サイケデリック・奇譚

永遠の日常は非日常。

タグ:メンヘラ

802 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 05:27:36 ID:UOWDTjZwO
警官『自宅前をパトロールしてると、玄関に人影が見えまして、
あの女なんですけど・・・しゃがみ込んで、ライターで火を付けていたんですよ。
玄関先に古新聞置いてますよね?』
母『いえ、置いてないですけど・・・?』
警官『じゃあ、これもあの女が用意したんですかねー?』と指差した。
そこには新聞紙の束があった。
確かに、うちがとっている新聞社の物では無かった。

警官が『ん?』と何かに気付き、新聞紙の束の中から何かを取り出した。

木の板。
それには『○○○焼死祈願』と、俺のフルネームが彫られていた。
俺は全身に鳥肌が立った。
やはり俺の名前を調べ上げていたんだ。
もし警察がパトロールしていなかったら・・・ と、少し気が遠くなった。

母は泣きだし、俺を抱き締めて頭を撫で回してきた。
警官はしばらく黙っていたが、
『実はあの女・・・少し精神的に病んでまして・・・○○町にすんでいるんですけど、
結構苦情・・・まぁ、同情の声というのもあるんですがねぇ・・・』と、中年女の事を語りだした。





810 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 05:55:14 ID:UOWDTjZwO
『あの女、1年前に交通事故で、主人と息子を亡くしてまして・・・
それ以来、情緒不安定と精神分裂症というか・・・まぁ近所との揉め事なども出てきだしましてね。
山で発見された少女の写真で、あの女の特定は出来ていたんですよ。
二年前の交通事故・・・
あの少女が道路に飛び出してきて、ハンドルをきって壁に衝突。
それで主人と息子が亡くなったんですよ・・・
飛び出した少女は無傷で助かったんですが・・・
以来、あの少女の家にも散々嫌がらせをしているんですよ。
ただ事故が事故なだけに、少女の家からは被害届けはでてないんですが・・・
あの少女を相当怨んでいるんでしょうね・・・』


俺はその話を聞き、同情などは一切出来なかった。
むしろ『中年女』の執念深さがヒシヒシと伝わってきた。
何よりも、警官も認める情緒不安定・精神分裂症。これでは、すぐに釈放になるのではないか?
釈放後、また『中年女』の存在に怯え生きていかなければならないのか?
警官の話を聞き、安堵感よりも絶望感が心に広がった。



813 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 06:10:00 ID:UOWDTjZwO
それから5年。
俺、慎、淳は、それぞれ違う高校に進んでいた。
俺達はすっかり会うことも無くなり、それぞれ別の人生を歩んでいた。
もちろん、『中年女』事件は忘れることが出来ずにいたが、恐怖心はかなり薄れていた。


そんな高一の冬休み、ひさしぶりに淳から電話が掛かってきた。
『おう!ひさしぶり!』
そんな挨拶も程ほどに、
『実は単車で事故ってさぁ・・・足と腰骨折って入院してんだよ』
『え?!だっせーな!どこの病院よ?寂しいから見舞いに来いってか?』
『まぁ、それもあるんだけどさぁ・・・お前、『中年女』の事って覚えてる?
事件の事じゃなくってさぁ・・・顔、覚えてる?』
『何で?何だよ急に!』
『毎晩、面会時間終わってから・・・変なババァが、俺の事を覗きに来るんだよ・・・ニヤつきながら』



889 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/08(月) 04:07:08 ID:PxVIZDoHO
淳の発した言葉を聞いたとたんに、『中年女』の顔を鮮明に思い出した。
始めて出会った、あの夜の歯を食いしばった顔。
下校時に出会った、いやらしいニヤついた顔。
自宅玄関で見た、狂ったような叫び顔。
あれから忘れる努力をしていたが、決して忘れることの出来ないトラウマだった。

俺は淳に、『何言ってんだよ?!もう忘れろ!ほんっとオメーって気が小せぇーなぁ?!』と答えた。

自分自身にも言い聞かせるように。
『そーだよな・・・いや、こーゆーとこって、妙に気が小さくなるんだよ!』
『そーゆーとこ、変わってねーな!』と余裕を見せた。
俺自身も、あの日のまま成長していないが。

そして入院している病院を聞き、『近いうちに●本持って見舞いに行くよ!』と言い電話を切った。

電話を切った瞬間、何故か胸騒ぎがした。
『中年女』
淳の言葉が、妙に気に掛かりだした。



890 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/08(月) 04:12:16 ID:PxVIZDoHO
電話を切った後、しばらく考えた。
まさか、今更『中年女』が現れるはずが無い・・・ それにあいつは捕まったはず・・・
いや、釈放されたのか??

というか、今思えば俺達三人は、『中年女』に何をしたわけでも無い。
ただ、『中年女』の呪いの儀式を見てしまっただけなのに、こちらの払った代償はあまりにも大きい。
偶然、夜の山で出会い、いきなり襲われた。

俺達は何一つ『中年女』から奪っていない。それどころか、傷付けてもいない。
『中年女』は俺達からハッピーとタッチを奪い、秘密基地を壊し、何より俺達三人に恐怖を植え付けた。
『中年女』がいくら執念深いといっても、さすがにもう俺達に関わってくるとは思えない。
こんなことを思うのも何だが、怨むなら写真の少女にベクトルが向くはず!
俺は強引に、俺自身を納得させた。



892 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/08(月) 04:33:09 ID:PxVIZDoHO
2日後、俺はバイトを休み、本屋で●本を3冊買ってから、淳の入院している病院に向かった。
久しぶりに淳に会うというドキドキ感と、
淳が電話で言っていた事に対するドキドキ感で、複雑な心境だった。


病院に着いたのは昼過ぎだった。
淳の病室は三階。俺は淳のネームプレートを探し出した。
303号室の六人部屋に淳の名前があった。

一番奥、窓側の向かって左手に淳の姿が見えた。
『よう!淳、久しぶり!』
『おう!まぢひさしぶりやなぁ!』
思ったより全然元気な淳を見て少し安心した。

約束のエロ本を渡すと、淳は新しい玩具を与えられた子供の如く喜んだ。
そして他愛も無い話を色々した。
淳といると、小学生の頃に戻ったようでとても楽しかった。無邪気に笑えた。

あっという間に時間は経ち、面会終了時間が近づいてきた。

『んぢゃ、もうそろそろ帰・・・』と俺が言いかけると、
『実はさぁ、電話でも言ったんだけど』と淳が、真顔で何かを言いかけた。



893 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/08(月) 04:44:17 ID:PxVIZDoHO
『中年女の事だろ?』と俺は言った。
すると淳は、『気のせいだとは思うんだけど・・・
いつもこの時間に来るオバさんがいてさぁ・・・何かこう・・・引っ掛かるっつーか・・・』

俺は『だから気のせいだって!ビクビクすんなよ!』と強気な発言をした。
すると淳は少しカチンと来たのか、
『だから、勘違いかもしんねーっつってんぢゃん!ビビりで悪かったな!』
空気が重くなった。 俺は空気を読み、淳に謝ろうとした。


そのとき、
ガラガラガラ・・・
廊下に、台車のタイヤ音が響いた。
淳が『来た・・・』とつぶやく。 俺は視線を部屋の入口に向けた。
ガラガラガラ
台車は扉の前に止まったようだ。
そして、扉が開いた。

そこには、上下紺色の作業着を着たオバさんが居た。
俺は『何だよ!脅かすなよ!ゴミ回収のオバさんじゃねーか』と、少し胸を撫で降ろした。
そのオバさんは、患者個人個人のごみ箱のゴミを回収しだし、最後に淳のベットに近づいてきた。
淳が小声で『見てくれよ!』
俺はそのオバさんの顔をチラッと見た。



894 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/08(月) 04:49:40 ID:PxVIZDoHO
『・・・!』
俺は息を飲んだ。
似ている・・・いや、『中年女』なのか?
俺は目が点になり、しばらくその人を眺めていると、そのオバさんはこちらを向き、
ペコリと頭を下げて部屋を出て行った。

淳が『どう?やっぱ違うか?!俺ってビビりすぎ?』と聞いてきた。
俺は『全然ちげーよ!ただの掃除オバさんぢゃん!』と答えた。
いや、しかし似ていた。
他人の空似なのか・・・?



