サイケデリック・奇譚

永遠の日常は非日常。

タグ:執念

ほんのりと怖い話スレ 


578 :あなたのうしろに名無しさんが :2001/06/03(日) 13:47
本にまつわる話。


古本屋をよく利用している私ですが、
たまにはホラー系恐怖漫画も読んでみようかなという、軽い気持ちが始まりだったんです。


郊外のある系列の古本屋で本を買って家に帰ってから、
上手く言い表せないんですが、ちょうど急に両肩がずしりと重く感じるようになったんです。
首と肩あたりがちょうどひどい肩凝りに襲われる感じです。

どうしてなのでしょう?
それまでは体調も別に悪くなく元気だったのに。


2日目、
肩から背中にかけて痛みは収まらない。

あの日買った3冊は、
・脳味噌を移植して別人格になった女の子の話を描いた恐怖漫画
・ごく普通の少女向けコミック(とくに変わったところはないけど…)
・読者投稿をまとめた単行本
 (シリーズの第1巻、100円だったので買った。ただ、手にとった時にいやな感じがした)


3日目、
息苦しさと肩凝りはさらにひどくなっていて、休むために横にならざるを得ませんでした。
これ以上手許に置くとヤバいと感じたのはこれがはじめてです。


次の日、だるい身体にむち打って
急いで車を走らせて古本屋に直行、開店直後に速攻で売り祓いました。


本を手にとった時になんだか嫌な気分を感じたら、買うのは控えたほうがいいなーと思いました。
ただ、その本の名前を出すとシャレと思われそうなのであえて伏せておききますが、
知っている方が多い本と思います。



何でもいいから怖い話を集めてみない?


486 :本当にあった怖い名無し:2012/06/06(水) 18:58:45.89 ID:MDvy3SQS0
自分の親父と骨董の話を書きます。

親父は紡績の工場を経営していましたが、何を思ったか50歳のときにすっぱりとやめてしまい、
経営権から何から一切を売り払ってしまいました。

これは当時で十億近い金になり、
親父は「生活には孫の代まで困らんから、これから好きなことをやらせてもらう」と言い出しました。
しかしそれまで仕事一筋だった父ですから、
急に趣味に生きようと思っても、これといってやりたいことも見つからず、途方に暮れた感じでした。
あれこれ手を出しても長続きせず、最後に残ったのが骨董品の蒐集でした。


最初は小さな物から買い始めました。
ありがちなぐい呑みや煙草の根付けなどです。
「初めから高額の物を買ったりして、騙されちゃいかんからな。小遣い程度でやるよ」
と言って、骨董市で赤いサンゴ玉がいくつか付いた根付けを買ってきました。

「何となく見ていてぴーんとひらめいたんだよ。
このサンゴ玉は元々はかんざしに付いていたのかもしれないね」などと言って、
書斎に準備した大きなガラスケースに綿に乗せて置きました。
これが我が家の異変の始まりです。

まず親父になついていたはずの飼い猫が書斎に入らなくなりました。
親父が抱き上げて連れて行ってもすぐに逃げ出してしまうのです。

さらに家の中の物がなんだか腐りやすくなりました。
梅雨時でもないのに食パンなどは買ってすぐに黴に覆われてしまったりして、
台所は常に饐えた臭いがするようになりました。
それから家には小さいながら庭もあったのですが、全体的に植木の元気がなくなり、
中には立ち枯れるものも出始めました。

また屋根の上の一ヶ所につねに黒い煙いのようなものが溜まり、
何人もの通行人に火事ではないかと言われたりもしました。
しかしはしごをかけて屋根に上ってみてもそこには何もないのです。





487 :本当にあった怖い名無し:2012/06/06(水) 18:59:09.09 ID:MDvy3SQS0
その頃、親父は時宝堂という骨董屋の主人と親しくなりました。
その人は小柄な老人で、
親父が金があると目をつけたのか、ちょくちょく家に尋ねてくるようになったのです。


ある日、親父は家族に向かって、
「この間から、家の中がちょっと変だったろう。どうもあのサンゴの根付けが原因らしい。
時宝堂さんから聞いたんだが、ああいうものはお女郎さんの恨みがこもってるかもしれないってね。
だが、そういうのを打ち消す方法もあるって話だ。 それでこれを買うことにしたよ」
と言って、一幅の掛け軸を見せました。

それはよくある寒山拾得(中国唐代の2人の禅僧)を描いた中国製で、
それほど高い物には思えませんでした。
そしてそれは和室の床の間に飾られることになりました。

掛け軸が来てから家の中の異変はいったん収まったようでした。
相変わらず猫は書斎へは入らないものの、
植木は元気を取り戻し、物が腐りやすいということもなくなったのです。

親父は、
「古い物はほとんどが人間の一生以上の歴史を持っていて、
中には悪い気を溜め込んでしまっている物もある。
そういうのの調和を取るのが骨董の醍醐味だと、時宝堂さんから聞いたよ」
と悦に入っていました。


ある日のことです。
当時自分は中学生でしたので和室に入る用などめったになかったのですが、
たまたま家族が留守の時、
学校で応援に使ううちわが和室の欄間に挿されていたのを思い出して、取りに行ったのです。

すると家の中には誰もいないはずなのに、なぜか人の話し声が聞こえてきます。
ごく小さな声ですが和室の中からです。
ふすまの前で聞いているとこんな感じです。

「・・・・これで収まったと思うなら浅はかな・・・」
「ただ臭いものに蓋をしたにすぎないだろ・・・今にもっとヒドイことが・・・」

どうも二人の人物が会話をしているようです。
コミカルな声調だったのであまり怖いとも思わず、一気にふすまを開けて見ました。
しかし当然ながらそこには誰もいませんでした。
ただ床の間の絵を見たときに、
なんだか2人の僧の立っている位置が前とは違っている気がしました。

そしてそれから2,3日後、
夜中に家に小型トラックが突っ込んでくるという事故が起きたのです。
塀と玄関の一部を壊しましたが、幸い家族にケガ人はありませんでした。



488 :本当にあった怖い名無し:2012/06/06(水) 18:59:41.27 ID:MDvy3SQS0
親父はこの事故のことでずいぶんと考え込んでいましたが、
それからはますます骨董買いに拍車がかかりました。
古めかしい香炉、室町時代といわれる脇差、大正時代のガラス器などなど。

そしてそのたびに家に変事が起こり、また収まり、
そしてもっとヒドイことが発生するといったくり返しになりました。
骨董に遣ったお金もそうとうな額にのぼったと思います。

「あっちを収めればこっちの障りが出てくる、考えなきゃいけないことが十も二十もある。こらたまらんな」
親父はノイローゼのようになっていました。


そして今にして思えば骨董蒐集の最後になったのが、江戸時代の幽霊画でした。
これはずいぶん高価なものだったはずです。
それは白装束の足のない女の幽霊が柳の木の下に浮かんでいる絵柄で、
高名な画家の弟子が描いたものだろうということでした。

親父は、
「この絵はお前たちは不気味に思うかもしれんが、実に力を持った絵だよ。
この家の運気を高めてくれる」
と言っていました。
そしてその絵が家に来た晩から、小学校低学年の妹がうなされるようになったのです。

妹は両親と一緒に寝室で寝ていたのですが、
決まって夜中の2時過ぎになるとひーっと叫んで飛び起きます。
そして聞いたこともない異国の言葉のようなものを発し、両親に揺さぶられて我に返るのです。
もちろん病院に連れて行きましたが、何の異常も認められないとのことでした。

家の者はまた骨董のせいではないかと疑っていましたが、
それを親父に言い出すことはできませんでした。

時宝堂が来ていたときに親父がこの話をしたら、
「おお、それはいよいよ生まれるのですな」と意味不明のことを言っていたそうです。

そしてその日の夜のことです。
やはり2時過ぎ、妹はうなされていたのが
白目をむいて立ち上がり、
「がっ、がっ、あらほれそんがや~」というような言葉とともに、
大人の拳ほどの白い透明感のある石を、大量のよだれとともに口から吐き出しました。

次の日、時宝堂が来て、その白い石をかなり高額で買っていったそうです。

親父はこのことを契機に時宝堂とのつき合いを断ち、骨董の蒐集もすっぱりやめてしまいました。

「家族には迷惑をかけられないからな。みんなの健康が何よりだよ。
これからは庭いじりでもやることにする」
そして我が家の異変は完全に収まったのです。


人形の怖い話ありませんか?(ΦДΦ)


248 :もしもし、わたし名無しよ:2007/04/17(火) 09:06:36
遠縁の親戚の家にある人形なんだけど、オーバーに言うと『持ち主の命を削る』人形らしい。
手に入れたのは自分の曽祖父さんの代の誰か。
えらく高価な人形で、子供たちは触る事はおろか見る事すら許されなかった。
その人形に対する所有者の執着の仕方が半端なく、親戚一同から気味悪がられる程だったらしい。
(寝食惜しんで人形を見つめていたという)


数年後に所有者が亡くなってから、人形はその娘の物になった。
その途端、今度は娘が人形に執着するようになり、
前所有者のごとく寝食を惜しんで人形をかまいつづけ…数年で他界。


一番強烈だったのは、その次の所有者(つい最近)が
入れ込んだ挙句仕事も辞め、離婚して、引きこもり続けて1年余りで他界。

このとき、遺品整理に付き合ったけど…
キッチンにうず高く積まれたカップめんのカラ、コンビニ弁当のカラ…
PCには容量目一杯人形の画像が保存されていた。
薄暗い室内で接写してるから、どれもピンぼけで心霊写真状態。


さすがに人形者ではない親戚一同は気味が悪いと供養に出したがっているものの、
現在の所有者(犠牲者)が首を縦に振らない。
あの人になんかあったら、
次は自分が所有者に立候補しようかな…





