サイケデリック・奇譚

永遠の日常は非日常。

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死ぬ程怖い洒落にならない話をあつめてみない?

768 :763:2007/03/14(水) 05:06:04 ID:Xss+iCNa0
自転車置き場を見下ろしてた俺が、前を向きなおした瞬間に、螺旋階段が見えた。
そこに、下に落ちてる人間と全く同じ服で髪型
(これは微妙で、下にあるモノとは異なってたようにも見える)のニンゲンが立ってた。


これは多分、見てはダメだったんだと思う。
螺旋階段を下に向かって、ゆっくり降りていってたんだ。
すごくゆっくり、下を向いたまま歩いてた。下にあるものと瓜二つのニンゲンが。


ここで、エレベーターが来たときの合図の
「ピン」って音が鳴ったんで、ビク!ってなり後ろを振り向いた。

そこにも居た。
と思う。多分いたんだろう。
でも良く覚えてない。
今考えれば居たのか?と思うけど、そのときは居たって思ってた。

「ピン」の音に振り返った瞬間に、どーんって再度聞こえたんだ。

でも今度の音は、エレベーターの中から。
どーん、どーーん。
どーーーん。
どーーーーん。って。

俺はもう発狂状態になって、それから倒れたみたい。

直ぐに病院に連れて行かれた。
見たもの、聞いたものを全て忘れるように医者から言われて、薬も処方されて、
それから1週間は、「うぅぅ」ってうめき声を上げてるしかなかった。
1週間過ぎぐらいにはだいぶ良くなっていたのだけど、本当は親や医者をだましてた。
よくなってなんか無かった。
寧ろそのときから、その「どーん」って音はずっと付いて廻ってた。





769 :763:2007/03/14(水) 05:08:35 ID:Xss+iCNa0
その後、学校に行こうと思いだしたころに、Aの存在を思い出した。
俺がそもそもこんな事になったのもAのせいだ。

あいつがあんなイジメをしなければ、こんな目にも遭わなかった。
あいつは俺をこんな目に遭わせる様な奴だから居なくなればいい。
そうだ、この「どーん」って言う音に頼もう。って本気で思ってた。

俺は本当におかしくなってたんだと思う。本気でこの『音』の主にお願いしてた。


次の日に学校に行った俺は、昼休みの時に早退したいと先生に言った。
先生も俺がどういう状況かを知っていたから、すぐにOKを出してくれた。
Aはその日も休みだった。


その帰りがけに、先日部落差別を無くそうという話を学校でしていた(講義で)、おじさんに出会った。
そのおじさんはAのおじさんに当たり、何度か会って話したこともあった。
だけどそのおじさんが、俺を見た後からの様子や態度が明らかにおかしい。

最初見かけた時は普通に挨拶をしたのに、
その後俺を二度見のような感じで見て、いきなり、「あ~・・・」とかいいだした。


俺は「こいつもAに何か言われてんのか?」って感じで被害妄想を爆発させて、
怪訝な態度のこのおじさんを無視して横切ろうとしてた。

そのときに急にそのおじさんが、ブツブツブツブツお経のようなものを唱え始めた。
俺はぎょっ?!っとして、そのおじさんを見返した。

いきなり、あって「あ~」などとわけのわからない態度を取り出し、
それだけならまだしも、俺にお経を唱えたのだ。



770 :763:2007/03/14(水) 05:11:06 ID:Xss+iCNa0
生まれて初めて自分から人をぶん殴った。
言い訳がましいけど、精神的におかしかったから、殴る事の善悪は全くなかった。
ただ、苛々だけに身を任した感じ。

いきなりでびっくりしたのか
そのおじさんもうずくまって「うぅ…」って言ってたが、無視して蹴りを入れてた。
Aの親戚ってだけでも苛々してたのもあり、
「こら、お前らの家族は異常者の集まりか?人を貶めるように生きてるのか??
お前差別をどうのこうの言ってたが、自分がする分にはかまわんのか?
あ~??何とか言えや。こら!
お前らは差別されるべき場所の生まれやけ、頭がおかしいんか?」って感じで、ずっと蹴り続けてた。

でも、ここで再度予想外のことが起きた。

以下会話。



771 :763:2007/03/14(水) 05:13:14 ID:Xss+iCNa0
おじさん「ははははははははは」
俺「!?なんか気持ち悪い。いきなり笑い始めやがって!」

