サイケデリック・奇譚

永遠の日常は非日常。

タグ:いじめ

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90 :宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt :2015/02/14(土)23:05:57 ID:nGv(主) ×
第32話  葛◆5fF4aBHyEs


春。
学年が3年に上がった時、同じクラスになった同級生の中に、
1年の時も同じクラスだったエリちゃん(仮名)が居た
といっても自分は最初、それが『エリちゃん』だとは気が付かなかったのだけれど

1年の時のエリちゃんは、黒髪を二つに束ね、泣きぼくろが印象的な眼鏡を掛けた大人しい女の子で
人見知りが激しいのか、話しかけるとドギマギする小動物系の子だった
2年はクラスが別だったからよく知らない
3年になったエリちゃんは、髪は緩くウェーブのかかった濃いめのブラウンになり、
眼鏡はコンタクトに代わり、化粧もバッチリの社交的で明るい女の子に変わっていた

実を言えば1年の時、どこのグループにも属さない余り者同士、
ペアを組む際には必ずお世話になっていたので、
同じクラスと知って密かに「やった!」と思っていたのだけど……
エリちゃんは、2年の時に同じクラスだったという
カナミさん(仮名)たちのグループと親しくなっているらしかった
それにしても、雰囲気が一変したからかな?
エリちゃんを見てると、何か違和感がある
毎回、本当に微かな違和感で、言葉には表現できないのだけれど、
その違和感は砂のように自分の中に積もっていった


エリちゃんとペアを組むことになったのは、文化祭の時だ
各クラスから2名ずつ、文化祭の実行委員を選出するのだけど、
立候補したエリちゃんが、何故か自分を指名してきたのだ


「1年の時は、よくこうして二人でお弁当食べたよね」
打ち合わせをしながら、エリちゃんがお弁当を取り出す
「そうだね」
自分も購買で買ったパンを取り出しながら、拭えない違和感を抱いたままエリちゃんを見る
見た目も性格も変わったけれど、右目のところの泣きぼくろは変わらない。
ちょっと照れ臭そうに笑う仕草も、昔のままだ



91 :宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt :2015/02/14(土)23:06:49 ID:nGv(主) ×

自分でも、何に違和感を覚えているのか解らない
でも、「何かが違う。何かが可笑しい」と確信に近い思いを抱いている
「エリ、ジュース買ってきたよ」
カナミさんが、エリさんにジュースを手渡す
……可笑しいと言えば、カナミさんも様子が可笑しい
3年になるまで同じクラスになったことは無かったが、それでも、同じ学校なのだから、見かけたことはある
もっと派手派手しく、気が強そうな瑞々しい雰囲気だった彼女が、エリちゃんに畏縮してる……?
「ありがとう」
エリちゃんがジュースを受け取ると、カナミさんは妙な笑いを浮かべて
「じゃ、じゃあ……」とそそくさと去っていった
エリちゃんがお弁当を開け、箸を右手で持つ
その瞬間、違和感の正体を理解した
「エリちゃん……右利きだったっけ……?」

そうだ。確かにエリちゃんは左利きだった。
「左利きって天才が多いらしいよ」……そんな会話をしたはずだ
そうだ。そういえば、エリちゃんの泣きぼくろは左目の方にあったはずだ。
「利き手の側なんだね」というやり取りを思い出す
口の中が急速に乾上がるのを感じた
目の前で、こちらの様子など意に介さず、エリちゃんがお弁当を食べている
「……あ……なた、誰……?」
漸くそれだけ言葉を絞り出すと、『エリちゃん』はニヤリと笑った
……それは、かつてのエリちゃんの頃には見なかった笑みだ
「……私は、『なりたい自分』になっただけよ。『自分じゃない、自分』に」
その声は、エリちゃんとは似ても似付かなかった


後で知ったことだが、2年の時、エリちゃんはカナミさんたちのグループに、いじめられていたのだそうだ
その後、何があったのかは知らない
ただハッキリしていることが一つだけある

1年の時、一緒にお弁当を食べたエリちゃんは、もういない



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308 :本当にあった怖い名無し:2013/04/15(月) 20:06:51.53 ID:HS7XKN2VO
私が小学六年生の頃、とても仲がいいSという友人がいました。
遊ぶ場所はだいたい彼のアパートで、
その日も彼と、他の友人三人くらいと一緒に、当時流行っていたゲームなどで遊んでいました。
そうして遊んでる途中、Sは思い出したように私達に言いました。
「しばらく家では遊べないかも」と。
どうやら、近々同じ市内の違う場所に作った一軒家に引越しをするそうで、色々と準備をするそうです。
とは言ってもSは準備を家で手伝う気もないようなので、
引越しの準備が済むまでは外で遊ぼうか、
という事になり、その日は引っ越し先の家の場所を聞いて、解散しました。

その日の夕食、両親にその事を雑談程度として話したのですが、
母から少し気になることを聞きました。
どうやらSが引っ越す先は
以前、火事で何人かが亡くなった一軒家が建っていた場所だそうです。




309 :本当にあった怖い名無し:2013/04/15(月) 20:08:58.56 ID:HS7XKN2VO
私はまだ幼かったのでそういう近所の事にあまり興味がなかったのですが、
どうやらそれは有名な話で、Sの両親も知らない筈がないとかなんとか。
まあSの両親は見た目がヤンキー上がりっぽい人だったので、
そんな事は気にしなかったんだろうな、と思いました。
わざわざそんな事をS本人に言う必要もないかなと思ったので、
その事は言わず、私はSが引っ越した後もSの家で変わらず遊びました。

そして何年かたって私たちは中学三年生になったのですが、
私はその頃から、Sとその友人の二人にイジメを受けるようになりました。
明確な理由は今でも分からないですけど、
多分、くだらない理由でしょう。
とにかく、イジメを受けて、私はSが大嫌いになりました。
復讐をしてやる、殺してやる、などと今思えばとても物騒な事を考えていたものです。

結局、私は臆病だった為そんな事は出来ず、
今問題を起こせば高校進学に影響する、なんて事を言い訳にして、
イジメには決して報復もせず、そのまま中学を卒業しました。


310 :本当にあった怖い名無し:2013/04/15(月) 20:10:01.32 ID:HS7XKN2VO
高校では私をイジメていたSを含む三人もおらず、
彼女も一時とはいえ出来た事もあり、とても充実していました。

そんなある日、私はSの家が少し前に全焼し、
Sの家族が死んだという話を、LINEを通して元クラスメイトの友人から聞きました。
それは私にとってはとても笑える冗談だと思いましたが、
友人曰く本当の事らしいです。
気になって長らく近づいてすらいなかったSの家があった場所に行くと、
そこには本当に家がありませんでした。


311 :本当にあった怖い名無し:2013/04/15(月) 20:11:08.54 ID:HS7XKN2VO
そしてその更地の中心に変な女の人がいました。
全身にたくさん赤いベルトを巻いていて、凄く不気味でした。
女の人は私に向かって「あなたのために燃やしてあげたよ」と言って、
本当の意味で煙のように消えてしまいました。

あの人がなんだったのかはわかりません。
あの人がSの家を燃やし、それ以前の一家の家を燃やしたのかもしれません。
Sが死んだ事は素直に嬉しかったですが、私をいじめていた残りの二人がどうなるか。
二人が死んだとしたら、あの女の人はまた私の前に現れるのか。
それだけが今はとても怖くて仕方がないので、
あの女の人はただの幻覚だったと思う事にしています。


http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/kankon/1272789942/

166 :おさかなくわえた名無しさん:2010/07/06(火) 19:47:08 ID:lP6lF6Zq

中坊時代の虐めグループ7人♂5人♀2人
虐められる側だった俺達数名はホント辛かった

一番酷い虐めを受けていた奴(A君)が、とうとう学校に来なくなり担任に「転校した。」と聞かされた。
残された、こっちは更に酷い虐めのターゲットになり毎日が地獄
夏休み前の今頃の時期、
自分より酷く虐められてた(B君)がとうとうキレて虐めグループのリーダーをカッターで切りつけた。
当然学校で大問題になり、B君も転校

ホント、事なかれ主義のサラリーマン教師ってのは糞だ。
残った俺は、どうなったかと言うと最初はそれはそれは酷い目に、、、
しかし数日経つと不思議と虐めもなく何だか逆に連中に遠巻きにされて監視されてるような日々
中三の夏休みも終わりに近づいたある日、
塾から帰宅すると母親が、A君が亡くなった事を告げた。

後日知ったのだが、彼は転校後も丸っきり学校には行かずずっと家に閉じこもりっきりだったらしい。
自室で首を吊り、おまけに共働きの両親が発見するのが遅れて遺体は酷い有様だったらしい。

夏休み明けからも、虐めグループに遠巻きに見られてるような日々は続いたが何事もなく卒業を迎えた。
俺は無事、遠く他県の親戚が住む街の高校に合格して
春からの高校生活が楽しみな春休みの最中
又もや、今度はB君が死んだ事を告げられた。

ずっと後、はっきり書くと今年のGWに
小学校時代の数名で約二十数年ぶりに同窓会的な集まりがあり
そのときに、知ったのだが7名全員が恐ろしいほどの災厄に見舞われている事




167 :おさかなくわえた名無しさん:2010/07/06(火) 19:48:57 ID:lP6lF6Zq

虐めのリーダーだった 馬鹿①
地元工業高校3ヶ月で中退→暴走族→シンナーで鑑別所→20才前後で何処かの女と出来婚
→出産後2ヶ月か3ヶ月で嫁が死亡&子供は池沼
→数年後再婚(出来婚)→母親は違うのに再び子供は池沼→上の池沼が下の池沼を殺す?
→嫁がノイローゼで自殺
本人は、その後肝臓をヤラレて入退院を繰り返してる

リーダーの腰巾着だった馬鹿③と馬鹿④
馬鹿③
無免許で親に買わせた珍走仕様のバイクで暴走中に自損事故→脊髄損傷で全身麻痺
(自発呼吸も無理レベル)
とりあえず未だ生きてる。
馬鹿④ 
運転免許試験を翌週に控えた無免許状態で峠を頭文字Dしていて大事故
車は全損で両足切断・右腕麻痺・下半身不随・全身大火傷で見るに耐えない状態に
とりあえず未だ生きてる。

馬鹿②&牝豚①
中学卒業前から、シンナーにどっぷりハマり、
17くらいの時、雌豚②のマンション(3階か4階)から鳥になろうと飛び立つも墜落
打ち所が悪く、3ヶ月くらい生きていたが死亡
片割れの雌豚①は、
足と腰の骨折で生還するも1年半後
妊娠中(父親不明)にも係わらずシンナー決めてラリパッパで海に飛び込み当然溺れるが
運良く助かるも脳に障害が残り、あうあうあぁ~~な状態
とりあえず未だ生きてる。


169 :おさかなくわえた名無しさん:2010/07/06(火) 19:50:46 ID:lP6lF6Zq

馬鹿⑤
結婚後に嫁が借金を残して間男と子供を連れて出奔
自殺を図るも未遂に終わる、
その後飲み屋街でチンピラに喧嘩を売るもボッコボコにやられた挙げ句、
国道でひき逃げに遭い現在車椅子生活、当然犯人は捕まって無い。

雌豚②
6~7年ほど前まで893かチンピラみたいなのと一緒に暮らしながら
飲み屋に勤めて居たらしいが、覚醒剤で逮捕されるも1回目だとかで執行猶予が付く
直後に、パチンコ屋駐車場で子供を煮殺し、
現場検証の際に酔っぱらい運転での当て逃げがバレたりや、車から 出たらマズイものが出たりで実刑
一昨年辺りに出てきたらしいが、何処か壊れてるらしく
精神病院を入退院してる。


虐めグループ7名の所には、A君・B君が死ぬ前から
毎日書かさず、大きく 怨 呪 と書かれた手紙が届いて居たそうだ。
しかも7名の所に毎日
いくら馬鹿とはいえ、グループ全員と聞くと偶然とは思えないし、人の恨みや怨念は怖いと思った。



http://toro.2ch.sc/testread.cgi/occult/1416631943/

222 :1/7:2014/12/03(水) 20:23:23.98 ID:yhOdUZmm0.net
かなり長いけど、小学校の教諭だった母親が最も後悔していたことが後味悪い。

定年近くの母が勤務している小学校の職員室に、ある日数人の子供が泣きながら駆け込んできた。
理由を聞けば、喧嘩している子がいて、助けて欲しいとのこと。
喧嘩の報告といえば、普通正義感に燃えた子供が嬉々として飛び込んでくることが多いのに、
何故この子達は泣いているのだろうと母は不思議に思いながら現場にかけつけた。
理由は直ぐに分かった。

現場は血だらけで、数人の子が泣きながら口と鼻から血をぼたぼたと垂らしていたらしい。
血の隙間から見える地肌は青黒く腫れ、ただの打撲では済まない怪我をしているように母には見えた。
小学生の喧嘩と言うにはあまりに凄惨な光景に母は絶句したが、犯人は直ぐに分かった。
殆どの子供が腰を抜かしている様な状況で、
クラスの子供の中でも一番からだが大きく、粗暴な口の利き方をするY君だけが、
手と足から返り血と思われる血を滴らせながら立っていたからだ。




223 :2/7:2014/12/03(水) 20:24:45.31 ID:yhOdUZmm0.net
Y君の身柄を副担任に預け、
母は教頭に許可を貰って、怪我をしている子供を市営の中央病院に連れて行った。
結果、鼻の骨が折れた子供が二人、頬骨にヒビが入った子供が一人いることが分かった。
母は直ぐに被害者の親とY君の親に連絡した。
被害者の親たちは直ぐに病院に子供達を迎えにきて、
その後校長室で担任だった母と校長は、一時間ほど被害者の親たちに口汚く罵倒された。

Y君の親はその二時間ほど後にようやく現れたが、
酒を飲んでいたのが呂律も回っていない様な状態で現れた。
Y君は何を言っても「むかついたから」としか言わず、
酒に酔った父親が激怒し拳で殴っても、結局それしか言わなかった。
母はY君と父親の態度でそれ以上は詮索も諦め、
Y君は母のなかで暴力的で特に注意が必要な生徒ということになった。


224 :3/7:2014/12/03(水) 20:25:51.63 ID:yhOdUZmm0.net
後日、一人の生徒からの提案で、学級会でY君は被害者の少年3人に謝らせることになった。
母はあまり気乗りがしなかったが、
悪いことをしたら謝るべきだと言うその子の主張に、結局圧し負けてしまった。