249 :もしもし、わたし名無しよ:2007/04/17(火) 09:18:55
それってどんな人形?一度見てみたいなあ。 次の所有者になったらまたレポヨロ。



251 :もしもし、わたし名無しよ:2007/04/17(火) 09:26:58
写真あったらうp希望

なんか読んでいて指輪道思い出した。それだけなんかの魔力があるんだね。



263 :248:2007/04/17(火) 13:19:12
ちなみに件の人形は、5~60cmほどのビスクドール。
詳しくないから名前はわからないんだけど、目が大きくてちょっとキツイ顔。
物理的にも血縁的にも遠縁の話なんで、
次に顔合わせるのはお盆頃だから、その時進展あったら報告するよ。

画像は… 遺品PCの未練有りげな画像なんて恐ろしくてダウンロードできるもんかw


―――――――――――――――

152 :もしもし、わたし名無しよ:2007/06/30(土) 23:12:01
前スレで、不幸を呼ぶビスクの件を投下した者です。
昨日~今日にかけて親戚の所で法事があったもんで、途中経過を。


現オーナー、とりあえずお元気そうです。
が、読経中までボソボソとビスク話を持ちかけてくるのは、色んな意味で問題あると思いますが…
大変行動力のある人なんだけれど、なんか年末あたり
外国にビスクのドレスでも買いに行こうかなんて口走ってます。
該当ビスク連れて。

これってどうなんだろう・・・乗った飛行機が落ちそうで、ものすごく怖い。



―――――――――――――――――――――

141 :もしもし、わたし名無しよ: 2007/09/18(火) 21:36:07
某ビスク憑き一族の者です。
この所、妙にあのビスクが気になって気になって仕方なく、
現持ち主から強奪でも…なんて物騒な事を考え始めていた先月。
会社の健康診断で「今までオールA」だったのに、いきなり「D~C」判定が3個も付きました。

ビスクに秋波でも送られて体調崩したのか、ただの偶然か。
診断結果を親に見せたら泣いて「ビスクは忘れろ」と言われてしまいましたので、
しばらく現オーナーと接触を断って養生しようと思います。


*なお、現オーナーはぴんぴんしています。
年末~年始にパリだかロンドンだかにのみの市巡りに行くそうです。
うらやましい…


―――――――――――――――――――――

856 :もしもし、わたし名無しよ:2008/04/18(金) 17:03:47
人形供養に出された人形ってもらっちゃいけないのかな?
テレビで人形は可愛がられる事で供養に繋がるって言ってたんだけど



857 :もしもし、わたし名無しよ:2008/04/18(金) 22:28:33
あのね、すごく惹かれるって言うのは分かるけど、
それはいいご縁があって惹かれるのと、
邪な何かが関心を引き寄せているだけの場合とあるから気をつけるようにね。



861 :もしもし、わたし名無しよ:2008/04/19(土) 16:46:42
邪な引力というと、うちのビスクだな。

一応近況報告。
現オーナー、私共生きてます。
オーナーは一度死にかけましたがw



862 :もしもし、わたし名無しよ:2008/04/19(土) 17:10:46
よもや以前ここに書き込みにこられたあのビスクドールの持ち主の親戚さん?



863 :もしもし、わたし名無しよ:2008/04/19(土) 21:54:12
はい、ソレです。
現オーナー、ビスク持って年始にイギリスに行ったら、突然寝込んで意識不明までいったそうです。
幸い現オーナーご主人が英語の堪能な方だったので、病院に担ぎ込んでなんとかなったそうですが。


あのビスクは本当に『やばい』。
未だに時々強奪したくなります…死にたくないからしませんけど。



864 :もしもし、わたし名無しよ:2008/04/19(土) 21:58:26
マジで供養に出した方がいいのでは…
お炊き上げの後に返してもらえばいいんだし…



865 :もしもし、わたし名無しよ:2008/04/20(日) 21:51:15
供養でカタがつくほど生易しくないんですよ、あのビスク。
出そうって提案すると、
オーナーが人が変わったみたいに拒否するし。
今までは、引き継ぐ→引きこもり→衰弱…がパターンだったのに、
今回に限りオーナー引きこもらないし衰弱しないし。
やっぱり他にもビスクを沢山持っているから、ちょっと呪いが拡散しているのかな?
他のビスクさんが必死になだめているのであれば此処向けなんですがw


―――――――――――――――


950 :もしもし、わたし名無しよ:2008/07/12(土) 18:01:50
『例のビスク』の一族の者ですが。
現オーナーが、偶然から深刻な病気を早期発見したそうです。
病名詳しく言えないけど。
祟るビスクではなく、元から持っていたビスクさんを1体
手を滑らせて落として割ってしまって、
「自分がビスク落とすなんてあり得ない」って検診受けたら発見されたとか。


現オーナーは、元々持っているビスクさん達に守られている気がします。
ってか、あの家にいれば祟るビスクもおとなしくなるような気も…
最近「欲しい!」とあんまり思わなくなったし。


――――――――――――――――

312 :もしもし、わたし名無しよ:2010/01/29(金) 10:30:57
覚えていてくださる方がいらっしゃるか不明ですが、ビスク憑き一族の者です。
なんだか、祟りが完結したようなので、報告してもよろしいでしょうか?



315 :ビスク憑き1:2010/01/29(金) 12:55:14
では。結論から、
元凶ビスクは完膚なきまでに破損しました。

親戚宅の出来事なので実際に見たわけではないのですが。
元凶ビスクの現オーナー、年明けにインフルを罹患したそうです。
熱と咳でフラフラになって寝込んでいたある時、
唐突に「元凶ビスクを着替えさせなきゃ!」と猛烈な衝動に駆られて、
寝室からビスクの飾ってある部屋まで這うよう移動。
(もともとビスク収集が趣味の人なので、
ビスク達は日陰の専用部屋に大きなキャビネットに入れて飾っているそうです)

寒い地方なので、比例して寒いビスク部屋で
朦朧としながら着替えを支度している時、「殺されるかも」と観念したそうです。
(じゃあ止めろ、というのが出来ないのがウチの一族の怖いところで)

で、いざ人形を出そうとキャビネット扉をグッと引いた瞬間、扉が蝶番からすっぽ抜けて
倒れかかってきたそうです。
一瞬の出来事ですが、倒れて来るガラス扉と、
その振動で抱きつくように落下してくる元凶ビスクを見つめながら、「やっぱり」と観念した直後に失神。



316 :ビスク憑き2:2010/01/29(金) 12:58:45
気がついたら、リビングでご主人に介抱されていたそうです。
ガラス扉に下敷きになったおかげでアチコチ傷だらけ、
すぐに到着した救急車に乗せられてそのまま病院に直行→検査の為2日程入院。
帰宅してから、ビスク部屋に状況確認(絶対に部屋に入るなとご主人には言い含めておいたそうです)しに行って、オーナー愕然…
粉々になった扉のガラス片の真ん中に、

①ヘッドの無い元凶ビスクが座っていて、
②それに覆い被さるようにオーナーの一番お気に入りのビスクが、こちらもヘッド破損状態で。

『お気に入り』はオーナーが最初に買った子で、家より高かったなんて言ってました。
でも、その子を買う為に10年近く頑張って仕事したという思い入れのある子だったそうです。
それが落下の衝撃でヘッド粉々、ボディも真っ二つ。
元凶ビスクと混ざり合って、どの欠片がどちらかなんてわからない状態になっていたそうです。



317 :ビスク憑き3:2010/01/29(金) 13:01:39
月並みですが、これはお気に入りが身を呈して守ってくれたんだろうと、
あえて復元はせず、双方ボディは焼いて灰にして、
ヘッドはもう少し細かく砕いて2体一緒に骨壷に納めたので、
オーナーが『その時』、一緒にお墓に入るつもりだそうです。


そういえば、今までのオーナーの中で、
現オーナーだけが虜になって引きこもり状態にならなかっのも、
もしかしたら他の子達が守っていたからなのかもしれません。
というわけで、本体がなくなったのでもう祟りは継続しないのでは…と完結したと思い、
報告させていただきました。

長い間お付き合いいただきましてありがとうございました。


―――――――――――――――

208 :もしもし、わたし名無しよ:2010/10/10(日) 21:19:14
ビスク憑きの者です。
昨日、憑き物ビスクの最後のオーナーが亡くなりました。

仕事から帰宅したご主人が、コレクションルームで
お人形を膝に乗せたまま亡くなっているのを発見したそうです。
とても穏やかなお顔で、一瞬眠っているだけのように見えたそうです。
人形者として、ある意味理想の最期だったのかな、と不謹慎ですが思ってしまいました。

一応というか、最後のご報告でした。



282 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/06/05(月) 01:59:26 ID:ZlsKc24yO
夕方になり、俺達はカラオケBOXに行った。
久しぶりの三人での再会と言うこともあり、俺達は再会を祝して酒を注文した。
まぁ酒と言っても酎ハイだが・・・
当時の俺達は充分に酔えた。 各々、4、5杯ぐらい飲み、皆ほろ酔いだった。
いい気分で歌を歌い、かなりHIGHテンションだった。


そして二時間経ち、歌にも飽き出した時、慎がある提案をした。
『よーし、今から秘密基地に行くぞ!あの時、見捨てちまったハッピーとタッチの供養をしに行くぞ!』と。

一瞬、空気が凍った。
俺も淳も言葉を失った。 まさか、あの場所に行こうなんて、予想外の発言だったから。
慎はそんな俺達を挑発するように、
『オメーら変わってねーな!まぢでビビっんの?!ハハッ!』と、少し悪酔い?していた。
その言葉に酔っ払い淳が反応し、『あ?誰がビビるかよ!喧嘩売ってんのか慎?』とキレ出した。





