サイケデリック・奇譚

永遠の日常は非日常。

タグ:執着

295 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/24(月) 03:21:39 ID:5CaStqefO
その日は、学校で噂の『トレンチコート女』(推定・中年女)には会わなかった。
次の日も、その次の日も会わなかった。
しかし、学校では相変わらず『トレンチコートの女』の噂は囁かれていた。


慎と一緒に下校することになって五日目、俺達は久しぶりに淳の見舞いに行くことにした。
お土産に、給食のデザートのオレンジゼリーを持って行った。

淳の家に着き、チャイムを押した。
いつもの様に叔母さんが明るく出て来て、俺達を中に入れてくれた。
淳は相変わらず元気が無かった。
ジンマシンは大分消えていたが、淳本人は『横腹の顔の部分が日に日に大きくなっている』と言い、
俺と慎には全く分からなかった。
むしろ、前回見たときよりはマシになっているように見えた。

精神的に淳はショックを受けているのだろう。
俺達は学校で流れている『トレンチコートの女』の噂は、淳には言わなかった。

帰り間際に、淳の叔母さんが俺達の後を追い掛けて来て、
『淳、クラスでイジメにでも会っているの?』と不安げな顔で聞いて来た。
俺達は否定したが、本当の理由を言えないことに、少し罪悪感を感じた。





301 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/24(月) 03:40:18 ID:5CaStqefO
それから三日後、
その日は珍しく、内藤と佐々木と俺と慎の四人で一緒に下校した。
内藤は体がデカく、佐々木はチビ。実写版のジャイアンとスネオみたいな奴ら。
もう俺と慎の中で、『中年女』の事は風化しつつあった。
学校で噂の『トレンチコート女』も実在したとしても、全くの別人と思えて来ていた。

その日は、四人で駅前にガチャガチャをしに行こう、と言う話になり、いつもと違う道を歩いていた。

楽しく四人で話しながら歩いていると、
佐々木が『あ、あれ、トレンチコート女ぢゃね?』
内藤『うわっ!ホンマや!きもっ!』と言い出した。
俺はトレンチコート女を見てみた。
心の中で別人であってくれ!と願った。

トレンチコート女はスーパーの袋を片手に持ち、
まだ残暑の残るアスファルトの道で、ただ突っ立っていた。

うつむいて表情は全く分からない。

慎は警戒しているのか、小声で俺達に『目、合わせるなよ!』と言ってきた。
少しずつ、女との距離が縮まっていく。緊張が走った。
女は微動たりせず、ただうつむいていた。

女との距離が5M程になったとき、女は突然顔を上げ、俺達四人の顔を見つめてきた。
そしてその次に、俺達の胸元に目線を送って来ているのが分かった。
!名札を確認している。



306 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/24(月) 03:56:07 ID:5CaStqefO
俺は焦った。
平常心を保つのに必死だった。
一瞬見た顔で、あの日の出来事がフラッシュバックし、心臓が口から出そうになった。
間違いない。『中年女』だ!

俺はうつむきながら歩き過ぎた。
俺はいつ襲い掛かられるかとビクビクした。

どれくらい時が過ぎただろう。いや、ほんの数秒が永遠に感じた。
内藤が『あの目見たけ?あれ完全にイッテるぜ!』と笑った。
佐々木も『この糞暑いのにあの格好!ぷっ!』と馬鹿にしていた。
俺と慎は笑えなかった。

佐々木が続けて言った。
『やべ!聞こえたかな?まだ見てやがる!』
俺はとっさに振り返った。

『中年女』と目が合った・・・
まるで蝋人形のような無表情な『中年女』の顔が、ニヤっと、凄くイヤらしい微笑みに変わった。

背筋が凍るとはこの事か・・・

俺は生まれて始めて、恐怖によって少し小便が出た。
バレたのか?俺の顔を思い出したのか?バレたなら何故襲って来ないのか?
俺の頭は、ひたすらその事だけがグルグル巡っていた。

内藤が『うわーっ、まだこっち見てるぜ!
佐々木!お前の言った悪口聞かれたぜ!俺知らねーっ!』っとおどけていた。



311 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/24(月) 04:13:03 ID:5CaStqefO
もうガチャガチャどころではない。
曲がり角を曲がり、女が見えなくなった所で、俺は慎の腕を掴み『帰ろう!』と言った。
慎は俺の目をしばらく見つめて、
『あ、今日塾だっけ?帰らなやばいな!』と俺に合わせ、俺達は走った。


家とは逆の方向に走り、しばらくして俺は慎に
『アイツや!あの目、間違いない!俺らを探しに来たんや!』
慎は意外と冷静に、
『マジマジと名札見てたもんな・・・学年とクラス、淳の巾着でバレてるし・・・』
俺はそんな落ち着いた慎に腹がたち、
『どーすんだよ!もう逃げ切れネーよ!家とかそのうちバレっぞ!!』
慎『やっぱ警察に言おう。このままはアカン。助けてもらお』
俺『・・・』

俺はしばらく黙っていた。
たしかに、他に助かる手は無いかもしれないと思った。

『でも、警察に何て言う?』と俺が問うと慎は、
『山だよ。あの山に打ち付けられた写真とか、ハッピー、タッチの死体。あれを写真に撮って、
あの女が変質者って言う証拠を見せれば、警察があの女を捕まえてくれるはずや!』
俺は納得した。
もうあの山に行くのは嫌だったが、仕方が無かった。
さっそく明日の放課後、裏山に二人で行く事になった。



315 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/24(月) 04:27:46 ID:5CaStqefO
明日の放課後、裏山に行く。
その話がまとまり、俺達は家に帰ろうとしたが、
『中年女』が何処に潜伏しているか分からない為、俺達は恐ろしく遠回りした。
通常なら20分で帰れるところを、二時間かけて帰った。


家に着いて、俺はすぐに慎に電話した。
『家とかバレてないかな?今夜きたらどーしよ!』などなど。
俺は自分がこれほどチキンとは思わなかった。
名前がバレ、小屋に『淳呪殺』と彫られた淳が、精神的に病んでいるのが理解できた。
慎は『大丈夫、そんなすぐにバレないよ!』と俺に言ってくれた。
この時俺は思った。
普段対等に話しているつもりだったが、慎はまるで俺の兄のような存在だと。