つるし上げのような学級会で、なかなかY君は謝らなかった。
なかなか謝らないY君への非難は凄まじかったが、Y君は拳を握りしめ唇を噛んで黙っていた。
しかし根負けしたのか、Y君は最後には涙を流して謝った。
母は謝ったY君の勇気を褒めたが、
クラスメイトからはまばらな拍手しか返ってこなかった。

その日以降Y君は殆ど口をきかなくなり、クラスの子もY君にはあまり近づかなくなっていった。
母はそんなY君の事を気にしていたが、
子供達の関係には先生は極力立ち入らない方が良いと思い、見守るだけに止めた。
そのまま特にイジメになるわけでもなく、Y君は小学校を卒業した。


225 :7/4:2014/12/03(水) 20:27:31.82 ID:yhOdUZmm0.net
そして数年後、教師も定年退職し、
すっかり事件の事も忘れかけていた母の元に、突然かつてY君と同じクラスだった教え子が訪れた。
殆ど記憶に残らないような地味な子だったはずのN君は、
そのときパンチパーマをあて、眉毛を剃った風貌で母の前に現れた。
N君は礼儀正しく挨拶をすると、
母に真実の告白と相談があると言って話しを切り出した。

当時、体が小さいN君は数人の子供達からイジメを受けていた。
それは無視などの嫌がらせではなく、
遊びと称してコンパスを背中に刺されたり、足の爪に画鋲を刺されるようなイジメだった。
反抗しても人数も多く体の大きいいじめっ子にかなうはずもなく、
N君は毎日生き地獄の様な思いをしていた。

クラスの他の子に分からない様に隠れて行われていたイジメであったため、
殆どのクラスメイトはN君のイジメの事をしらなかったと思うとN君は母に言った。
母はあまりの話しに、涙を流してN君に詫びた。
担任として、N君のイジメに気付いてあげられなくて申し訳なかった、と。

でもN君は、今日来たのはそのことじゃないと言った。


226 :5/7:2014/12/03(水) 20:29:36.33 ID:yhOdUZmm0.net
ある日、N君が昼休みに足に刺された画鋲を図書室でこっそり抜いていると、
たまたまY君がその事に気付いて声をかけてきた。
初めは無視していたが、
あまりにY君がしつこいのでいじめられてることを告白すると、Y君は黙って図書室を出ていった。
そしてその後教室に帰ると、Y君がイジメっこと喧嘩をしていた。
そのY君の暴れ方があまりに凄まじく、
N君は怖くなって真実を誰にも言えなかったと母に告白した。

「なあ先生。Yが家で虐待受けてたの知らんでしょ?
あいつな、だからいじめっことか大嫌いやねん。
でもな、あいつあの事件依頼あんまり飯食わせて貰えなくって、あいつ今体ちっこいんや。
それでな、あいつ、今中学校でいじめられてんねんで。
いじめてるのは俺をいじめてた奴らやねん。
へたれだから、あいつら体がちっこい奴しかいじめへんねん」


227 :6/7:2014/12/03(水) 20:30:11.03 ID:yhOdUZmm0.net
「なあ、先生、俺どうしたらいい?
俺強くなったで。 空手や。
俺、Yを守ってあげたいんや。
家でも学校でもいじめられてたら、あいつ死んでしまうよ。
でもな、先生達は信じられへんねん。
給食費払わんし、成績悪いから、先生達Yを嫌ってんねん。
もうな、俺が守ってやるしかないやん。
なあ、先生。 俺、前のYと同じ事してもええと思う?」

母はY君の相談にろくな事も言えず、
取り敢えず暴力に訴えるのは絶対に止めて、
学校の先生達にイジメの事実を言うのが先決だとY君を諭した。
その時のY君の寂しそうな目を、母は直視できなかったと言っていた。


228 :7/7:2014/12/03(水) 20:32:12.07 ID:yhOdUZmm0.net
後日、母はコンビニの前で仲良くたむろしているY君とN君を見たらしいが、
Y君とN君がぱしりの様に顎でこき使っていたのは、
かつてN君をいじめていた子達だったと母は言っていた。
そしてN君の横に座り俯いたまま胸をもまれていた少女は、
学級会でY君を謝らせるように強く母に進言した少女だった。
母は恐ろしくなって、その場から走って逃げたらしい。

きっとY君とN君は今後不良として生きていくだろうし、かつてのいじめっ子は
今やいじめられっ子になっている。
いじめっ子とグルだったのか本当に正義感からだったのか分からないが、
当時Y君を謝らせようと学級会で事件を取り上げた少女は、恐らく性的なイジメを受けている。

教師という職業を誇りに思い生きていた母は、
最後の最後に取り返しのつかない事をしてしまったと、いまわの際に涙ながらに俺に告白してきた。
母の命日の度に思い出す、俺にとって最高に胸くそ悪い話。



ちょっとした不思議な話や霊感の話 その7

963 :可愛い奥様:2010/08/11(水) 10:23:00 ID:38yZWHXu0
植物系の話。
娘が育ててた大きな鉢植え(名前忘れた)が3~4年位あったんだけど、
学校でイジメに遭ってた頃、毎日話しかけてた。
愚痴とか、こんなことされたとか。
そんなある日、咲いてはいけない種類なのに大輪の花を咲かせて、そして枯れた。
その頃、いじめの主犯が大けがして、いじめは無くなった。
偶然だろうけど、娘はその子(植物)が助けてくれたんだと今でも思っている。



  【閲覧注意:ショッキングな内容が含まれます】

ジェームス・バルガー事件は1993年、イギリスのリバプールで起こった。
2歳児が10歳の子供2人に誘拐され殺害されたこの事件は、世界的に大きな反響を巻き起こした。

被害者:ジェームス・パトリック・バルガー(当時2歳)
加害者:ジョン・ヴェナブレス 及び ロバート・トンプソン(当時ともに10歳)

なお、加害少年2人は2001年に新しい名と身分を与えられ釈放されている。
(この時、イギリス中で抗議運動が起きた

「ジェームズ・バ...」の画像検索結果
写真:被害者 ジェームズ・バルガー


【事件の概要】
・1993年2月。
学校を無断欠席したジョン・ヴェナブレスとロバート・トンプソンの2人は、ショッピングセンター内の店の外で母親を待っていた2歳の被害者を誘いだし外に連れ出した。

母親が気付いた時には被害者は既におそく、母親はすぐさま警備員に相談。
2歳のジェームズ・バルガーが手を引かれて行く様子は警備カメラに15時39分に記録されていた。

「ジェームズ・バ...」の画像検索結果

この後、ジョンとロバートの2人は被害者を連れて2マイル半(約4km)歩かせ続けた。
(繰り返すが、被害者は2歳)

人気のない水路では、2人は被害者の頭部と顔面に激しい暴行を加え、頭を地面に叩きつけている。
後に名乗り出た目撃者は、1人の少年が幼児の胸部を蹴っていたと証言。


被害者は家に帰りたがり、母親のもとへ戻りたがったが少年らはそれを許さなかった。
暴力で支配することで無理矢理被害者をつれまわしていたことが判明している。

驚くことに目撃者は合計38人にものぼり、何人かは被害者の負傷に気がづいていた。
だがその他の目撃者は被害者が少年らと嬉しそうに歩き、時折笑っていたと証言し、少年2人が後に被害者に暴力をふるうとは思わなかったと述べている。

うち何人かが2人に声を掛けたところ、2人とも「怪我をした弟を警察に連れて行く」ところだと言ったという。

だが、最終的に2人の少年は瀕死となった被害者をマージーサイド州ウォルトンの線路上に放置、ジェームズが帰宅することはかなわなかった。


顔面及び頭部にはレンガが何度もぶつけられた痕があり、直接の死因は鉄パイプによる暴行と思われる。

何故か、被害者の口には乾電池が大量に詰め込まれ、顔には青いペンキが塗られていた。
(乾電池及びペンキは万引きしたものであることが後日判明)
無理に口内に詰め込んだらしく、口内は激しく裂傷、暴行の痕もありひどく変形していたという。

なお、この時、少年らは2歳の被害者に性的いたずらを行っている。

遺体を線路に直角に横たわるように放置したのは、事故死と偽装するためだった。
遺体の上にはレンガを積み重ね、一見しては人間とわからないようにしてあったらしい。


遺体が発見されたのは失踪から2日後。
悲惨な事に、その上を列車が知らずに通過していたため、発見された時点では上半身と下半身が完全に轢断された状態になっていた。


実は、ジェームズが行方不明になった当日、すでに防犯カメラにより少年2人の関与が判明していた。
その後の警察の調べで、加害少年2人とも青ペンキが服に付着しており、靴にも血痕が付着。
DNA鑑定で被害者の血液と確認済。
青ペンキについても後日、被害者の顔に塗られていたものと一致した。

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犯行に使われた乾電池、ペンキともに万引きされたものである。

この事件は世界中で連日報道され、日本では考えられないかもしれないが、犯行後の少年らのインタビュー(記者会見)まで行われている。
反省の色が全く見えないというよりは、注目されてやや得意げに見える少年らに大きな批判が集まった。

だが、最も衝撃的だったのは被害者の殺害方法が映画「チャイルド・プレイ」を模したと思われる部分を有したからである。
実際、加害者2人は「チャイルド~」を観ており、何らかの影響を受けたのは間違いないとされる。
この事件だけではないが、日本を含み世界各国でレンタルビデオ等の記録などが重要視される流れにかわってゆく基となった。

一時ではあるが、加害少年の1人の母親がレンタルビデオ店で働いていたとの情報があった事がある。
息子の要求のままに次々と好きなビデオをレンタルさせていたらしい。
ジェームズの行方不明騒動は母親も聞きつけていたが、血痕・ペンキの痕をつけたまま帰宅した彼らは母親の店にも立ち寄っている。
そのため、母親をはじめとする親族や周辺の人々は早い段階で殺害に気が付いていた可能性も強い。
しかし、家族・親族は早々と保護対象となり情報の追及は遮断され、真実は闇のままとなった。

当事、イギリス国内の反響は大きく、少年らの護送車に投石されるなど人々の怒りは凄まじかった。
現在もイギリスでは防犯カメラの設置件数が多いという。


【裁判と情状酌量】
2人の少年が殺害の容疑で逮捕されると、当然のようにマスコミの報道合戦が開始された。
当時は年齢を考慮して実名報道はされなかったものの、事件の重大性や影響、世論の高まりを受け、裁判に向けて実名報道に切り替えた。

しかし、顔写真が出たことで、10歳の子供がこのような残虐な事件を起こした事に人々はさらにショックを受けたらしい。
加害者らは、モンスターでもなんでもなく、どこにでもいる普通の少年に見えたからだ。

「ジェームズ・バ...」の画像検索結果

余談ではあるが、被害者そっちのけで加害者ばかりがフォローされるとう事態はあちこちで起こり得るらしい。
この頃、既に世論の高まりと憎悪に危険を感じた加害少年の親族らは、自治体からの支援により新しい身分で別の土地に移住している。

通常、未成年者の被告の場合は両親の同席が認められていたが、この件に関しては加害少年らは成人と同じように扱われた。
(ソーシャルワーカーは認められていた)

この事件では少年らの家庭環境も考慮されたが、面会が認められたのは数時間のみで、以降は両親とは引き離されている。


裁判の判決は8年の禁固刑。だが、やはり世論は納得せず、その後は最低でも15年の刑と変更された。
が、結局2000年には8年に戻され、翌年の2001年、2人は名前・身分を変えて出所している。(後述)


・上記で情状酌量と記載したが、実際には裁判でその事情が認められることはなかったとされる。
その分、少年らの親族に対しても世論の怒りは激しかった。
あまりにも残虐な事件をおこした2人ではあるが、その生い立ちもまた悲惨であった。

ジョン・ヴェナブレス
 ・両親の離婚
 ・発達障害の兄弟への嫉妬
 ・学校での孤立 
 ・周囲からの無視による自傷癖
 ・学校内での喧嘩の多発(殴りあい)
 ・うつ病の母親によるネグレクト

ロバート・トンプソン
 ・ともにアルコール依存症の未婚の母と父親を持つ
 ・7人兄弟の末っ子
 ・幼少のころより父・母・兄弟より暴行、性的虐待を繰り返し受ける
 ・5歳の時に父親が蒸発
 ・兄弟からの暴行・虐待により一時期は児童保護施設に収容
 ・ナイフを使用した兄弟喧嘩
 ・10歳で既に薬物による自殺未遂
 ・事件の一週間前に、自宅が全焼


だが、当時のイギリスの貧困家庭においては、際立って悲惨とも言えなかったようだ。
社会背景もあるだろうが、同じような貧困と、同じように親が疲弊しきった家庭も少なくなかった。

それどころか、もっと凄惨な生活を余儀なくされていた人々もそれなりに多く、世論の火に油を注いだ結果となった可能性もある。実際に、どのような理由があったにしろ、映画のビデオを10歳の子供のためだけに金を払ってレンタルしていた家庭である。

また、2人の少年は学校に馴染めず、不登校であり、自己顕示欲も強かったらしい。
特にジョン・ヴェナブレスは、わざと人前で壁に頭部を打ちつけるなど自傷行為をアピールする癖があり、そのためにますます孤立し、周囲の人間の無視を買いつづけていた。

その鬱憤からか、日頃から2人とも自分達より幼い抵抗できない子供をいじめて「遊ぶ」姿も目撃されている。

さすがに逮捕され、また子供としてではなく、大人と同じように扱われるに至って初めて少年らは恐怖におののいたらしい。
いざ、裁判が始まると2人の証言は互いに責任の擦り付け合いとなった。

しかし、当然のことながら、虐待や問題のある環境に育った人間が全て犯罪者になるわけではない
裁判中であるにも関わらず、自分達だけ保護を願い出た親族らにも批判は集まり、「ジェームズ・バルガー事件」の影響は社会現象となってゆく。

以下は、当時公開された事情聴取の内容である。
少年達がわずか10歳であったにも関わらず、人々の憎悪をかきたてた理由が垣間見える。(英語のまま)