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679 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/06(土) 02:25:17 ID:BiI+Rh5RO
10分程してから警察が来た。
警察には父が事情を説明していた。
俺は母親と居間にいたが、少ししてから警官が居間に来て、あの夜の事を聞いてきた。
ハッピーとタッチの事、木に釘で刺された少女の写真の事、
淳の名前が秘密基地に彫られていたこと・・・

その後、放課後に出会った事など、『中年女』に係わる全ての事を話した。
そして、さっきの出来事も。

鑑識らしき人も来ていて、俺が話している間に窓の指紋を採取していた。
俺が話した内容で、警官がもっとも詳しく聞いてきたことが、少女の写真の事だった。
その少女の容姿や面識の有無等聞かれたが、それについては『よく分からない』と答えるしかなかった。
そして裏山の地図を書かされ、
翌日、警察が調べに行くと言う事になり、自宅周辺の夜間パトロール強化を約束して、
警察官は帰っていった。

結局、指紋は出なかった。

しばらくして、慎と淳の親から電話がかかってきた。
親同士で何やら話していたが、
『中年女』に関する話というより、学校にどのように説明するかを話していたようだ。





686 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/06(土) 02:56:49 ID:BiI+Rh5RO
その夜、俺は何年かぶりに両親と共に寝た。
恥ずかしさなど微塵も無く、純粋に『中年女』が怖く、なかなか寝付け無かった。


次の日の朝、母親に起こされた時には、すでに午前8時を回っていた。
『遅刻する!』と慌てると、母が『今日は家で寝てなさい』と言う。
どうやら既に学校に事情を話したらしい。
父はすでに出社していたが、母はパートを休んでいた。

慎や淳も今日は学校を休んでいるだろう・・・と思ったが、あえて電話はしなかった。
慎は恐らく、厳格な両親に怒られている。
淳の両親は、不登校になった淳の真実を知りショックを受けている。と思うと、電話するのが恐かったから。

俺は自室に篭り、『中年女』が早く警察に捕まることだけを願っていた。
一時も早く、追い詰められる恐怖から解放されたかった。

母親は何故か、『中年女』の事を口にしてこなかった。
俺への気配り?と思い、俺も何も言わなかった。

昼飯を食べ、ふたたび自室に篭っていると、ドスっと家の外壁に鈍い音が響いた。
俺はとっさに、慎だ!と思った。
あいつは俺を呼び出す時、玄関の呼鈴を鳴らさず、窓に小石を投げてくる事がしばしばあったからだ。



688 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/06(土) 03:14:45 ID:BiI+Rh5RO
俺は窓から外を眺めた。
家の前の路地にある電柱に慎がいるはず!と思ったが、慎の姿は無かった。
どこかに隠れているのかと思い、見える範囲で捜したが何処にもいない。

その時、俺の部屋の下にあたる庭先から、『キャ!』と母親の声がした。
びっくりして窓を開け、身を乗り出して下を見た。
そこには母親が、地面を見つめながら口元に手を当てがい、何かを見て驚いていた。

俺は何が起こっているのか分からず、『どーしたの!』と聞いた。
母は俺の声にギクッと反応し、こちらを見上げ、驚いた表情で無言のまま家の外壁を指差した。
俺は良からぬ感じを察したが、母の指差す方向を見た。
そこには何やら、ドロっとした紫色した液体と、ゼリー状の物が付いていた。
先程のドスっの音の正体であろう。
視線を母の足元に落とし、その何かを捜した。

そこには、内蔵が飛び出た大きな牛蛙の死体が落ちていた。
母はしばらく呆然と立ち尽くしていた。

俺はすぐに『中年女』が頭に浮かんだ。
すぐに目で『中年女』の姿を捜したが、何処にも姿は見えなかった。
母はふと思い出したように居間に駆け込み、警察に電話をした。



690 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/06(土) 04:34:37 ID:BiI+Rh5RO
母は青い顔をしていた。
恐らくこの時始めて、『中年女』の異常性を知ったのだろう。
そうだ、あの女は異常なんだ。
きっと今も蛙を投げ込んできた後、俺や母の驚く姿を見てニヤついているはず・・・
きっと近くから俺を見ているはず・・・
鳥肌が立った。


警察早く来てくれ!心の中で叫んだ。
もうこの家は家では無い。
『中年女』からすれば鳥籠のように、俺達の動きが丸見えなんだ。
常に見られているんだと感じ出した。


しばらくしてパトカーがやってきた。
昨日とは違う警官二人だった。
警官一人は、外壁や投げ込んで来たであろう道路を何やら調べ、
もう一人は俺と母に、『何か見なかったか?』『その時の状況は?』などなど、
漠然とした事を何度も聞いて来た。

最後に警官が、不安を煽るような事を言って来た。
『たしか、昨日もいやがらせを受けているんですよね?
おそらく犯人は、すぐにでも同じような事をしてくる可能性が高いです』と。

俺はたまらず、
『あの呪いの女なんです!コートを着てる40歳ぐらいの女なんです!早く捕まえてください!』
と半泣きになって懇願した。



774 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 04:31:16 ID:UOWDTjZwO
すると警察官は、
『さっきね、山を見てきたんだよ・・・
犬の死体も、板に彫られたお友達の名前も、あと女の子の写真もあったよ。
今からそれを調べて、必ず犯人捕まえるから!』と言い、俺の肩をポンと叩くと、
母の元へ行き何やら話していた。
『主人に連絡を・・・』みたいな事を言われていたようだ。
壁に付いた蛙の染み、及びその死体の写真を撮り、1時間程で警官達は帰って行った。


しばらくして父親が帰宅した。
まだ5時前だった。昨日の今日だから心配になったのだろう。
夕食の準備をしている母も、夕刊を読んでいる父も無言だったが、
どことなくソワソワしているのが分かった。
もちろん俺自身も、次にいつ『中年女』が来るのか不安で仕方なかった。

その日の晩飯は家族皆が無口で、只テレビの音だけが部屋に響いていた。

そして夜11時過ぎ、皆で床に就いた。
用心の為、一階の居間は電気を点けっぱなしにしておくことになった。



775 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 04:40:45 ID:UOWDTjZwO
その夜も家族揃って同じ部屋で寝た。
もちろんなかなか寝付けなかった。
どれぐらい時間が過ぎただろう。
突然玄関先で、『オラァー!!』とドスの効いた男の声とともに、
『ア゛ー!ア゛ー!』と聞き覚えのある奇声、『中年女』の叫び声が聞こえた。

俺達家族は皆飛び起き、父が慌てて玄関先に向かった。
俺は母にギュッと抱き締められ、二人して寝室にいた。
カチャカチャ・・・ガラガラガラガラ!
父が玄関の鍵を開け、戸を開ける音がした。



782 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 04:55:14 ID:UOWDTjZwO
戸を開ける音と共に、
『ア゛ー!!チキショー!ア゛ァー!!ア゛ァァァァ!』
再び『中年女』の叫びが聞こえて来た。
『大人しくしろ!』『オラ!暴れるな!』と、男の声もした。
この時、俺は『警官だ!警官に捕まったんだ!』と事態を把握した。


中年女は奇声を上げ続けていた。
俺はガクガク震え、母の腕の中から抜けれなかったが、父親が戻って来て、
『犯人が捕まったんだ。お前が山で見た人かどうかを確認したいそうだが・・・大丈夫か?』
と 尋ねてきた。
もちろん大丈夫ではなかったが、これで本当に全てが終わる。
終わらせることが出来る!と自分に言い聞かせ、『・・・うん』と返事し、
階段をゆっくりと降り、玄関先に向かった。


玄関先から、
『オマエーっ!チクショー!オマエまで私を苦しめるのかー!』と、凄い叫び声が聞こえ、
足がすくんだが、父が俺の肩を抱き、
二人の警官に取り押さえられた『中年女』の前に俺は立った。



791 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 05:10:12 ID:UOWDTjZwO
俺は最初、恐怖の余り、自分の足元しか見れなかったが、父に肩を軽く叩かれ、
ゆっくりと視線を『中年女』に送った。

両肩を二人の警官に固められ、地面に顎を擦りつけながら、『中年女』は俺を睨んでいた。
相当暴れたらしく、髪は乱れ、目は血走り、野犬の様によだれを垂れていた。

『オマエー!オマエー!どこまで私を苦しめるー!』

訳のわからない事を『中年女』は叫び、ジタバタしていた。
それを取り押さえていた警官が、『間違いない?山にいたのはコイツだね?』と聞いてきた。
俺は中年女の迫力に押され、声を出すことが出来ず、無言で頷いた。

警官はすぐに手錠をはめ、『貴様!放火未遂現行犯だ!』と言った。

手錠をはめられた後も、ずっと奇声を発し暴れていたが、
警官が二人掛かりでパトカーに連行した。
そして一人だけ警官がこちらに戻って来て、『事情を説明します』と話し出した。



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365 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/01(月) 14:06:24 ID:jZMGGFeIO
俺はもう一度立ち止まり、目を凝らして後ろを眺めた。
・・・やっぱり誰もいない。
確かに俺の足音にマジって、後ろから誰かが走ってくる足音が聞こえたのだが?
俺も淳のように、自分でも気付かないうちに、精神的に『中年女』追い詰められているのか?
ビビり過ぎているのか?
しばらく立ち止まり、ずーっと後ろを眺めた。


ドックンドックン鼓動を打っていた心臓が、一瞬止まりかけた。
15M程後方、民家の玄関先に停めてある原付きバイクの陰に、誰かがしゃがんでいる。
いや、隠れている。
月明かりでハッキリ黙視できないが、一つだけハッキリと見えたものがある。
コートを着ている!