もちろん、その日の夜は眠れなかった。
わずかな物音に脅え、目を閉じればあのニヤッと笑う中年女の顔が、まぶたの裏に焼き付いていた。


朝が来て学校に行き、授業を受け、放課後の午後3時半。
俺と慎は、裏山の入口まで来た。



156 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/27(木) 04:50:46 ID:2G2sPLliO
俺は山に入るのを躊躇した。
『中年女』
『変わり果てたハッピーとタッチ』
『無数の釘』
頭の中をグルグルと、鮮やかに『あの夜の出来事』が甦ってくる。

俺は慎の様子を伺った。
慎は黙って山を見つめていた。慎も恐いのだろう。
やっぱ、入るの恐いな・・・と言ってくれ!と俺は内心願っていた。

慎はズボンのポケットからインスタントカメラを取り出し、右手に握ると、
俺の期待を裏切り、『よし』と小さく呟き、山へ入るとすぐさま走りだした。
俺はその後ろ姿に引っ張られるように走りだした。

慎は振り返らずに走り続ける。
俺は必死に慎を追った。
一人になるのが恐かったから必死で追った。
今思えば慎も恐かったのだろう。恐いからこそ、周りを見ずに走ったのだろう。


あの場所が徐々に近づいてくる。
思い出したくもないのに、あの夜の出来事を鮮明に思いだし、心に恐怖が広がりだした。
恐怖で足がすくみだした時、あの場所に着いた。
そう、『中年女が釘を打っていた場所』
『中年女がハッピー、タッチを殺した場所』
『中年女に引きずり倒された場所』
『中年女と出会ってしまった場所』



160 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/27(木) 05:19:27 ID:2G2sPLliO
俺は急に誰かに見られているような気がして、周りを見渡した。
いや、誰かにでは無い。中年女に見られているような気がした。
山特有の静寂と、自分自身の心に広がった恐怖がシンクロし、足が震えだす。
立ち止まる俺を気にかける様子無く、慎はあの木に近づきだした。

何かに気付き、慎はしゃがみ込んだ。
『ハッピー・・・』
その言葉に俺は足の震えを忘れ、慎の元に歩み寄った。

ハッピーは既に土の一部になりつつあった。
頭蓋骨をあらわにし、その中心に少し錆びた釘が刺さったままだった。

俺は釘を抜いてやろうとすると、慎が『待って!』と言い、写真を一枚撮った。
慎の冷静さに少し驚いたが、何も言わず俺は再び釘を抜こうとした。
頭蓋骨に突き刺さった釘をつまんだ瞬間、
頭蓋骨の中から見たことの無い、多数の虫がザザッと一斉に出てきた。

『うわっ!』

俺は慌てて手を引っ込め、立ち上がった。

ウジャウジャと湧いている小さな虫が怖く、ハッピーの死体に近づく事が出来なくなった。
それどころか、吐き気が襲って来てえずいた。
慎は何も言わずに背中を摩ってくれた。
俺はあの夜ハッピーを見殺しにし、またハッピーを見殺しにした。
俺は最高に弱く、最低な人間だ。



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955 :本当にあった怖い名無し:2006/04/23(日) 02:47:25 ID:0yX4mhCZO
俺と淳は、少し後方でエアーガンを構えた。基地の中に中年女がいるかもしれない。
慎はゆっくりとドアに手を掛けると同時に、すばやく扉を引き開けた。
『うわっ!』
慎は何かに驚き、その場に尻餅を付きながら、ズルズルと俺達の元に後ずさりをしてきた。
俺と淳は何に慎が怯えているのか分からず、とりあえず銃を構えながら基地の中をゆっくりと覗いた。
そこには、変わり果てたタッチの死体があった。


『うわっ!』
俺も淳も、慎と同じような反応をとった。
やはりタッチも、眉間に五寸釘が打ち込まれていた。

俺はその時思った。あの中年女は変態だ!いや、キチ●イだ!
普通、こんなことしないだろう。
とてつもない人間に関わってしまったと、昨夜、この山に来た事を心から後悔した。

しばらく三人とも、タッチの死体を見て呆然としていたが、
慎が小屋の中を指差し、
『おい!!あれ・・・』
俺と淳は黙りながら、静かに慎が指差す方向を覗き込んだ。
基地の中・・・壁や床板に何か違和感が・・・何か文字が彫ってある・・・
近づいてよーく見てみた。


『淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺・・・』

無数に釘で淳・呪・殺と、壁や床に彫ってあった。





959 :本当にあった怖い名無し:2006/04/23(日) 03:02:43 ID:0yX4mhCZO
淳は『え??・・・』と目が点。というか、固まっていた。
いや、俺達も驚いた。
なぜ名前がバレているのか!
その時、慎が『淳の巾着や。巾着に名前書いてあるやん!』
『?!』
俺は目線を、屋根に打ち付けられた巾着に持って行った。
無数に釘で打ち付けられた巾着には、確かに『五年三組○○淳』と書かれてある。
淳は泣き出した。
俺も慎も泣きそうだった。
学年と組、名前が中年女にバレてしまったのだ。
もう逃げられない。俺や慎の事もすぐにバレてしまう。
頭が真っ白になった。
俺達はみんなハッピーやタッチのように、眉間に釘を打ち込まれ殺される・・・


慎が言った。『警察に言おう!もうダメだよ。逃げられないよ!』
俺はパニックになり、
『警察なんかに言ったら、秘密基地の事とか、
昨日の夜に嘘付いてここに来た事バレて、親に怒られるやろ!』
と冷静さを欠いた事を言った。
いや、当時は何よりも、親に怒られるのが一番恐いと思っていたのもあるが・・・

ただ、淳はずっと泣いたまま、『ッヒック、ヒック・・・』
何も掛ける言葉が見つからなかった。

淳は無言で打ち付けられた巾着を引きちぎり、ポケットにねじ込んだ。



967 :本当にあった怖い名無し:2006/04/23(日) 03:41:01 ID:0yX4mhCZO
俺達は会話が無くなり、とりあえず山を降りた。淳は泣いたままだった。
俺は今もどこからか中年女に見られている気がして、ビクビクしていた。

山を降りると慎が、『もう、この山に来るのは辞めよ。
しばらく近づかんといたら、あの中年女も俺らの事を忘れよるやろ』と言った。
俺は、『そやな。んで、この事は俺らだけの秘密にしよ!
誰かに言ってるのがアイツにバレたら、俺ら殺されるかもしれん』
慎は頷いたが、淳は相変わらず腕で涙を拭いながら泣いていた。