283 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/06/05(月) 02:18:28 ID:ZlsKc24yO
俺は酔いながらも空気を読み、
『おいおい、やめとけって!第一、淳まだ杖突いてんだぜ?』と言うと
慎がすかさず、『あ、そっか。杖ツイてちゃ逃げれねーしな。ハハハ♪』と、かなりの悪酔いしていた。
淳は益々ムキになり、
『うるせーよ!行きてーんなら行ってやるよ!お前こそ途中でビビんぢゃねーぞ?』
と、まるで子供の喧嘩のようになり、
結局『ハッピーとタッチの冥福を祈りに』と言う名目で行くことになった。
慎、淳は二人とも結構酔っていたのと、引くに引けなかったんだと思う。

まぁ、ハッピーとタッチの供養はいずれしなければならないと思っていたので、いい機会かもと少し思った。
三人なら恐さも薄れるし。

カラオケBOXを出てコンビニに寄り、あの2匹が大好きだった『うまい棒』と『コーラ』を買い込み、
タクシーで一旦俺の家に寄り、照明道具を取って来てから、あの裏山へ向かった。



293 :ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M:2006/06/06(火) 10:37:00 ID:UBma/3yTO
タクシー運転手に怪しげな目で見られつつ、山の入口でタクシーを降りた。
俺は三人でよく遊んだ裏山という懐かしさと共に、あの日の出来事を思い出した。
こんな夜更けに、また入ることになるとは・・・
そんな俺の気持ちも知らずに、
淳は意気揚々と『さぁ、入ろうぜ!』と、杖を突きながらズカズカと入っていく。
その後ろをニヤニヤしながら慎が、明かりを燈しながらついて行った。
俺は『淳、足元気つけろよ!』と言い、慎に続いた。


いざ山に入ると、昔と景色が変わっていることに驚いた。
いや、景色が変わったのでは無く、俺達がデカくなったから景色が変わって見えているのか?
登山途中、慎が淳をからかうように、
『中年女がいたらどーする?俺、お前置いて逃げるけど♪』等、冗談ばかり言っていた。
思いの外スムーズに進め、30分程であの場所に到達した。



295 :ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M:2006/06/06(火) 11:27:49 ID:UBma/3yTO
初めて『中年女』と会った場所。
俺達は黙り込み、ゆっくりと明かりを燈しながら、あの樹に近づいた。
あの日、中年女が呪いの儀式をしていた樹・・・
間近に寄り、明かりを燈した。

今は何も打ち込まれておらず、普通の大木になっていた。
しかし、古い釘痕は残っていた。所々、穴が開いていた。
恐らく、警察がすべて抜いたのだろう。

しばらく三人で釘痕を眺めていた。

そして慎が、『ここらへんでハッピーが死んでたんだよな・・・』と、地面を照らした。
さすがにもうハッピーの遺体は無かったが、ハッキリとその場所は覚えている。
俺はその場に『うまい棒』と『コーラ』を供えた。
そして三人で手を合わせ、次は『タッチ』の元へ。秘密基地跡へ向かった。



320 :ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M:2006/06/07(水) 09:30:31 ID:dXfc2GpkO
秘密基地に向かう途中、淳が『色々あったけど、やっぱ懐かしいよな』とポツリと言った。
すると慎が、『あぁ。あの夜、秘密基地に泊まりに来なければ、嫌な思い出なんて無かっただろうな』と言った。
確かに。この山で『中年女』に会わなければ、ここは俺達にとっては聖地だったはずだ。


『ここらへんだったよな・・・』
慎が立ち止まった。
秘密基地跡地。もう跡形も無かった。
あの日バラバラにされていた材木すら、一枚も無かった。
淳が無言でしゃがみ込み、『うまい棒』『コーラ』を置き、手を合わせた。
俺と慎も手を合わせた。

しばらく黙祷したのち、慎が言った。
『ハッピーとタッチがいなけりゃ・・・今頃俺達いなかったかもな』
淳『あぁ・・・』
俺『そうだよな・・・結局、『中年女』も更正して、なんだか、やっと悪夢から解放された感じだな』
しばらく沈黙が続いた。


ふと慎が、周囲や目の前の池を電灯で照らし、
『この場所、あの頃は俺らだけの秘密の場所だったのに、結構来てる奴いるみたいだな』と。
慎が燈す場所を見ると、スナック菓子の袋や空き缶が、結構落ちていることに気付いた。



323 :ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M:2006/06/07(水) 09:53:04 ID:dXfc2GpkO
俺は『ほんとだな。あの頃はゴミなんて全然無かったもんな。
今の小学生、この場所しってんのかな?』と言った。
淳が続けて、『あの時は俺ら、まじめにゴミは持ち帰ってたもんな』と言った。
その時、慎が『うわっ!何だこれ!』と叫んだ。
俺と淳はその声に驚き、慎の照らす明かりの先に視線をやった。

一本の木に、何やらゴミが張り付いている。
よく見ると、無数の菓子袋や空き缶、雑誌が木に釘で打ち付けられていた。

『なんだこれ?!』

慎が明かりを照らしながら近づいていった。
俺と淳も後をついて行った。
『誰かのイタズラ??』
俺はマジマジと、打ち付けられたゴミを見た。

その時、『あぁぁぁ・・・これ・・・俺の、ゴミぃ・・・ぁぁぁぁあ・・・』 と、淳が震えた声で言いながら硬直した。
『は?!』
俺と慎は聞き直した。
淳は、『あ゛ぁぁぁ・・・俺が、病院で捨てた・・・あぁぁ・・・』と言いながら後ずさりした。



325 :ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M:2006/06/07(水) 10:06:39 ID:dXfc2GpkO
慎が『おい!淳!しっかりしろ!んなわけねーだろ!』と怒鳴りながら、
釘で打たれた一枚の菓子袋を引きちぎった。
それを見て淳は、『あー、ぁあぁ・・・』と奇妙な声を出し、尻餅を付いた。
その行動に俺と慎は呆気に取られたが、
次の瞬間『うわっ!』と、慎が手に持っていた袋を投げた。

『え?!』と俺がその袋に目をやると、袋の裏に『淳呪殺』とマジックで書かれていた。
俺はまさか?と思い、木に釘打たれたゴミを片っ端から引き剥がし、裏を見た。

『淳呪殺』
『淳呪殺』
『淳呪殺』
『淳呪殺』

すべてのゴミに書かれていた。
淳は口をパクパクさせながら、尻餅を付いた状態で固まっていた。
慎が何気に周囲に落ちていたゴミを拾い、『おい!これ!』と俺に見せてきた。

『淳呪殺』

なんと、周囲に落ちているゴミにも書かれていた。



328 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/06/07(水) 10:21:17 ID:dXfc2GpkO
俺はその時、初めて気付いた。
『中年女』は更正なんて、はじめからしていなかったんだ。ずっと俺達を怨んでいたんだ。
病院でゴム手袋をして必死で分別していたのも、淳のゴミだけを分けていたんだ!
俺達に『ごめんね』と言っていたのも全部嘘だったんだ。

俺は急にとてつもなく寒気を感じ、此処にいてはいけない!と本能的に思い、
淳に『おい!しっかりしろ!行くぞ!』と言ったが、
『俺の・・・ゴミ・・・俺のゴミ・・・』と、淳は壊れていた。発狂していた。
とりあえず慎と俺で淳を担ぎ、山を降りた。


あれから8年、あの日以来、もちろん山には行っていない。
『中年女』とも会っていない。
まだ俺達を怨んでいるんだろうか? どこかで見られているんだろうか?

しかし、俺達三人は生きている。
ただ、未だに淳は歩く事が出来ない。


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706 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/13(土) 16:09:33 ID:kgXMFP4hO
『全く!』
看護婦はそう吐き捨て、再び見回りに行った。

いや、それどころでは無い!『中年女』に見つかってしまった!
どうすればいい?逃げるべきか?先程の看護婦に助けを求めるべきか?

俺の頭はグルグル回転し始め、心臓は勢いを増しながら鼓動した。

俺は『中年女』から目を離せずにいると、
『中年女』は俺から視線を外し、何事も無かったように、再びゴミの分別作業をし始めた。
『え!?』
俺は躊躇した。その想定外の行動に。

俺の頭には、
『襲い掛かってくる』
『俺を見続ける』
『俺を見てニヤける』 と、相手が俺に関わる動向を見せると思っていたからである。

俺はしばらく突っ立ったまま、『中年女』を見ていたが、
黙々とゴミの分別をしていて、俺のことなど気にしていないようだった。
『何かの作戦か?』と疑ったが、俺の脳裏にもう一つの思考が浮かんだ。
『中年女』≠『掃除オバさん』? やはり、似ているだけで別人・・・?!




708 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/13(土) 16:11:46 ID:kgXMFP4hO
俺と淳が疑心暗鬼になりすぎていたのか?!
やはり『中年女』とは赤の他人の別人なのか?
そう一人で俺が考えている間も、その女は黙々と仕事をしている。
俺は意を決して、出入口に歩き出した。
すなわち、『その女』の近くに・・・


少しずつ近づいてくるが、相手は一向にこちらを見る気配が無い。
しかし、俺はその女から目を離さず歩いた。
あっという間に何事も無く、俺はその女の背後まで到達した。
女は一生懸命ゴミの分別をしている。
手にはゴム手袋をハメて、大量のゴミを『燃える』『燃えない』『ペットボトル』に分けていた。
 
その姿を見て俺は、やはり別人か・・・と思っていると、
その女はバッ!っとこちらを見て、『大きくなったねぇ~』と俺に話し掛けてきた。
俺は頭が真っ白になった。
大きくなったねぇ?
オオキクナッタネェ?この人は俺の過去を知っている??
この人、誰?
この人、『中年女』? こいつ、やっぱり『中年女』!!