【閲覧・胸糞注意】


会話部分だけをざっとわかりやすく意訳する。

「言いたくなければ言わなくても良いけれど、証拠も揃っている。喋らなくとも、何も変わらない。この意味がわかるかい?ジョン」
J 「はい。よくわかっています」(すすり泣き)
「ここに、写真とビデオの映像があるね」
J 「これは、僕です。僕とロバートです」
「そうだね。ジェームズの手を握っているのは君だね?」
J 「はい」
「もうひとり、黒っぽいジャケットとズボンの子が君の前にいるね」
J 「ロバートです」
「ロバート・トンプソンだね。君達は何をしたか教えてくれるかい?」
J 「ジェームズを殺しました」(That I killed James
「(しばし間)そうか。もう大体の事はわかっているんだよ」
J 「他には何も話せないです」(I can't tall you anything else)
「何故?」
J 「最悪の結果になるから」
「そうか、わかった。確かに最悪の結果になる。でも、君は何が起こったのか知っているし教えてくれるかな」
J 「僕達は、線路に彼を連れて行って、レンガをぶつけ始めました」
「誰がやったの?」
J 「ロビー(ロバートの愛称)です
「なぜ、彼はレンガをぶつけたりしたんだろう?」
J 「知らない」
「棒や石で叩いたりしたのはどこ?」
J 「頭」
「血が出た?」
J 「あちこちから」(All over
「どこから血がでたの?」
J 「顔から。ロバートが殺そうって考えてやったんだ」
「そうか」
J 「全部話したよ。他に何かあるの?」
「彼は正確にはどこにぶつけたの?」
J 「顔だよ」
「顔か」
J 「目にも当てたと思うな。右の目にもぶつかってた」
J (ため息)
「その時、ジェームズは悲鳴を上げなかった?」
J 「ううん。もうノックアウトされてたから」(he was knocked out)
「ノックアウト。彼は動けた?」
J 「ノー。」(No)


・・・・・申し訳ないが、ヴェナブレスの証言だけで気分が悪くなる。
トンプソンの証言もあげなければ片手落ちなのはわかるが、できればこれで勘弁していただきたい。
日本語にも言い回しがあるように、英語にも表現の方法がある。
あまりにもストレートな物言いに、当時の世論の「吐き気をもよおす」気持ちがよくわかる。


【釈放後と、その影響】

・加害者の2人は、少年院では優秀な態度であったらしい。
2001年には、別人としての身分を与えられて釈放されている。
「ジェームズ・バ...」の画像検索結果

この時、2人の釈放に関しては、イギリス全土で抗議運動が起こった

だが、裁判所は2人に、
・この先一生リバプール地方には絶対に立ち入らないこと。
・保護監察官に週1度の面接を受けること。
を義務付けた上で、マスコミに2人の報道を行わないようにと命じている。


刑期の短縮された2人は「再び社会の脅威になることはない」との判断のもとに釈放された。(2001年)
この時2人の「新しい人生のために」4億ポンドもの大金が投じられている。
被害者の両親に支払われた金額は7500ポンド。
ジェームズの両親は、事件後に離婚している。

その後、2人の釈放を報道、新しい身分を公開報道したメディアは裁判となり、結果として12万ポンドの罰金を支払った。
この2人については、ウェールズに住んでいるという報道のみ許可。

しかし、やはり世の中の人々は忘れることはない。
かつてのジョン・ヴェナブレスの母親は息子は暴徒に殺されるだろうと発言、大きく注目を浴びた。

さらに、2006年、かつてロバートであった少年が成人後、過去を隠して結婚していた事実がすっぱ抜かれた。
彼は、釈放後も何度も麻薬の吸引、万引きで逮捕されているという。
現在はビジネスマンとして働いているらしく、子供もいるそうだ。

また、元ジョン少年は、2010年には児童ポルノ規正法違反で逮捕されている。

「再び社会の脅威になることはない」と判断された子供達は成人し、再び犯罪を犯している。
元ジョン少年に関しては、かつて幼いジェームズが2歳で性的いたずらを受けて殺された事柄を嫌でも思い起こさせずのはいられない。
事実、検証番組が複数報道されており、司法もその流れを止めることはできなかったらしい。

James Bulgerは被害者の名前であるが、Jon Venables (ジョン・ヴェナブレス)とRobert Thompson(ロバート・トンプソン)の検索結果は驚くほど多い。
You Tubeで探してみると良い。
専門家たちの分析のあまりの多さに驚くとともに、性犯罪者及び犯罪者に対する監視の目がどういうものか如実に理解できる。

司法省は詳細を明らかにはしていないが、被害者のジェームズの母親には、匿名で情報が届いたらしい。
だが、彼女は憎しみのあまりショックを受け、2度と関わりたくないと発言。

だが、彼らや被害者の親族がどう思おうと人々の心の怒りは消えず、ましてや殺人ではなくとも再犯を繰り返している彼らには、今後も厳しい周囲の目が光り続ける。

所詮、人の口に戸を立てるのは不可能なのだろう。



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人形の怖い話ありませんか?(ΦДΦ)<一巻目

666 :もしもし、わたし名無しよ:2006/02/12(日) 15:03:09
15年以上前のことになります。

当時、ほぼクラス全員からサンドバッグ状態でした。
図工の時間に金槌で頭を殴られそうになったことや、家庭科の時間に
針で目を潰されそうになったこともあります。
教師には言ったんですが、「泣かないあんたが悪い」と一蹴されました。
そんなわけで、攻撃されたら相手を殺す気で反撃する、というのデフォルトでした。

バスケの授業のときに、案の定ボール争奪戦に混じって殴る蹴る……
爪でリーダー格の女の子の右目を引っ掻きました。
で、やり所が悪かったらしく、その子は病院に行くことに。
親に話すように言われたのですが、
経過がどうあれ怪我をさせたのが自分なので、怒られるのが恐くて親に言えません。
帰宅するなり、当時うちにきたばかりだった馬のぬいぐるみを抱いて学校であったことを話し、
さんざん泣いて眠りました。
 
次の日、学校に行くと昨日のことが『なかったこと』になってました。
怪我をした当の本人も何も言いませんし、教師も言ってきません。

ほっとして帰宅して、馬のぬいぐるみを抱いて報告しようとして気付きました。
右目がない。
何度も確認しても、目を留めていた糸の痕跡どころか、目があった痕跡すらないんです。
部屋中探しても目は見つかりません。
朝起きたときは、抱いて寝たはずなのにお尻向けて頭の上の方にいたので、
ぽんと背中を叩いて家を出ました。
学校に行ってる間に何かあったのでは?と親に確認しても、「部屋には入ってない」と……
いつ目がなくなったのかはっきりしません。

その後、同じサイズの目を買ってきたので、つけてあげようとしたのですが……
当の馬?が嫌がってるようなので隻眼のままです。

いまだに部屋にいますし、年甲斐もなく抱いて寝ています。


1947 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 06:35:33 ID:cFFR5zTA0
木島氏の元から戻った俺はしばらく悩んでいた。
悩みの原因は、マサさんの『叔母』、一木燿子の霊視だった。
燿子の言うところの『定められた日』……俺の死期はそう遠いものではないらしい。
そのこと自体は、少し前の俺にとっては大した問題ではなかった。
そう、アリサを失ってからの俺にとっては、どうでも良いことだったのだ。
失って惜しいモノは何もないと、イサムと出かけたロングツーリングを利用して、失踪しようとまで考えていた。
だが、今はそうもいかない。
俺には、どうしても片付けなければならない問題があったのだ。
俺は、実家に電話を入れると、イサムを誘ってバイクで実家に戻った。


実家に戻ると、両親と妹、下宿して定時制高校に通う真実(マミ)が俺たちを迎えた。
「この馬鹿息子!マミちゃんを預かる条件として約束したわよね?
どんなに忙しくても、月に一度は帰ってきなさいって!
片道3時間の所に住んでいるくせに、何ヶ月帰ってこなかったの?約束が違うでしょ!」
「ごめんなさい……」マミが母に謝った。
「何で?マミちゃんが謝る必要はないでしょう?
あなたはウチの娘なんだから、嫌だと言っても、お嫁に行くまで家に居てもらうわよ」
「悪かったよ。理由はコイツに聞いてくれよ」
俺は、家族にイサムを紹介し、イサムは俺とロングツーリングに出かけていたことを話した。


1948 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ2012/12/19(水) 06:37:22 ID:cFFR5zTA0
「先輩の妹さんって、美人ですよね。スタイルも良いし」
「そうか?でも、アイツは止めておいた方が良いぞ」
「なんで?」
「……性格が無茶苦茶キツイからな。軽い口喧嘩でも、情け容赦なしに人の心を折りに来るぞ?
それに、腐り切って三次元の男に興味がない上に、ガチ百合だ。結婚とかするタマじゃねえ。
お陰で、完全に、パーフェクトな嫁き遅れだ。あんなの貰ったら人生の不良債権化間違えなしだ」
「……そこまで言います?」
「ああ。お前も今頃、受けだの攻めだのって、くだらない妄想のダシにされているかもな」
「……」
「それより、マミちゃんはどうよ?
あんな腐った年増の不良債権女より、お前にはピッタリな子だと思うけどな」
「ああ、確かに可愛い子ですよね。ただ、影があるというか……訳ありっぽいな、と」
「やっぱり、判るか……」
「ええ。……姉さんと、似た雰囲気があるから。何となくね」
「でも、すごく良い子なんだ。仲良くしてやってくれ」
 
そんなことを話していると、妹が夕食の準備が出来たと呼びに来た。
「黙って聞いていれば人のことを悪し様に言いたい放題。
私は腐女子でもレズでも何でもないって言うの!
私だってね、炊事洗濯、家事一般が完璧で
いつも家にいてくれる可愛い子が居れば、いつでも結婚してやるよ?
別に稼いでこなくても、しっかり喰わせてやるし。忙しくて出会いがないだけだって!」
「お前なぁ、そう言うのを世間一般では『嫁』って言うんだ。
……こんなオヤジ化した年増女じゃ誰も相手にしないよ」
「イサム君、こんなクソ兄貴を相手にすると馬鹿が移るよ?せっかくイケてるのに、もったいない」
「お兄ちゃん、晩御飯食べたらお父さんの部屋に来てね。話があるそうだから」
  
マミは、俺と妹の久子が両親に頼み込んで実家で預かって貰っていた。
今でこそ、家事一般を積極的にこなし、定時制ではあるが高校に通うなど
外出もできるようになったが、ここまで道のりは平坦ではなかった。
俺たちの実家に来た頃のマミは心身ともにボロボロに傷付いて、自殺の可能性すらあったのだ。
マミを実の娘……或いは、抱く事の叶わなかった孫のように可愛がってくれた俺の両親と、
主治医としての久子のケアのお陰だろう。
俺とマミの出会いは、奈津子と出会った事件の後、マサさんが静養中だった頃に遡る。


1949 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 06:40:13 ID:cFFR5zTA0
俺は、中学時代の友人の葬儀に出席していた。
ヒロコは3年生のときのクラスメイト、リョウタは水泳部で一緒だった。
中学時代のヒロコは、かなりぽっちゃりしていたが明るい性格で、
友人的な意味で男子からも女子からも人気のある子だった。
リョウタは少々お調子者だったが、イケメンでスポーツ万能なヤツだったので、
密かに思いを寄せていた女子は多かった。
同学年や後輩の女子にリョウタのことを相談されたことは2度や3度では無かったので間違いない。
ヒロコもそんな中の一人だった。

ヒロコがリョウタの事を好きだったのは公然の秘密だった。
だが、多くの女子に思いを寄せられていたリョウタは、1学年上の先輩一筋だった。
全く相手にされていなかったのだが、リョウタは周りに自分の思いを公言していた。
基本的にアホだったリョウタが、先輩の進学した学区で2番目の高校に
猛勉強して進学したのは恋のパワー成せる業だったのだろう。
高校進学後、先輩に告白してフラれた話は、
度々本人がネタにしていたので、仲間内では笑い話になっていた。
そんなリョウタとヒロコが大学生の頃に学生結婚したのには驚かされたものだ。
俺は、結婚式には身内の不幸があったので参加できなかったが、祝電を送ったのを覚えている。


1950 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 06:42:14 ID:cFFR5zTA0
中学の同級生で葬儀に来ていたのは、ヒロコと小学校から大学まで一緒で
仲の良かったマサミと、リョウタと仲が良く同じ高校に進学した吉田。
卒業から20年も経つと、仲が良かったとしても中学時代の友人の参列者はこんなものだろう。
明日、俺が死んだとしても、葬儀に出席しそうなのはPとその他数名といった所だろう。
それだって、多い方に違いない。

ヒロコとリョウタの死因を結婚後も付き合いのあったマサミに聞いてみた。
暖房器具の不完全燃焼による一酸化炭素中毒だったらしい。
……今時、そんなのありかよ。
だが、年代物のボロアパートに住んでいた俺も注意することにした。
 
俺にヒロコとリョウタの葬儀の連絡をしてきたのは藤田という男だった。
3年生の時のクラスメイトと言っていたが、俺に藤田の記憶は全く無かった。
手元に卒業アルバムもなかったので確認の仕様も無かったが、
担任の先生の名前と他のクラスメイトの名前は合っていた。
失礼な話だが、俺の方が忘れていただけだろう。

俺は吉田に尋ねた。
「藤田って来てないよね?俺は、藤田から連絡を貰って葬儀の事を知ったんだけどさ」
「藤田?ああ、確か、そんなヤツがいたな。でも、お前、藤田と同じクラスだったことってあったっけ?」
「実は、覚えが無いんだよな。どんなヤツだっけ?」
「俺も、お前に名前を聞いて思い出したくらいで、殆ど覚えが無いんだよな」
「そうか」


1951 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 06:43:36 ID:cFFR5zTA0
俺は、マサミと吉田と暫く話した後、
少々距離はあったがタクシーを待つのも面倒なので、歩いて駅へ向かっていた。
駅に向かって歩いていると後方から声を掛けられた。

「おい、XXだろ?俺だよ、藤田だよ!」
顔に見覚えは無かったが、声には聞き覚えがある。
俺の携帯に電話を掛けてきた声の主だ。
メタボって禿げ始めていた吉田も初めは誰か判らなかったので特に疑問は持たなかった。
「おう!遅かったんだな」
「ああ。先に用事があってな。一足違いだったみたいだな」
俺と藤田は、どうでも良い話題を話しながら駅へ向かって歩いていた。
駅が近付いてくると藤田が急に話題を変えた。

「Pに聞いたんだけどさ、お前、拝み屋って言うの?『そっち系』の仕事をしているんだって?」
俺は答えに困った。
クライアントや仕事の関係者以外に俺の『裏の仕事』の事は知られたくないからだ。
俺の家族さえ俺の『裏の仕事』の事は知らないのだ。
俺の家族とキムさんや権さん達との間には、
俺の入院中の見舞いなどで面識はあったが、姉を除いて只の勤務先の上司としか思っていなかった。
 
Pもそのことは知っている。Pは口の軽い男ではない。
「どうしても、相談に乗ってもらいたいことがあるんだ。話だけでも聞いてくれないか?」
渋々だったが、俺は藤田と近くのファミレスに入った。