その日は各自家に帰り、この夏休みは三人で会うことは無かった。


その二週間後の新学期、登校すると淳の姿が無かった。
慎は来ていたので、慎と二人で『もしかして淳、あの女に・・・』と思いながら、
学校帰りに二人で淳の家を訪ねた。

家の呼び鈴を押すと、明るい声で『はぁーい!』と淳の母親が出て来た。
俺が『淳は?』と聞くと、
おばさんは『わざわざお見舞いありがとねー。あの子、部屋にいるから上がって』と言われ、
俺と慎は淳の部屋に向かった。

『淳!入るぞ!』と淳の部屋に入ると、淳はベットで横になりながら漫画を読んでいた。
以外と平気そうな淳を見て、俺と慎は少し安心した。



72 :本当にあった怖い名無し:2006/04/23(日) 03:56:52 ID:0yX4mhCZO
慎『何で今日休んだん?』
俺『心配したぞ!風邪け?』
淳『・・・』
淳は無言のまま漫画を閉じ、俯いていた。

そこにおばさんが菓子とジュースを持ってきて、
『この子、10日ぐらい前からずっとジンマシンが引かないのよ』と言って、
『駄菓子の食べ過ぎじゃないのー?』と続けた。
そして笑いながら、おばさんは部屋を出ていった。
俺と慎は笑って『何だよ!脅かすなよー、ジンマシンかよ!拾い食いでもしたんだろ?』とおどけたが、
淳は俯いたまま笑わなかった。


慎が『おい!淳どうした?』と尋ねると、淳は無言でTシャツを脱いだ。
体中に赤い斑点。
確かにジンマシンだった。
俺は『ジンマシンなんて薬塗ってたら治るやん』と言うと、
淳が『これ、あの女の呪いや・・・』と言いながら、背中を見せて来た。
確かに背中も無数にジンマシンがある。

慎が『何で呪いやねん。もう忘れろ!』と言うと、淳は『右の脇腹見て見ろや!』と少し声を荒げた。
右の脇腹・・・たしかにジンマシンが一番酷い場所だったが、
なぜ呪いに結び付けるかが分からなかった。
すると淳が、『よく見ろよ!これ、顔じゃねーか!』

よく見て俺と慎は驚いた。
確かに直径五センチ程の人、いや、女の顔のように皮膚がただれて腫れ上がっている。



979 :本当にあった怖い名無し:2006/04/23(日) 04:15:51 ID:0yX4mhCZO
俺と慎は『気にしすぎだろ?たしかに顔に見えないことも無いけど』と言ったが、
『どー見ても顔やんけ!俺だけやっぱり呪われてるんや!』と言った。
俺と慎は、淳に掛ける言葉が見つからなかった。
と言うより、淳の雰囲気に圧倒された。
いつもは温厚で優しい淳が・・・少し病んでいる。
青白い顔に覇気のない目。きっと精神的に追い詰められているのだろう。
俺と慎は急に淳の家に居づらくなり、帰ることにした。


帰り道、俺は慎に『あれ、どー思う?呪いやろか?』と聞いた。
慎は『この世に呪いなんてあらへん!』と言った。
なぜかその言葉に、俺が勇気づけられた。


それから三日過ぎた。依然、淳は学校には来なかった。
俺も慎も淳に電話がしづらく、淳の様子は分からなかった。
ただクラスの先生が、『風疹で淳はしばらく休み』と言っていたので、少し安心していた。


しかしこの頃から、学校で奇妙な噂が流れ始めた。
『学校の通学路に、トレンチコートにサンダル履きのオバさんが、
学童を一人一人睨むように顔を凝視してくる』という噂だ。



982 :本当にあった怖い名無し:2006/04/23(日) 04:26:47 ID:0yX4mhCZO
その噂を聞いた放課後、俺は激しく動揺した。
何故なら、俺は唯一間近で顔を見られている。
慎に相談した。
慎は『大丈夫!夜やったし見えてないって!
それにあの日見られてたとしても、忘れてるって!』と、俺を落ち着かせる為か、意外と冷静だった。


何よりも嫌だったのが、俺と慎は通学路が全くの正反対。
俺と淳は近所なのだが、淳が休んでいる為、俺は一人で帰らなければいけない。
俺は慎に『しばらく一緒に帰ろうよ!俺、恐い』と慎に頼んだ。

慎は少し呆れた顔をしていたが、『淳が来るまでやぞ!』と言ってくれた。
その日から帰りは俺の家まで、慎が付き添ってくれる事になった。



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814 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 05:34:10 ID:moTdWLP+O
少し迂回して、俺達はその女の、斜め後方8M程の木の陰に身を隠した。
その女は肩に少し掛かるぐらいの髪の長さで、痩せ型、足元に背負って来たリュックと電灯を置き、
写真?のような物に次々と釘を打ち込んでいた。
すでに6~7本打ち込まれていた。


その時、『ワン!』 俺達はドキッとして振り返った、
そこにはハッピーとタッチが、尻尾を振ってハァハァいいながら、なにしてるの?と言わんような顔で居た。

次の瞬間、慎が『わ゛ぁー!!』と変な大声を出しながら走り出した。
振り返ると、鬼の形相をした女が、片手に金づちを持ち、
『ア゛ーッ!!』みたいな奇声を上げ、こちらに走って来ていた。





819 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 05:49:00 ID:moTdWLP+O
俺と淳もすぐさま立ち上がり、慎の後を追い走った。
が、俺の左肩を後ろから鷲づかみされ、すごい力で後ろに引っ張られ、俺は転んだ。
仰向きに転がった俺の胸に、『ドスっ』と衝撃が走り、俺はゲロを吐きかけた。
何が起きたか一瞬分からなかったが、
転んだ俺の胸を女が足で踏み付け、俺は下から女を見上げる形になっていた。


女は歯を食いしばり、見せ付けるように歯軋りをしながら、
『ンッ~ッ』と何とも形容しがたい声を出しながら、俺の胸を踏んでいる足を、左右にグリグリと動かした。
痛みは無かった。
もう恐怖で痛みは感じなかった。
女は小刻みに震えているのが分かった。恐らく興奮の絶頂なんだろう。
俺は女から目が離せなかった。
離した瞬間、頭を金づちで殴られると思った。