709 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/13(土) 16:14:23 ID:kgXMFP4hO
その女は作業を中断し、ゴム手袋を外しながら俺に近寄ってくる。
その表情はニコニコしていた。
俺はどんな表情をすればいい???
きっと、とてつもなく恐怖に引きつった顔をしていただろう。

女は俺の目前まで歩み寄って来て、
『立派になって・・・もう幾つになった?高校生か?』と尋ねてきた。
俺はこの女の発言の意味が判らなかった。


何なんだ?
俺をコケにしているのか?
恐怖に引きつる俺を馬鹿にしているのか?
何なんだ?
俺の反応を楽しんでいるのか?


俺が黙っていると、
『お友達も大きくなったねぇ・・・淳くん。可哀相に骨折してるけど。お兄ちゃんも気付けなあかんよ!』
と言ってきた。

もう、意味が全く解らなかった。
数年前、俺達に何をしたのか忘れているのか?
俺達に恐怖のトラウマを植え付けた本人の言葉とは思えない。
女は尚もニヤニヤしながら、『もう一人いた・・・あの子、元気か?色黒の子いたやん?』
『!!』
慎の事だ!
何なんだコイツは!まるで久しぶりに出会った旧友のように。
普通じゃない。わざとなのか?
何か目的があって、こんな態度を取っているのか?



898 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/16(火) 05:10:19 ID:RGbZkkkIO
俺は『中年女』から目を逸らさず、その動向に注意を払った。
こいつ、何言ってるのか分かってるのか?
『あの時はごめんね・・・許してくれる?』と中年女は言いながら、俺に近づいてくる。
俺は返す言葉が見つからず、ただ無言で少し後退りした。
『ほんまやったら、もっと早くあやまらなあかんかってんけど・・・』
俺は耳を疑った。
こいつ、本気で謝罪しているのか?それとも何か企んでいるのか?

ついに『中年女』は、手を伸ばせば届く範囲にまで近づいてきた。
『三人にキチンと謝るつもりやったんやで・・・ほんまやで・・・』と言いながら、ますます近づいてくる!
もう息がかかる程の距離にまで近づいた。

あの時とは違い、俺の方が身長は20㌢程高く、体格的にも勿論勝っている。
俺は『中年女』に指一本でも触れられたら、ブッ飛ばしてやる!と考えていた。



902 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/16(火) 05:54:02 ID:RGbZkkkIO
『中年女』は俺を見上げるような形で、俺の目を凝視してくる。
しかし、その目からは『怨み』『憎しみ』『怒り』など感じられない。真っ直ぐに俺の目だけを見てくる。
『あの時はどうかしててねぇ、酷い事したねぇー・・・』と、『中年女』は謝罪の言葉を並べる。
俺はもう、 その場の『緊張感』に耐えれず、ついに走りだし、その場を去った。


走ってる途中、もし追い掛けられたら・・・と後ろを振り向いたが、
『中年女』の姿は無く、ある意味拍子抜けた。

走るのを止め、立ち止まり考えた。
さっきのは、本当に本心から謝っていたのか?
俺は『中年女』を信じることが出来なかった。疑う事しか出来なかった。
まぁ、あの事件の事があるから当たり前だが。


俺は小走りで、先程の場所近くに戻ってみた。
そこには再びゴム手袋をはめ、大量のゴミの分別をする『中年女』の姿があった。
こいつ、本当に改心したのか?
必死に作業をする姿を見ると、昔の『中年女』とは思えない。
とりあえず、その日はそのまま帰宅した。



186 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/25(木) 09:13:15 ID:JIG/s1vbO
俺は自室のベットに横になり、一人考えた。
人間は、あそこまで変わることが出来るのか?
昔、鬼の形相でハッピー・タッチを殺し、俺を、慎を、淳を追い詰め、放火までしようとした奴が。
『ごめんね』など、心から償いの言葉を発することが出来るのか。


いや、ひょっとしてあの事件をきっかけに、俺が変わってしまったのか?
疑心暗鬼になり、他人を信じる事が出来ない、『冷たい人間』になってしまったのか?
『中年女』の謝罪の言葉を信じることで、あの事件の精神的な呪縛から解放されるのか?

もう一度『中年女』に会い、直接話すべきだ。
俺は『中年女』にもう一度会うこと、今度は逃げないこと!と決意を固め、その日は就寝した。



187 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/25(木) 09:15:28 ID:JIG/s1vbO
次の日、俺はバイトを休み病院に行った。
まずは淳の病室に入り、昨日の出来事を説明した。
そして、今日は『中年女』に会い、直接話してみるつもりだ。と言う事を伝えた。

淳は最初、「『中年女』は変わっていない!」と俺の意見に反対だったが、
『このまま一生、中年女の存在に怯え、トラウマを抱えたまま生きていくのか?』と俺が言うと、
『・・・『中年女』に会って話すんだったら、俺も付き合う・・・』と言ってくれた。



218 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/29(月) 02:59:44 ID:/lsJmPn1O
しばらく沈黙が続いた。
刻々と時間は過ぎ、面会時間終了のチャイムが鳴ると同時に、
ガラガラガラ・・・
廊下の奥の方から、ゴミ運搬台車の音が聞こえてきた。
『来たな・・・』
淳がボソッと呟いた。

俺は固唾を飲んで、部屋の扉へ視線を送った。
ガラガラガラ
台車の音が部屋の前で止まった。

部屋の扉が開いた。
作業服の『中年女』、が会釈しながら入室してきた。
俺と淳はその姿を目で追った。
『中年女』は、奥のベットから順にゴミ箱のゴミを回収し始めた。
『ごくろうさん』と患者から声を掛けられ、笑顔で会釈をする中年女。
とても昔の『中年女』と同一人物とは思えない。

そしてついに、淳のベットのゴミ回収に『中年女』がやってきた。


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215 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/09(火) 00:11:08 ID:nBGSDY0VO
『・・・んぢゃ、そろそろ帰るわ!あんま変な事考えてねーで、さっさと退院しろよ!』
と俺が言うと淳は、
『そだな・・・あの女が病院にいるわけねーよな。お前が違うって言うの聞いて安心したよ。
また来てくれよ!暇だし!』
と元気よく言った。

俺は病室を出ると、足早に階段を駆け降りた。

頭の中から、さっきのオバさんの顔が離れない。
『中年女』の顔は鮮明に覚えている。
しかし、中年女の一番の特徴といえば、イッちゃってる感だ。


さっきのオバさんは穏やかな表情だった。 もし、さっきのオバさんが『中年女』なら、
俺の顔を見た瞬間にでも奇声をあげ、襲い掛かって来てもおかしくない。
そうだ。やっぱり他人の空似なんだ。
と考えつつ、なぜが病院にいるのが怖く、早々に家路についた。





522 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/10(水) 05:08:36 ID:r7yve5IpO
家に帰ってからも『中年女』=『掃除オバさん』の考えは払拭しきれなかった。
やはり気になる・・・
その日は眠りに落ちるまで、その事ばかり考えていた。


次の日、『掃除オバさん』の事が気になり、俺はバイトを早めに切り上げ、病院に行くことにした。
俺のバイト先からチャリで30分。
病院に着いたときには20時を回っていて、面会時間も過ぎていた。
もう、『掃除オバさん』も帰っている事は明白だったが、臨時入口から病院に入り、
とりあえず淳の病室に向かった。


こっそり淳の病室に入ると、淳のベットはカーテンを閉めきってあった。
寝たのか?と思い、そーっとカーテンを開けて、隙間から中を覗いた。
『うわっ!』
淳が慌てて飛び起き、『ビックリさせんなよ!』と言いながら、何かを枕の下に隠した。
淳は●本を熟読していたようだ。



523 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/10(水) 05:11:16 ID:r7yve5IpO
俺は敢えて●本の事には触れずに、
『暇だろーと思って来てやったんだよ!』と淳の肩を叩いた。
淳は少し気まずそうに、
『おぅ!この時間暇なんだよ!ロビーでも行って茶でもしよか?』と言った。
俺は車椅子をベットの横に持って来て、淳の両脇を抱え、淳を車椅子に乗せてやった。
淳が『ロビー一階だから、ナースに見つからんよーに行かんとな!』と小声で言った。

俺達はコソコソと、まるで泥棒の様に一階ロビーに向かった。
途中、何人かのナースに見つかりそうになる度、気配を消し、物陰に隠れ、
やっとの思いでロビーに着いた。


昼間と違いロビーは真っ暗で、明かりといえば自販機と非常灯の明かりしかなく、
淳が『何か暗闇の中をお前とコソコソするの、あの夜を思い出すよなぁ』と言った。
『そだな。何であの時、アイツの事を尾行しちまったんだろーな・・・』
と俺が言うと、淳は黙り込んだ。


525 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/10(水) 05:18:19 ID:r7yve5IpO
俺は今日病院に来た理由、すなわち、
『掃除オバさん』の事について淳に言おうと思ったが、躊躇していた。
淳はこの先、1ヵ月近く此処に入院するのに、そのような事を言うのは・・・と。
またあの時のように、原因不明のジンマシンが出るかもしれない。


すると淳が、『お前、あのおばさんの事で来たんじゃないのか?』と。
俺はとっさに『え?何が?』ととぼけたが、
淳は『そーなんだろ?やっぱり似てる・・・いや、『中年女』かもしれないんだろ?』
と、真顔で詰め寄って来た。