おじさん「あははははは。お前か、お前やったんか。はははは」

俺「??まじ意味分からん、なんがおかしいんか?」
(未だ蹴り続けてたけど、この時は大分蹴りは弱くなってる)

おじさん「ははは、やっと会えたわ。はははそりゃAも****やなー。ははは」
(何を言ってるのか意味不明)
俺「は???お前ら家族で俺をイジメようてしよったんか?」
(この辺りで怖くなって蹴らなくなってた)


おじさん「おい、お前がどうしようが勝手やけど、○○(俺の名前)が痛がるぞ。
アニキは許しても俺は見逃さんぞ」
俺「は???マジでお前んとこはキチ○イの集団なんか?おい?」
おじさん「○○君、ちょっと黙っとき。おじさんが良いって言うまで黙っとき」
俺 「いや、意味わから・」

「どーーーーーん」


いきなり耳元で音が鳴った。
俺はビクってして振り返ったら、目の前にのっぺりとした細面の顔が、
血だらけのままピクピクしながら笑ってた。


俺はまた発狂した。
この顔の見え方がかなり異常で、通常ニンゲンの顔を見る場合に、半分だけ見えるって言うのはありえない。

でもこの目の前の顔は、例えていうと、テレビ画面の中にある顔が、
カメラのせいで半分だけ途切れてて半分は見えてる状態。
その瞬間に、Aのおじさんに力いっぱい殴られて、意識を失った。



772 :763:2007/03/14(水) 05:14:20 ID:Xss+iCNa0
起きた時に、俺は家の自分の部屋ではなくて、リビングの隣の両親の寝室で寝かされてた。
時間を見たら20時。
リビングからの明かりが漏れてて、両親が誰かと話しをしてた。
俺が起き上がり寝室のドアを開けて、その人物を見たときにすぐに飛び掛った。

AのおじさんとAのおばに当たる人が、そこに座って両親と話してたから、
それを見た瞬間に、もう飛び掛ってた。

直ぐに親父に抑えられてたけど、俺は吼えてたと思う。

Aのおじさんは「ごめん、本当に悪かったね」と繰り返してたけど、
どうしても許せなくて、親父の腕の中でもがいてた。

母親がイキナリ俺の頬をひっぱたいて、「あんたも話しを聞きなさい!」とか言い出してたけど、
俺はもう親にまで裏切られた感じがして、
家を飛び出そうとして親父の手から抜け出し、自分の部屋に向かい上着とサイフをとった。


が、上着を羽織ろうとした瞬間に、
上着の腕の中に自分以外の手があった感触がして、再度叫んだ。

両親とAのおじおばが直ぐに来て、
Aのおばがブツブツ言いながらお経みたいなものを唱え始めだして、おじが俺の服を掴んで踏み始めた。

親父は青ざめてそれを見てて、母親は一緒に手を合掌して俺を見てた。
この時は、マジで自分が狂人になったのかと思った。


数分後、俺も落ち着いてきて、両親とAのおじおばと共にリビングへ向かった。
それまでの短い時間、Aのおじさんはずっと俺に謝ってた。
それからのリビングでの話しは今でも忘れられないし、
そこで再度起こったことも忘れられない。



774 :763:2007/03/14(水) 05:17:22 ID:Xss+iCNa0
以下会話(Aのおじさん=Bさん、Aのおばさん=Cさん、とする)


Bさん「本当に、殴ってしまってごめんな」
俺「いや、いいです。こちらも苛々してましたので、すみません」
親父「ん?お前なんかしたんか?」
俺「いや、俺がBさんを殴ってしまった」
Bさん「あ、いや、それは俺が○君を見ていきなりお経とか唱えたから、嫌な気がしたんやろ?
○君のせいじゃないわ。俺がいきなりすぎたんがいけんかったやから」
親父「申し訳ございません。それは聞いてなかったので」
俺「え?なんの話をしよん?俺がBさんを殴って、Bさんがいきなり」

ここまで言って、気絶前の事を思い出した。

俺「あれ??俺、気絶する前にナニカ見たわ・・・」
Bさん「うん、そやろな・・・。
俺は○君みて直ぐに気づいてなぁ。何かおるって、それでお経を唱えたんよ」

母「大丈夫なんですか?何かって何ですか?」
Cさん「えっとね、私らが住んどる地域が、なんで裏S区って言われるか知っとる?」
親父「えっと、失礼かもしれませんが、差別的な意味ですよね?」
Bさん「それはそっちだけの認識やな。
じいさん、ばあさんによう言われたやろ?裏Sには近寄るなて」
親父「言われましたね。
でもそれは、部落差別的なもんやと思ってましたけど、違うんですか?」