826 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 06:10:53 ID:moTdWLP+O
そんな状況でも、いや、そんな状況だったからだろうか、女の顔はハッキリと覚えている。
年齢は40ぐらいだろうか、少し痩せた顔立ち、目を剥き、
少し受け口気味に歯を食いしばり、小刻みに震えながら俺を見下す。
俺にとってはその状況が、10分?20分?全く覚えてない。


女が俺の事を踏み付けながら背を曲げ、顔を少しずつ近づけて来た、その時、
タッチが女の背中に乗り掛かった。
女は一瞬焦り、俺を押さえていた足を踏み外しよろめいた。
そこにハッピーも走って来て、女にジャレついた。
恐らく、2匹は俺達が普段遊んでいるから、人間に警戒心が無いのだろう。


俺はそのすきに慌てて起きて走りだした。
『早く!早く!』と、離れたところから慎と淳が、こちらを懐中電灯で照らしていた。
俺は明かりに向かい走った。

『ドスっ』
後ろで鈍い音がした。
俺には振り返る余裕も無く走り続けた。


慎と淳と俺が山を抜けた時には0時を回っていた。
足音は聞こえなかったが、あの女が追い掛けてきそうで、俺達は慎の家まで走って帰った。
慎の家に着き、俺は何故か笑いが込み上げて来た。
極度の緊張から解き放たれたからだろうか?
しかし、淳は泣き出した。



831 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 06:27:53 ID:moTdWLP+O
俺は『もう、あの秘密基地二度と行けへんな。あの女が俺らを探してるかもしれんし』と言うと、
淳は泣きながら『アホ!朝になって明るくなったら行かなアカンやろ!』と言い出した。
俺がハァ?と思っていると、慎が俺に、
『お前があの女から逃げれたの、ハッピーとタッチのおかげやぞ!
お前があの女に後から殴られそうなとこ、ハッピーが飛び付いて、代わりに殴られよったんや!』
すると淳も泣きながら、『あの女、タッチの事も、タッチも・・うっ・・・』と号泣しだした。


後から慎に聞くと、
走り出した俺を後から殴ろうとしたとき、ハッピーが女に飛び付き、頭を金づちで殴られた。
女は尚も俺を追い掛けようとしたが、
足元にタッチがジャレついてきて、タッチの頭を金づちで殴った。

そして女は一度俺らの方を見たが、追い掛けてこず、ひたすら2匹を殴り続けていた。

俺達はひたすら逃げた。
慎も朝になれば山に入ろうといった。
もちろん、俺も同意した。



852 :本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 13:45:51 ID:moTdWLP+O
興奮の為に明け方まで眠れず、朝から昼前まで仮眠を取り、俺達は山に向かった。
皆、あの『中年女』に備え、バット、エアーガンを持参した。

山の入口に着いたが、慎が『まだアイツがいるかも知れん』と言うので、
いつもとは違うルートで山に入った。

昼間は山の中も明るく、蝉の泣き声が響き渡り、昨夜の出来事など嘘のような雰囲気だ。
が、『中年女』に出くわした地点に近づくにつれ緊張が走り、俺達は無言になり、
又、足取りも重くなった。
少しずつ昨日の出来事を思い出し、例の地点に差し掛かった。
バットを握る手は緊張で汗まみれだ。


例の木が見えた。女が何かを打ち付けていた木。
少し近づいて、俺達は言葉を失った。
木には小さな子供(四・五歳ぐらいの女のコ?)の写真に、無数の釘が打ち付けられていた。
いや、驚いたのはそれでは無い。
その木の根元に、ハッピーの変わり果てた姿が。

舌を垂らし、体中血まみれで、眉間に一本釘が刺されていた。
俺達は絶句し、近づいて凝視することが出来なかった。
蝿や見たことの無い虫がたかっており、生物の死の意味を、俺達は始めて知った。



950 :本当にあった怖い名無し:2006/04/23(日) 02:32:23 ID:0yX4mhCZO
俺はハッピーの変わり果てた姿を見て、
今度中年女に会えば、次は俺がハッピーのように・・・と思い、すぐにでも家に帰りたくなった。
その時、淳が『タッチ・・・、タッチの死体が無い!タッチは生きてるかも!』と言い出した。
すると慎も、『きっとタッチは逃げのびたんだ!きっと基地にいるはず!』と言い出した。
俺もタッチだけは生きていて欲しいと思い、三人で秘密基地へと走り出した。


秘密基地が見える場所まで走ってきたが、慎が急に立ち止まった。
俺と淳は『!中年女?!』と思い、慌てて身を伏せた。
黙って慎の顔を見上げると、慎は『・・・なんだあれ?』と基地を指差した。
俺と淳はゆっくり立ち上がり、基地を眺めた。

何か基地に違和感があった。
何か・・・基地の屋根に何か付いている・・・。


少しずつ近づいていくと、
基地の中に昨夜忘れていた淳の巾着袋が(淳は菓子をいつもこれに入れて持ち歩いている)
基地の屋根に、無数の釘で打ち付けてあるではないか!
俺達は驚愕した。
この秘密基地、あの中年女にバレたんだ!
慎が恐る恐る、バットを握り締めながら基地に近づいた。



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204:リアル:2011/05/13(金) 13:00:19.41 ID:rKgs8JSd0
「パン!!」

その音で俺は跳び上がった。
正座してたから体が倒れそうになりながら後に振り向いてすぐ走り出した。
何か考えてた訳じゃなく体が勝手に動いたんだよね。

でも慣れない正座のせいで足が痺れてまともに走れないのよ。
痺れて足が縺れた事とあんまりにも前を見てないせいで
頭から壁に突っ込んだがちっとも痛くなかった。
額から血がだらだら出てたのに…、それだけテンパって周りが見えてなかったって事だな。


血が目に入って何も見えない。
手をブン回して出口を探した。けど的外れの方ばっかり探してたみたい。

「まだいけません!」

いきなりS先生が大きい声を出した。
障子の向こうにいる両親や祖父母に言ったのか俺に言ったのか分からなかった。
分からなかったがその声は俺の動きを止めるには十分だった。
ビクってなってその場で硬直。