しばらく俺は固まった。

隠れている奴は、俺に見つかっていないと思っているようだが、シルエットがハッキリ見える!

俺は一瞬混乱した。
中年女だ!中年女だ!中年女だ!中年女!中年女!
腰が抜けそうになったが、本能だろうか、
次の瞬間、
逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ逃げなきゃ!
と、もう一人の俺が俺に命令する。

俺は思いッキリ走った!運動会の時より必死に走った。
風を切る音以外聞こえない程、無呼吸で走った。





413 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/02(火) 17:47:42 ID:VN7lh4fvO
無我夢中で家に向かって走った。
家まであと10M。よし!逃げ切れる!

『!』

一瞬、頭にあることがよぎった。
このまま家に逃げ込めば、間違いなく家がバレる!

俺はとっさに自宅前を通過し、そのまま住宅街の細い路地を走り続けた。
当てもなく、ただ俺の後方を着いて来ているであろう『中年女』を巻く為に・・・

5分ほど、でたらめな道を走り続けた。

さすがに息がキレて来て歩きだし、後ろを振り向いた。
もう、『中年女』らしき人影も足音も聞こえて来ない。
俺は周囲を警戒しつつ、自宅方面へ歩き始めた。


再び自宅の10M程手前に差し掛かり、俺はもう一度周囲を警戒し、玄関にダッシュした。
両親が共働きで鍵っ子だった俺は、すばやく玄関の鍵を開け 中に入り、すばやく施錠した。
『フぅー・・・』
安堵感で自然とため息が出た。
とりあえず慎に報告しなければと思い、部屋に上がろうと靴を脱ごうとした時、玄関先で物音がした。

『!?』

俺は靴を脱ぐ体制のまま固まり、玄関扉を凝視した。
俺の家の玄関は、曇りガラスにアルミ冊子がしてある引き戸タイプなのだが、
曇りガラスの向こう側に・・・
玄関先に誰かが立っている影が映っていた。



451 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/03(水) 08:46:27 ID:FVrpBt6MO
玄関扉を挟んで1M程の距離に『中年女』がいる!
俺は息を止め、動きを止め、気配を消した。
いや、むしろ身動き出来なかった。
まるで金縛り状態・・・蛇に睨まれた蛙とは、このような状態の事を言うのだろう。
曇り硝子越しに見える『中年女』の影を、ただ見つめるしか出来なかった。


しばらく『中年女』は、じっと玄関越しに立っていた。微動すらせず。
ここに俺がいることがわかっているのだろうか?
その時、硝子越しに、『中年女』の左腕がゆっくりと動き出した。
そして、ゆっくりと扉の取手部分に伸びていき、
キシッ!と扉が軋んだ。
俺の鼓動は、生まれて始めてといっていいほどスピードを上げた。

『中年女』は扉が施錠されている事を確認すると、ゆっくりと左腕を戻し、再びその場に留まっていた。
俺は依然、硬直状態。

すると『中年女』は、玄関扉に更に近づき、その場にしゃがみ込んだ。
そして、硝子に左耳をピッタリと付けた。
室内の様子を伺っている!

目の前の曇り硝子に、『中年女』の耳が鮮明に映った。
もう俺は緊張のあまり吐きそうだった。鼓動はピークに達し、心臓が破裂しそうになった。
『中年女』に鼓動音がバレる!と思う程だった。



457 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/03(水) 09:18:17 ID:FVrpBt6MO
『中年女』は二、三分間、扉に耳を当てがうと再び立ち上がり、こちら側を向いたまま、
ゆっくりと一歩ずつ後ろにさがって行った。
少しづつ硝子に映る『中年女』の影が薄れ、やがて消えた。

『行ったのか・・・?』
俺は全く安堵出来なかった。

何故なら、『中年女』は去ったのか? 俺がここ(玄関)にいることを知っていたのか?
まだ家の周りをうろついているのか?
もし、『中年女』に俺がこの家に入る姿を見られていて、
俺の存在を確信した上で、さっきの行動を取っていたのだとしたら、
間違いなく『中年女』は、家の周囲にいるだろう。

俺はゆっくりと、細心の注意を払いながら靴を脱ぎ、居間に移動した。

一切、部屋の明かりは点けない。
明かりを燈せば、俺の存在を知らせることになりかねない。
俺は居間に入ると真っ直ぐに電話の受話器を持ち、手探りで暗記している慎の家に電話をかけた。

3コールで慎本人が出た。
『慎か?!やばい!来た!中年女が来た!バレた!バレたんだ!』
俺は小声で焦りながら慎に伝えた。
『え?どーした?何があった?』と慎。
『家に中年女が来た!早く何とかして!』
俺は慎にすがった。



546 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/05(金) 05:04:28 ID:8b48b6KiO
『落ち着け!家に誰もいないのか?』
『いない!早く助けて』
『とりあえず、戸締まり確認しろ!中年女は今どこにいる?』
『わからない!でも家の前までさっきいたんだ!』
『パニクるな!とりあえず戸締まり確認だ!いいな!』
『わかった!戸締まり見てくるから早く来てくれ!』


俺は電話を切ると、戸締りを確認しにまずは便所に向かった。
もちろん家の電気は一切つけず、五感を研ぎ澄まし、暗い家内を壁づたいに便所に向かった。
まずは便所の窓を、そっと音を立てず閉めた。
次は隣の風呂。
風呂の窓もゆっくり閉め、鍵をかけた。
そして風呂を出て、縁側の窓を確認に向かった。
廊下を壁づたいに歩き、縁側のある和室に入った。


縁側の窓を見て違和感を覚えた。
いや、いつもと変わらず窓は閉まって、レースのカーテンをしてあるのだが、
左端・・・人影が映っている。
誰かが外から窓に顔を付け、双眼鏡を覗くように両手を目の周辺に付け、室内を覗いている。
家の中は電気をつけていない為、外の方が明るく、こちらからはその姿が丸見えだった。
窓に『中年女』が、ヤモリの如く張り付いている。
俺は腰が抜けそうになった。



548 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/05(金) 05:31:11 ID:8b48b6KiO
これは動物の本能なのだろうか?
肉食獣を見つけた草食動物のように、俺はとっさにしゃがみ込んだ。
全身が無意識に震えていた。

『中年女』からこちらは見えているのか?
『中年女』はしばらく室内を覗き、そのままの体勢で、ゆっくりと窓の中心まで移動して来た。

そしてキュルキュルキュルと、嫌な音が窓からしてきた。
『中年女』の右手が窓を擦っている。左手は依然、目元にあり、室内を覗きながら。
キュルキュルキュル
嫌な音は続く。
俺の恐怖心はピークに達した。
何かわからないが、『中年女』の奇行に恐怖し、その恐怖のあまり、声を出す事すら出来なかった。


すると『中年女』は後ろを振り返り、凄い勢いで走り去って行った。
俺は何が起きたかわからず、身動きも出来ずに、ただ窓を見ていた。
すると窓の向こうの道路に、赤い光がチカチカしているのが見えた。
「警察が来たんだ!」
俺は状況が飲み込めた。
偶然通りかかったパトカーに気付き、『中年女』は逃げて行ったんだと。

しばらく俺はしゃがみ込んだまま震えていた。
プルルルルル!
その時、電話が突然鳴った。
もう心臓が止まりかけた。
ディスプレイを見ると、慎の自宅からの電話だった。



551 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/05(金) 05:47:22 ID:8b48b6KiO
俺は慌てて電話に出た。
『どう?』
『なんか部屋覗いとったけど、どっか行った・・・』
『そっか、親帰って来たんか?』
『いや、たまたまパトカー通って、それにビビって中年女逃げたんや思う』
『そーなんや!良かった。俺、お前んちの近くに不審者がいるって、通報しといてん。
でも、あいつに家バレたんやったら、そろそろ親にも相談しなあかんかもな・・・』
『・・・』
『俺も今日、親に言うから・・・お前も言えよ!もうヤバイよ!』
『・・・うん・・・』
そして電話を切った。


