015/08/30(日) 03:42:33.02 ID:AgCPeYID0.net 
昼過ぎくらいなのに霧と青い光で気味悪く、まるでホラー映画みたいだと思いました
人はいないのに人が住んでいた感じで
昭和より古いというか、家具とかも割れた窓から見えました
戸口も横開きの木の板で土間とかまども見えたのですが
かまどに木がつっこまれたまんまでした
祖母いわく国の命令で手荷物だけしか持って行けなかったそうです

私が「ここに降りるの?」とこわごわと聞くと
祖母は「降りちゃなんねえ降りなくていい」と静かに言い、ゆっくりとそこは通り過ぎました
なんというか落ち着かない雰囲気で帰れるのか?と冷や汗が出ましたが
祖母の故郷だし失礼な事を言ったら可哀想と思って黙っていました
少し一本道をそのまま奥に進むと
ボロボロの白い神社でよくみる白い紙が沢山ついた縄が見えてきました

でも白い紙もボロボロで黄色がかかっており、奥に大きな木が見えました
とても大きな木で手前に小さな赤い鳥居と賽銭箱が見えましたが
「これ行っちゃダメだ」と
瞬間的に口から出てしまいました

車がそこで突然エンジンが切れてしまい
私は祖母の親神様はアレだ
祖母は車から降りて行くのだろうか?と恐る恐る祖母を見ましたが
なぜか祖母は悲しげに「もういい」と言いました

霧となぜか道が雨水を含んだようにドロドロで見えにくかったのですが
白い縄の奥に木の橋がかかっておりその橋は潰れていました
とりあえず帰ろうと何回かエンジンをかけて
やっとかかり、Uターンをするために
バックでそのまま廃村集落の辺りまで戻りました

その間は私は助手席ですが前方の親神様の木の方向を見るのが嫌で
夫と共に後ろを見ていました
廃村は少しくぼんだ土地にあったので
その入り口の下り坂に少し車を入れてやっと方向転換ができました

さぁ帰るぞと私は後ろを振り返ると、
誰もいないはずなのに壊れた家の一軒から
色鮮やかな着物の帯のようなのがヒラヒラと舞っていました

「え?何あれ?」と思いましたが
夫に「気のせい」と言われてしまい、
そのまま舗装された道路に出た時にやっと安堵し自分が汗ビッショリなのに気づきました

あれからあの場所には行っていません
そして行った話を誰もしません
地元の地図や歴史も調べましたが
過疎村の移動は書いてあってもあの場所の詳しい事はわかりませんでした



http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1440842362/

63 : 猫虫 ◆5G/PPtnDVU :2015/08/29(土) 21:15:06.38 ID:rKZkpF2O0.net 
【竹】
仕事の関係で、道の駅に品物を卸している方々と親しくさせてもらっていた時期があった。
野菜や果物を卸す農家さんばかりでなく、
山で採れた山菜や茸を卸している人もいたし、民芸品を作って卸している人もいた。
これは山菜と竹細工を卸していたMというおじいさんから聞いた話だ。

Mさん夫妻は竹細工を作るのが昔からの趣味だった。
ざるやかご、置物などを作っては近所の人にプレゼントしていたのだが、
知人に勧められて道の駅にも品物を卸すようになった。

裏山から切り出した竹は二三カ月ほど陰干ししてから巨大な鍋で煮て下処理をするのだが
Mさんは切り出した直後に鍋サイズに切り分けてから干していた。

ある時、その切り分け作業をしていると、妙に重い竹があった。
持つ場所を変えたり回したりしてみるとひとつの節にやたらと重みが集中しているのが分かった。
中に雨水でも溜まっているのかと思いMさんはノコギリでその節の端を切り始めた。

案の定、切り口からは液体が垂れ始めたのだが、雨水にしてはやたらと粘っこい感じがした。
何だか薄いハチミツみたいだな、と思いながら節を完全に切り落とすと
中にはつるんとした丸っこいピンク色の物体が詰まっていた。
左手の上に切り口を向けて軽く振ると
粘液にまみれているおかげでそれは抵抗もなくつるりと出てきて、手のひらに落ちた。
「なんじゃこりゃ」
手のひらの上の物体を見て、Mさんは頭をひねった。




64 :  猫虫 ◆5G/PPtnDVU:2015/08/29(土) 21:21:49.72 ID:rKZkpF2O0.net
大きさはおはぎくらいで、勾玉のような形をした本体部分から短い手足が生えている。
表面は半透明なピンク色で、勾玉の穴にあたる部分には皮膚の下の目が透けて見えていた。
どう見ても、それは何かの胎児だった。

気味が悪いと思いながらも矯めつ眇めつ見ていると、突然ピクリとそれの左手が動いた。
驚いたMさんは「うわあ!」と声を上げながら、思わずそれを放り投げてしまった。
べちゃりと嫌な音を立てて、それは土の上に落ちた。
いかん、と思って慌てて拾おうとしたMさんだったが、異変に気付いて手を止めた。

それは土の上に水分を染み出させながら、見る間に潰れていった。
広がっていく水たまりの中、薄い皮の中に黒い眼球が二つ入っているだけの状態になり
その眼球も水分を放出して、最後はぺったんこの皮だけになった。
溢れた水分を土が吸収していく中、残った皮も溶け始め
最後には土の上に濡れた黒いシミだけを残して跡形もなく消えてしまったのだという。

「あれはかぐや姫ですよ、骨なしのかぐや姫。
もうちょっと育つまで置いといてやったら
ちゃんとしたかぐや姫になったかもしれませんがねぇ」

Mさんはそう言って笑ったが
多分それはそんなかわいらしいものにはならないだろうと俺は思った。


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