またもや頭の中では物凄い回転で事態を把握しようとしていた。
っつーか把握なんて出来る筈もなく、S先生の言うことに従っただけなんだけどね。

俺の動きが止まり、仏間に入ろうとする両親と祖父母の動きが止まった事を確認するかのように
少しの間を置いてからS先生が話始めた。


S先生「Tちゃんごめんなさいね。怖かったわね。もう大丈夫だからこっちに戻ってらっしゃい」

「Iさん、大丈夫ですからもう少し待ってて下さいね」

障子(襖だったかも)の向こうからしきりに何か言ってのは聞こえてたけど覚えてない。

血を拭いながらS先生の前に戻ると手拭いを貸してくれた。
お香なのかしんないけどいい匂いがしたな。
ここに来てやっとあの音はS先生が手を叩いた音だって気付いた。
(質問出来る余裕は無かったけど)





206:リアル:2011/05/13(金) 13:08:17.87 ID:rKgs8JSd0
S先生「Tちゃん、見えたわね?聞こえた?」
俺「見えました…どーして?って繰り返してました。」
この時にはもうS先生の顔はいつもの優しい顔になってたんだ。
俺も今度はゆっくりと、出来るだけ落ち着いて答える事だけに集中した。
まぁ…考えるのを諦めたんだけどね。


S先生「そうね。どうして?って聞いてたわね。何だと思った?」
さっぱり分からなかった。考えようなんて思わなかったしね。

俺「?? …いや…、ぅぅん?…分かりません」
S先生「Tちゃんはさっきの怖い?」
俺「怖い…です」
S先生「何が怖いの?」
俺「いや…、だって普通じゃないし。幽霊だし…」

ここらへんで俺の脳は思考能力の限界を越えてたな。
S先生が何が言いたいのかさっぱりだった。

S先生「でも何もされてないわよねぇ?」
俺「いや…首から血が出たし、それに何かお札みたいなの捲ろうとしてたし。明らかに普通じゃないし…」
S先生「そうよねぇ。でも、それ以外は無いわよねぇ」
俺「…」
S先生「難しいわねぇ」
俺「あの、よく分からなくて…すいません」
S先生「いいのよ」


S先生は、俺にも分かるように話してくれた。
諭すっていった方がいいかもしれない。
まず、アイツは幽霊とかお化けって呼ばれるもので間違いない。
じゃあ所謂悪霊ってヤツかって言うとそう言いきっていいかS先生には難しいらしかった。
明らかにタチが悪い部類に入るらしいけど、
S先生には悪意は感じられなかったって言っていた。
 
俺に起きた事は何なのかに対してはこう答えた。
「悪気は無くても強すぎるとこうなっちゃうのよ。あの人ずっと寂しかったのね。
話したい、触れたい、見て欲しい、気付いて気付いてーって、ずっと思ってたのね」

「Tちゃんはね、分からないかもしれないけど暖かいのよ。
色んな人によく思われてて、それがきっと“いいな~。優しそうだな~って思ったのね。
だから自分に気付いてくれた事が嬉しくて仕方なかったんじゃないかしら」

「でもね、Tちゃんはあの人と比べると全然弱いのね。
だから、近くに居るだけでも怖くなっちゃって体が反応しちゃうのね」
S先生は、まるで子供に話すようにゆっくりと、難しい言葉を使わないように話してくれた。



207:リアル:2011/05/13(金) 13:12:17.31 ID:rKgs8JSd0
俺はどうすればいいのか分からなくなったよ。
アイツは絶対に悪霊とかタチの悪いヤツだと決めつけてたから。
S先生にお祓いしてもらえばそれで終ると思ってたから…。
それなのにS先生がアイツを庇うように話してたから…。


S先生「さて、それじゃあ今度は何とかしないといけないわね。
Tちゃん、時間かかりますけど何とかしてあげますからね」
この一言には本当に救われたよ。
あぁ、もういいんだ。終るんだって思った。やっと安心したんだ。

S先生に教えられたことを書きます。
俺にとって一生忘れたくない言葉です。


「見た目が怖くても、自分が知らないものでも自分と同じように苦しんでると思いなさい。
救いの手を差し伸べてくれるのを待っていると思いなさい」


S先生はお経をあげ始めた。
お祓いのためじゃ無くアイツが成仏出来るように。
その晩、額は裂けてたしよくよく見れば首の痕が大きく破けて痛かったけど本当にぐっすり眠れた。
(お経終わってもキョドってた俺のために笑いながらその日は泊めてくれた)



208:リアル:2011/05/13(金) 13:13:45.30 ID:rKgs8JSd0
翌日、朝早く起きたつもりがS先生はすでに朝のお祈りを終らしてた。
S先生「おはよう、Tちゃん。さ、顔洗って朝御飯食べてらっしゃい。
食べ終わったら本山に向かいますからね」


関係者でも何でもないんであまり書くのはどうかと思うが少しだけ。
S先生が属している宗派は前にも書いた通り教科書に載るくらい歴史があって、
信者の方も修行されてる方も日本全国にいらっしゃるのね。
教えは一緒なんだけど地理的な問題から東と西それぞれに本山があるんだって。
 俺が連れていってもらったのが西の本山。
本山に暫くお世話になって、
自分が元々持っている徳(未だにどんなものか説明できないけど)を高める事と
アイツが少しでも早く成仏出来るように
本山で供養してあげられるためってS先生は言ってた。

その話を聞いて一番喜んだのが祖母、まだ信じられなそうだったのが親父。
最後は俺が「もう大丈夫。行ってくる」って言ったから反対しなかったけど。


本山に着くと迎えの若い方が待っていて、S先生に丁寧に挨拶してた。
本堂の横奥にある小屋(小屋って呼ぶのが憚れるほど広くて立派だったが)で本山の方々にご挨拶。
ここでもS先生にはかなりの低姿勢だったな。
S先生、実は凄い人らしく、
望めばかなりの地位(「寂しいけど序列ができちゃうのね」ってS先生は言ってた)にいても
不思議じゃないんだって後から聞いた。

俺は本山に暫く厄介になり、まぁ客人扱いではあったけど皆さんと同じような生活をした。
多分、S先生の言葉添えがあったからだろうな。



210:リアル:2011/05/13(金) 13:21:22.89 ID:rKgs8JSd0
その中で、自分が本当に幸運なんだなって実感したよ。
もう四十年間ずっと蛇の怨霊に苦しめられている女性や、
家族親族まで祟りで没落してしまって身寄りが無くなってしまったけど、家系を辿れば
立派な士族の末裔の人とか…
俺なんかよりよっぽど辛い思いしてる人がこんなにいるなんて知らなかったから…。

厳しい生活の中にいたからなのか、場所がそうだからなのか、
あるいはS先生の話があったからなのか恐怖は大分薄れた。
(とは言うものの、ふと瞬間にアイツがそばに来てる気がしてかなり怯えたけど)