俺はその淳の迫力におされ、『たしかに似てた・・・雰囲気は全然違うけど・・・似てる』
淳はうつむき、『やっぱり。前にも電話で言ったけど・・・』と語り始めた。



653 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/12(金) 18:32:27 ID:ywb0WCOQO
淳は少し声のトーンを下げ、
『俺が入院して二日目の夜、足と腰が痛くて痛くてなかなか眠れなかったんだ。
寝返りもうてないし、消灯時間だったし、仕方ないから、目つむって寝る努力をしていたんだ。
そして少し睡魔が襲ってきて、ウトウトし始めたとき、視線を感じたんだ。
見回りの看護婦だろうと思って無視してたんだけど、
なんか、ハァ・・・ハァ・・・って息遣いが聞こえてきて、何だろう?隣の患者の寝息かなぁ?って思って、
薄目を開けてみたんだよ。

そしたら、俺のベットカーテンが3㌢程開いてて、その隙間から誰かが俺を見ていたんだ。
その目は明らかに、俺を見てニヤついてる目だったんだ。
俺、恐くて恐くて、寝たふりしてたんだけど・・・
そして、そのまま寝てたらしく、気付いたら朝だったんだ。
後から考えたんだ。あのニヤついた目、どこかで見覚えが・・・
そーなんだよ。『掃除オバさん』の目にそっくりだったんだよ!』



656 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/12(金) 18:38:25 ID:ywb0WCOQO
ニヤついた目。俺はその目を知っている!
『中年女』に、そのニヤついた目つきで見つめられた事のある俺には、すぐに淳の言う光景が浮かんだ。
更に淳は話を続けた。
『それにあの『掃除オバさん』、ゴミ回収に来た時、ふと見ると、何かやたら目が合うんだ。
俺がパッと見ると、俺の事をやたら見ているんだ。半ニヤけで・・・』
それを聞き、俺が抱いていた疑問、『中年女』=『掃除オバさん』は確信に変わった。

やっぱりそうなんだ。社会復帰していたんだ!
缶コーヒーを握る手が少し震えた。
決して寒いからでは無い。体が反応しているんだ。
あの恐怖を体が覚えているんだ・・・。



701 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/13(土) 16:00:57 ID:kgXMFP4hO
その時、俺の後方から突如、光が照らされた。
『コラ!』
振り向くと、そこには見回りをしている看護婦が立っていた。
『ちょっと淳君!どこにもいないと思ったらこんなとこに!
消灯時間過ぎてから、勝手に出歩いちゃダメって言ってるでしょ!
それに、お友達も面会時間はとっくに過ぎてるでしょ!』と、かなり怒っていた。

淳は『はいはい・・・んぢゃ、また近いうちに来てくれよな!』と、
看護婦に車椅子を押され病室に戻って行った。
『おぅ!とりあえず、気つけろよ!』と言った。

俺もとりあえず帰るかと思い、入って来た急患用出入口に向かった。

それにしても、夜の病院は気味が悪い。
さっきまであの女の話をしていたからか?と思って歩いていると、
ん?廊下の先に誰かがいる。
あれは・・・『掃除オバさん』・・・?
いや、『中年女』か?
『中年女』らしき女が何かしている。



704 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/13(土) 16:07:18 ID:kgXMFP4hO
間違いない!『中年女』だ!この先の出入口付近で何かしている!
俺はとっさに身を隠し、『中年女』の様子を伺った。
うやら俺には気付かず、何かをしているようだ。
中腰の態勢で何かをしている。
俺は目を凝らし、しばらく観察を続けた。


何か大きな袋をゴソゴソし、もう一方に小分けしている?
尚も『中年女』はこちらに気付く様子も無く、必死で何かしている。
ひょっとして、病院内の収拾したゴミの分別をしているのか?
(俺達の地元は、ゴミの分別がルールとなっている)


その時に後ろから、
ちょっと、まだいたの?私も遊びじゃないんだから、いい加減にして!』と、さっきの看護婦が。
俺はドキッとし、『あ、いや、帰ります!どーも・・・』と言い、出入口に目をやると、
『中年女』はこちらに気付き、ジィーっとこちらを見ていた。



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801 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 03:48:18 ID:moTdWLP+O
小学生の頃、学校の裏山の奥地に、俺達は秘密基地を造っていた。
秘密基地っつっても結構本格的で、複数の板を釘で打ち付けて、雨風を防げる3畳ほどの広さの小屋。
放課後にそこでオヤツ食べたり、●本読んだり、まるで俺達だけの家のように使っていた。
俺と慎と淳と犬2匹(野良)でそこを使っていた。


小5の夏休み、秘密基地に泊まって遊ぼうと言うことになった。
各自、親には「○○の家に泊まる」と嘘をつき、小遣いをかき集めてオヤツ、花火、ジュースを買った。
修学旅行よりワクワクしていた。


夕方の5時頃に学校で集合し、裏山に向かった。
山に入ってから一時間ほど登ると、俺達の秘密基地がある。
基地の周辺は、2匹の野良犬(ハッピー♂タッチ♂)の縄張りでもある為、
基地に近くなると、どこからともなく2匹が、尻尾を振りながら迎えに来てくれる。
俺達は2匹に「出迎えご苦労!」と頭を撫でてやり、うまい棒を1本ずつあげた。 

 



803 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 04:11:40 ID:moTdWLP+O
基地に着くと荷物を小屋に入れ、
まだ空が明るかったので、すぐそばにある大きな池で釣りをした。
まぁ釣れるのはウシガエルばかりだが。(ちなみに釣ったカエル、は犬の餌)

釣りをしていると、徐々辺りが暗くなりだしたので、俺達は花火をやりだした。
俺達よりも2匹の野良の方がハシャいでいたが。

結構買い込んだつもりだったが、30分もしないうちに花火も尽きて、俺達は一旦小屋に入った。

夜の秘密基地というのは皆始めてで、山の奥地ということで、街灯もなく、月明りのみ。
聞こえるのは虫の鳴き声だけ。
簡易ライト一本の薄明るい小屋に三人。

最初は皆で菓子を食べながら好きな子の話、先生の悪口など喋っていたが、
静まり返った小屋の周囲から時折聞こえてくる、
『ドボン!』(池に何かが落ちてる音)や、『ザザッ!』(何かの動物?の足音?)に、
俺達は段々と恐くなって来た。

しだいに、『『今、なんか音したよな?』『熊いたらどーしよ?!』など、
冗談ではなく、本気で恐くなりだしてきた。

時間は9時。
小屋の中は蒸し暑く、蚊もいて、眠れるような状況では無かった。
それよりも、山の持つ独特の雰囲気に俺達は飲まれてしまい、皆、来た事を後悔していた。



806 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 04:35:31 ID:moTdWLP+O
明日の朝までどう乗り切るか、俺達は話し合った。
結果、小屋の中は蒸し暑く、周囲の状況も見えない(熊の接近等)為、山を下りる事になった。
もう内心、一時も早く家に帰りたい!と俺は思っていた。

懐中電灯の明かりを頼りに足元を照らし、少し早歩きで俺達は下山し始めた。

5分ほどはハッピーとタッチが、俺達の周りを走り回っていたので心強かったが、
少しすると2匹は小屋の方に戻っていった。

普段何度も通っている道でも、夜は全く別の空間にいるみたいだった。
幅30cm程度の獣道を足を滑らさぬよう、皆無言で黙々と歩いていた。


そのとき、慎が俺の肩を後ろから掴み、『誰かいるぞ!』と小さな声で言ってきた。
俺達は瞬間的にその場に伏せ、電灯を消した。
耳を澄ますと、確かに足音が聞こえる。
『ザッ、ザッ』
二本足で茂みを進む音。

その音の方を目を凝らして、その何者かを捜した。

俺達から2、30M程離れた所の茂みに、その何者かは居た。
懐中電灯片手に、もう一方の手には長い棒のようなものを持ち、
その棒でしげみを掻き分け、山を登っているようだった。



808 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 04:44:54 ID:moTdWLP+O
俺たちは始め恐怖したが、その何かが人間であること。
また、相手が一人であることから、それまでの恐怖心はなくなり、
俺たちの心は幼い好奇心で満たされていた。

俺が『あいつ、何者だろ?尾行する?』と呟くと、二人は『もちろん』と言わんばかりの笑顔を見せた。
微かに見える何者かの懐中電灯の明かりと、草を書き分ける音を頼りに、
俺達は慎重に慎重に後をつけだした。



809 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 04:57:38 ID:moTdWLP+O
その何者かは、その後20分程山を登り続けて立ち止まった。
俺達はその後方30M程の所に居たので、そいつの性別はもちろん、様子等は全くわからない。
かすかな人影を捕らえる程度。

ソイツは立ち止まってから、背中に背負っていた荷物を下ろし、何かゴソゴソしていた。

『アイツ一人で何してるんだろ?クワガタでも獲りに来たんかなぁ・・・』と俺は言った。
『もっと近づこうぜ!』と慎が言う。
俺達は枯れ葉や枝を踏まぬよう、擦り足で身を屈ませながら、 ゆーっくりと近づいた。



810 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 05:19:30 ID:moTdWLP+O
俺達はニヤニヤしながら近づいていった。
頭の中で、その何者かにどんな悪戯をしてやろうかと考えていた。
その時、
『コン!』
甲高い音が鳴り響いた。心臓が止まるかと。
『コン!』
また鳴った。
一瞬何が起きたか分からず、淳と慎の方を振り返った。

すると淳が指をさし、『アイツや!アイツ、なんかしとる!』と。
俺はその何者かの様子を見た。
『コン!コン!コン!』
何かを木に打ち付けていた。
いや、手元は見えなかったが、それが呪いの儀式というのはすぐにわかった。