その30分後、母親がパートから帰って来た。
俺は部屋の電気を消したまま玄関に走り、母の顔を見た瞬間、安堵感からか泣き出した。
母親はキョトンとしていたが、俺はしばらく泣き続けた後、
『ごめんなさい』と冒頭に謝罪をし、『あの夜』の出来事から、さっきの出来事まで説明した。
説明の途中に父親も帰宅し、父には母が説明した。


その後、父が無言で和室の窓硝子を見に行った。
窓硝子は、鋭利な何かで凄い傷が付けられていた。
鋭利な何かが五寸釘だと、直感でわかった。
両親は俺を叱らず、母親は俺を抱きしめてくれ、父は警察に電話をかけていた。


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290 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/30(日) 02:31:44 ID:Ey4nh9XjO
この警官は、俺達の話を信じてくれてないのでは?と俺は思い始めた。
俺や慎が必死に助けを求めているのに、『親』『先生』ばかり言ってくる。
俺達は『中年女』の存在を裏付ける、証拠写真まで持参しているのに・・・
俺はもう一度警官に写真を見せつけ、『犬をこんな殺し方する奴なんだよ!』と言った。

すると警官はしばらく黙り込み、写真を手に取り、意外な一言を言った。
『ん~・・・これって犬?なの?』

『は?』と俺と慎は驚いた。
この人は何を言っているんだろう!と。
続けて警官は、『いや、君達を信じていない訳じゃないよ。じゃあもう少し詳しく教えて。ここが頭?』
警官は冗談を言っている訳では無く、本当に分からないようだ。

俺はハッピーの写真を取上げ、『だから・・・』と説明しかけて言葉が詰まった。

確かにこの写真を客観的に見ると、犬の死骸には見えないかも・・・と思った。
薄茶色に変色した骨に、所々わずかに残っている毛。

俺と慎は、ハッピーが死体になった翌日にも見ているので、
腐食が進んでいても元の形(倒れていた角度、姿)を知っているが、
知らない奴が見ると、ただの汚れた石に
汚い雑巾の様なものが、絡んでいるようにしか見えないかも知れない。





291 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/30(日) 02:56:37 ID:Ey4nh9XjO
俺は冷静に他の写真も見てみた。
板に刻まれた『淳呪殺』、少女の写真に無数の『釘』。
たしかに、『中年女』の存在に直接結び付けるのは難しいのか?
ひょっとして警官は、小学生の悪戯と思っていて、先程から『親』『担任』などと言っているのか?
俺はこのまま此処にいては危険だと感じ出した。

『絶対、親を呼び出すつもりだ!』
俺は慎に小さな声で耳打ちした。

慎は無言で頷き、アゴをクイッと動かし、外に出る合図を送ってきた。

すると次の瞬間、慎は勢いよく振り向き走りだした。
俺もすぐさま後を追い、交番から抜け出した。
後ろから『おいっ!』と警官が呼び止める声がしたが、俺達は振り向かずに走り続けた。


警官が追い掛けてくる気配は無かった。
警官はおそらく、悪戯しにきた小学生が、嘘を見破られそうになり逃げ出した。とでも思っているのだろう。



352 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/01(月) 09:22:18 ID:jZMGGFeIO
俺と慎は、警官が追って来ていないことを充分に確認し、
道端に座り込み、緊急ミーティングを開催した。
『これからどーする?』
『どーしよ・・・』

俺達は途方に暮れていた。
最後の切り札の警察にも信じてもらえず、『中年女』から身を守る術を失った。

これで全てが解決すると俺達は思い込んでいただけに、ショックはデカかった。
『このままだったら中年女に住所バレて・・・』
俺は恐かった。
すると慎が、『しばらくあの女には出くわさないように注意して・・・』と言いかけたが、
俺はすぐに、
『もう無理だよ!淳の学年とクラスがバレてる時点で,すぐに俺らもバレるに決まってる!』
と少し声を荒げた。


『でも、あの女・・・俺達に何かする気あるのかな?』
『?』
慎が言いだした。
『だってこの前俺ら、学校帰りにあの女に出会ったじゃん。もし何かするつもりなら、
あの時でも良かった訳じゃん』
『・・・』
慎が続けて、
『それに山・・・もし俺らのことを許してないなら、山に何らかの呪い彫りとかあってもいーはずじゃん』
『・・・』

たしかに。
山に行った時、新しい俺達に対する呪い的な物は無かった。
秘密基地は壊されていたが・・・
新しい女の子の釘刺し写真はあったが、
俺達・・・まして、フルネームがバレている淳の呪い彫りも無かった。



355 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/01(月) 09:38:55 ID:jZMGGFeIO
俺は内心、そーなのかな?と反論したかったが、しなかった。
慎の言う通り、実は俺達が思っている程『中年女』は俺達の事を怨んでいない、忘れかけている。
と思いたかった。
慎はもう一度、『俺らを本気で怨んでいるなら、何らかのアクションを起こすはずだろ?』
と、まるで俺を安心さすかのように言った。


そして、『学校の近くをウロついてるのも、
俺らを捜してるんぢゃなく、写真の女の子を捜してる可能性もあるだろ?』と言葉を続けた。

『そーか・・・』
俺はその慎の言葉を聞いて、少し気持ちが楽になった感じがした。
と言うか、慎の言った言葉を自分自身に言い聞かせ、自分自身を無理矢理納得させようとした。

それは現実逃避に近いかもしれない。
慎自身もそうだったのかも知れない。
もう『中年女』から逃げる術が見つからず、言ったのかも知れない。


しかし俺は、俺達は、
『そーだよな!そのうち俺らのことなんて忘れよる!』
『もう忘れとるって!』
『なんだよチクショー!ビビって損した!』
『ほんま、あの女、泣かしたろか!』
とお互い強がって見せた。
ある意味、やけくそに近いかもしれない。



363 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/01(月) 13:47:06 ID:jZMGGFeIO
しばらくその場で、慎と『中年女』の悪口などを談笑していた。
辺りは薄暗くなり始め、俺達は帰宅することにした。

慎と別れる道に差し掛かって、
『明日の帰り、淳の様子見に行こっか!』
『おう!そやな!』
とお互い明るく振る舞って、手を振り別れた。


俺の心は少し晴れやかになっていた。
そーだよな・・・慎の言う通り、中年女はもう俺達の事なんて忘れてるよな・・・と。
まるで自己暗示のように、繰り返し言い聞かせた。

足取りも軽く、石を蹴りながら家に向かった。
空を見上げると雲も無く、無数の星がキラキラ輝き、とても清々しい夜空だった。
今まで『中年女』の事でウジウジ悩んでいたのが、馬鹿らしく思えた。

自宅に近づき、その日は見たいアニメがあるのに気付き、俺は小走りで家に向かった。
『タッタッタッタッ・・・』
夜の町内に俺の足跡が響く。
『タッタッタッタ・・・』
静かな夜だった。

『タッタッタッタッ・・・』

ん?
『タッタッタッタ・・・』

俺の足音以外に違う足音が聞こえる。
後ろを振り向いた。 暗くて見えないが誰もいない。
気のせいか。
ナンダカンダ言って俺は小心者だな、と思いながら再び走った。

『タッタッタッタッ・・・』
『タッタッタッタ・・・』
ん?誰かいる。



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危険な好奇心 13

161 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/27(木) 05:39:52 ID:2G2sPLliO
慎はカメラを再び構え、あの木を撮ろうとしていた。
『ん?!おい!ちょっと来てーや!』
何かを発見し、俺を呼ぶ慎。
俺は恐る恐る慎の元に歩み寄った。
慎が『これ、この前無かったよな?』と、何かを指差す。
その先に視線をやると、無数に釘の刺さった写真が・・・

ん?たしか前もあったはずじゃ・・・

いや!写真が違う!
厳密に言うと、この前見た4・5歳ぐらいの女の子の写真はその横にある。
つまり、写真が増えている!