本山に預けてもらって一ヶ月経った頃S先生がいらっしゃった。

S先生「あらあら、随分良くなったみたいね」
俺「えぇ、S先生のおかげですね」
S先生「あれから見えたりした?」
俺「いや…一回も。多分成仏したかどっかにいったんじゃないですか?ここ、本山だし」
S先生「そんな事ないわよ?」

顔がひきつった。


S先生「あら、ごめんなさい。また怖くなっちゃうわよね」
「でもねTちゃん、ここには沢山の苦しんでる人がいるの。 
その人達を少しでも多く助けてあげるのが私達の仕事なのよ」
多分だけどS先生の言葉にはアイツも含まれてたんだと思う。


S先生「Tちゃん、もう少しここにいて勉強しなさい。折角なんだから」

俺はS先生の言葉に従った。
あの時の事がまだまだ尾を引いていて、まだここにいたいって思ってたからね。
それに一日はあっという間なんだけど…何て言うか時間がゆっくり流れてような感じが好きだったな。
(何か矛盾してるけどね)

そんなこんなが続いて、結局三ヶ月も居座ってしまった。
その間S先生は(二ヶ月前に来たきり)こっちには顔を出さなかった。
やっぱりS先生の言葉がないと不安だからね。
でも、哀しいかな
流石に三ヶ月もそれまで自分がいた騒々しい世界から隔離去れると物足りない気持ちが強くなってた。



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死ぬ程洒落にならない怖い話をあつめてみない?


166:本当にあった怖い名無し:2011/05/13(金) 11:30:26.52 ID:rKgs8JSd0
コピペだが俺的に暫定一位のヤツを。

この怖い話を携帯で見るそこまで面白いことでもないし、
長くしないように気をつけるが多少は目をつぶって欲しい。では書きます。


何かに取り憑かれたり狙われたり付きまとわれたりしたら、マジで洒落にならんことを最初に言っておく。
もう一つ俺の経験から言わせてもらうと、一度や二度のお祓いをすれば何とかなるって事はまず無い。
長い時間かけてゆっくり蝕まれるからね。 祓えないって事の方が多いみたいだな。

俺の場合は大体2年半位。

一応、断っておくと五体満足だし人並みに生活できてる。
ただ、残念ながら終わったかどうかって点は定かじゃない。 まずは始まりから書くことにする。
当時俺は23才。
社会人一年目って事で新しい生活を過ごすのに精一杯な頃だな。
会社が小さかったから当然同期も少ない、必然的に仲が良くなる。
その同期に東北地方出身の○○って奴がいて、こいつがまた色んな事を知ってたり
やけに知り合いが多かっりした訳。


で、よくこれをしたら××になるとか△△が来るとかって話あるじゃない?
あれ系の話はほとんどガセだと思うんだけど、
幾つかは本当にそうなってもおかしくないのがあるらしいのよ。
そいつが言うには何か条件が幾つかあって、偶々揃っちゃうと起きるんじゃないかって。
俺の時は、まぁ悪ふざけが原因だろうな。


当時は車を買ってすぐだったし、一人暮らし始めて間もないし、
何よりバイトとは比べ物にならない給料が入るんで週末は遊び呆けてた。
8月の頭に、ナンパして仲良くなった子達と○○、
そして俺の計4人で所謂心霊スポットなる場所に肝試しに行ったわけさ。
その場は確かに怖かったし、寒気もしたし何かいるような気がしたりとかあったけども、
特に何も起こらず、まぁスリルを満喫して帰った訳だ 
 



167:本当にあった怖い名無し:2011/05/13(金) 11:32:58.86 ID:rKgs8JSd0
3日後だった。
当時の会社は上司が帰るまで新人は帰れないって暗黙のルールがあって、毎日遅くなってた。 
疲れて家に帰って来て、ほんと今思い出しても理解出来ないのだが、
部屋の入口にある姿見の前で、「してはいけないこと」をやったんだ。
試そうとか考えた訳ではなく、ふと思い付いただけだったと思う。


少し細かな説明をする。
当時の俺の部屋は駅から徒歩15分、八畳1R、
玄関から入ると細い廊下がありその先に八畳分の部屋がある。
姿見は部屋の入口、つまり廊下と部屋の境目に置いていた。
俺が○○から聞いていたのは、鏡の前で△をしたまま右を見ると◆が来るとか言う話だった。
体勢的にちょっとお辞儀をしているような格好になる。
「来るわけねぇよな」なんて呟きながら、お辞儀のまま右向いた時だった。


部屋の真ん中辺りに何かいた。
見た目は明らかに異常。
多分160センチ位だったと思う。髪はバッサバサで腰まであって、簾みたいに顔にかかってた。
っつーか顔にはお札みたいなのが何枚も貼ってあって見えなかった。
なんて呼ぶのか分からないけど、亡くなった人に着せる白い和服を来て、小さい振り幅で左右に揺れてた。

俺はと言うと…、固まった。
声も出なかったし一切体は動かなかったけど、
頭の中では物凄い回転数で起きていることを理解しようとしてたと思う。

想像して欲しい。

狭い1Rに、音もない部屋の真ん中辺りに何かいるって状態を。
頭の中では原因は解りきっているのに起きてる事象を理解出来ないって混乱が渦を巻いてる。

とにかく異常だぞ? 灯りをつけてたけど、逆にそれが怖いんだ。
いきなり出てきたそいつが見えるから。 そいつの周りだけ青みがかって見えた。
時間が止まったと錯覚するくらい静かだったな。
 

169:リアル:2011/05/13(金) 11:37:34.51 ID:rKgs8JSd0
とりあえず俺が出した結論は「部屋から出る」だった。
足元にある鞄を、何故かゆっくりと、慎重に手に取った。
そいつからは目が離せなかった。 目を離したらヤバいと思った。

後退りしながら廊下の半分(普通に歩いたら三歩くらいなのに、かなり時間がかかった)を過ぎた辺りで
そいつが体を左右に振る動きが少しずつ大きくなり始めた。

と同時に何か呻き声みたいなのを出し始めた。
そこから先は、実はあんまり覚えてない。
気が付くと駅前のコンビニに入ってた。
兎にも角にも、人のいるコンビニに着いて安心した。