と言うのも、この山は昔から藁人形に纏わる話がある。
あくまで都市伝説的な噂だと、その時までは思っていたが。


俺は恐くなり、『逃げよ』と言ったが、
慎が『あれ、やっとるの女や。よー見てみ』と小声で言い出し、
淳が『どんな顔か見たいやろ?もっと近くで見たいやろ?』と悪ノリしだし、
慎と淳はドンドンと先に進み出した。
俺はイヤだったが、ヘタレ扱いされるのも嫌なんで、渋々二人の後を追った。


その女との距離が縮まるたびに、『コン!コン!』以外に聞こえてくる音があった。
いや、音と言うか、女はお経?のような事を呟いていた。


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285 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 22:04:37.89 ID:x83Y3WRH0
そして、呪物の類だとすると、と前置きし、
恐らく、祈祷で呪物と君たちの縁を切ってしまえば、なんとかなるのではないかと。
そして、できればその人形も供養してしまいたい、とのことだった。

とりあえずそういう話でまとまったという事で、
俺達もそれで解決できるなら早くしてほしいと、話がまとまった。

と、その前に、俺はずっと我慢していたのだがトイレに行きたくなった。
事情を話し、「でも一人じゃなぁ…」と思っていると、
他のやつも全員我慢していたらしく、結局6人で連れションすることになった。


トイレからの帰り道、本堂へ続く廊下を歩いていると、
どこからか「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という、例の抑揚の無い声が聞こえてきた。
場所は分からないが、あれがすぐ近くにいるようだ…
C広が「近くにいるよな…」というと、A也が「かなり近いぞ、やばくね?」と返した。
たしかにかなり近い。でも姿は見えない。
すると最後尾にいたE介とD幸が、
「やばい、早く本堂に逃げろ!」と、窓の上のほうを指差しながら叫んだ。





286 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 22:06:20.82 ID:x83Y3WRH0
俺達が指差した方向へ振り向くと、それはいた…
前と同じように屋根から頭だけを突き出し、「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」と笑いながら、
例の真っ黒な目と口の顔をこちらに向けながら、ニコニコと笑っている。
俺たちは全力で逃げ出した。


本堂に着くと、お坊さん2人とさっきのおじさんが待っていた。
今になって気付いたのだが、おじさんはどうもこの村の村長さんらしい。
俺達が事情を話すと、お坊さん達はすぐさま俺達を座らせ、お経を読み始めた。

暫らくお経を読んでいると、本堂の天井のほうから、
「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という例の笑い声と、コツ…コツ…という、
俺の部屋で聞いたあの音が聞こえてきた。
俺達はビビりまくって身を寄せ合っていた。
暫らくすると声が聞こえなくなった。
俺が「終ったか?」と言い切らないうちに、
今度は本堂の横の庭のほうから、「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という声が聞こえ始めた。



287 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 22:07:05.17 ID:x83Y3WRH0
そして、薄暗くなり始めた本堂の障子に、夕日に照らされたあの人形のあたまが映し出された。
あたまはユラユラ揺れながら、相変わらず不気味な笑い声で笑っている。


その時、俺は恐怖心と不安感と連日の寝不足で、もう耐えられなくなって、
ちょっとおかしくなっていたんだとおもう。
人形の影を見て、恐怖心よりもその姿にイラつきはじめた。
ユラユラ揺れている姿を見ると、とにかくなんだか良く分からないがムカついてきて、
とうとう我慢できなくなった。


俺はお坊さん達がお経を読んでいる横の鉄の燭台を掴むと、
蝋燭もささったまま引き抜き、周りが制止するのも振りきり障子を開けた。
目の前にあの人形の顔があった。

一瞬俺は恐怖心に襲われたが、怒りとイラつきが勝って、
そのまま燭台をぶら下がっている人形の頭めがけ、
「ふざけんなーーーーーーーーーー!」と叫びながら振り下ろした。



289 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 22:08:42.37 ID:x83Y3WRH0
バキッ!という音がして、燭台の先端が人形の顔にめり込み、
そのまま人形は地面に落下した。
俺は裸足のまま庭に下りると、更に燭台を振りかぶり人形に打ち下ろした。

すると、なにか頭の中に妙な感覚が芽生え始めた。
人形はそれでもなお、「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」と無機質に笑っている。

俺はおかしくも無いのに笑いたくなり、なきたくも無いのに目からボロボロと涙が零れ落ちてくる。
明らかにE介たちと同じ状況になりつつあるのだが、
それでも俺は燭台を振りかぶり、人形に打ち下ろすのをやめなかった。
あとから話を聞くと、俺はゲラゲラと笑いながら、無表情でボロボロと涙を流していたらしい。


暫らくそんな状態が続いていると、
どうも燭台に残っていた蝋燭の火が人形の服に燃え移ったらしく、人形が煙を上げて燃え始めた。
友人たちによると、人形の「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という笑い声と、
俺の絶叫が交じり合い、薄暗くなり始めた周囲の雰囲気とあわさって、異様な状況だったという。



292 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 22:09:26.15 ID:x83Y3WRH0
それでも俺は、笑い泣きしながら殴り続けていると、
どこを殴ったのかよくわからないが、メキッ!という鈍い音がした。
その途端、俺の中の妙な感情が消えた。
消えたというか、急にシラケてしまったといえば良いのだろうか、
とにかく人形に対するイラつきも、
笑いたいという気持ちも、泣きたいという気持ちも、急になくなってしまった。


俺はその場にヘタり込み、友人たちやおじさんが「…大丈夫か?」と心配そうに近付いてきた。
人形はもう笑ってもいないし動きもしないが、
燃えたままでは不味いので、友人たちとおじさんが砂を掛けて消していた。



294 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 22:11:59.67 ID:x83Y3WRH0
理由は分からないが、俺は何故か全て解決したような、そんな良い気分になっていた。
この騒ぎの中、お坊さん2人はずっとお経を読み続けていたらしい。
人形(もう殆ど残骸に近かったが…)の事は明日詳しく調べる事になり、
箱に入れてお札を貼り、本堂に安置する事になった。
俺達はお坊さんの好意で、そのままお寺に泊まることにした。


翌朝。俺達は本堂に呼ばれた。
どうやら、お経のお陰なのか、俺がぶち切れたのが原因なのか、理由ははっきりしないが、
どうも一応解決はしたらしい。
そして、人形はこのままこのお寺で供養する事になったのだが、
結局この人形が何なのか、その辺りは謎のままだった。



296 :ラスト:2011/05/20(金) 22:14:30.18 ID:x83Y3WRH0
ただ、燃え残った人形の胴体に、焼け焦げ消えかかった文字で、
「寛保二年」という記述と、完全に燃えて文字数しかわからない作者の名前6文字、
それと、はっきりとは分からないので、残っている文字の痕跡からの推測だが、
「渦人形」という単語が読み取れた。

お坊さんが言うには、とにかく正体は不明だが、何らかの呪物である事はまちがいないらしい。
燃え残った残骸に、頭と動を繋ぐ棒の部分があったのだが、
そこにびっしりと、何か呪術的な模様が書かれていた痕跡があるのが、確認できたとの事だった。


その後、今に至るまで、俺も含め当時のメンバーには、知る限り何も起こっていない。
お寺のお坊さんからは、人形の正体がわかったら連絡をくれるという話だったが、
あれから数年経つが、未だその連絡も来ない。


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191 :8:2011/05/19(木) 23:35:19.55 ID:GMmQg5nH0
そして、俺達はE介の手足と肩をもち、外へと運び出そうと1階までE介を運んだ。
が、そこで問題がおきた。
ドアを開けようとしたB太が、声を震わせながら大声で「ドア開かねーよ!」と言ってきた。
俺達はE介を廊下に降ろし、みんなでドアを開けようとしたのだが、
さっきは簡単に開いたのに今はびくともせず、
6人の中で一番体格の良いA也がドアにタックルしてみたのだが、
それでもまるで開く気配が無い。


俺達は軽くパニックになり顔を見合わせていると、
2階から微かに「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」と、まるで抑揚の無い機械的な声というか、
音というかが聞こえてきた。

E介はまだ床に寝転がされたまま笑っている。

とにかく外にでないといけない、
そう考えた俺は、1階のリビングが、ガラスのサッシのみで割れば出れそうな事を思い出し、
4人にそれを伝えると、リビングへと向かう事にした。

その時、ふと俺は階段の上を見て絶句した。

階段の踊り場の少し上ところから、子供の顔がのぞきこんでいる。
月明かりが逆光になっていて、表情とかは何も分からないが、
顔のサイズや髪型からさっきの子供とわかった。
相変わらず「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という声も聞こえてくる。
どうやら声の主はこの子供らしい。





192 :9:2011/05/19(木) 23:36:01.72 ID:GMmQg5nH0
しかし何かがおかしい、違和感がある。
俺はすぐに違和感の正体に気が付いた。

子供は階段の手すりからかなり身を乗り出しているはずなのだが、なぜか頭しか見えない。
あれだけ乗り出せば、肩辺りは見えても良いはずなのだが…
俺がそんな事を考えながら階段の上を凝視していると、
C広が「おい何してんだ、早く出ようぜ、ここやべーよ!」と、
俺の腕を掴んでリビングへと引っ張った。


俺には一瞬の事に見えたが、
どうも残りの4人がE介をリビングへ運び込み、窓ガラスを割り、
打ち付けてある板を壊すまで、ずっと俺は上の子供を凝視していたらしい。
俺は何がなんだか解らず、とりあえず逃げなければいけないと、皆でE介を担いで外へとでた。

外へ出ても相変わらず、「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という声は、家の中から聞こえてくる。
俺達はE介を担ぎ、D幸が合宿所へ先生たちを呼びに行った。