1952 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 06:44:37 ID:cFFR5zTA0
「お前さ、『エンジェル様』事件って覚えている?」
「ああ」
『エンジェル様』とは、降霊術の一種として有名な『コックリさん』の数あるヴァージョンの一つだ。
俺が中学2年生だった頃、この『エンジェル様』が俺の通っていた中学校と近隣の小学校で大流行したのだ。
俺は余り興味が無かったので参加しなかったのだが、
休み時間になると教室の何箇所かでエンジェル様に興じる連中がいたことを覚えている。

藤田の話を聞いていて思い出したのだが、この『エンジェル様』の流行は妙な方向へと流れて行った。
『自分専用』のエンジェル様を『呼び出す』連中が現れたのだ。
上手く説明し難いのだが、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の『スタンド』みたいなものか?
異常に盛り上がったオカルト熱と、所謂『中二病』の複合感染みたいなものだったのだろう。
だが、この自分専用のエンジェル様を『降ろせる』と称する連中を中心に、
クラスの中に『派閥』のようなものが形成されていった。
派閥同士が対立して、教室内の雰囲気が妙に殺伐としていたのを覚えている。

そんな中で『事件』が起こった。
授業中に隣のクラスの女生徒が錯乱状態に陥って暴れたのだ。
隣の教室から他の女生徒の悲鳴と騒ぎが聞こえてきた。
確か、俺達のクラスは『保健』の授業をしていたと思う。
ごついガタイをした男性体育教師が廊下に出て行った。
恐らく、その体育教師は女性徒を取り押さえようとしたのだろう。
だが、体育教師が女性徒に殴られ騒ぎは更に大きくなった。
怪我の内容は知らないが、殴られた体育教師は重傷だったらしく事件のあと1ヶ月ほど休職した。
取り押さえようとした教師を振り切った女生徒は俺達の教室にやってきて、
鉄製のドアに嵌め込まれたガラス窓を素手で叩き割った。
割れたガラスは厚さが1cm近くあって、
成人男性が力いっぱい殴ったとしても素手で割るのはかなり難しそうだった。
それを細身の女生徒が叩き割ったのだ。


1953 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 06:46:42 ID:cFFR5zTA0
俺や他の傍観組は、初めは女生徒の『芝居』だと思っていた。
『エンジェル様』はエスカレートして、トランス状態に陥った『振り』をするヤツや、
『口寄せ』の真似事までするヤツが現れていたからだ。
だが、錯乱した女生徒の起こした事件は、傍観組も騒然とさせた。
俺達の教室のあった校舎の階は大混乱となり、
その日の授業はその時間で中止となり、2年生は全員下校となったのを覚えている。
 
学校側は事態を重く見てエンジェル様は禁止された。
当然の措置と言えるだろう。
その後も、隠れてエンジェル様を行っているところを見つかって反省文を書かされた連中もいた。
だが、学年が変わるころにはエンジェル様の流行は完全に終息していた。
問題の女生徒は、確か卒業アルバムに名前があったので
転校などはしていないはずだが、その後、学校で姿を見ることはなかった。


「あれって、殆ど自作自演だっただろ?今となっては、恥ずかしい青春の1ページってやつ。
お前も、やってたクチ?」
「ああ、確かに。皆で握っていた鉛筆を動かしたりしてさ。でも……」
「でも?」
「俺、ヒロコ達とエンジェル様をやったことがあるんだ」
「ああ、アイツ、そう言うの好きそうだったからな」
「その時、みんなで握っていた鉛筆を動かしたんだ。ヒロコはリョウタと結婚するって。
ほら、ヒロコがリョウタのことを好きだったのはみんな知ってたからさ」
「それで?」
「ヒロコのヤツが『子供は何人?』って聞いたから、オチを付ける位の軽い気持ちで動かしたんだ。
子供が生まれる前に2人とも死ぬって。
……知ってる?ヒロコってお目出度だったんだぜ!」
「ただの偶然だろ?」

「それじゃ、青木のことは知ってる?」
「確か、ブラバンやっていたヤツだよな?クラスも一緒になったことないし……しらない」
「高校生の時、海で溺れて死んだんだ」
「へえ……」
「やっぱり、その時動かしたんだ、『3年後に溺死』って」
「それで?」
「その時のエンジェル様で出たんだよ」
「何が?」
「俺が死ぬって……首を吊って自殺するって!」


1954 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 06:48:16 ID:cFFR5zTA0
「それって、お前が動かしたの」
「俺じゃない!」
「それじゃあ、お前と同じように他の誰かが動かしたんだろ?
お前自身に首を括る予定は無いんだろ?考え過ぎだって」
「でもさ、あの時の『エンジェル様』を仕切っていたのは川村だったんだよ!」
川村とは、錯乱して事件を起こした、問題の女性徒だ。

「そう言えば、川村ってどうなったの?
確か、卒業アルバムに名前は有ったはずだけど、あの後、学校に来ていなかっただろう?」
「川村は、何軒か医者に掛かったり、あちこちで御祓いを受けたみたいだけど、
結局、元には戻らなかったんだ。
両親が離婚して、今も母親の実家にいるよ」
「詳しいんだな」
「幼稚園の頃からの幼馴染だからな」
「その時、他に『エンジェル様』をやっていたヤツっているの?」
「川村と青木、ヒロコと菅田、それと川上だ」

川上は、俺が高校時代に付き合っていた彼女『由花(ユファ)』が中学卒業まで使っていた通名だ。
ユファの事は別れ方が最悪だったので、聞きたくなかった。
「ふうん。……そう言えば、菅田ってヒロコ達と仲良かったよな?
今日は来てなかったけど、今、どうしているか知ってる?」
「知らない」
菅田は、幼稚園入園前からのユファの幼馴染で、いつもユファと一緒にいた子だ。
大人しいが、非常に頭の良い子だった。
成績は、学年で常にトップクラスだった。
気が強く口煩い姉と妹に挟まれた中学時代の俺は、
活発なタイプのユファよりも、物静かで大人びた雰囲気の菅田に惹かれていた。


1955 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 06:50:32 ID:cFFR5zTA0
「とにかく、気にしすぎだと思うぜ?どうしてもと言うなら御祓いの紹介くらいはするけど。
気になって眠れないとかなら、心療内科でカウンセリングでも受けた方が良いよ。
御祓いなんて、所詮、気休めでしかないからな」
そう言って、俺は藤田と別れた。
  
後日、Pに会ったとき、多少の抗議を込めて藤田と彼に聞いた事を話した。
睨む様な目付きでPは俺に向かって言った。
「お前は、その時、何も気付かなかったのか?」
「何のことだ?」
「俺は藤田にお前のことを話したりはしていない。それは無理な相談だからな。
藤田は、ずいぶん前に死んでいるよ」
「……本当か?」
「本当だ。俺達が高校に進学して直ぐだよ。首吊り自殺だ。
藤田のお袋さんは、ウチの店でずっとパートで働いていたからな。通夜にも行ったよ」


1956 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 06:53:02 ID:cFFR5zTA0
俺は言葉を失った。
Pは、彼の知っている事情を話し始めた。
 
藤田と川村、青木は幼稚園の頃からの幼馴染だったらしい。
俺に藤田についての記憶が無いのは無理の無いことだった。
藤田は1年生の3学期から不登校となり、その後、1度も登校していないからだ。

藤田の不登校の原因は、川村、青木を中心とするグループによる『いじめ』だった。
いじめグループにはユファも居たそうだ。
クラス内で求心力のあった川村たちの行動に異を唱える者はいなかった。
藤田へのクラスメイトのいじめはエスカレートして行った。

そんなクラスメイト達の行動を諌めた者が一人だけいた。
ユファの幼馴染、菅田ミユキだった。
だが、菅田の諌言は、いじめグループの行動の火に油を注ぐ結果となった。
藤田は、菅田の目の前で下半身を裸にされて、射精するまでセンズリを扱かされたらしい。
耐え難い、惨い虐めだ。
菅田の前で藤田にセンズリを扱かせようと提案したのはヒロコだったそうだ。

翌日から、藤田が登校することは二度と無かった。
藤田が不登校になると『いじめ』のターゲットは菅田に変わったようだ。
1学年11クラスあった中での他のクラスの事でもあったし、
当時の俺は全く気付かず、今、Pに聞いて初めて知った事実だった。


1957 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 06:55:09 ID:cFFR5zTA0
「待てよ、それじゃ、藤田が『エンジェル様』に参加するのは……」
「まあ、常識的に考えて無理だろうな。でも、お前の話は大筋で合っているよ。
ところで、お前さ、『エンジェル様』のルールって知ってる?」
「知らない。やったこと無いからな」
「他ではどうだか知らないけれど、俺達の学校で流行った『エンジェル様』は、必ず5人でやるんだよ。
それ以上でも、それ以下の人数でも駄目なんだ」
「えっ?……川村、青木、ヒロコ、菅田、ユファで5人だぞ?」
「……或いは、エンジェル様の鉛筆を藤田が動かしたと言う話は、本当なのかもしれないな」

俺は気になって、Pに疑問をぶつけた。
「お前、随分と事情に詳しいんだな?」
Pは、これまでの長い付き合いで始めて見せるような、苦い表情で言った。
「いま、俺が関わっている案件のクライアントに関わることだからな……。
中学時代の同級生を当たって調べたんだよ。
お前の為にも、クライアントの為にも、お前だけには知られたくは無かったんだ。
だが、こんな形でお前に知れるのは、何かの縁なんだろうな」
  
思いもしなかった形で、過去の黒い影が俺を捉えた瞬間だった。


1958 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 06:57:00 ID:cFFR5zTA0
後日、俺はPのクライアントに引き合わされた。
高校時代、俺の彼女だったユファの幼馴染で、中学時代の同級生だった菅田ミユキだった。
ミユキが現れたことも驚きだったが、俺を見た彼女の反応は更に俺を驚かせた。
「P君、なんでXX君を連れてきたの!」
物凄い剣幕だった。……女のヒステリーは苦手だ。
俺は彼女に嫌われるようなことをしていたかな?
少々怯み気味に俺はミユキに言葉を掛けた。
「久しぶり……その、なんだ、俺がここに来ちゃ不味かったのかな?」

Pはミユキを宥めながら、俺がここに来た理由、藤田と『エンジェル様』に関わる話を説明した。
Pの説明の後、俺はミユキに尋ねた。
「何があった?」
Pは一通のミユキ宛の封書を取り出した。
中には紙が一枚。
『エンジェル様』の文字盤だ。
文字盤には赤いペンで、このような文句が書かれていた。
「呪。****」
ミユキによると、****とは、川村が呼び出したと言う、彼女専用の『天使』の名前だそうだ。


1959 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 06:58:48 ID:cFFR5zTA0
「私、藤田君に恨まれているのかな?」
「藤田の不登校の原因になった『あれ』か?
お前は、他のクラスメイト達を諌めて止めようとしたんだ。
『あれ』は、その結果に過ぎない。恨むならもっと恨むべき人間がいるはずだ。
それとも、他に何かあるのか?」
「うん。あのことがある少し前、私、藤田君に告白されたんだ。
嬉しかった。……でも、断ったの。私、他に好きな人がいたから」
「……そうか、でも、それは仕方の無いことだろ?」
「でもね、その事で藤田君、クラスの皆にからかわれていたから。
私が原因なのに、私が余計な口出しをしたから、あんな酷いことをされて……」
「でも、それで藤田がお前の事を恨むとかは無いと思うぞ?」
「そうかな?……そうだと良いのだけど。
……藤田君、死んじゃったんだね。わたし、全然知らなかった」
ミユキはボロボロと涙を流しながら嗚咽を漏らした。


1960 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:00:06 ID:cFFR5zTA0
俺は、ミユキが泣き止むのを待って質問した。
「封書の差出人に心当たりはあるの?」
ミユキは中々答えようとしない。
答えないミユキに代わってPが口を開いた。

「お前には知られたくなかったが……由花(ユファ)だよ」
「ユファが何故?お前たち、仲が良かったんじゃないのかよ?」
ミユキは興奮気味に言った。
「私たちが仲が良かったって?本気で言ってる?
XX君って、素直って言うか、本当に昔から鈍いよね。
だから、ユファに裏切られていたことにも気付かなかったんだよね」
ミユキの言葉は俺の胸にチクリと突き刺さった。

「……ごめん。でもね、ユファと私は仲良しなんかじゃない。
私は、小さい頃からユファの奴隷だったわ。
昔からユファは私の持っているものを何でも欲しがって、全て奪って行ったわ」

そう言えば、ミユキは藤田が不登校になった後、ユファ達からいじめを受けていたのだ。
俺やPと同じ高校に進学するはずだったミユキは、県外の私立に進学していた。
いじめが原因……いや、ユファから逃げるためだったのか?