Bさん「いや、そうや。そうなんやけど、
差別があるけ言うても、今も言い続けよるんは、裏Sの歴史がちと異常なんや」
親父「いや、私も妻も生まれはS区やから、その辺は分かってますけど、
部落とか集落系での差別って、どっこも同じようなものでしょ?
だから、異常っていうのはわかります」

Bさん「はは。そうやろ?そういう風にとらわれてしまってるんやな。
裏S区は部落やからって事でも、他国のモンの集まりでもなく、
昔からこの地域に住んでたモンの集まりなんや」
親父「はい。ただ、違いが私にはちょっと・・・」
母「あれですか?あの鬼門がどうのとかって言う話ですか?」



775 :763:2007/03/14(水) 05:19:14 ID:Xss+iCNa0
Bさん「ん?鬼門の話か。まぁ、そんな感じなんやろうけど、裏Sにうちと同じ苗字が多いやろ?」
母「はい。多いですね。A君とことBさんの家は親戚やから当たり前やけど、それにしても多いですね。
S区には全然いないのに、裏S出身者では結構みかけますしね」
Bさん「あの辺は、昔から霊の通り道って言われとんな。
ナメ○○○(なんて言ったかは不明)とか、そんなの聞いたことないですか?」

親父「いや、名前はしらないですけど、聞いたことはあります」
Bさん「まぁ、その地域はそういう地域でして、
うちらの家系はほとんどが霊感があるっていわれてたんですね。
それが原因で発狂する奴もおれば、いきなり何するかわからんって感じで、
いつの間にかそういう集落、部落になっていき、差別されるようになったんですわ。」

母「でもそれやと、裏S区はかなり広いからおかしくないですか?
Bさんとこの家系だけで、裏S区自体がそういう風にわかれますかね?」
Bさん「うん、わかれるんやろうな。
最初は3、4の家のもんが発狂し始めて、それが村中で始まって、
最終的に4、50件も起きれば、その周辺全体がおかしいって思われるやろうし。
昭和の時代にそんなアホみたいな話を、信心深く聞く人間が少なくなってきてるしな」

親父「それでも、それで部落になるんかなぁ」
Cさん「まぁ、うちらの家系ではそう教わっとるんです。
だから生まれてきた子らには、霊が見えるってことを前提に接しとる。
見えん子もおるやろうけど、霊は居るって教えとるんですよ」
俺「いや、それと俺が体験しとるのと、Bさんの話と、何が関係するんですか?」



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裏S区 4



裏S区2 4


死ぬ程洒落にならない怖い話をあつめてみない?

763: 本当にあった怖い名無:2007/03/14(水) 04:54:54 ID:Xss+iCNa0
九州のある地域の話。
仮だがS区という地域の山を越えた、裏S区って呼ばれてる地域の話。
現在では裏とは言わずに「新S区」って呼ばれてるが、じいちゃんばあちゃんは今でも裏S区と呼んでる。

まぁ、裏と言うのは良くない意味を含んでる。
この場合の裏は、部落の位置する場所を暗に表してる。
高校時代は、部落差別の講義も頻繁にあるような地域。そこでの話。
(あくまで体験談&自分の主観の為、部落差別、同和への差別の話ではありません)


今から何年か前に、男の子(仮にA)が一人行方不明になった。
(結局自殺してたのが見つかったけど)
俺はS区出身者。彼は裏S区出身者だけど、S区の地域にある高校に通ってた。
まぁ、彼は友人だった。あくまで『だった』だ。
1年の頃は仲良かった。
彼が一人の生徒をいじめるまでは。


いじめられたのは俺。周りはだれも止めない。
止めてくれないし、見てもない。傍観者ですらなかった。
必死にやめてと懇願しても殴る、蹴る。

俺は急に始まったから、最初はただの喧嘩と思い殴りあったが、
彼の体格と俺のでは全く強さが違う。

でも、次の日も急に殴ってきた。意味も無く。
理由を聞くも答えない。
薄っすらと笑ってたから、もう兎に角怖かった。
 



764 :本当にあった怖い名無し:2007/03/14(水) 04:57:13 ID:Xss+iCNa0
ある日、いきなりAが学校に来なくなった。俺はかなりうれしかった。
でも、もうその状況では、誰も俺に話かける奴はいなかった。
初めての孤独を味わった。
多数の中に居るのに絶対的な孤独だった。