193 :ラスト:2011/05/19(木) 23:38:00.38 ID:GMmQg5nH0
その後、E介は救急車で運ばれた。
俺達は先生方に散々説教をされ、こんな事件があったので合宿はその日で中止となった。


帰宅準備をしていた昼頃、十台くらいの数の車が合宿所にやってきた。
中から20人ほどのおじさんやおじいさん、あと地元の消防団らしき人が降りて、
顧問の先生たちと何か話しをすると、
合宿所の裏に回り、例の家の周りにロープのようなものを貼り、柵?のようなものを作り始めた。

俺達は何事なのかと聞いてみたが、
顧問の先生たちは何も教えてくれず、そのままバスで地元へと帰った。

E介は2日ほど入院していたが、その後どこか別の場所へ運ばれ、
4日後には何事もなかったように帰ってきた。
後から事情を聞いてみると、
E介には、家に入ったところから昨日までの記憶が何もなかったらしい。



268 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:00:48.42 ID:x83Y3WRH0
E介が帰ってきた日の夜、俺が自分の部屋で寝転がってメールしていると、
一瞬、「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という、あの声が聞こえた気がした。
びっくりして起き上がり、カーテンを開けて外を見たりしたが、いつもの景色で何も無い。
俺は「気のせいかな?」と、起き上がったついでに
1階に飲み物を取りに行くことにした。


俺の家はL字型になっていて、自室は車庫の上に乗っかるような形になっている。
冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出し2階へ上がると、
丁度階段を上がったところの窓のカーテンの隙間から、僅かに自室の屋根の部分が少し見えた。
すると、屋根の上に何かがいる…


この前あんな事があったばかりなだけに、
ビビりまくった俺が窓からカーテンを少し開けて外の様子をのぞくと、
屋根の上に和服を着た子供が、両手を膝の上にそろえて正座しているのが見えた。
それだけでもかなり異様な光景なのだが、それだけではなかった。

子供は体を少し前かがみにして、下を覗きこむような姿勢なのだが、
首のあるはずの部分から、細長い真っ直ぐの棒のようなものが1mほどのびていて、
その先にある頭が、俺の部屋の窓を覗き込んでいた。



269 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:01:37.39 ID:x83Y3WRH0
「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という声も、窓越しにわずかに聞こえてくる。
俺はあまりの出来事に声も出せず、そのまま後ずさりすると1階へ下りた。

寝ている親を起そうかとも思ったが、
これで起してあれがもういなかったらそれこそ恥ずかしい…
その時なぜかそう思った俺は、そのまま1階のリビングで徹夜した。
たしか朝4時過ぎまで、「ホホホ…」という声は聞こえていたと思う。


翌朝、恐る恐る部屋に戻ってみたが、
あれはいなくなっており、室内にも特に変わった部分は無かった。

その日の昼頃、自宅の電話に顧問の先生から電話があった。
この前の件で話があるからすぐに来いという。
昨晩のこともあった俺は、嫌な予感がして大急ぎで学校へと向かう事にした。



270 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:02:19.49 ID:x83Y3WRH0
学校へ到着すると、生徒会などで使っている会議室に呼ばれた。
会議室に入ると、A也、B太、それにC広とD幸までいる。
更に、うちの学校とC広たちの学校の顧問の先生たち、それと見た事の無いおじさんたちも数人いた。


まず、顧問の先生のうち1人が話し始めた。
要約すると、E介にまた同じ症状だでたらしく、とある場所に運ばれたらしい。
そして、俺達に「昨夜おかしな事はなかったか?」と聞いてきた。

俺はすぐさま昨夜のあれを思い出し、
「あのー、深夜になんか変なのが俺の部屋を覗き込んでるのが見えて…」と事情を話した。
A也、B太、C広、D幸には特に異常はなかったらしい。

するとC広が、
「そういやお前(俺)さ、あの家の中で、階段の上眺めながらボーっとしてたよな?
あれ関係あるんじゃないか?」 と言い出した。



271 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:02:59.21 ID:x83Y3WRH0
そういえば… 俺はあのときの事を思い出し、
皆に「あの時さ、変な笑い声みたいなのと、なんか子供の姿見たよな?」と聞いてみた。
しかしみんなは、声はずっと聞こえていたけど、
子供の姿は最初のドアのところで見ただけで、家の中では見ていないという。

俺達がそんなやり取りをしていると、
さっきまで黙っていたおじさんが、事件の詳細を話し始めた。

非常に長い話だったので要約すると。俺達がであったのは、「ひょうせ」と呼ばれるものらしい。
これはあの土地特有の妖怪のようなもので、滅多に姿を見せないが、
稀に妊婦や不妊の家の屋根に現れて、笑い声をあげるらしい。
そうすると、妊婦は安産し、不妊の夫婦には子供が産まれるという、非常に縁起の良いものだそうな。
ただし、理由は全く分からないが、数十年に一度、
なぜか子供を襲い憑り殺してしまうという、厄介な存在でもあった。


ちなみにあの家は、全くいわくも何もなく、ただ「ひょうせ」が偶然現れただけの場所なのだが、
「ひょうせ」が子供を憑り殺そうとした場合、それに対する対抗策があり、
「ひょうせ」が最初に現れた場所に結界を作り封じ込め、
簡易的な祠をつくって奉ることで、殺されるのを防ぐ事ができるらしい。
合宿所から帰る直前、俺達が見たのは、その封じ込め作業だったわけだ。



272 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:03:29.67 ID:x83Y3WRH0
おじさんは続けて、ただ今回は何かおかしいのだという。
普通、祠をつくって奉ればそれで終るはずなのだが、今回はどういうわけだが逃げられてしまって、
E介がまた被害に会い、しかも俺のところにまで現れている。

それに、そもそも現れるだけでも珍しい「ひょうせ」が、
自分達の村とその周辺以外に現れる、というのも全く前例がないうえに、
「ひょうせ」が前回子供を襲ったのは20年ほど前で、早すぎるのだそうな。

ただ、おかしいおかしいといっても、現実に起きてしまっているのだから仕方が無い。

俺達は学校で、村から来たお坊さんに簡易的な祈祷をしてもらい、お札を貰って、
「君たちはこれで大丈夫だろう」と言われ帰された。
ちなみに、E介に関しては、暫らくお寺で預かって様子を見て、
その間にもう一度祠を建てて、「ひょうせ」を奉ってみるとの事だった。


学校から帰された俺達は、各々迎えに来ていた親に連れられて帰る予定だったのだが、
話し合って、ひとまず学校から一番近い俺の家に全員で泊まることにした。
安全と言われていてもやはり不安だし、全員でいたほうが少しは心細く無いと思ったからだった。


その夜、俺達が部屋でゲームしていると、
コン…コン…コン…コン…と、窓を規則的に叩く音がした。



273 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:04:40.52 ID:x83Y3WRH0
さっき説明した通り、俺の部屋は車庫の上にあり、
壁もほぼ垂直なので、よじ登って窓を叩くなどまずできない。
しかも、その窓は昨晩、例の子供が覗き込んでいた窓だ…

状況が状況だけに、全員が顔をこわばらせていると、
B太が強がって「なんだよ、流石に誰かの悪戯か風のせいだろ?」と、カーテンを開けようとした。
俺は大慌てでB太に事情を話し、カーテンをあけるのを踏みとどまらせた。


窓を叩く音はまだ続いている。
D幸が、「やっぱ正体確認したほうがよくね?分からないままのほうが余計こえーよ…」と言ってきた。
たしかに、何かその通りな気がした。
なんだか分からないものが一晩中窓を叩いている状況なんて、とても耐えられそうに無い。
俺達は階段のところまで移動し、カーテンを少し開けて、隙間から俺の部屋を見てみた。

いた…
昨日のあれが、やはり昨日と同じように首をらしき棒を伸ばし、窓から俺の部屋を覗き込んでいる。
そして時々、コン…コン…と頭を窓にぶつけている。



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死ぬ程洒落にならない怖い話をあつめてみない?


836 :763 ◆MOBqqkAfh6 :2007/03/15(木) 05:34:27 ID:nyVgvoIt0
アクマで聞いた話の為、本当かどうかは不明。
(俺の体験だと本当と言い切れるが、人の体験なので)
自分の体験をS区出身の友人に話したところ、
彼が(仮にKとする)俺に酷似するような体験があると言い出したので聞いた話。


まずはKについて。中学からの付き合いで、高校は俺が引っ越すまでは一緒。
ただし、引っ越す前までに、そこまで仲良かったわけでもない。大学時代になって再度仲良くなった。
霊的な体験談多数。
しかし本人曰く、「全然怖くないことばっかり、あんな事件があったし」
それ以外にも変な体験が多い。

例1:大学時代にストーカー(女)に付きまとわれる。
(ただし、このストーカーは異常者であり、Kをストーカーしてるというより、
Kが住んでいた部屋への異常なまでの執着心。これは怖かった)
例2:かなり有名な殺人事件が、借りていた部屋の近くであり、
Kの家に、殺されているはずの人間が出てきて(夢まくらの様な感じ)、その次の日に事件が発覚。
犯人の自供から、死んだ時間と現れた時間が一緒だったとの事。
(本当かどうかは不明)
例3:風俗に行って、風俗嬢にいきなり耳を噛まれる。
その際に耳元で、「あーああーあーあー」と言われたとの事。
(意味不明、耳に噛まれた痕あり)
例4:以上の事から、K自体に何かがとり憑いてる可能性があるため、神社に御祓いに行くも拒否される。
これはうそ臭い。神職にある者が助けを断るとは思えない。
が、Kの彼女の話からすると本当の事らしい。
(意味不明、理由も不明)