1961 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:01:22 ID:cFFR5zTA0
「ねえ、XX君、覚えているかな?わたし、中3の2学期に入院したことがあったでしょう?」
「ああ、盲腸だったっけ?内申書の成績が出る一番大事な時期だったからな。
その所為で、県外の私立を受けることになったんだと思っていた。
ほら、お前もH高を受けるとばかり思っていたからさ」
「……私の初体験の相手はトイレのモップの柄だったわ。
力任せに突っ込まれたから、お陰で一生子供の産めない体にされちゃったけどね」
無表情に酷く冷たい目をしながらミユキは語った。
思いがけず聞かされた、余りにエグイ話に俺は言葉を失った。
 
「ユファに……なのか?」
「ええ……。それと、ヒロコたちね」
俺の中で、楽しかったはずの中学時代の思い出がドロドロとした真っ黒なものに変色していった。

「でもね、それは耐えられた。やっと、ユファから逃げられると思ったから」
「まだ、……何かあったのか?」
「XX君って、残酷だよね。それを私に話させる?」
「……何のことだ?」
「卒業式のあと、美術準備室であったこと、覚えているよね?」


1962 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:02:26 ID:cFFR5zTA0
中学の卒業式が始まる前、俺はヒロコに呼ばれてこう言われた。
「式が終わったら美術準備室に行って。待っている子が居るから。
判っているわね?女の子に恥をかかせるんじゃないわよ」
リョウタみたいにモテるタイプではなかった俺はドキドキしながら式が終わるのを待った。
 
式が終了し、最後のHRが終わった。
クラスメート達と写真を撮り、部活の後輩達から花を貰ったあと、
ヒロコの『早く行け!』というアイコンタクトに従って、俺は美術準備室へ向かった。
美術室に入り扉を閉め、準備室のドアを開くと奥の机にユファが座っていた。
 
「ええっと、ヒロコに聞いて来たんだけどさ、俺を呼んだのってユファ?」
「うん。来てくれないかと思った。
ほら、XXと私って、高校別々になっちゃうじゃない?だから言っておきたいことがあって」
俺はドキドキしながら答えた。
「言っておきたいことって?」
「XX……君って、好きな子とか、付き合っている子って居る?」
「いないよ」
「……私のこと嫌い?」
「いや、そんな事はない」
「じゃあ、高校に行っても、私と付き合ってくれる?」
「うん、いいよ」
「うれしい!」


1963 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:05:00 ID:cFFR5zTA0
こんなやり取りをした後、俺とユファはあんな事をしたい、
こんな所へ行ってみたいなどと取り留めのない話をしていた。
そのあと、確かユファが髪留を外して、掌の上に乗せて言ったのだ。
「ねえ、見て」
俺は少し腰をかがめて髪留を見た。
「目をつぶって」
目をつぶるとユファは、俺の唇に唇を重ねてきた。
唇を重ねると、そのまま柔らかく抱きついてきた。
ユファのやわらかい唇の感触に童貞街道まっしぐらだった俺はフル勃起していた。
耳まで真っ赤に染めたユファが言った。
「これで、私とXXって、恋人同士だよね?」
「……ああ!」
「じゃあ、これからもよろしくね!」


ミユキが話し始めた。
「卒業式のあと、私、美術準備室へ行ったんだよ。手紙を持ってね。
ヒロコが、私に酷いことをしてきた罪滅ぼしに協力するって……わたしって、馬鹿だよね。
そんな言葉を信じて、徹夜で手紙を書いて、二度と行きたくなかった学校に行って。
それで、XX君が待ってるからと言われて、一生分の勇気を振り絞って美術準備室に行ったら……」
「行ったら?」
「中に……XX君とユファが居た。ユファと目が合って、思わずドアの影に隠れたわ。
それで、もう一度、準備室の中を覗いたら……あなたとユファがキスしてた。
もういいでしょ!」


1964 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:06:43 ID:cFFR5zTA0
俺は、心底オンナが、いや、人間の悪意を怖いと思った。
ユファとの思い出は、最後に彼女の裏切りにあって苦いものとなっていた。
何も、被害者面をするつもりはない。
男女間での事だ。俺の方にも大いに非はある。
だが、ミユキの話を聞いて、俺の知らなかった、
いや、薄々は気付いていたユファの黒い一面を知って、俺の背中に冷たいものが走った。
一時は何も見えなくなるくらいに好きだった女が、得体の知れない怪物だった、そんな恐怖心だった。

 
俺は、ミユキに「お前は『エンジェル様』に何て言われたんだ?」と尋ねた。
ミユキは震えながら言った。
「大勢の目の前でレイプされた上で、首を絞められて殺されるって」
ミユキは怯え切っていた。

ミユキが帰った後、Pは俺に話した。
藤田がミユキの前で自慰行為をさせられた件には、もっと酷い前置きがあったのだ。
問題の虐めがあった日、首謀者の川村はユファや他の連中に藤田とミユキを取り押さえさせて、
ミユキの下着も剥ぎ取って言ったそうだ。
「藤田ぁ~、菅田に振られて、笑いものにされて、お気の毒。
さすがに可哀想だから、協力してあげる。ここで菅田とSEXしなよ。みんなで見届けてあげるから。
菅田も、お前にイかしてもらったら、惚れ直して告白を受け入れてくれるかもよ?」


1965 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:08:32 ID:cFFR5zTA0
ミユキは泣き叫び、藤田は必死に抵抗したらしい。
その場にいた男子生徒にボコボコにされ、周りから「早くやれ!」と囃し立てられたそうだ。
藤田は泣きながら「それだけは勘弁してくれ」と哀願した。
そして、ヒロコが提案した。
ミユキをオカズにセンズリを扱いて、射精したら勘弁してやると。
 
恐らく、エンジェル様の『お告げ』は、
この前置きがあった上での川村たちの嫌がらせと脅迫だったのだろう。
その後もミユキへの『いじめ』は続きエスカレートして、
彼女は複数の女生徒たち(男子生徒もいた可能性がある)にトイレで暴行を受け、
回復不能な深い傷を負わされたのだ。
 
俺の胸の底に吐き気がこみ上げてきた。
心神喪失のままの川村にこの脅迫状は出せまい。
他にエンジェル様の『お告げ』を知っていて、脅迫状を出せるのはユファしかいない。
俺は、Pに「協力させてくれ」と頼んだ。

俺は、これまで知らなかった過去の闇の中に足を踏み出した。


1966 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:09:38 ID:cFFR5zTA0
俺はまず、ユファの行方を捜した。


俺とユファの出会いは小学生の頃に遡る。
子供の頃の俺は、かなりの虚弱児だった。
俺は、小学校低学年の頃に川で溺れ、死に掛けたことがあった。
近くにいた大人に救助されて溺死は免れたが、その後、暫く高熱を発し危なかったらしい。
高熱で脳にダメージでも負ったのか、俺はそれ以前の記憶が殆ど無い。
この事は、以前の投稿で既に触れた。
それまで俺の父親は、ひ弱だった俺を家から殆ど出さず、
何のまじないかは知らないが、服まで女物を着せて、酷く過保護に育てたらしい。
そんな父は、俺が回復すると、教育方針を180度転換した。
他に何もしなくて良いから体だけは鍛えろと、
親友だったPの父親の紹介で俺を近所の空手道場に放り込んだのだ。
とばっちりを受ける形でPも一緒に入門した。
俺が『運動馬鹿』になる第一歩だった。
この空手道場にいたのがユファの兄の『李先輩』だった。
 
俺とPが入門した頃、まだ中学生だった李先輩は、
稽古に耐え切れず練習中に度々ぶっ倒れた俺を背負って家まで送ってくれたりした。
高校生になると道場に顔を出す機会は減ったが、
稽古の後、実家で経営している焼肉店に俺とPを連れて行った。
「沢山喰って体をデカくするのも稽古の内だ。お前はひ弱なんだから、人一倍がんばって食わなきゃ駄目だぞ」
と言って飯を食わせてくれたものだ。
小学校から朝鮮学校に通い、高校ではラグビー部に所属していた先輩は、名センターだったらしい。

だが、地元ではラグビーでの名声よりも、喧嘩の武勇伝の方が有名だった。
自宅に良く招かれた関係で、妹の由花(ユファ)とは小学生の頃からよく知った間柄だった。
ついでに、ユファといつも一緒にいたミユキとも顔見知りだった。
小学校時代、ミユキ以外のユファの友達はユファの事を『川上さん』とか『ユカちゃん』と呼んでいた。
他の子が居るときは、ミユキもそうだった。


1967 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:12:09 ID:cFFR5zTA0
俺やPと通っている学校は違ったが、ユファは『川上 由花』という通名で
ミユキと同じ日本の小学校に通っていたのだ。
李先輩がユファの友達、特に幼馴染のミユキに気を使って居たのは子供心にも良く判った。
妹、ユファに対する溺愛ぶりもだ。
俺とPにとって、李先輩は、子供好きで面倒見が良く、
兄馬鹿で、ちょっと怖いところもある兄貴のような存在だった。
高校進学を期にユファは通名を使うのを止めたのだが、
中学時代には皆から『ユファ』と呼ばれて通名を使う意味はなくなっていた。
  
中学の卒業式の日にユファから告白を受け、付き合う事になった俺は、
既に社会人となり、実家を出ていた李先輩に呼び出された。
卒業祝いと言う割には、Pとミユキの姿はなかった。
 
「まあ、飲め」と言われ、「押忍」と答えて両手で差し出したコップに李先輩がビールを注いだ。
初めて飲んだビールは苦く、中々飲み干せなかった。
「ところでさ、お前ら付き合ってるんだって?」
俺は飲んでいたビールを噴出しそうになった。
「お、押忍、ユファと……いえ、妹さんと交際させて頂いてます!」
「ふ~ん、そうなんだ。ところで、お前ら、もうヤったの?」
俺は耳まで赤くなっているのを感じながら、慌てて答えた。
「滅相も無い!まだ、手も握っていません!」少しだけ嘘をついた。
「だよな~。お前、無茶苦茶オクテそうだもんな」
「はあ、……」


1968 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:14:26 ID:cFFR5zTA0
助け舟か、ユファが李先輩に食って掛かった。
「お兄ちゃん、いい加減にしてよ!」
「お前は少し黙っていろ!」
そう言われると、ユファは膨れっ面をしながらも黙った。
「ヤリたい盛りのお前にこんな事を言うのは酷かもしれないけれど、半端な真似は許さないよ?
どうしてもヤリたいと言うなら無理には止めないが、俺とタイマンを張る覚悟はしてくれ。
そう言う事は自分で自分のケツが拭けるようになってから、
自分の力で女と餓鬼を食わせられるようになってからにしておけ」
「……押忍」

そして、更に厳しい顔つきでユファに向かって言った。
「高校生になった妹の恋愛にまでクチを挟む気はないが、出来ました堕胎しますは絶対に許さないからな?
どんな理由があっても、人殺しは許さない。
誰が相手でも産ませてキッチリ責任を取らせるからそう思え」
「判っているわよ!」
「判っていれば、それでいい。健全で高校生らしい男女交際に励んでくれ。
おい、XX、何だかんだ言っても、コイツの付き合う相手がお前で安心しているんだ。
ワガママで気の強い女だけど、宜しく頼むよ」
そう言うと、やっと李先輩は笑顔を見せた。

どこまでも兄馬鹿な人だな、と、緊張の解けた俺は微笑ましく思った。
俺は、そんな先輩を尊敬していたし、堪らなく好きだった。


1969 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:16:41 ID:cFFR5zTA0
高校生活と共に俺達の交際も本格的にスタートした。
だが、初めから何かがおかしかった。
周りの連中に言われるまでもなく、人目を惹く『華』のあったユファと俺が
『釣り合っていない』ことは自覚していた。

俺はユファに夢中だったが、同時に、彼女と会う毎に不安が増していった。
彼女に嫌われていると言う事はなかった。それは判った。
だが、愛されている自信も無かった。
少なくとも俺が好きだと想っているほどには、彼女は俺の事が好きではなかったのだろう。
逢瀬を重ねるほどに、俺は自信を喪失していった。

やがて、16歳の誕生日を迎えた俺は、親や学校に隠れて中免を取った。
バイト代や預金をはたいて中古のバイクを手に入れてからは、バイクに嵌まり込んでいった。
まだポケベルさえ普及しておらず、携帯電話など無かった頃なので、連絡は家の電話で取っていた。
だが、姉と妹、特に妹が、何故かユファを良く思っていなかったらしく、
俺が電話したり、ユファから電話が来ると露骨に機嫌が悪くなった。
放課後の俺は、ガス代やタイヤ代稼ぎのバイトに明け暮れ、
膝に潰した空き缶をガムテで貼り付け、夜な夜な峠で膝摺り修行に邁進した。
ユファの方も、急に経営が傾き出し、従業員を解雇した実家の焼肉店の手伝いで忙しそうだった。
通っている学校も違っていたので、俺達の逢う頻度はどんどん下がって行った。
電話も、姉や妹への引け目から余りしなくなっていたので、話す機会も少なくなっていた。

そして、決定的だったのは高校2年生の時のクリスマスだった。
先輩の警告を破って、半分賭けのつもりでユファに迫った俺は、見事に彼女に拒絶された。

やがて3年生になり、大学受験の準備に入った俺は
出遅れを取り戻すために、連日、選択の補習授業に出るようになった。
ユファとは公衆電話から電話を掛けてたまに話はしたが、殆ど逢う事はなかった。
次に逢う時には別れ話を切り出されそうで怖かったのだ。


1970 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:19:15 ID:cFFR5zTA0
俺にとって、バイクも受験勉強も、ユファを失う恐怖から目を逸らすための逃避行動だったように思う。
やがて年末となり、大学受験の本番が目の前に迫っていた。
クリスマスもユファとは会っていなかった。
冬休みに入っていたが、自習室として開放されていた学校の図書室で
閉室時間まで勉強していた俺は、帰り道で5・6人の男達に囲まれた。
男達は朝鮮高校の制服を着ていた。
俺は朝鮮高校に何人か知り合いもいたし、特に彼らとトラブルを起こした覚えも無かった。
 
「H高のXXだな?悪いが、顔を貸してもらえるか?」
駅は目の前だ。リーダー格のコイツをブチのめして、ダッシュで改札に飛び込めば逃げ切れるか?
……いや、無理だろう。
こういった事に関しては彼らに抜かりはない。
改札前やホームに人を貼り付けているはずだ。
誰の命令かは知らないが、彼らが失敗した時に『先輩』から加えられる『ヤキ』は苛烈を極めるのだ。
恐怖に縛られた彼らから逃げ遂せるのは不可能だろう。
俺は、「わかった」と言って、彼らと共に移動した。


1971 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:21:58 ID:cFFR5zTA0
連れて行かれた先には意外な人物が待ち構えていた。
李先輩だった。
李先輩は鬼の形相だった。

「オ、押忍!お久しぶりです」
「ああ。ところでお前、以前、俺と交わした約束は覚えているな?」
「押忍」
「ならば準備しろ。タイマンだ。死ぬ気で掛かって来い。殺す気で相手をしてやる」
「嫌です」
「何だと?今更逃げる気か?」
「いいえ。でも、俺には先輩が何を言っているか判りません」
「とぼけるつもりか?ユファのヤツの様子がおかしいとオモニから相談されて、
まさかと思って病院に連れて行ったら、本当に、まさかだったよ。
半端な真似は許さないと言ってあったよな?」

まさか……。
俺はショックから立って居られなくなり、その場に座り込んだ。
そして、精一杯に強がって言った。
「煮るなと焼くなと好きにして下さい。でも、先輩とタイマンは張れません。
俺はユファとは何もしていません!」

俺はこの時、泣いていたのだと思う。
李先輩は俺を抱き締めて言った。
「本当に済まなかったな。お前は嘘を言っていない。俺には判っている」


1972 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:23:21 ID:cFFR5zTA0
「XXはこう言ってるぞ!お前の本当の相手は誰なんだ?」
朝高生の男2人に脇を抱えられたユファが俺と李先輩の前に引き出されて来た。
「嘘よ。相手はXXよ。他に有り得ないでしょ!XXもそう言ってよ!」

……誰だ、この女?
ユファに良く似た姿をしているが、他人の空似に違いない。
この女はユファじゃない。堪らなく好きだった、俺のユファじゃない!
他人だ。
ユファに良く似た他人だ。
でなければ、悪い夢を見ているんだ!
 
