先進的な医療システムを駆使し、人間の内面(精神世界)に潜り込むことによって意識障害の患者の回復を
促す研究に携わる小児科医が主人公のサスペンス。
精神世界が主となる舞台の衣装を、ワダエミが担当した。
【ストーリー】
・リアルタイムで殺人をネットに流していた連続殺人犯がいる。
彼の殺し方は残虐で、ゆっくりと事件をかけて、怯える被害者をネット配信で人々に見せつけるというものだった。FBIは威信をかけて犯人を追っていた。
一方、小児科医キャサリンは脳波のシンクロニティを利用し、患者(子供)の意識障害または意識回復の手助けのための研究を続けている。まだ不完全ではあるが、昏睡状態の彼らの精神世界に介入し、無意識の内面世界で交流することで解決のヒントを探ろうとしていたのだ。
連続殺人犯・カールはFBIに追いつめられ、逮捕された。
が、実は新しい被害者が既に監禁されており、タイマー仕掛けで彼女が溺死するであろう映像がすでにリアルタイムで配信されていた。
最後の被害者はまだ、生きている。が、犯人のカールは昏睡状態に陥っており、死亡の可能性もあった。
監禁場所の手がかりは全くない。
唯一、彼女の場所を知るのは、昏睡中のカールだけ。
そのためキャサリンにFBIの協力要請が届く。しかし、カールは成人した大人であり、完成された精神世界の中ではキャサリンは閉じ込められてしまう可能性がある。1度は拒否するも、再三の要求と被害者の救助のため、キャサリンはカールの内面世界にダイブした。
カールの精神世界はいくつにも分裂しており、統一性すらない。キャサリンは怯えて逃げ惑う子供の姿を確認するも、化け物じみたカールの狂気にのみこまれそうになり、危機一髪で脱出に成功した。
恐怖に震えるキャサリンだが、捜査官のピーターの説得により、2度目の精神世界へのダイブを決意。
混沌とした分裂世界に翻弄され、やはり閉じ込められそうになるもピーターの呼びかけでキャサリンは現実世界へと戻ることができた。少年時代のカールは、恐るべきトラウマに囚われたために人格が分裂していたのだ。
監禁場所のヒントをつかんだピーターらFBIが被害者を救出に向かう。
その傍ら、虐待された少年時代のカールに触れた彼女は小児科医として無視することができない。
強引に3度目のダイブに挑戦、結果、死に向かいつつあるカールにシンクロしてしまう。
(成長したカールは悪魔のような憎悪のカタマリだが、少年のカールは助けを求め続けている)
カールの最後の被害者は地下より救出された。
ネットの配信も停止させ、事件は解決したかに見えた。
だが、キャサリンはカールに同調し、このままでは死亡する。(既に仮死状態)
責任を感じたピーターもまた、素人ながらカールの中にダイブしていった。
残忍な殺人鬼、カールの精神世界。それは、信じられないほど美しく、自由な世界だった。ただ、巨大で残酷な王が支配している。
怯える子供は、少年時代のカール。
彼は母性をずっと求めつづけ、助けようとしたキャサリンを我が母と認識した。しかしそれは、優しい彼女を残虐な王のパートナーと変化させることとなる。
(カールにとって邪魔な)ピーターを拷問にかけ、眉1つ動かさないキャサリンは、子供のカールが求めた彼女ではない。
自己の矛盾に気づいた子供時代のカールは、自らの精神世界の中で自殺を望む。ピーターと、少年の呼応により、自己を取り戻したキャサリンは、優しく少年を水の中に沈めていった。
ラスト。
残忍な殺人犯カールは昏睡から目覚めることなく死亡する。
キャサリン、ピーターともに無事に生還する。
そして、自ら仮死を経験したキャサリンはその後も研究を続け、意識障害の患者を救いつづけるのだった。
「虐待が犯罪を生む」と信念を貫くキャサリンと「虐待された人間が全て犯罪者になるわけではない」と主張するピーターの言葉がこの映画のメッセージを象徴している。
内面世界の映像も素晴らしく、また当時斬新なカメラワークはその後の映画カットにも大きな影響を及ぼした。