写真の状態からして、ここ2・3日ぐらいに打ち込まれているであろう。
この前に見た写真は、既に女の子かどうかもわからないぐらいに、雨風で表面がボロボロになっている。

新しい写真も、4、5歳ぐらいの女の子のようだ。

この時は慎に言わなかったが、
俺は一瞬、新しい写真が俺だったらどうしよう!!とドキドキしていた。
慎はカメラに、その打ち込まれた写真を撮った。

そして、『後は秘密基地の彫り込みを撮ろう』と言い、又走りだした。
俺は近くに中年女がいるような錯覚がし、一人になるのが怖く、慌てて慎を追った。





163 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/27(木) 06:07:52 ID:2G2sPLliO
秘密基地に近いてきて、俺は違和感を感じ、『慎!』と呼び止めた。
違和感。いつもなら、秘密基地の屋根が見える位置にいるはずなのだが、屋根が見えない。
慎もすぐに気付いたようだ。

このとき、脳裏に『中年女』がよぎった。
胸騒ぎがする。鼓動が激しくなる。

慎が『裏道から行こう』と言った。俺は無言で頷いた。

裏道とは、獣道を通って秘密基地に行く、従来のルートとは別に、茂みの中をくぐりながら、
秘密基地の裏側に到達するルートの事である。
この道は、万が一秘密基地に敵が襲って来た時の為に造っておいた道。

もちろん、遊びで造っていたのだが、まさかこんな形で役に立つとは・・・

この道なら万が一基地に『中年女』がいても、見つかる可能性は極めて低い。
俺と慎は四つん這いになり、茂みの中のトンネルを少しずつ進んだ。

そして秘密基地の裏側約5M程の位置にさしかかった時、基地の異変の理由が分かった。

バラバラに壊されている。
俺達が造り上げた秘密基地は、ただの材木になっていた。
しばらく様子を伺ったが、
中年女の気配もないので俺達は茂みから抜けだし、秘密基地の跡地に到達した。



181 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/27(木) 16:32:42 ID:2G2sPLliO
俺達はバラバラに崩壊された秘密基地を見て、少し泣きそうになった。
秘密基地は言わば、俺達三人と2匹のもう一つの家。
バラバラになった材木の片隅に、大きな石が落ちていた。
恐らく誰かが、これをぶつけて壊したのだろう。
誰かが?・・いや、多分『中年女』が・・・。


慎が無言で写真を撮りだした。
そして数枚の材木をめくり、『淳呪殺』と彫られた板を表にし、写真を撮った。
その時、わずかな板の隙間からハエが飛び出し、その隙間からタッチの遺体が見えた。

ハッピーとタッチ。
秘密基地よりもかけがえの無い2匹を、俺達は失った事を痛感した。


慎は立ち上がり、『よし、このカメラを早く現像して、警察に持って行こう』と言った。
俺達は山を駆け降りた。
山を降り、俺達は駅前の交番へ急いだ。
このカメラに納められた写真を見せれば、中年女は捕まる。俺らは助かる。
その一心だけで走った。


途中でカメラ屋に寄り、現像を依頼。
出来上がりは30分後と言われたので、俺達は店内で待たせてもらった。
その間、慎との会話はほとんど無かった。ただただ 写真の出来上がりが待ち遠しかった。

そして30分が過ぎた。



190 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/27(木) 22:54:20 ID:2G2sPLliO
『お待たせしましたー』
バイトらしき女店員に声をかけられた。
俺と慎は待ってましたとばかりにレジに向かった。

女店員は少し不可解な顔をしながら、
『現像出来ましたので、中の確認をよろしくお願いします』といいながら、写真の入った封筒を差し出した。
まぁ現像後の写真が、犬の死骸や釘に刺された少女の写真のみだから、
不可解な顔をするのも当然だが・・・

慎はその場で封筒から写真を取り出し、
すべての写真を確認し、『大丈夫です。ありがとうございました』と言い、代金を支払った。

店を出て、すぐさま交番へ向かった。

これで全てが終わる。
駅前の交番へ二人して飛び込んだ。
『ん?!どうしたの?』
中にいた若い警官が、笑顔で俺達を迎えてくれた。
俺達はその警官の元に歩み寄り、『助けてください!』と言った。


俺と慎は、あの夜の出来事を話した。
裏付ける写真も一枚一枚見せながら話した。そして、今も『中年女』に狙われている事を。

一通り話し終わると、その警官は穏やかな表情で『お父さんやお母さんに言ったの?』
俺たちは親には伝えてないと言うと、
『ん~んぢゃ、家の電話番号教えてくれるかな?』と警官は言い出した。



286 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/30(日) 01:58:44 ID:Ey4nh9XjO
慎が『なんで親が関係あるの?狙われているのは俺達だよ?!』とキレ気味に言い放った。
ちなみに慎の両親は医者と看護婦。高校生の兄貴は某有名私立高校生。
俺達3人の中で一番裕福な家庭だが、一番厳しい家庭でもある。

あの夜は親に嘘をついて秘密基地に行き、このような事に巻き込まれたとバレれば、
俺や淳もだが、慎が一番洒落にならないのである。

『助けてよ!警察官でしょ!!』と慎が詰め寄る。

警官は少し苦笑いして、
『君達小学生だよね?やっぱり、こーゆー事はキチンと親に言わなきゃダメだよ』
と、しばらくイタチゴッコが続いた。


あげくに警官は、『じゃあ君達の担任の先生は何て名前?』など、
俺達にとっては脅しに取れる言葉を投げ掛けてきた。

まぁ警官にとっては、俺達の保護者及び責任者から話を聞かないと・・・って感じだったのだろうが、
俺達にとって、こういう時の親や先生は、怒られる対象にしか考えられなかった。

そうこうしているうちに、俺達の心の中に、
目の前にいる警官に対して不信感が芽生えてきた。
このまま此処にいれば、無理矢理住所を言わされ、親にチクられる!と。



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295 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/24(月) 03:21:39 ID:5CaStqefO
その日は、学校で噂の『トレンチコート女』(推定・中年女)には会わなかった。
次の日も、その次の日も会わなかった。
しかし、学校では相変わらず『トレンチコートの女』の噂は囁かれていた。


慎と一緒に下校することになって五日目、俺達は久しぶりに淳の見舞いに行くことにした。
お土産に、給食のデザートのオレンジゼリーを持って行った。

淳の家に着き、チャイムを押した。
いつもの様に叔母さんが明るく出て来て、俺達を中に入れてくれた。
淳は相変わらず元気が無かった。
ジンマシンは大分消えていたが、淳本人は『横腹の顔の部分が日に日に大きくなっている』と言い、
俺と慎には全く分からなかった。
むしろ、前回見たときよりはマシになっているように見えた。

精神的に淳はショックを受けているのだろう。
俺達は学校で流れている『トレンチコートの女』の噂は、淳には言わなかった。

帰り間際に、淳の叔母さんが俺達の後を追い掛けて来て、
『淳、クラスでイジメにでも会っているの?』と不安げな顔で聞いて来た。
俺達は否定したが、本当の理由を言えないことに、少し罪悪感を感じた。





301 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/24(月) 03:40:18 ID:5CaStqefO
それから三日後、
その日は珍しく、内藤と佐々木と俺と慎の四人で一緒に下校した。
内藤は体がデカく、佐々木はチビ。実写版のジャイアンとスネオみたいな奴ら。
もう俺と慎の中で、『中年女』の事は風化しつつあった。
学校で噂の『トレンチコート女』も実在したとしても、全くの別人と思えて来ていた。

その日は、四人で駅前にガチャガチャをしに行こう、と言う話になり、いつもと違う道を歩いていた。

楽しく四人で話しながら歩いていると、
佐々木が『あ、あれ、トレンチコート女ぢゃね?』
内藤『うわっ!ホンマや!きもっ!』と言い出した。
俺はトレンチコート女を見てみた。
心の中で別人であってくれ!と願った。

トレンチコート女はスーパーの袋を片手に持ち、
まだ残暑の残るアスファルトの道で、ただ突っ立っていた。

うつむいて表情は全く分からない。

慎は警戒しているのか、小声で俺達に『目、合わせるなよ!』と言ってきた。
少しずつ、女との距離が縮まっていく。緊張が走った。
女は微動たりせず、ただうつむいていた。

女との距離が5M程になったとき、女は突然顔を上げ、俺達四人の顔を見つめてきた。
そしてその次に、俺達の胸元に目線を送って来ているのが分かった。
!名札を確認している。



306 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/24(月) 03:56:07 ID:5CaStqefO
俺は焦った。
平常心を保つのに必死だった。
一瞬見た顔で、あの日の出来事がフラッシュバックし、心臓が口から出そうになった。
間違いない。『中年女』だ!