「いい加減にしないか!」
李先輩はユファを平手で叩いた。
兄馬鹿で、幼い頃からユファを溺愛していた先輩が、妹に手を上げたのは初めての事だったのだろう。
ユファは一瞬、何が起こったのか理解できなかったようだ。
暫くきょとんとしていたかと思うと、やがて大声で泣き始めた。
李先輩は朝高生の一人に朝鮮語で何かを命令した。
「イエー!(はい)」と答えたその男は何処かに行った。


1973 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:25:20 ID:cFFR5zTA0
何処か近くに待機していたのか、10分ほどすると車が1台入ってきた。
車の後部座席から、見るからに柄の悪そうな男2人に脇を抱えられた、
20代後半か30代前半くらいの男が引き出されてきた。
運転席からは男達の兄貴分だろうか?
見るからに貫禄のあるスーツ姿の男が降りてきた。
李先輩はスーツ姿の男に深々と頭を下げた。
引き出されてきた男を見たユファは半狂乱になって叫んだ。
「違う、その人じゃないの!XXなのよ、信じてよ!」

俺は、もう、全てがどうでも良くなっていた。
李先輩は酷く冷たい声色でユファに言った。
「いい加減にしろ。
男女の恋愛沙汰だ。別れる別れないとか、他に好きな男が出来るとかは良くあることだ。
そんな事はどうでもいい。それはお前とXXの問題だ。
だが、お前のやっている事は何だ?
お前のやっている事は余りに誠意と言うものが無いじゃないか!」


1974 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:27:10 ID:cFFR5zTA0
李先輩は、ユファの相手の男に歩み寄った。
「お前、人の妹に、未成年に手を出しやがって……。責任は取ってもらうからな?」
更にユファに向かって言った。
「出来ました、堕胎しますは許さない。誰が相手でも産ませるといった事は覚えているな?
どんな形であれ、人殺しは許さない。
自分の行動の責任は自分で取るんだ。子供は産んでしっかり育てろ」
「ふざけるな、冗談じゃない!」
相手の男が悲鳴のように叫んだ。
「俺には妻も子供も居るんだ。そんなことをされたら身の破滅だ」
「なんだと?それじゃあ、妻子持ちが高校生の餓鬼を騙して弄んだというのか?
俺の妹に、初めから捨てるつもりで手を出したのか?」
「あ、遊びだったんだ。軽い気持ちで、こんな事になるとは思っていなかったんだ!」

……この馬鹿!
この場に居る誰もが緊張した。
これから、この場所で殺人が行われる。
だが、李先輩は冷静だった。


1975 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:29:13 ID:cFFR5zTA0
先輩はユファに向かって言った。
「店は畳む。オモニは俺が引き取る。
お前には、アボジが残してくれたあの家をやろう。だが、それだけだ。
お前とは縁を切る。もう兄でもなければ妹でもない。
俺にも、オモニにも、それからXXにも二度と近付くな」

そして、俺の両肩に手を置いて、声を震わせながら言った。
「こんな事になって、本当に済まない。
……ユファの相手がお前だったら、良かったんだけどな。
あんな馬鹿な妹で、本当に済まなかった。
俺達兄妹とのこれまでの事はなかったものとして忘れてくれ」
先輩の目からは涙が溢れていた。
始めて見る、李先輩の涙だった。
……声が詰まって俺は何も言えなかった。

スーツの男に李先輩が言った。
「すみません、彼を送ってやって下さい。お願いします」


それから、李先輩とユファがどうなったのか俺は知らない。
俺からユファを奪った、あの男がどうなったのか、生死も含めて知る事は出来ない。
俺は受験に失敗して浪人する事になった。
ユファ達の家には、いつの間にか売家の札が貼られていた。


1976 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:31:14 ID:cFFR5zTA0
俺は、キムさんが『裏の仕事』でよく利用する調査会社の男にユファの行方調査を依頼した。
呪詛や心霊関係にも明るく、そのような方面からの切り口で調査を進められる稀有な人材だ。

「アンタが社長を通さずに直接俺に調査を依頼するとは珍しいな。『あっち方面』の依頼か?」
「ああ。ちょっとした呪詛絡みでね。人を探してもらいたいんだ」
「探すのは構わないが、あんたの個人的依頼と言う事になると結構掛かるよ?」
「その点は大丈夫だ。スポンサーが居るんでね」
「そうか、1週間……いや、10日待ってくれ」
  
2週間後、調査会社の男が調査報告書を持って来た。
「アンタにしては掛かったな」
「ああ。意外にてこずったよ。だが忠告しておく。あんたは、この報告書を見ないほうがいい」
「なぜ?」
「……あんた、その女に惚れていたんだろ?他にも色々とあるんだが、辛いぞ?」
「おいおい、半人前かもしれないが、俺も一応はプロだぜ?」
「そうだったな」
彼が言ったように、調査報告書の内容は、俺にとって衝撃的で辛い内容だった。


1977 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:33:54 ID:cFFR5zTA0
李先輩とその母親は10年前の震災で亡くなっていた。
俺もPも知らなかった事実だった。
別れた後のユファの足跡も読んでいて辛いものがあった。
ユファは高校を卒業後、女の子を出産していた。
兄に厳しく言い渡されていたとはいえ、堕胎せずに出産していた事に俺は驚いた。
その後のユファの人生は男の食い物にされる人生だった。
 
最初は自宅を売りアパートを借りる際に頼った不動産業者の男だった。
ユファの実家を売った金は、1・2年で使い果たされ、
金が無くなると男はユファと子供を捨てて逃げたようだ。
男が逃げて直ぐに、ユファはスーパーのパート店員から水商売に転じた。
其処でのユファの評判は余り芳しいものではなかった。
店の売り上げを持ち逃げした、客から多額の借金をして行方をくらました等、悪評が付いて回った。
水商売の世界に居られなくなり、やがて風俗嬢に。
ヘルスからソープを経て、某新地へ。

新地時代のユファのヒモだった男の名を見て俺は驚愕した。
三瀬……中学時代の同級生だった。
ユファが新地で働いていた頃、俺は三瀬に会った事があったのだ。


1978 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:35:04 ID:cFFR5zTA0
俺が、バイトでバーテンをしていた店に三瀬が2・3人の女を伴ってやってきたのだ。
当時の三瀬は、まだ、大学生だった。
俺の居た店は、大学生が出入りするには少々高い店だった。
まあ、場違いなバカボン大学生が来る事も無かったわけではなかったので、
その時は別に疑問も持たなかった。
偶然の再会……を喜び合った俺たちは、一緒に遊びに行く事を約束して別れた。
 
後日、俺は三瀬の車に乗って、彼と遊びに出かけた。
彼の車はFD、ピカピカの新車だった。
「金回りが良いんだな」
「まあね」
そんな三瀬に連れられて行ったのが、報告書にあった某新地だったのだ。

報告書と俺の記憶を照合すると、俺はユファのヒモだった三瀬に、
ユファが働いていた新地に連れて行かれたことになる。
その頃は、俺の女遊びが一番激しかった時期だった。
何周か店をひやかして歩き回った。
中にはそそられる女もいたが、風呂もシャワーも無いと言う事で、その不潔さから
「俺はいいや」と言って店に上がる事はなかった。
報告書を読みながら、俺は心拍が上がり呼吸が苦しくなって行くのを感じた。


1979 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:37:32 ID:cFFR5zTA0
報告書には無かったので
俺は調査会社の男に「三瀬は、いまどうしているんだ?」と尋ねた。
何度か留年を重ねて大学を卒業した後、三瀬は一旦就職したが、すぐに退職して無職だったようだ。
ユファのヒモを続けていたのだろう。
その後、ユファに逃げられ、覚せい剤取締法違反で逮捕され収監されている。
自己使用だけでなく売人もやっていたようだ。
出所後、更に2度収監され、今でも中毒者ということだった。
 
俺は、更に報告書を読み進めた。

三瀬から逃げたユファは、迫田というチンピラの情婦になっていた。
迫田は薬物事犯や暴力事犯での逮捕歴が二桁近くある男で、
関東の某組から『赤札破門』『関東所払い』を受けて流れて来たようだ。
通常の破門ならば拾ってくれる組もあったのだろうが、
『赤札破門』の迫田を拾ってくれる組は無く、当然堅気にも戻れなかった。
迫田はユファを使って『美人局』を行って生計を立てていたようだ。

確かに、読んでいて辛い内容だった。
だが、最後の項目を目にした俺は、激しい怒りに捕らわれた。
信じ難く、許せない内容だった。
李先輩やおばさんが生きていたら、絶対に許さなかっただろう。
俺は、調査会社の男に「これは本当なのか?」と、確認した。
「本当の事だ」

ユファと迫田は、ユファの娘を使って『美人局』を行っていたのだ。


1980 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:39:10 ID:cFFR5zTA0
ユファの調査は進めたが、俺はユファと、できれば直接に関わるつもりは無かった。
だが、無視する事は出来なかった。
絶縁したとはいえ、李先輩が生きていて、この事を知ったならば、やはり放置しなかったはずだからだ。
こんな形で、この事を知ったのは先輩の導きかもしれない。
この際、ユファの事はどうでもよかった。
だが、ユファの娘は何とかしたかった。
巡り合わせ次第では、俺の『娘』だったかも知れない子だからだ。
俺はユファ達の棲む町へと向かった。
  
事に移る前に、俺は地元のヤクザに金を包み、話を通しに行った。
話はすんなりと進んだ。
「ああ、あの胸糞の悪いチンピラと朝鮮ピーだな。
最近調子に乗りすぎていて、目障りだったんだ。好きにしてかまわない。手出しも口出しもしないよ」
そう言って、そのヤクザはユファの娘を拾う方法まで教えてくれた。


1981 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:40:13 ID:cFFR5zTA0
ユファの娘が客を拾っていたのは、川沿いのラブホテル街だった。
夜の通りに7・8人の30代から50代くらいまでの中年女性が立っていた。
女を物色していると思われる男たちが、川沿いを何度も往復していた。
往復している男たちに女が世間話を装って話しかけ、見極めたうえで交渉に入るようだ。
俺は男たちに倣って川沿いの道を何往復かしてみた。
ユファの娘らしき女は立っていなかった。
それはそれで構わない。

やがて、一人の女が話しかけてきた。
「お兄さん、さっきからずっと歩いてるよね。夜のお散歩?」
「まあね」
少し雑談していると、女が切り出してきた。
「お兄さん、これから遊びに行かない?」
「遊び?」
「判ってるんでしょ?ホテル代別でショートでイチゴー、ロングなら3だけど、
お兄さんならニーゴでいいわよ?」
「今日はいいや」
「お目当ての子が居るの?」
「ああ。この辺に高校生くらいの子が立ってるって、ネットで見てさ」
「ああ、あの子ね。あの子は火曜日か木曜日にしか来ないよ。
その先のローOンの前の橋のところに10時位から立つけど……止めた方がいいわよ」
「なんで?」
「あの子、お客の財布からお金を抜くのよ。それがばれると……判るでしょ?」
「美人局か」
「そうそう!それで、悪い噂が立っちゃって、私たちも迷惑してるのよね」
俺は女と別れて、その日は撤収した。


1982 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:42:35 ID:cFFR5zTA0
何度か空振りした末に、俺はユファの娘を捕まえる事に成功した。
「ホテル代別で3。朝までなら5よ」
「お、強気だね」
「嫌なら……別にいいんだよ」
金髪にして、少し荒んだ感じだったが、娘には昔のユファの面影が確かにあった。
まだ幼い顔立ちと、細すぎる肩。
正直、胸が痛んだ。
「OK!5だな。朝まで楽しもうぜ」
俺は、彼女に付いて少し先のラブホテルに入った。

「お金。前金でお願い」
「嫌だね」
「……それなら帰る」
「それも駄目だ」
「……お金、出しておいた方がいいよ?」
「迫田には連絡したのか?まだだったら電話しろよ」
彼女は、驚いてはいたが妙に落ち着いていた。

「あなた、警察の人?」
「いいや。……妙に落ち着いてるんだな」
「そう?……私なんて、どうなっても、……どうでもいいから」
彼女の手首にはリストカットの痕が幾筋も残っていた。

「逃げた方がいいわよ?迫田って、無茶苦茶だから。オジサン、殺されちゃうよ」
「俺が逃げたら、お前が酷い目に合うんじゃないか?」
「そうかもね。でも、殺されはしないだろうし……。
『仕事』をしなくちゃいけないから、そんなに酷くはやられないと思う……」
正直、痛ましくってやっていられなかった。


1983 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:45:19 ID:cFFR5zTA0
「どうせ、下の出口にでも待ってるんだろ?とりあえず、ここに呼べよ」
彼女が電話すると直ぐに迫田が上がってきた。
ドアの鍵は開いていた。
室内に入って「てめえ、人の娘に……」と
言うか言わないかのタイミングで俺は迫田に襲い掛かった。
 
虚を衝かれ、怒りに歯止めが利かなくなった俺の暴力に晒された迫田は動かなくなっていた。
まあ、死にはしないだろう。
こんなクズは、死んだところで問題はないが、
死んだら死んだで面倒なので生きていた方が都合は良かった。

「こいつ、お前の親父なの?」
「違うよ。母さんのオトコ」
「お前の母さんは、……お前がこんな事をさせられているのを知ってるのか?」
「……うん」
「お前の本当の父親は?」
「良くは知らないけど、母さんを捨てて逃げちゃったらしいよ。私のせいだって」
「……そうか」
「オジサン、何なの?私をどうするつもり?」
「どうもしないよ。俺は、李 ユファの、……君のお母さんの昔の知り合いなんだ。
君のお母さんに会いたい。案内してくれないか?」
「いいよ」


1984 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:47:18 ID:cFFR5zTA0
車の中で聞かれた。
「オジサンは母さんの昔の知り合いなんでしょ?
私のお父さん、母さんの彼氏だった人のこと、……どんな人だったか知ってる?」
「さあな。俺は中学生の頃の同級生だから」
「……そうなんだ。ほら、そこの角を右に曲がって……あれよ」

ユファ達が住んでいたのは、三階建てのコンクリート作りの建物が5棟ほど建った古い団地だった。
建物のひとつの階段を上り、二階の右側の鉄扉を彼女が開けると
アルコールと生ゴミの混ざったような悪臭が鼻を突いた。
室内はゴミが散乱していて汚い。
 
彼女が「ただいま……」と消え入りそうな弱々しい声を発すると、
灯りの消えた真っ暗な部屋の奥から女の声が聞こえた。
「あ……ん?早いんじゃない?あの人はどうしたの?一緒じゃないの?」
彼女は俯いたまま、黙って立ち尽くしていた。
「黙っていないで、何とか言え!」
怒号と共に何かが飛んできた。
飲み残しの入ったビールの空き缶だった。
ブチッと、俺の中で何かが切れるのを感じた。
 