ただ頭の中は相変わらず混乱してて「何だよアレ」って怒りにも似た気持ちと、
「鍵閉め忘れた」って変なとこだけ冷静な自分がいた。
結局その日は部屋に戻る勇気は無くて一晩中ファミレスで朝を待った。

空が白み始めた頃、恐る恐る部屋のドアを開けた。
良かった。消えてた。
部屋に入る前に、もっかい外に出て缶コーヒーを飲みながら一服した。
実は何もいなかったんじゃないかって思い始めてた。
本当にあんなん有り得ないしね。

明るくなったってのと、もういないってので少し余裕出来たんだろうね。
さっきよりはやや大胆に部屋に入った。
「よし、いない」何て思いながら、カーテンが閉まってるせいで薄暗い部屋の電気を着けた。
 

170:リアル:2011/05/13(金) 11:39:23.41 ID:rKgs8JSd0
昨晩の出来事を裏付ける光景が目に入ってきた。 
昨日、アイツがいた辺りの床に物凄く臭いを放つ泥(多分ヘドロだと思う)が、
それも足跡ってレベルを超えた量で残ってた。
起きた事を事実と再認識するまで、時間はかからなかった。
ハッと気付いてますますパニックになったんだけど、…俺、電気消してねーよ…ははっ。
スイッチ押した左手見たらこっちにも泥がついてんの。
しばらくはどんよりした気持ちから抜けられなかったが、出ちまったもんは仕方ねーなと思えてきた。


まぁここら辺が俺がAB型である典型的なとこなんだけど、
そんな状態にありながら泥を掃除してシャワー浴びて出社した。
臭いが消えなくてかなりむかついたし、
こっちはこっちで大問題だが会社を休むことも一大事だったからね。


会社に着くと、いつもと変わらない日常が待っていた。
俺は何とか○○と話す時間を探った。 事の発端に関係する○○から、何とか情報を得ようとしたのだ。
昼休み、やっと捕まえる事に成功した。
以下俺と○○の会話の抜粋。


俺「前にさぁ、話してた△すると◆が来るとかって話あったじゃん。昨日アレやったら来たんだけど。」
○○「は?何それ?」
俺「だからぁ、マジ何か出たんだって!」
○○「あー、はいはい。カウパー出たのね」 
俺「おま、ふざけんなよ。やっべーのが出たってんだよ」
○○「何言ってんのかわかんねーよ!」
俺「俺だってわかんねーよ!!」
 

171:リアル:2011/05/13(金) 11:41:20.93 ID:rKgs8JSd0
駄目だ、埒があかない。
○○を信用させないと何も進まなかったため、俺は淡々と昨日の出来事を説明した。
最初はネタだと思っていた○○もやっと半信半疑の状態になった。
仕事終わり、俺の部屋に来て確かめる事になった。


夜10時、幸いにも早めに会社を出られた○○と俺は部屋に着いた。
扉を開けた瞬間に今朝嗅いだ悪臭が鼻を突いた。
締め切った部屋から熱気とともに、まさしく臭いが襲ってきた。
帰りの道でもしつこいくらいの説明を俺から受けていた○○は「・・・マジ?」と一言呟いた。
信じたようだ。
問題は○○が何かしら解決案を出してくれるかどうかだったが、望むべきではなかった。

とりあえず、お祓いに行った方がいいことと知り合いに聞いてみるって言葉を残し
奴は逃げるように帰って行った。
予想通りとしか言いようがなかったが、奴の顔の広さだけに期待した。


臭いとこに居たくない気持ちからその日はカプセルホテルに泊まった。
今夜も出たら終わりかもしれないと思ったのが本音。
翌日、とりあえず近所の寺に行く。
さすがに、会社どころじゃなかった。

お坊さんに訳を説明すると
「専門じゃないから分からないですね~。しばらくゆっくりしてはいかがでしょう。きっと気のせいですよ」
なんて呑気な答えが返ってきた。
世の中こんなもんだ。
その日は都内では有名な寺や神社を何軒か回ったがどこも大して変わらなかった。


疲れはてた俺は、埼玉の実家を頼った。
正確には、母方の祖母がお世話になっているS先生なる尼僧に相談したかった。
っつーかその人意外でまともに取り合ってくれそうな人が思い浮かばなかった。 
 


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503 :その3:2005/09/21(水) 23:47:39 ID:ERc7KoX60
息子
『んで、どうも最初からそのシャム双生児が生き残る様に、天獄は細工したらしいんだ。
他の奇形に刃物か何かで致命傷を負わせ、行き絶え絶えの状態で放り込んだわけ。
奇形と言っても、アシュラ像みたいな外見だからね。
その神々しさ(禍々しさ?)に天獄は惹かれたんじゃないかな』

「なるほど・・・」
息子
『で、生き残ったのは良いけど、天獄にとっちゃ道具に過ぎないわけだから、
すぐさま別の部屋に1人で閉じ込められて、餓死だよね。
そして、防腐処理を施され、即身仏に。
この前オヤジの言ってた、リョウメンスクナの完成、ってわけ』

「リョウメンスクナって何ですか?」


※>>476氏ほど詳しい説明は無かったが、
「『神話の時代に近いほどの大昔に、リョウメンスクナと言う、2つの顔、4本の手をもつ怪物がいた』
と言う伝説にちなんで、例のシャム双生児をそう呼ぶ事にした」と言っていた。



「そうですか・・・」
息子
『そのリョウメンスクナをね、天獄は教団の本尊にしたわけよ。呪仏(じゅぶつ)としてね。
他人を呪い殺せる、下手したらもっと大勢の人を呪い殺せるかも知れない、
とんでもない呪仏を作ったと、少なくとも天獄は信じてたわけ』

「その呪いの対象は?」
息子
『・・・国家だとオヤジは言ってた』

「日本そのものですか?頭イカレてるじゃないですか、その天獄って」
息子
『イカレたんだろうねぇ。でもね、呪いの効力はそれだけじゃないんだ。
リョウメンスクナの腹の中に、ある物を入れてね・・・』
俺「何です?」
息子
『古代人の骨だよ。大和朝廷とかに滅ぼされた(まつろわぬ民)、
いわゆる朝廷からみた反逆者だね。逆賊。その古代人の骨の粉末を腹に入れて・・・』

「そんなものどこで手に入れて・・・!?」
息子
『君もTVや新聞とかで見たことあるだろう?
古代の遺跡や墓が発掘された時、発掘作業する人たちがいるじゃない。
当時はその辺の警備とか甘かったらしいからね・・・そういう所から主に盗ってきたらしいよ』