俺はうつむきながら歩き過ぎた。
俺はいつ襲い掛かられるかとビクビクした。

どれくらい時が過ぎただろう。いや、ほんの数秒が永遠に感じた。
内藤が『あの目見たけ?あれ完全にイッテるぜ!』と笑った。
佐々木も『この糞暑いのにあの格好!ぷっ!』と馬鹿にしていた。
俺と慎は笑えなかった。

佐々木が続けて言った。
『やべ!聞こえたかな?まだ見てやがる!』
俺はとっさに振り返った。

『中年女』と目が合った・・・
まるで蝋人形のような無表情な『中年女』の顔が、ニヤっと、凄くイヤらしい微笑みに変わった。

背筋が凍るとはこの事か・・・

俺は生まれて始めて、恐怖によって少し小便が出た。
バレたのか?俺の顔を思い出したのか?バレたなら何故襲って来ないのか?
俺の頭は、ひたすらその事だけがグルグル巡っていた。

内藤が『うわーっ、まだこっち見てるぜ!
佐々木!お前の言った悪口聞かれたぜ!俺知らねーっ!』っとおどけていた。



311 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/24(月) 04:13:03 ID:5CaStqefO
もうガチャガチャどころではない。
曲がり角を曲がり、女が見えなくなった所で、俺は慎の腕を掴み『帰ろう!』と言った。
慎は俺の目をしばらく見つめて、
『あ、今日塾だっけ?帰らなやばいな!』と俺に合わせ、俺達は走った。


家とは逆の方向に走り、しばらくして俺は慎に
『アイツや!あの目、間違いない!俺らを探しに来たんや!』
慎は意外と冷静に、
『マジマジと名札見てたもんな・・・学年とクラス、淳の巾着でバレてるし・・・』
俺はそんな落ち着いた慎に腹がたち、
『どーすんだよ!もう逃げ切れネーよ!家とかそのうちバレっぞ!!』
慎『やっぱ警察に言おう。このままはアカン。助けてもらお』
俺『・・・』

俺はしばらく黙っていた。
たしかに、他に助かる手は無いかもしれないと思った。

『でも、警察に何て言う?』と俺が問うと慎は、
『山だよ。あの山に打ち付けられた写真とか、ハッピー、タッチの死体。あれを写真に撮って、
あの女が変質者って言う証拠を見せれば、警察があの女を捕まえてくれるはずや!』
俺は納得した。
もうあの山に行くのは嫌だったが、仕方が無かった。
さっそく明日の放課後、裏山に二人で行く事になった。



315 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/24(月) 04:27:46 ID:5CaStqefO
明日の放課後、裏山に行く。
その話がまとまり、俺達は家に帰ろうとしたが、
『中年女』が何処に潜伏しているか分からない為、俺達は恐ろしく遠回りした。
通常なら20分で帰れるところを、二時間かけて帰った。


家に着いて、俺はすぐに慎に電話した。
『家とかバレてないかな?今夜きたらどーしよ!』などなど。
俺は自分がこれほどチキンとは思わなかった。
名前がバレ、小屋に『淳呪殺』と彫られた淳が、精神的に病んでいるのが理解できた。
慎は『大丈夫、そんなすぐにバレないよ!』と俺に言ってくれた。
この時俺は思った。
普段対等に話しているつもりだったが、慎はまるで俺の兄のような存在だと。

もちろん、その日の夜は眠れなかった。
わずかな物音に脅え、目を閉じればあのニヤッと笑う中年女の顔が、まぶたの裏に焼き付いていた。


朝が来て学校に行き、授業を受け、放課後の午後3時半。
俺と慎は、裏山の入口まで来た。



156 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/27(木) 04:50:46 ID:2G2sPLliO
俺は山に入るのを躊躇した。
『中年女』
『変わり果てたハッピーとタッチ』
『無数の釘』
頭の中をグルグルと、鮮やかに『あの夜の出来事』が甦ってくる。

俺は慎の様子を伺った。
慎は黙って山を見つめていた。慎も恐いのだろう。
やっぱ、入るの恐いな・・・と言ってくれ!と俺は内心願っていた。

慎はズボンのポケットからインスタントカメラを取り出し、右手に握ると、
俺の期待を裏切り、『よし』と小さく呟き、山へ入るとすぐさま走りだした。
俺はその後ろ姿に引っ張られるように走りだした。

慎は振り返らずに走り続ける。
俺は必死に慎を追った。
一人になるのが恐かったから必死で追った。
今思えば慎も恐かったのだろう。恐いからこそ、周りを見ずに走ったのだろう。


あの場所が徐々に近づいてくる。
思い出したくもないのに、あの夜の出来事を鮮明に思いだし、心に恐怖が広がりだした。
恐怖で足がすくみだした時、あの場所に着いた。
そう、『中年女が釘を打っていた場所』
『中年女がハッピー、タッチを殺した場所』
『中年女に引きずり倒された場所』
『中年女と出会ってしまった場所』



160 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/27(木) 05:19:27 ID:2G2sPLliO
俺は急に誰かに見られているような気がして、周りを見渡した。
いや、誰かにでは無い。中年女に見られているような気がした。
山特有の静寂と、自分自身の心に広がった恐怖がシンクロし、足が震えだす。
立ち止まる俺を気にかける様子無く、慎はあの木に近づきだした。

何かに気付き、慎はしゃがみ込んだ。
『ハッピー・・・』
その言葉に俺は足の震えを忘れ、慎の元に歩み寄った。

ハッピーは既に土の一部になりつつあった。
頭蓋骨をあらわにし、その中心に少し錆びた釘が刺さったままだった。

俺は釘を抜いてやろうとすると、慎が『待って!』と言い、写真を一枚撮った。
慎の冷静さに少し驚いたが、何も言わず俺は再び釘を抜こうとした。
頭蓋骨に突き刺さった釘をつまんだ瞬間、
頭蓋骨の中から見たことの無い、多数の虫がザザッと一斉に出てきた。

『うわっ!』

俺は慌てて手を引っ込め、立ち上がった。

ウジャウジャと湧いている小さな虫が怖く、ハッピーの死体に近づく事が出来なくなった。
それどころか、吐き気が襲って来てえずいた。
慎は何も言わずに背中を摩ってくれた。
俺はあの夜ハッピーを見殺しにし、またハッピーを見殺しにした。
俺は最高に弱く、最低な人間だ。



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814 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 05:34:10 ID:moTdWLP+O
少し迂回して、俺達はその女の、斜め後方8M程の木の陰に身を隠した。
その女は肩に少し掛かるぐらいの髪の長さで、痩せ型、足元に背負って来たリュックと電灯を置き、
写真?のような物に次々と釘を打ち込んでいた。
すでに6~7本打ち込まれていた。


その時、『ワン!』 俺達はドキッとして振り返った、
そこにはハッピーとタッチが、尻尾を振ってハァハァいいながら、なにしてるの?と言わんような顔で居た。

次の瞬間、慎が『わ゛ぁー!!』と変な大声を出しながら走り出した。
振り返ると、鬼の形相をした女が、片手に金づちを持ち、
『ア゛ーッ!!』みたいな奇声を上げ、こちらに走って来ていた。





819 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 05:49:00 ID:moTdWLP+O
俺と淳もすぐさま立ち上がり、慎の後を追い走った。
が、俺の左肩を後ろから鷲づかみされ、すごい力で後ろに引っ張られ、俺は転んだ。
仰向きに転がった俺の胸に、『ドスっ』と衝撃が走り、俺はゲロを吐きかけた。
何が起きたか一瞬分からなかったが、
転んだ俺の胸を女が足で踏み付け、俺は下から女を見上げる形になっていた。


女は歯を食いしばり、見せ付けるように歯軋りをしながら、
『ンッ~ッ』と何とも形容しがたい声を出しながら、俺の胸を踏んでいる足を、左右にグリグリと動かした。
痛みは無かった。
もう恐怖で痛みは感じなかった。
女は小刻みに震えているのが分かった。恐らく興奮の絶頂なんだろう。
俺は女から目が離せなかった。
離した瞬間、頭を金づちで殴られると思った。



826 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 06:10:53 ID:moTdWLP+O
そんな状況でも、いや、そんな状況だったからだろうか、女の顔はハッキリと覚えている。
年齢は40ぐらいだろうか、少し痩せた顔立ち、目を剥き、
少し受け口気味に歯を食いしばり、小刻みに震えながら俺を見下す。
俺にとってはその状況が、10分?20分?全く覚えてない。


女が俺の事を踏み付けながら背を曲げ、顔を少しずつ近づけて来た、その時、
タッチが女の背中に乗り掛かった。
女は一瞬焦り、俺を押さえていた足を踏み外しよろめいた。
そこにハッピーも走って来て、女にジャレついた。
恐らく、2匹は俺達が普段遊んでいるから、人間に警戒心が無いのだろう。


俺はそのすきに慌てて起きて走りだした。
『早く!早く!』と、離れたところから慎と淳が、こちらを懐中電灯で照らしていた。
俺は明かりに向かい走った。

『ドスっ』
後ろで鈍い音がした。
俺には振り返る余裕も無く走り続けた。


慎と淳と俺が山を抜けた時には0時を回っていた。
足音は聞こえなかったが、あの女が追い掛けてきそうで、俺達は慎の家まで走って帰った。
慎の家に着き、俺は何故か笑いが込み上げて来た。
極度の緊張から解き放たれたからだろうか?
しかし、淳は泣き出した。