俺は、明かりを点けて部屋の奥に踏み込んだ。
何日も櫛を通していないようなボサボサ髪に
薄汚れて犬小屋の毛布のような臭気を発するTシャツ一枚の女が眩しそうに顔をしかめた。
俺は酒臭い女の髪を掴んで風呂場に引きずっていき、
薄汚れた水が張りっぱなしになった浴槽の中に放り込んだ。
「だれ?何をするのよ!」と叫ぶ女に、更にシャワーで水をぶっ掛ける。
 
「俺が判るか?ユファ!」
一瞬、呆然とした表情を見せた後、ユファは口を開いた。
「XX……なの?何で、ここに……?」
「何でも、糞も無い。何なんだ、このザマは?」


1985 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:49:53 ID:cFFR5zTA0
「アンタには関係ないでしょ!」
「ああ、関係ないね。お前がどうなろうが知った事じゃない。
けどな、お前らが娘にやらせている事は見過ごせねえ。
……おまえら、人間じゃねえよ。なんでこうなった?」
ユファは、吐き捨てるように言った。
「何を偉そうに。この子と一緒と言う事は、この子を『買った』んでしょ?
やる事をやっておいて、大口を叩くんじゃないわよ。同じ穴の狢じゃない!」
ユファは怒気の篭った声で娘に言った。
「何でこんな奴をここに連れて来たの!迫田はどうしたのよ!」
「あの人は、……この人にやられちゃった」

「アハッ、迫田がXXに?無理よ。
XXはね、小っちゃくて弱っちいんだよ。
背だって私の方が大きかったし、足だって私の方が速かったんだ」
……いつの話だ?虚弱だった小学生の時分、俺が初めてユファに逢った頃の話か。
 
「そうだ、XXは弱い子だから、私が助けてやらないといけないんだ……お兄ちゃんが言ってた」
何か様子がおかしい。
酒で泥酔しているからだと思ったが、明らかに挙動がおかしく、話す内容も要領を得ない。
そう言えば、ユファのヒモをしていた三瀬は薬物事犯で服役したし、迫田も薬物事犯の累犯犯罪者だ。
薬物中毒か……。
 
「XX、早くここを出て行って!迫田が戻ってきたら、私もあなたも殺されちゃうよ!」

ユファも娘も、迫田に暴力で支配されていたのは間違いないだろう。
俺は娘に言った。
「悪いようにはしないから、俺と一緒に来い」
「無理だよ。私もお母さんも迫田に殺されちゃうよ?」
「その迫田から逃げるんだよ。迫田はさっきのホテルでまだノビてる。逃げるなら今しかないぞ?
ここに居て、迫田が戻って来たら、また同じ事の繰り返しだぞ?
一緒に来い。何があっても今の状況よりはマシだろう?」
「……判った」
「ユファ、嫌だと言っても、お前には一緒に来てもらう。問い質さなければならない事があるからな。
2人とも、身の回りの荷物を纏めろ。30分後に出るぞ」
  
俺はPに連絡を入れ、彼とミユキの元へと向かった。


1986 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:51:04 ID:cFFR5zTA0
俺は、Pの元にユファとその娘を連れて行った。
ユファは思った通り、重度の覚醒剤中毒だった。

艶を失くした髪や肌はボロボロで老婆のよう。
重度の覚醒剤中毒患者に特有の症状らしいが、歯がボロボロに腐り、
腐敗したキムチのような耐え難い口臭を放っていた。
痩せ細り骨ばった体は30代の女のそれではない。
やはり薬物中毒患者に多いと言う肝疾患を患っていたため、黄疸で白目も黄色く変色していた。

変り果てたユファの姿に、俺は少なからぬ衝撃を受けた。
俺は、ある医師を頼りユファと娘を診させた。
だが、その前にすることがあった。
ミユキに送られてきた『脅迫状』について問い質さなければならない。
  
ミユキとユファが対面したのは、中学卒業以来、20年ぶりのことだった。
ミユキは、あまりに変わり果てたユファの姿に絶句していた。
ユファは、俯いたままミユキの顔を見ようとしない。
Pが、ユファにミユキに送られてきた脅迫状、
『呪。****』と赤文字で書かれた『エンジェル様』の文字盤を見せながら言った。
 
「手短に聞こう。これをミユキに送りつけたのはお前か?」
「いいえ」
「本当に?」
「ええ、本当よ。でもね、ミユキや他のみんなを呪っていなかったかと言われれば、嘘になるけどね。
XX、あんたの事もね」


1987 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:53:25 ID:cFFR5zTA0
 Pがそれまでの経緯をユファに話して聞かせた。
ユファは驚いていたが、「結局、エンジェル様のお告げは全て当たったのね」と呟いた。

俺は、ユファに尋ねた。
「お前は『エンジェル様』に何て言われたんだ?」と。
ユファは声を震わせて答えた。
「一生、生き地獄……」
俺は何と言って良いか判らなかった。
代わりに尋ねた。
「ミユキに脅迫状を送りつけた主に心当たりはないか?」
ユファは首を横に振った。
……振り出しか。
 
最後に、俺はユファに訊ねた。
「なぜ、ミユキにあんな真似をしたんだ?お前たち、友達じゃなかったのかよ」
「そうね、私にとっては唯ひとりの友達かもね。私を初めから本名で、
『ユカ』じゃなくて、ちゃんと『ユファ』と呼んでくれていたのはミユキだけだったからね」
「だったら、何故?」
「友達だから、ミユキの下に立つことは絶対に出来なかったのよ」
「なんだよ、上とか下って!……友達というのは対等なものじゃないのか?」


1988 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:55:09 ID:cFFR5zTA0
「アンタには判らないでしょうね。……P、アンタになら判るでしょう?」
Pは苦々しい表情で言った。
「……ああ。わかるよ」
「ミユキは、私がどんなに頑張っても敵わない位に頭も良かったし、
女の私から見ても羨ましいくらいに可愛かったからね……。
何をやっても敵わない。
……そんなミユキの下に立ったら、惨めじゃない。
アンタやPだって、兄さんだって私よりミユキの方が好きだったでしょう?」
「待てよ、少なくとも先輩は、いつもお前のことが第一だったじゃないか。
ミユキがお前の一番の友達だったから、気を使っていただけだろ?
俺だって、お前と付き合っていたじゃないか。少なくとも、俺は本気でお前のことが好きだったぞ?」
「いいえ、それは嘘。でなければ、あなたがそう思い込もうとしていただけ」
俺が言い返そうとするのを遮るようにミユキが言った。
「卒業式の日、美術準備室であったことは、なんだったのよ?」
 
「兄さんはね、あなたのことが好きだったのよ。本当にね。
まあ、あの兄さんだから、あなたが気づかなくても仕方ないけどね。
なのに、あなたはXXまで……許せなかったわ。
……ねえ、XX。あなた、あの日、告白したのが私じゃなくてミユキだったら、
ミユキと付き合っていたんじゃない?
私よりも、ミユキに告白された方が嬉しかったんじゃない?」
「もしもの話をされてもな……。
俺はお前と付き合った。あの日のことは物凄く嬉しかった。舞い上がるくらいにな。それだけだ」
「相変わらず、狡いのね。……もういいでしょう?疲れたわ」


1989 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:57:06 ID:cFFR5zTA0
事件は振り出しに戻った。
 
俺とPは、千津子と奈津子の『力』によって負ったダメージから
回復するために静養中のマサさんに相談してみた。
マサさんは言った。
「お前たちは、ひとつ大事なことを見落としているぞ?
もう一人、ミユキを含めた『エンジェル様』のメンバー全員を呪う人物がいるだろう」
「誰ですか?」
「判らないか?藤田の母親だよ。
それとな、川村が呼び出した天使『****』と言うのは、
韓国のあるキリスト教会で猛威を振るった『巫神』……悪魔の名前なんだ。
その辺も含めてもう一度洗い直してみろ」

 
俺とPは、藤田・川村を中心に過去を洗い直した。
すると、意外な事実が浮かび上がってきた。

藤田家と川村家は、両家に子供が生まれる前から接点があった。
両家はあるキリスト教会の信者であり、その教会の牧師は韓国人だった。
俺の母親もクリスチャンだがカソリックなので、プロテスタント系の地元のその教会には通っていなかった。
その韓国人牧師には、韓国人聖職者にありがちな問題行動があった。
藤田の母親は、Pの実家が経営する店でパート店員として働き、
一人息子の藤田を女手一つで育てていた。
藤田の父親は、藤田が小学生の時に自殺している。
川村の両親も、川村が中学生の頃から夫婦仲が悪化し、
娘が心神喪失状態になると父親が家を出て帰らなくなり、やがて離婚が成立した。


1990 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 07:58:26 ID:cFFR5zTA0
Pが主に動いて、意外な、そしておぞましい事実が明らかになった。

藤田の父親の自殺と川村の父親の出奔の原因は、共に妻の不貞だった。
そして、妻たちの不倫の相手は、共に教会の韓国人牧師だった。
その牧師が川村と藤田の本当の父親だったのだ。
更に、川村の問題行動……藤田への悪質で執拗ないじめが始まる少し前に、凶悪な事件が起こっていた。
中学生になったばかりの川村は、血縁上の父親でもある韓国人牧師に強姦されていたのだ。
事件を揉み消すために、教会から信者に多額の金が流れ、
問題の韓国人牧師は韓国に帰国していた。

この韓国人牧師は日本に来る前、韓国の教会で起こったある事件に連座して
韓国の宗教界に居られなくなり、その過去を隠して来日していた。
その事件とは、聖職者数名が未成年者を含めた多数の信者女性を集めて
『サバト』を開いていたというものらしい。
川村が呼び出した天使……いや、悪魔『****』とは、その『サバト』で呼び出されていたモノらしい。
どうやら、問題の韓国人牧師は日本でも『サバト』を開いていたようだ。
そこで、川村は牧師に強姦され、
父親の自殺時に藤田が知ることになった自らの出生の秘密を知る事になったようだ。
川村が幼馴染の藤田に抱き続けた恋心は激しい憎悪に変わり、
その憎悪は藤田が想いを寄せた菅田ミユキにも向けられた。


1991 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 08:00:59 ID:cFFR5zTA0
俺たちは、藤田の母親を問い詰めた。
藤田の母親は、驚くほどあっさりと、ミユキに脅迫状を送った事実を認めた。
息子を自殺に追い込んだ連中の幸せな様子が許せなかった……らしい。
だが、それだけではなかった。
 韓国人牧師に逃げられた藤田の母親は、
父親の自殺以降、自分に軽蔑の視線を送り続けていた我が子を『****』に捧げていた。
息子を生贄に、牧師の『寵愛』を奪った川村を呪ったというのだ。
狂っている……
そう形容するしか言葉が思いつかなかった。
そんな、藤田の母親の怨念に再び火をつけたのは、息子が想いを寄せていた、菅田ミユキの結婚話だった。
ミユキはPのプロポーズを受け入れていたのだ。

そうだ、思えばPは小学生の頃、俺と一緒に李先輩の所に遊びに行っていた頃からミユキが好きだったのだ。
Pは、長いあいだミユキの相談に乗り続け、彼女を支えていた。
「水臭いじゃないか、P!おめでとう。何で話してくれなかったんだ?」
「……全て片付いてから話すつもりだったんだ。
それに、ミユキと結婚する前に、やっておかなければならないことがあるからな」
「やっておかなければならないこと?」


1992 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 08:02:31 ID:cFFR5zTA0
「ああ、俺は、呪術の世界の一切と、マサさん達と今度こそ手を切る。
恐らく、すんなりとは抜けることは出来ないだろう。
だが、俺は、ミユキ以外の全てを失っても、絶対に抜けてみせる」
「そうか……」
「だから、お前とも……」
「判るよ……皆まで言わなくていい」
「すまない、俺がお前をこんな世界に引き摺り込む原因を作ったのに……」
「Pそれは違う……こういう形だっただけで、こうなることは必然だったんだ。
うまく抜けて、ミユキを幸せにしてやってくれ。
もし、俺がお払い箱になって足を洗うことができたら、その時は就職の斡旋でもしてくれよ」
「ああ、必ずな。待っているよ……必ず来てくれ」


1993 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 08:04:14 ID:cFFR5zTA0
俺は、ユファのことを弁護士をしている大学時代の友人に頼んだ。
彼女は、DVや少年問題をライフワークにしている。
彼女の活躍で、ユファには執行猶予が付き、実刑は受けずに済んだ。
しかし、彼女はもう手遅れの状態だった。
肝臓を完全にやられ、売春や薬物中毒といった経歴から恐れていた感染症にも罹患し、
既に症状が出始めていた。

俺は、妹の久子にマミの診察と治療を依頼した。
最悪の事態も含めて、ある程度の予想はしていたが、マミは数種類の病気に感染していた。
だが、不幸中の幸いで、マミの罹っていた病気は、全て治療可能なものだった。
しかし、他方で、慢性化していた病は、マミから受胎能力を奪い去っていた。
そして、肉体よりも精神的なダメージの方がより深刻だった。
自殺願望が強く、拒食の傾向が顕著に出ていたのだ。


1994 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 08:06:01 ID:cFFR5zTA0
俺は、療養中のユファに面会に行った。
精神医療のことは全く判らないので、医師の指示に従うしかなかったのだが、
マミはユファには会わせない方が良いらしい。
死相の浮かんだユファは、痩せこけて老婆のようだった。
俺は、カサカサで骨張った小さな手を握った。
 
俺が手を握ると、ユファが目を覚ました。
暫く無言の状態が続いたが、俺は特に答えを聞くつもりもなく言った。
「俺たち、なんでこんな風になっちまたのかな……」

ユファが俺を見つめながら言った。
「あなたの妹さん……久子ちゃんって言ったかしら?
あの子に言われたのよ……お兄ちゃんは、ずっと無理をしているって。
私と付き合うようになってから、あなたが全然笑わなくなったって……
お兄ちゃんのことが好きじゃないなら、もう解放してあげて下さいってね。
泣きながらよ?……ブラコンよね、重症の」
「ブラコンについては、お前は人のことは言えないだろ?」
「そうかもね。でもね、妹さんに言われて、納得したわ。
私、付き合っている間、あなたの笑顔を見たことなかったもの。
子供の頃、お兄ちゃんやミユキたちと遊んでいた頃は、あなたはよく笑っていたのにね。
私、あなたの笑顔が大好きだったの」