そんな感じの奴。
ただし、実際に話を聞くと全てに置いて真実味がある為、嘘ではないと思います。
話をもどします。




837 :763 ◆MOBqqkAfh6 :2007/03/15(木) 05:35:42 ID:nyVgvoIt0
S区って言うのはかなり大きくて、目の前に海、後ろに山がある。
S区の目の前の海を正面と捉えており、山を越えて広がる場所が裏S区。
もちろんこちらもそれなりに大きい。
ただ、裏と名前がついたり、差別観的な名称からも分かるとおり、S区と裏S区ではかなり文明が異なる。

裏S区にはまず電車が通っていない。
電車に乗って隣町(S区から見ての話だが)に行く際にも、
わざわざ車かバスでS区に出てきて、電車に乗らなければならない。
たかが隣町に行くだけに3、40分以上かかってしまうのである。
だから裏S区出身者は、あまり外(自分の地域以外)に出たがらない。
その為か、かなり身内に対しての思いやり、
連結力というのは強く、子供の起した事件に関しても、一々親がしゃしゃり出てくる。
ただし、こういう地域に限り絶対にある、『排他的』なものに関してもかなり強い。


例えば、俺が高校の時にAに苛められたときに、殆どの奴らが俺に対して手を差し伸べる事は無かった。
俺は生まれも育ちもS区なのだが、
クラスの半数以上が裏S区出身者の為、
裏S区の奴等に関しては、傍観とか無視とかとも違うくて、『そこに俺は居ない』って本気で思ってる感じ。

また、S区の奴等にも友人が居たが、彼らは裏S区の人間を怖がっている為か、
俺に手助けをしたり庇ったりして、何か自分に火の粉がかかるかも、という事を嫌がってる感じで無視。

まぁ、俺の中でも一番仲が良かったAの突然の奇行にビビッてたし、他に助けを求める気も無かった。
また、裏S区は本当に田舎な為、未だにヤンキーと言われる奴等が多く、
たばこやお酒は当たり前で、シンナーまで吸ってる奴も居た。
(流石に俺の高校には居なかったけど、S区出身者で裏S区の学校に通ってる奴からの情報。
また、その高校はお世辞にも頭が良いとは言えないため、
そういう奴等が集まるのは必然かも)



838 :763 ◆MOBqqkAfh6 :2007/03/15(木) 05:36:35 ID:nyVgvoIt0
ただし、ここで俺が疑問に思ったのが、俺がAに苛められてる時に
何も無かったようにしていた他の裏S区出身者には、俺についてるモノが見えなかったのか?
それとも、それが見えたからこそ、
Bさんが言った「通常は無視をする」っていう感じだったのかは不明。

ただ、後者のほうの様な気がする。
そうでなければ、教室の後ろでいきなり殴られたりしてるのに、笑顔で飯食べたり、
会話を楽しんだりなんか出来るわけない。
S区出身者の奴等でさえちらちら見てたのに、全く無いモノのように振舞えるわけが無いから・・・。

まぁ、どっちにしろ気持ちのいいものではない。

それと追記として、俺の高校のときのクラスの、5分の1の苗字がAと同じ。
別に親戚とか従兄弟とかではないみたいだけど、昔に遡ればそういう関係なのかもしれない。
けどこれは不明。
(俺が転入した先の高校にも、この苗字のやつが学年に3人ぐらい居たので、
ただ単にこの地域に多いだけかも)

この家系の奴等だけしか見えないとしても、
裏S区の奴等に言えばモノを理解し、俺を無視ぐらいはするだろう。



839 :763 ◆MOBqqkAfh6 :2007/03/15(木) 05:37:35 ID:nyVgvoIt0
ここでKの話にもどる。


ある日Kが、裏S区の友人(G君とします。彼とは一度も話した事はありません)宅に、
初めて泊まりに行った時の話。

KはS区出身と書いたが、本当は小学生の時に引っ越してきた。
それまでは福岡県の都会に居たらしく、ここに来たときにかなりの田舎だと思ったそうだ。
俺からしたらS区は、田舎でも都会でもない
所謂普通の町だったけど、Kからしたら田舎らしい。
別に畑や田圃が広がってるわけでもないし、コンビニまで歩いて30分なんて場所も皆無な場所。
(むしろコンビニは多いと思う)

まぁ、そんなKだから、高校に入って裏S区の知り合いが出来て遊ぶ範囲が広がっていき、
裏S区の奴の家に泊まりに行くことになって、初めて裏S区を見ることになる。

初めて向かう際に足に使ったのがバスだったが、そのバスを待つ時間が40分に1本ぐらいの割合。
(高校の放課後の時間帯でそれ。朝や夕方5時以降から7時までは20分に1本。
それ以降は1時間に1本とかそんな感じ)
しかも、隣町の都会に電車で出るよりも時間がかかる。
それだけでもかなりショックだったらしく、グダグダ文句を言ってたんだそうだ。

ただ、値段がかなり安い為、
(もし隣町の都会にバスでいくと300円以上かかるが、それ以上時間がかかるのにも関わらず160円ぐらい)
裏Sの出身者はそのバスを結構用いてる為、
Kがグダグダ文句を言ってる時に、前に座ってたおばさんがまず咳払いをし始めて、
それを合図かのように、その周りの2、3人がちらちらKを見てたそうだ
(被害妄想っぽいけど・・・)



840 :763 ◆MOBqqkAfh6 :2007/03/15(木) 05:38:20 ID:nyVgvoIt0
その後、裏S区の田畑が広がるだだっ広い場所に出ていき、ポツンポツンと家が見えてきたところで、
Kはバスを降りた。
バスの通り道はそのまま住民の主要道路となっており、そこしか大きな道はない。
その為、辺鄙を通り越したような感覚になる。

その時にすごく嫌な匂いがして顔をしかめてると、Gが「どうした?」と聞いてきた。
(めんどくさいので、「・・・らしい」とか、「・・・だそうだ」を多少省き、Kの話とします)
以下会話。


K「この匂いなん?めちゃめちゃくせーよ」
G「なんの匂いよ?ちゅうかお前、人の家の近くに来てめちゃめちゃ失礼やのぉ」
K「いや、なんやろ。なんか匂うやろ?わからんの?」
G「あ~、お前これ家畜の臭いやろ。牛とか豚とか飼っとるけん、そのにおいよ。気にすんな。
あ、それとお前、さっきいらん事文句いうなや、後で俺が言われるやろうが」
K「いらんことって?ちゅうか遠いもんは遠いやろ。しかも怒られるって。
あんなおばさんとか無視しとけや。全然知らんおばさんやし」
G「いや、お前が知らんだけやけね。
俺とかは結構見かけたりするし、うちのオカンとかと知り合いかも知れんやろうが」
K「まぁまぁ、俺は関係ないけいいけん。
しかも俺が言ったんやけ、お前が気にすんな。俺が怒られるだけよ」
G「あー、それと、お前うちに来たときに変なこと言うなよ。匂うとか臭いとか。おとんにぶん殴られるぞ」
K「言わんよ。さすがに」
G「いや、まじめに聞けって。うちのおとんメチャメチャ怖いけん、絶対怒らせんなよ」



841 :763 ◆MOBqqkAfh6 :2007/03/15(木) 05:39:10 ID:nyVgvoIt0
ここまで来て、さっきまでのGの不真面目さが消えてて、Gの父親の怖さを凄く強調するので、
Kはかなり緊張してきた。
その後Gの家に向かうことになったけど、バス停からさらに10分近く歩いてやっとつく。
さすがに文句言おうかと思ったけど、
家の前に来たことで、Gの両親に聞かれたら困るしと思い、何もいわなかったそうだ。

ただ、この時点でKはもう帰りかったらしい。理由は3つ。
1、臭いがひどすぎる。
家畜の臭いは今まで嗅いだ事の無いぐらいの臭いだそうで、トイレの臭い匂いみたいな感じ。
2、家が凄い怖い。
木造の平屋の様な家で、日本家屋的なものらしいけど、家の色が『黒』。
別に真っ黒って意味ではないけど、黒っぽい感じ。
(これはAの家もそうだったけど、ただ薄暗い。
都会育ちの奴には明るいのが当たり前だったから、とかそんな感じではく、
木目調の色合いが、なんか『黒い感じのもののみで』って感じ)
3、お札びっしり。
家の玄関の扉をあけたら、靴を脱ぐ前の壁にお札びっしり。
(Aの家でも同じ感じだったが、葬式だったからと思ってたが、Gの家は不明)



842 :763 ◆MOBqqkAfh6 :2007/03/15(木) 05:40:28 ID:nyVgvoIt0
この3つのうち一番嫌だったのは、もちろん匂い。
2に関しては、外面が黒かろうが、中に入れば普通だったので気にしないから。
3に関しても、家の玄関の側面の靴置き場のみなので、家に入れば特に問題なし。
ただ、匂いだけはどうしようもない。
家の中だから安全という感じでもなく、少しはおさまってるだけで臭いものは臭い。

靴を脱いで居間に居たGの母親にあいさつをして、Gの部屋にむかったところ、
Gの兄貴が居たらしく、一緒に色々と遊んでたそうだ。
Gの母親もかなりいい人で、わざわざおやつやジュース等を持ってきてくれた。
その際に、「K君ちゅうんか?ほうか、Gと仲良くしいや。ね?」と言われたそうだ。
その後Gの兄が、「今日の夜は一緒に遊ぶか?」と聞かれた為、
GもKもOKを出して遊ぶことになった。

ただし遊ぶと言っても、徒歩10分以内にあるものはバス停のみ。
何をするのか?とも思ったそうだが、
Gが「うちの兄貴おもしろいけん、いっしょあそぼうなw」と言われたので、楽しみにしていたそうだ。



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