831 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 06:27:53 ID:moTdWLP+O
俺は『もう、あの秘密基地二度と行けへんな。あの女が俺らを探してるかもしれんし』と言うと、
淳は泣きながら『アホ!朝になって明るくなったら行かなアカンやろ!』と言い出した。
俺がハァ?と思っていると、慎が俺に、
『お前があの女から逃げれたの、ハッピーとタッチのおかげやぞ!
お前があの女に後から殴られそうなとこ、ハッピーが飛び付いて、代わりに殴られよったんや!』
すると淳も泣きながら、『あの女、タッチの事も、タッチも・・うっ・・・』と号泣しだした。


後から慎に聞くと、
走り出した俺を後から殴ろうとしたとき、ハッピーが女に飛び付き、頭を金づちで殴られた。
女は尚も俺を追い掛けようとしたが、
足元にタッチがジャレついてきて、タッチの頭を金づちで殴った。

そして女は一度俺らの方を見たが、追い掛けてこず、ひたすら2匹を殴り続けていた。

俺達はひたすら逃げた。
慎も朝になれば山に入ろうといった。
もちろん、俺も同意した。



852 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 13:45:51 ID:moTdWLP+O
興奮の為に明け方まで眠れず、朝から昼前まで仮眠を取り、俺達は山に向かった。
皆、あの『中年女』に備え、バット、エアーガンを持参した。

山の入口に着いたが、慎が『まだアイツがいるかも知れん』と言うので、
いつもとは違うルートで山に入った。

昼間は山の中も明るく、蝉の泣き声が響き渡り、昨夜の出来事など嘘のような雰囲気だ。
が、『中年女』に出くわした地点に近づくにつれ緊張が走り、俺達は無言になり、
又、足取りも重くなった。
少しずつ昨日の出来事を思い出し、例の地点に差し掛かった。
バットを握る手は緊張で汗まみれだ。


例の木が見えた。女が何かを打ち付けていた木。
少し近づいて、俺達は言葉を失った。
木には小さな子供(四・五歳ぐらいの女のコ?)の写真に、無数の釘が打ち付けられていた。
いや、驚いたのはそれでは無い。
その木の根元に、ハッピーの変わり果てた姿が。

舌を垂らし、体中血まみれで、眉間に一本釘が刺されていた。
俺達は絶句し、近づいて凝視することが出来なかった。
蝿や見たことの無い虫がたかっており、生物の死の意味を、俺達は始めて知った。



950 :本当にあった怖い名無し:2006/04/23(日) 02:32:23 ID:0yX4mhCZO
俺はハッピーの変わり果てた姿を見て、
今度中年女に会えば、次は俺がハッピーのように・・・と思い、すぐにでも家に帰りたくなった。
その時、淳が『タッチ・・・、タッチの死体が無い!タッチは生きてるかも!』と言い出した。
すると慎も、『きっとタッチは逃げのびたんだ!きっと基地にいるはず!』と言い出した。
俺もタッチだけは生きていて欲しいと思い、三人で秘密基地へと走り出した。


秘密基地が見える場所まで走ってきたが、慎が急に立ち止まった。
俺と淳は『!中年女?!』と思い、慌てて身を伏せた。
黙って慎の顔を見上げると、慎は『・・・なんだあれ?』と基地を指差した。
俺と淳はゆっくり立ち上がり、基地を眺めた。

何か基地に違和感があった。
何か・・・基地の屋根に何か付いている・・・。


少しずつ近づいていくと、
基地の中に昨夜忘れていた淳の巾着袋が(淳は菓子をいつもこれに入れて持ち歩いている)
基地の屋根に、無数の釘で打ち付けてあるではないか!
俺達は驚愕した。
この秘密基地、あの中年女にバレたんだ!
慎が恐る恐る、バットを握り締めながら基地に近づいた。



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801 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 03:48:18 ID:moTdWLP+O
小学生の頃、学校の裏山の奥地に、俺達は秘密基地を造っていた。
秘密基地っつっても結構本格的で、複数の板を釘で打ち付けて、雨風を防げる3畳ほどの広さの小屋。
放課後にそこでオヤツ食べたり、●本読んだり、まるで俺達だけの家のように使っていた。
俺と慎と淳と犬2匹(野良)でそこを使っていた。


小5の夏休み、秘密基地に泊まって遊ぼうと言うことになった。
各自、親には「○○の家に泊まる」と嘘をつき、小遣いをかき集めてオヤツ、花火、ジュースを買った。
修学旅行よりワクワクしていた。


夕方の5時頃に学校で集合し、裏山に向かった。
山に入ってから一時間ほど登ると、俺達の秘密基地がある。
基地の周辺は、2匹の野良犬(ハッピー♂タッチ♂)の縄張りでもある為、
基地に近くなると、どこからともなく2匹が、尻尾を振りながら迎えに来てくれる。
俺達は2匹に「出迎えご苦労!」と頭を撫でてやり、うまい棒を1本ずつあげた。 

 



803 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 04:11:40 ID:moTdWLP+O
基地に着くと荷物を小屋に入れ、
まだ空が明るかったので、すぐそばにある大きな池で釣りをした。
まぁ釣れるのはウシガエルばかりだが。(ちなみに釣ったカエル、は犬の餌)

釣りをしていると、徐々辺りが暗くなりだしたので、俺達は花火をやりだした。
俺達よりも2匹の野良の方がハシャいでいたが。

結構買い込んだつもりだったが、30分もしないうちに花火も尽きて、俺達は一旦小屋に入った。

夜の秘密基地というのは皆始めてで、山の奥地ということで、街灯もなく、月明りのみ。
聞こえるのは虫の鳴き声だけ。
簡易ライト一本の薄明るい小屋に三人。

最初は皆で菓子を食べながら好きな子の話、先生の悪口など喋っていたが、
静まり返った小屋の周囲から時折聞こえてくる、
『ドボン!』(池に何かが落ちてる音)や、『ザザッ!』(何かの動物?の足音?)に、
俺達は段々と恐くなって来た。

しだいに、『『今、なんか音したよな?』『熊いたらどーしよ?!』など、
冗談ではなく、本気で恐くなりだしてきた。

時間は9時。
小屋の中は蒸し暑く、蚊もいて、眠れるような状況では無かった。
それよりも、山の持つ独特の雰囲気に俺達は飲まれてしまい、皆、来た事を後悔していた。



806 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 04:35:31 ID:moTdWLP+O
明日の朝までどう乗り切るか、俺達は話し合った。
結果、小屋の中は蒸し暑く、周囲の状況も見えない(熊の接近等)為、山を下りる事になった。
もう内心、一時も早く家に帰りたい!と俺は思っていた。

懐中電灯の明かりを頼りに足元を照らし、少し早歩きで俺達は下山し始めた。

5分ほどはハッピーとタッチが、俺達の周りを走り回っていたので心強かったが、
少しすると2匹は小屋の方に戻っていった。

普段何度も通っている道でも、夜は全く別の空間にいるみたいだった。
幅30cm程度の獣道を足を滑らさぬよう、皆無言で黙々と歩いていた。


そのとき、慎が俺の肩を後ろから掴み、『誰かいるぞ!』と小さな声で言ってきた。
俺達は瞬間的にその場に伏せ、電灯を消した。
耳を澄ますと、確かに足音が聞こえる。
『ザッ、ザッ』
二本足で茂みを進む音。

その音の方を目を凝らして、その何者かを捜した。

俺達から2、30M程離れた所の茂みに、その何者かは居た。
懐中電灯片手に、もう一方の手には長い棒のようなものを持ち、
その棒でしげみを掻き分け、山を登っているようだった。



808 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 04:44:54 ID:moTdWLP+O
俺たちは始め恐怖したが、その何かが人間であること。
また、相手が一人であることから、それまでの恐怖心はなくなり、
俺たちの心は幼い好奇心で満たされていた。

俺が『あいつ、何者だろ?尾行する?』と呟くと、二人は『もちろん』と言わんばかりの笑顔を見せた。
微かに見える何者かの懐中電灯の明かりと、草を書き分ける音を頼りに、
俺達は慎重に慎重に後をつけだした。



809 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 04:57:38 ID:moTdWLP+O
その何者かは、その後20分程山を登り続けて立ち止まった。
俺達はその後方30M程の所に居たので、そいつの性別はもちろん、様子等は全くわからない。
かすかな人影を捕らえる程度。

ソイツは立ち止まってから、背中に背負っていた荷物を下ろし、何かゴソゴソしていた。

『アイツ一人で何してるんだろ?クワガタでも獲りに来たんかなぁ・・・』と俺は言った。
『もっと近づこうぜ!』と慎が言う。
俺達は枯れ葉や枝を踏まぬよう、擦り足で身を屈ませながら、 ゆーっくりと近づいた。



810 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 05:19:30 ID:moTdWLP+O
俺達はニヤニヤしながら近づいていった。
頭の中で、その何者かにどんな悪戯をしてやろうかと考えていた。
その時、
『コン!』
甲高い音が鳴り響いた。心臓が止まるかと。
『コン!』
また鳴った。
一瞬何が起きたか分からず、淳と慎の方を振り返った。

すると淳が指をさし、『アイツや!アイツ、なんかしとる!』と。
俺はその何者かの様子を見た。
『コン!コン!コン!』
何かを木に打ち付けていた。
いや、手元は見えなかったが、それが呪いの儀式というのはすぐにわかった。

と言うのも、この山は昔から藁人形に纏わる話がある。
あくまで都市伝説的な噂だと、その時までは思っていたが。


俺は恐くなり、『逃げよ』と言ったが、
慎が『あれ、やっとるの女や。よー見てみ』と小声で言い出し、
淳が『どんな顔か見たいやろ?もっと近くで見たいやろ?』と悪ノリしだし、
慎と淳はドンドンと先に進み出した。
俺はイヤだったが、ヘタレ扱いされるのも嫌なんで、渋々二人の後を追った。


その女との距離が縮まるたびに、『コン!コン!』以外に聞こえてくる音があった。
いや、音と言うか、女はお経?のような事を呟いていた。


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272 :名無しさん@おーぷん :2015/07/04(土)20:27:16 ID:???