1995 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 08:08:44 ID:cFFR5zTA0
「無理をしていると言えばそうだったかもな。
臭い言い方をすれば、お前は俺にとっては眩しすぎたから。
周りの連中にも言われていたけれど、俺は、お前とは釣り合っていないってね。
妙なコンプレックスを感じていたのは確かだよ。
結局、俺はお前と向き合うことから逃げていたんだよな」
「馬鹿ね。私から、あなたに告白したのよ……周りから何を言われても関係ないじゃない?
何も気にしないで、私だけ見てくれていたら良かったのにね」
「そうだな」

「あのクリスマスの夜……なんで、途中で止めて、何もしないで帰っちゃったの?すごく、悲しかった」
「お前に拒絶されたと思って……判っているよ、俺がヘタレだったんだよ。
妙なコンプレックスを持っていて、萎縮してしまったんだ」
「私たち、付き合うのが少し早すぎたのかもね……
もう少し、大人になってから付き合えば、幸せになれたかも。
少なくとも、マミをあんな風にはさせなかった……あの子を愛してあげられたかも知れないのにね」
「……」
「あの子が、あなたの子だったら……」


1996 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 08:10:57 ID:cFFR5zTA0
「苦労することが分かっていても、お前はあの子を産んだ……堕ろすって選択肢だってあったのにな。
それに、あの子を産んだあとだって、捨てると言う選択肢があったはずだ。
でも、お前はそうしなかった。
……それは、心の底では、お前があの子を愛してるってことじゃないか?
そうでなければ、俺は今日、お前に会いに来ることはなかったよ」

「でもね、あの子を見ていると、お兄ちゃんやミユキ、
それにあなたを裏切った自分の愚かさを突き付けられるのよ。
自業自得なのは分かっているの。
それなのに……何の罪もないあの子を傷つけてしまうのよ。
わたし、あの子の笑ったところを一度も見たことがない……」
ユファは泣き始めた。そして、言った。
「こんなことを頼めた義理ではないのは判っている。
でも、私にはあの子の事を見届ける時間はないと思うから……あの子のことをお願いします」
  
その後、色々とあったが、俺と妹が両親に頼み込み、
弁護士の友人や、その他多くの人々の働きがあって、マミは俺の実家に身を寄せることになった。


1997 :傷跡 ◆cmuuOjbHnQ:2012/12/19(水) 08:14:02 ID:cFFR5zTA0
夕食のあと、俺は父の書斎に行った。
そこで、両親に切り出された。
「マミちゃんの事なんだが……素子と久子の了解はとってある。後は、お前の了解を得るだけなんだ」
「……なんだよ」
「あの子の事情は、全て知っている。
その上での事なんだが、お前さえよければ、あの子を養女に迎えたいんだ。
私と母さんが生きている間にあの子を嫁にでも出してあげられれば良いのだけど、
父さんも母さんも、もう年だからな」
「いい話じゃないか。俺に異存はないよ。ありがとう」
「そうか!あの子の前で揉めるのは避けたかったんだ。それじゃ、あの子に話してみるよ」
  
思いがけない形で、俺の心残りだった懸案は片付いたようだ。
思い残すことは、もうない。
これまでのマミの人生はあまりに辛く、酷いものだった。
すぐには無理かもしれないが、人並みに学び、人並みに遊んで、人並みに恋をして、
泣いて、そして笑って欲しいのだ。
マミが幸せで、いつも笑顔でいてくれるなら、俺のこれまでにあったこと全てに意味が見出せるだろう。
例え、明日『定められた日』が来ても、俺は満足できるに違いない。



おわり




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http://toki.2ch.net/test/read.cgi/occult/1280200761/

268 :本当にあった怖い名無し:2010/08/03(火) 02:27:22 ID:KaiMAJom0

中学の時に自分も実際に見た、隣のクラスの話し

隣のクラスは頭に軽い障害がある男子一人をほぼクラス全体でいじめてた。
知的障害、自閉症、そいつがどんな病気だったのか実際知らないけど、
見た目も肥満で常にオドオドしてて
とにかく何をやっても駄目な奴だったのは知っている。

言葉から始まったイジメは数カ月後には暴力になったらしい、
数人で頭を殴ったり、裸にしてゴミ箱に逆さに入れたりしてるのを自分も数回見た。
でもそいつは先生に言ったりしなかったらしい、
心底おびえきってたのか、言う頭すらなかったのか。

で、事件はたくさん宿題を出された夏休みが明けて、二日目の登校日に起きた。
そいつのクラスは美術の時間だった。 
    


270 :268:2010/08/03(火) 02:54:06 ID:KaiMAJom0

つづき

夏休みの宿題で、美術では絵を提出することになっていた、
やっぱりみんなが期待するのはそいつの絵だった。
そしてそいつの番が来て、みんな呆れた。

綺麗に塗られた黄色い背景、真ん中で可愛いカエルが三匹♪を出して唄っている、そんな絵だった。
誰もが、お前自分で描いてないだろと笑いながらヤジを飛ばした。
先生もこう言った
「○○、自分で描こうな」と

その瞬間そいつは机を叩いてこう叫んだらしい
「おれがしゃべってたのに!おれがしゃべってたのに!」
一同、は?となっているとそいつは走り出して、
美術室のドアに思い切り体当たりしてドアを破り、そのまま倒れて動かなくなった、
そのまま病院に連れていかれ、そいつはそれから学校に来なくなった。

それから数週間後、知人が登校すると教室が騒がしかった。
なんでもそいつが引っ越すことになったらしく、朝早くに両親と担任に挨拶をしに来たとのことだった。
そして担任の先生はそいつがみんなにありがとうと言っていたことと
一枚の絵を預かったから後でみんなで見て
教室に飾っておくように、と言って職員室に戻って行った。


272 :268:2010/08/03(火) 03:12:29 ID:KaiMAJom0

つづき

担任がいなくなると、
みんな気持ち悪いとか言いながら、絵の入った筒を投げたりゴミ箱に入れたりしていたらしい。
それで、誰かが投げた時に筒の蓋が取れて丸まった画用紙が飛び出てきた。
知人が広げた瞬間クラス全員が絵から離れた。

その絵は明らかにそいつが描いた物ではなく
この教室の絵だった
ひどく薄暗く
でもかなりリアルに描かれた教室。

そしてそいつ以外の全員の机に葬式用と思われる花が置いてある絵だった。
自分も見せてもらったが、両親がそういう意図で描いたのは間違いないなと思った。
担任は頑なに飾ると言い張り、
結局その絵は知人達を見続けるように黒板のうえに貼られていた。

その後どうなったとかはありません。
ただ自分もイジメを見て見ぬふりをしていた事実があり、
今もあの教室の絵に呪われているような感覚に陥るのです。


277 :本当にあった怖い名無し:2010/08/03(火) 08:02:47 ID:lhnCIaTz0

知能障害が自閉症か分からんが、
芸術関係の能力が秀でている場合も有るから、意外と本人が書いたかもしれんな。



【胸糞注意】
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/study/9405/1209619007/-100

219アルマ:2009/02/03(火) 12:33:31 ID:nVFfsy..O

本当に体験した怖い話なんて、その次の日くらいに色々な人に話したくなりませんか。
大分月日は経っていますが、またこの話をしたくなりました。
国語力ない中学生なので、
文法的に可笑しな部分があったり、誤字があったりしたら見逃してください。


俺と幼なじみのFがまだ小学生の頃。
ジュンくんという学校で毎日いじめられている男の子がいた。
彼はメガネをかけ、身体もひょろひょろで、非常に気持ち悪い顔をしていた。
彼とFと俺は偶然的にも団地住まいで、プラス三人とも同じ棟だった。
更に俺たちは同じクラスメイトでもあった。

「じゅ~んく~ん、あっそびっましょ!!」
俺たちはよく、家に引きこもってるジュンくんを表に出し、Fと一緒に暴力したり、いじめたりしていた。
ジュンくんの両親の帰宅は夜遅く、昼間は居ない。
それを知っていたこともあり、基本どんな時でもジュンくんに対してはやりたい放題であった。
外で呼ぶ俺たちの声を無視すると、
学校で更にひどくいじめられる事を知っていたジュンくんはいつも素直に出てきた。


220アルマ:2009/02/03(火) 12:38:59 ID:nVFfsy..O

外ではよく「ジュンくんごっこ」をしていた。
内容は俺たちの指示どおりに動いて、任務を達成させるという単純なものだった。
失敗すると顔面パンチの刑であった。
指示内容の大体が「ズボン脱いで商店街一周」とか
「知らない人に説得してジュースをおごってもらう」とか、普通じゃ出来ない事だった。
しかし、ジュンくんは俺たちが出した任務を時々成功させた。
それもあり、この遊びは非常に楽しく、盛り上がった。

雨の日は勝手に土足で家に上がり込み、
冷蔵庫の中にあるアイスを食ったり、戸棚にしまってあるお菓子を食ったりしていた。
「お母さんとお父さんには全部俺がやったって言えよ」と
ジュンくんに言い聞かせ、俺たちは完全やりたい放題だった。
当然の様にジュンくんはいつも泣きそうな顔をしていた。
俺はそんなジュンくんの表情を見ると嬉しくなり、更にいじめたくなった。
本当にこの頃の俺はひどく腐っていると思う。


221アルマ:2009/02/03(火) 12:39:57 ID:nVFfsy..O

ある日、超健康で風邪をひかなかった俺は39度を越える高熱を出した。
熱はなかなか下がらずに、学校も5日間は休んでいた。
その頃、Fも俺と同じくらいの高熱を出し、寝込んでいた。
そして、何とか熱は下がり元気になった俺たちはテンションあげあげで久しぶりに登校していた。

登校中、偶然にも俺たちの目の前にジュンくんがいた。
「よう、ジュンくん久しぶり」
そう言い、俺はジュンくんの髪の毛を力一杯後ろへ引っ張った。
ジュンくんは勿論背中ごと地面に落ちた。
「おい!放課後久々のジュンくんごっこやっからな!きゃはは!」
そう言い、俺たちは地面に倒れこんだジュンくんを置き、笑いながら道路を突っ走った。
すると、当然足を誰かに引っ掛けられた感じになり、俺とFはほぼ同時に顔面から地面に転んだ。

顔をあげた時に、生暖かいものが顔に付いている事に気が付いた。
手で触り確認すると、血がべっとり付いていた。
俺たちが転んだ地面には粉々になった鋭いガラスの破片があっちこっちに散乱していた。
それまでは痛みはなかったが、ガラスで顔が切れてると分かると、
顔全体に衝撃的な激痛が走った。
俺は叫びながら横にいるFを見ると、Fは死んでるようにぐったりしていた。
俺もあまりの痛さに意識が遠ざかっていくのを感じていた。

破片塗れの地面に座っている俺の横をジュンくんが何も知らないかのように通っていった。
「おい!助けろよ!」
ジュンくんはやや俺に振り向き、今までに見たことのない笑顔を見せた。
俺はその瞬間気絶した。


222アルマ:2009/02/03(火) 12:41:00 ID:nVFfsy..O

次に気が付くとそこは病院のベットの上だった。
俺の顔には包帯が巻かれていた。
俺の顔はもうやばくなってるんだろうな…という確信と共に、Fの容態も心配していた。
また学校に行けない悔しさと悲しさ、そして、ジュンくんのあの時の笑顔に壮絶な怒りを感じていた。
「退院したら、あいつフルボッコだ!」

…。

俺は早いか遅いか分からないが、10日間くらいでもう自宅に帰された。
俺の顔にはまだ少量の包帯が巻かれていた。
「そんな顔じゃ、学校行きにくいでしょ?まだ休みましょ」
母親がそう言い、俺はまだ学校に行けなかった。
たしかに、この顔じゃぁ外にも出たくないと思っていた俺だったが、
ジュンくんをぶん殴りたい気分で染まっていた。
俺は母親の目を盗み、3つ下の階にあるジュンくんの家へ向かった。

この日は日曜日。
時刻も午前11時程の時間だった。
階段から顔を覗くと駐車場があるのだが、そこにはジュンくんの家の車は無かった。
もしかすると家にはジュンくんが一人でいる可能性があると思い、
俺は手を鳴らしながら勝手にジュンくんの家に上がり込んだ。

あけた瞬間に分かったが、人のいる気配がなかった。
案の定、中に人はいなかった。
俺は土足で居間へ行き、そのままジュンくんの部屋へ向かった。
ゲームでも盗んで帰るかと思い、ジュンくんの机をめちゃめちゃに漁った。
いくつか楽しそうな漫画とゲームボーイカセットがあったので、それを手に取り帰ろうとした。
すると、ジュンくんの机の椅子に日記帳みたいなものがあった。


223アルマ:2009/02/03(火) 12:41:56 ID:nVFfsy..O

ジュンくんの日記帳だ!これは学校でネタになるぞ。と思い、それも持ち帰った。

家に帰り、母親に見つからないように盗んだ品々を押し入れに隠し、
日記帳だけをこっそり持ち出し、そのままトイレに行き、読むことにした。

日記帳を開いた瞬間、思わず悲鳴を上げた。

1ページ1ページに良く分からないが、お経のような…。凄く気味悪い漢字がぎっしりと書いてあった。
「呪」とか「憎」という字が多かったのを覚えている。
ページの書き始めには俺とFの名前が共通して書かれていた。
ページを捲りまくり、40ページ目くらいに「藤○ ○○(Fの本名)」と血色で真ん中に大きく書かれ、
その名前を囲むように不気味な漢字がぎっしり書かれていた。
次のページにはそれと同じように、今度は俺の名前が書かれていた。
が、まだ書き途中な感じで、名前の周りには、Fと比較して半分ほどしか漢字は書かれていなかった。


俺はその日記帳を捨てずに記念品として今でも持ってます。

痛々しい傷跡は残ったが、顔も大分良くなり、学校へ登校した。
久しぶりに再会したクラスメイトのみんなは温かく俺を迎えてくれて、俺も内心ホッとしていた。
そこにはジュンくんとFの姿はなかった。
話を聞くとジュンくんは、俺があの日記帳を盗った次の日に引っ越していた事が分かった。
そして、Fの机には菊の花が添えられていた。
あの事故で、ガラスの長細い破片がFの喉に突き刺さったらしい。
勿論、Fは助からなかった。

家に帰ると、学校で堪えていた涙を大量に流した。 
…もしかして、ジュンくんは何か知っていたのか?
これは日記帳と何か関係あるのか…?と思い、しまっておいたジュンくんの日記帳を思わず取り出した。 
ページを捲りまくり、そういえば最後のページを見ていなかったなと思い、
最後のページを捲ってみた。 

そこには、「藤○ ○○(Fの本名)」と書かれ、その名前のすぐ下に、
棒人間が血塗れになって死んでいる絵と、その横で泣いている棒人間の絵があった。
泣いている棒人間の横には、俺のフルネームが書かれいた。


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