それからAが3週間学校を休んだある日、先生が俺を呼び出した。
ここからは会話。


先生「お前Aと仲良かっただろ?」
俺「いえ・・」
先生「う~ん・・・。お前Aをいじめてないか?」
俺「はい??え?俺が??それともAが俺を???」
先生「いや、お前が。大丈夫誰にも言わんから言ってみろ。問題にもせんから」
俺「いや、俺がですか???」


このときは、本当に意味が分からなかった。先生の中では俺がいじめてることになってるし。
で、俺は本当のことを言うことにした。


俺「本当は言いたくなかったけど、俺がいじめられてました・・・。
皆の前で、殴る蹴るの暴力を受けてましたし・・・」
先生「本当か??お前が??他の生徒も見てたか??」
俺 「見てましたよ。っていうか、何で先生は俺がいじめてるって思ったんですか?
誰かが言ったんですか?」
先生 「いや・・・。いや、何でも無い」



765 :763:2007/03/14(水) 05:01:28 ID:Xss+iCNa0
先生の態度が、この時点で明らかにおかしい。何故か動揺してる感じ。
それから数分、二人とも無言。
その数分後に、いきなり先生が言い出した。


先生「Aがな、休んどるやろが?なしてか分からんけど、登校拒否みたいな感じでな。
家に電話しても、親がでて『おらん』って言うてきるんよ」
俺「・・・」
先生「そんでな、昨日やっとAと連絡とれて、色々聞いたんよ。
そしたらAが言ったのが、お前が怖いって言うんよ」
俺「はい??俺が???」
先生「う~ん・・・。そうなんよ。お前が怖いって言って聞かんのよ」
俺「いやいや、俺が?逆ですけどね。俺はAが怖いし」
先生「ほうか、いや、分かった。もっかい聞くけど、お前はいじめてないな?」
俺「はい」
って言うやりとりの後解放されて、自宅に帰った。



766 :763:2007/03/14(水) 05:02:42 ID:Xss+iCNa0
実際のイジメって、多人数を1人でイジメルものだと思ってた。
中学生の時にイジメを見たことあったから、そのときのイメージをイジメだと思ったし、
よく聞くイジメも、大体が多人数が1人にお金をたかる、トイレで裸にする。
こういうことをすることだと思ってた。

まさか、たった一人の人間がたった1人の人間をイジメルのに、先生まで巻き込み、
俺一人だけをのけ者にしようとしてるとは思わなかった。


生まれて初めて人に殺意を抱いた。
ぶん殴るとかじゃなく、『ぶっ殺したい』って本気で思った。



767 :763:2007/03/14(水) 05:04:32 ID:Xss+iCNa0
その次の日から、俺は学校を休んだ。
行く気にはなれんし、行っても一人だし。と思って。
ただ、この登校拒否中にありえないものを見てしまい、俺はちょっと頭がおかしくなりかけた。


起こったのは、『飛び降り自殺』。

俺の住んでたマンションから人が飛び降りた。
たまたまエレベーターホールでエレベーター待ちだった俺の耳に、
「ギぃーーーーー」って言う奇怪な声と、その数秒後に「どーーーーん!」っていう音。

そのどーんっと言う音は、自転車置き場の屋根に落ちたらしいのだが、
それを覗き見たときは、本当に吐き気と涙がボロボロ出た。

これはただの恐怖心からなんだが、
でもイジメにあっていた俺には、とてつもなく多きな傷だった。


これは本当にトラウマになっていて、今でもエレベーターに乗れなくなった。
会社とかにある、建物の中にある奴はまだ何とか乗れるが、
マンションにあるような、外の風景が見えるものには全く乗れなくなった。
なぜなら、このときに絶対ありえないものを見たから。



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死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない?