大学の頃の話。
当時、同じサークルで1学年上の先輩にBというのがいて、
適当な性格のためどこへ行っても
人との付き合いが自然と浅く広くという感じになる俺にしては珍しく、割と親しくしていた。
趣味が同じだったんだ。
もうとっくにやめたが、その趣味というのが特殊で、
それについて人に語ったり話を共有できる機会が本当に無く、
当時はそれがつまらなくストレスで、周りに同じ事をしている人間が全くいないと思い込んでいたから、
Bが自分と同じ趣味をやっていると知った時は本当に嬉しかった

趣味について話し相手が欲しかったのはBも同じだったんだろう、
俺以上に嬉しそうで、Bも俺も楽しくなってしまってついつい遅くまで話し込んだ。
そんなことから始まって、Bと俺は先輩後輩というより、
完全に同級生の友人同士のように付き合うようになった。

それから半年ほど経った頃だったか、
Bが疲れたような顔をしていることが多くなった。
気になってどうしたのか何回か訊いても、話したくないのか答えてくれない。
その時俺は、あまりしつこく訊いてもよくないと思い、
必要なら言える時にまた話してくれるだろうと、それを待つことにした。
大学やバイトでそこそこ忙しく、自分のことに集中したい思いもあった。

そんな中、しばらくして、Bについて妙な噂を耳にするようになる。

ぽつぽつと囁かれるあやふやで噂ともつかないような短い話の要点を言えば、
Bが一人暮らしをしている大学近くのアパートで、
近所の放置子らしき子供に纏わり付かれて参っているということのようだった。


その時には、気付けばBの姿を全く見なくなっていた。
最近大学に来ていないと聞いた。
その日の内にどうしているのかBのアパートに様子を見に行きたかったが、
言い訳をすれば忙しく、少し疲れてもいて、
結局Bに会いに行ったのはその数日後の夕方だった。


一緒に食べようと思い側にある中華料理屋で炒飯と餃子を一つずつ買って、
Bのアパートのインターホンを押したが、誰も出て来ず、物音もしない。
出掛けているのかもしれなかったが、
何だかそこで無性に不安が込み上げてきて落ち着かず、
何度もインターホンを押して、外から声を掛けて名前を呼んでみたりもした。
寝ていて出ない可能性も考えたが、
この際多少の迷惑を掛けても、Bが大丈夫か、顔を見て確認しておきたかった。


少しの間そうしていても相変わらず部屋の中からは物音一つせず、
Bが出て来る様子もないので、
やっぱり留守か、とBのことが気になりながらも仕方がないので
帰ろうと、身体の向きを変えたその時だった。

ドン!と大きな音と、足もとに少し響くくらいの振動を受け、衝撃に面食らって
思わずその場に硬直して立ち尽くした。


少ししてショックを受けていたのが僅かにマシになり、混乱した頭で、
俺がインターホンを何回も鳴らしたり部屋の中に向かって声を掛けたのを、
近くの住人がうるさがって床か壁でも力任せに殴ったのだろうという考えに辿り着いた。
音や衝撃を感じた距離からおそらく、Bの部屋のすぐ左隣に住む住人だろう。


俺はそろりそろりと、息を潜めて音を立てないように気を付けながら、
しかし一刻も早くその場から逃れようと、できるだけ足早に階段の方へ向かった。
おっかない人がいるなと、
何度かアパートの方を振り返りながら、小走りに俺はその場を立ち去った。





273 :名無しさん@おーぷん :2015/07/04(土)21:45:42 ID:???

それから、Bを大学で見かけた。
よかったと内心ほっとしながらも、何だかやつれたBの姿に素直に喜べず、
Bが今まで見たことのないような硬い表情でいるので声を掛けそびれてしまって後悔した。


Bを知る共通の知り合いに、
噂の件でストレスを抱えているにしてはBの姿は痩せ過ぎな気がする、
事態をよく知らないが、そんなに酷いのか、
それとは別に、身体にどこか悪いところがあるんじゃないのか、といった考えを話した。


その時、その知り合いから聞いた話では、
俺がBのアパートに行ってから後日、噂の放置子のような子供の纏わり付きをやめさせようと、
Bとよくつるんでいる知り合い数人でBのアパートに行ったそうだ。

まず、そいつがどこの家の子供かつきとめようということになった。
周りを探し回ったり人に尋ねたり、交代で一日中Bの部屋やその周り、アパートを見張ったりした。
Bがそうしてくれと頼んだわけじゃなく、だから
何だかばつが悪いのと、逆に迷惑にならないように、できるだけこっそり静かにやったらしい。

当たり前だが、Bと親しくしていたのは俺だけではなく、
Bの知り合い達もBのことを心配していたんだ。


それで、結果だが、そんな子供はBの住むアパートにいなかった。
周囲の家々にも、それらしき子供は見当たらなかったと。

そう言えば、そもそもBの住むアパートは単身者用のつくりだ。
確認したところ、家族連れは住んでいなかったらしい。

その子供がアパート外から来ていて見つけられなかったのかもしれないが、
よく考えると一人暮らしの大学生が放置子に纏わり付かれるなんていうのも不思議な話だと。

Bのことを疑うわけではないが、確かに、と頷けた。


つまり、放置子は存在しておらず、最初からBが精神か身体かに何らかの不調を抱えていて、
そういう話になったのかもしれない、ということだった。

愕然とした。


Bはまれに大学に来てはいたが様子は元には戻らず、変に歳をとったような容姿になっていて、
最初は心配していた人達も噂のこともあり不気味に思うようになったのか、みんなBから離れていった。
酷なことを言うようだが、俺にも自分の生活がある。
俺もBを避けるようになった。


ある日自分の部屋の掃除をしていて、Bの本を借りっぱなしだったことに気が付いた。
それは最初の方に書いた特殊な趣味に関する本で、そう簡単に手に入るものでもない。
やってしまったと思いながら、
本を返すために俺は本当に最後だと思いBのアパートを訪れた。

インターホンを押す。
Bの声で返事があり、空いているから勝手に入ってくれと言われ躊躇したが
大切な本を借りっぱなしにしたことへの罪悪感が勝り、
その場に置いてとっとと退散、というのはやめておいた。


ドアを開ける。
中は想像と違って綺麗に片付けられていたが、あまりにも物が少ないように感じた。
生活感がほとんどない。

部屋の真ん中にある低い机の向こう側に、こちらの方を向いて、
脚を崩した格好でBは座っていた。

本当に老けて、やつれていて、
本当に病気ではないかと思ったが、Bが嬉しそうに笑うのが
今やひきつれたように不気味な嫌な感じの表情になっていて、悪いが怖くて早く帰りたかった。

机の上にBの本を荒っぽく置いて、
じゃあ、と一言だけ言おうとした時、
ゴトン!と大きな音がして、ガラッとBの部屋の押し入れが空き、
押し入れの上の段からボサボサの黒髪の後頭部がこちらの方に倒れ込むのが見えた。

顔は見えず、白い身体の2、3歳くらいの子供のマネキンのようだった。
薄汚れて汚く見えた。


Bはひきつれたようににやにや笑っていて驚いた様子の一つもなく、
俺は次の瞬間全力でドアの方へ外目掛けて走った。

外に出た瞬間、ドン!と、聞いたことのある音と振動が来て、心臓が止まるかと思ったが
転がるように走り抜け階段を下り、アパートを離れた。

それからBの姿を見ていない。

あれ以来、押入れと、狭い和室のアパートがトラウマになった。
あれは一体何だったんだろう?


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