908: 1/9:2008/08/26(火) 09:45:56 ID:VFtYjtRn0
親父の実家は、自宅から車で二時間弱くらいのところにある。
農家なんだけど、何かそういった雰囲気が好きで、
高校になってバイクに乗るようになると、
夏休みとか冬休みなんかには、よく一人で遊びに行ってた。
じいちゃんとばあちゃんも、「よく来てくれた」と喜んで迎えてくれたしね。
でも最後に行ったのが、高校三年にあがる直前だから、もう十年以上も行っていないことになる。
決して『行かなかった』んじゃなくて、『行けなかった』んだけど、その訳はこんなことだ。


春休みに入ったばかりのこと、
いい天気に誘われて、じいちゃんの家にバイクで行った。
まだ寒かったけど、広縁はぽかぽかと気持ちよく、そこでしばらく寛いでいた。

そうしたら、「ぽぽ、ぽぽっぽ、ぽ、ぽっ…」と、変な音が聞こえてきた。
機械的な音じゃなくて、人が発してるような感じがした。
それも、濁音とも半濁音とも、どちらにも取れるような感じだった。

何だろうと思っていると、庭の生垣の上に帽子があるのを見つけた。
生垣の上に置いてあったわけじゃない。
帽子はそのまま横に移動し、垣根の切れ目まで来ると、一人女性が見えた。
まあ帽子は、その女性が被っていたわけだ。
女性は白っぽいワンピースを着ていた。

でも、生垣の高さは二メートルくらいある。
その生垣から頭を出せるって、どれだけ背の高い女なんだ…
驚いていると、女はまた移動して視界から消えた。
帽子も消えていた。
また、いつのまにか「ぽぽぽ」という音も無くなっていた。




909 2/9:2008/08/26(火) 09:46:59 ID:VFtYjtRn0
そのときは、もともと背が高い女が超厚底のブーツを履いていたか、
踵の高い靴を履いた背の高い男が女装したか、くらいにしか思わなかった。


その後、居間でお茶を飲みながら、じいちゃんとばあちゃんにさっきのことを話した。
「さっき、大きな女を見たよ。男が女装してたのかなあ」と言っても、
「へぇ~」くらいしか言わなかったけど、
「垣根より背が高かった。帽子を被っていて、『ぽぽぽ』とか変な声出してたし」
と言ったとたん、二人の動きが止ったんだよね。
いや、本当にぴたりと止った。

その後、「いつ見た」「どこで見た」「垣根よりどのくらい高かった」と、
じいちゃんが怒ったような顔で質問を浴びせてきた。
じいちゃんの気迫に押されながらもそれに答えると、急に黙り込んで、
廊下にある電話まで行き、どこかに電話をかけだした。
引き戸が閉じられていたため、何を話しているのかは良く分からなかった。
ばあちゃんは、心なしか震えているように見えた。

じいちゃんは電話を終えたのか、戻ってくると、
「今日は泊まっていけ。いや、今日は帰すわけには行かなくなった」と言った。

――何かとんでもなく悪いことをしてしまったんだろうか。
と必死に考えたが、何も思い当たらない。
あの女だって、自分から見に行ったわけじゃなく、あちらから現れたわけだし。

そして、「ばあさん、後頼む。俺はKさんを迎えに行って来る」と言い残し、
軽トラックでどこかに出かけて行った。



910: 3/9:2008/08/26(火) 09:48:03 ID:VFtYjtRn0
ばあちゃんに恐る恐る尋ねてみると、
「八尺様に魅入られてしまったようだよ。じいちゃんが何とかしてくれる。何にも心配しなくていいから」
と震えた声で言った。

それからばあちゃんは、じいちゃんが戻って来るまで、ぽつりぽつりと話してくれた。

この辺りには『八尺様』という厄介なものがいる。
八尺様は大きな女の姿をしている。
名前の通り八尺ほどの背丈があり、『ぼぼぼぼ』と、男のような声で変な笑い方をする。
人によって、喪服を着た若い女だったり、留袖の老婆だったり、
野良着姿の年増だったりと、見え方が違うが、
女性で異常に背が高いことと、頭に何か載せていること、それに気味悪い笑い声は共通している。
昔、旅人に憑いて来たという噂もあるが、定かではない。

この地区(今は○市の一部であるが、昔は×村。今で言う「大字」にあたる区分)に、
地蔵によって封印されていて、よそへは行くことが無い。
八尺様に魅入られると、数日のうちに取り殺されてしまう。
最後に八尺様の被害が出たのは、十五年ほど前。


これは後から聞いたことではあるが、地蔵によって封印されているというのは、
八尺様がよそへ移動できる道というのは、理由は分からないが限られていて、
その道の村境に地蔵を祀ったそうだ。
八尺様の移動を防ぐためだが、それは東西南北の境界に、全部で四ヶ所あるらしい。

もっとも、何でそんなものを留めておくことになったかというと、
周辺の村と何らかの協定があったらしい。
例えば、水利権を優先するとか。
八尺様の被害は、数年から十数年に一度くらいなので、
昔の人は、そこそこ有利な協定を結べれば良し、と思ったのだろうか。



911 :4/9:2008/08/26(火) 09:49:15 ID:VFtYjtRn0
そんなことを聞いても、全然リアルに思えなかった。当然だよね。

そのうち、じいちゃんが一人の老婆を連れて戻ってきた。
「えらいことになったのう。今はこれを持ってなさい」
Kさんという老婆はそう言って、お札をくれた。
それから、じいちゃんと一緒に二階へ上がり、何やらやっていた。
ばあちゃんはそのまま一緒にいて、
トイレに行くときも付いてきて、トイレのドアを完全に閉めさせてくれなかった。
ここにきてはじめて、「なんだかヤバイんじゃ…」と思うようになってきた。


しばらくして二階に上がらされ、一室に入れられた。
そこは窓が全部新聞紙で目張りされ、
その上にお札が貼られており、四隅には盛塩が置かれていた。
また、木でできた箱状のものがあり(祭壇などと呼べるものではない)、
その上に小さな仏像が乗っていた。
あと、どこから持ってきたのか、『おまる』が二つも用意されていた。
これで用を済ませろってことか…
.
「もうすぐ日が暮れる。いいか、明日の朝までここから出てはいかん。
俺もばあさんもな、お前を呼ぶこともなければ、お前に話しかけることもない。
そうだな、明日朝の七時になるまでは絶対ここから出るな。
七時になったらお前から出ろ。家には連絡しておく」
と、じいちゃんが真顔で言うものだから、黙って頷く以外なかった。

「今言われたことは良く守りなさい。お札も肌身離さずな。
何かおきたら仏様の前でお願いしなさい」と、Kさんにも言われた。



912 :5/9:2008/08/26(火) 09:50:22 ID:VFtYjtRn0
テレビは見てもいいと言われていたので点けたが、見ていても上の空で気も紛れない。
部屋に閉じ込められるときに、ばあちゃんがくれたおにぎりやお菓子も
食べる気が全くおこらず、放置したまま、布団に包まってひたすらガクブルしていた。


そんな状態でもいつのまにか眠っていたようで、
目が覚めたときには、何だか忘れたが深夜番組が映っていて、
自分の時計を見たら、午前一時すぎだった。(この頃は携帯を持ってなかった)

なんか嫌な時間に起きたなあなんて思っていると、窓ガラスをコツコツと叩く音が聞こえた。
小石なんかをぶつけているんじゃなくて、手で軽く叩くような音だったと思う。

風のせいでそんな音がでているのか、
誰かが本当に叩いているのかは判断がつかなかったが、必死に風のせいだと思い込もうとした。
落ち着こうとお茶を一口飲んだが、
やっぱり怖くて、テレビの音を大きくして無理やりテレビを見ていた。


そんなとき、じいちゃんの声が聞こえた。
「おーい、大丈夫か。怖けりゃ無理せんでいいぞ」
思わずドアに近づいたが、じいちゃんの言葉をすぐに思い出した。

また声がする。
「どうした、こっちに来てもええぞ」
じいちゃんの声に限りなく似ているけど、あれはじいちゃんの声じゃない。
どうしてか分からんけど、そんな気がして、そしてそう思ったと同時に、全身に鳥肌が立った。
ふと隅の盛り塩を見ると、それは上のほうが黒く変色していた。



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11 :名無しさん :2014/03/28(金)10:06:31 ID:???
暗くなるころあの海で

12.イソガキ
三浦半島は砂浜よりも岩場が多く、釣り人ならともかく
海水浴等の遊びには向かない土地柄だ。
そんな土地にはそれにふさわしい話が残っているもので、
以下は三浦に出かけた際、市役所の職員から聞いた話である。

 
昔からこの辺りでは、磯遊びや釣りに出かけるときは芋やカボチャを持っていけという教えがあるそうだ。
もしそれを忘れると、岩場で急に猛烈に腹が減りだし、甚だしくは
そのまま人事不省に陥ってしまうという。
地元の人はこれを「イソガキ」と呼ぶ。

 
深山に分け入った旅人が急に目が回って倒れるという「ヒダルガミ」という話とよく似ている。

あちらは握り飯をもっていれば難を逃れられるのだが、
なぜかこちらはイモタコナンキンだ。これも土地柄か。

イソガキとは磯餓鬼なのだろうが、
なぜ海に限った話なのかは判らない。




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