511 :その4:2005/09/22(木) 00:13:22 ID:mdYgh3LB0

「にわかには信じがたい話ですよね・・・」
息子
『だろう?私もそう思ったよ。でもね、大正時代に主に起こった災害ね、これだけあるんだよ。
1914(大正3)年:桜島の大噴火(負傷者 9600人)
1914(大正3)年:秋田の大地震(死者 94人)
1914(大正3)年:方城炭鉱の爆発(死者 687人)
1916(大正5)年:函館の大火事
1917(大正6)年:東日本の大水害(死者 1300人)
1917(大正6)年:桐野炭鉱の爆発(死者 361人)
1922(大正11)年:親不知のナダレで列車事故(死者 130人)
そして、1923年(大正12年)9月1日、関東大震災。死者・行方不明14万2千8百名』


「それが何か?」
息子
『全て、リョウメンスクナが移動した地域だそうだ』

「そんな!教団支部ってそんな各地にあったんですか?と言うか、偶然でしょう(流石に笑った)」
息子
『俺も馬鹿な話だと思うよ。で、大正時代の最悪最大の災害、関東大震災の日ね。
この日、地震が起こる直前に天獄が死んでる』

「死んだ?」
息子
『自殺、と聞いたけどね。『純粋な日本人ではなかった』と言う噂もあるらしいが・・・』

「どうやって死んだんですか?」
息子
『日本刀で喉かっ斬ってね。リョウメンスクナの前で。それで血文字で遺書があって・・・』

「なんて書いてあったんですか??」


日 本 滅 ブ ベ シ



515 :その5:2005/09/22(木) 00:27:58 ID:mdYgh3LB0

「・・・それが、関東大震災が起こる直前なんですよね?」
息子
『そうだね』

「・・・偶然ですよね?」
息子
『・・・偶然だろうね』

「その時、リョウメンスクナと天獄はどこに・・・??」
息子
『震源に近い、相模湾沿岸の近辺だったそうだ』

「・・・その後、どういう経由でリョウメンスクナは岩手のあのお寺に?」
息子
『そればっかりは、オヤジは話してくれなかった』

「あの時、住職さんに『なぜ京都のお寺に輸送しなかったんだ!』みたいな事を言われてましたが、
あれは??」
息子
『あっ、聞いてたの・・・
もう30年前くらいだけどね、私もオヤジの後継いで坊主になる予定だったんだよ。
その時に俺の怠慢というか手違いでね・・・
その後、あの寺もずっと放置されてたし・・・話せることはこれくらいだね』

「そうですか・・・今、リョウメンスクナはどこに??」
息子
『それは知らない。と言うか、ここ数日オヤジと連絡がつかないんだ・・・
アレを持って帰って以来、妙な車に後つけられたりしたらしくてね』

「そうですか・・・でも全部は話さないと言われたんですけど、なぜここまで詳しく教えてくれたんですか?」
息子
『オヤジがあの時言ったろう?『可哀想だけど君たち長生きできないよ』ってね』

「・・・」
息子
『じゃあこの辺で。もう電話しないでね』

「・・・ありがとうございました」


以上が電話で話した、かいつまんだ内容です・・・はっきり言って、全ては信じてません。
何か気分悪くなったので、今日は落ちますね。



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913 :本当にあった怖い名無し:2008/08/26(火) 09:51:23 ID:VFtYjtRn0
一目散に仏像の前に座ると、お札を握り締め
「助けてください」と必死にお祈りをはじめた。

そのとき、
「ぽぽっぽ、ぽ、ぽぽ…」
あの声が聞こえ、窓ガラスがトントン、トントンと鳴り出した。
そこまで背が高くないことは分かっていたが、
アレが下から手を伸ばして、窓ガラスを叩いている光景が浮かんで仕方が無かった。
もうできることは、仏像に祈ることだけだった。


とてつもなく長い一夜に感じたが、
それでも朝は来るもので、つけっぱなしのテレビが、いつの間にか朝のニュースをやっていた。
画面隅に表示される時間は、確か七時十三分となっていた。
ガラスを叩く音も、あの声も気づかないうちに止んでいた。
どうやら眠ってしまったか、気を失ってしまったかしたらしい。

盛り塩はさらに黒く変色していた。
念のため自分の時計を見たところ、ほぼ同じ時刻だったので、
恐る恐るドアを開けると、そこには、心配そうな顔をしたばあちゃんとKさんがいた。
ばあちゃんが「よかった、よかった」と涙を流してくれた。

下に降りると、親父も来ていた。
じいちゃんが外から顔を出して、「早く車に乗れ」と促し、
庭に出てみると、どこから持ってきたのか、ワンボックスのバンが一台あった。
そして、庭に何人かの男たちがいた。





914: 7/9:2008/08/26(火) 09:52:24 ID:VFtYjtRn0
ワンボックスは九人乗りで、中列の真ん中に座らされ、助手席にKさんが座り、
庭にいた男たちもすべて乗り込んだ。
全部で九人が乗り込んでおり、八方すべてを囲まれた形になった。

「大変なことになったな。気になるかもしれないが、これからは目を閉じて下を向いていろ。
俺たちには何も見えんが、お前には見えてしまうだろうからな。
いいと言うまで、我慢して目を開けるなよ」
右隣に座った五十歳くらいのオジさんがそう言った。

そして、じいちゃんの運転する軽トラが先頭、次が自分が乗っているバン、
後に親父が運転する乗用車、という車列で走り出した。

車列は、かなりゆっくりとしたスピードで進んだ。
おそらく、二十キロも出ていなかったんじゃあるまいか。

間もなくKさんが、「ここがふんばりどころだ」と呟くと、何やら念仏のようなものを唱え始めた。

「ぽっぽぽ、ぽ、ぽっ、ぽぽぽ…」
またあの声が聞こえてきた。
Kさんからもらったお札を握り締め、言われたとおりに目を閉じ下を向いていたが、
なぜか薄目をあけて、外を少しだけ見てしまった。

目に入ったのは白っぽいワンピース。それが車に合わせ移動していた。
あの大股で付いてきているのか。
頭はウインドウの外にあって見えない。
しかし、車内を覗き込もうとしたのか、頭を下げる仕草を始めた。
無意識に「ヒッ」と声を出す。
「見るな」と隣が声を荒げる。
慌てて目をぎゅっとつぶり、さらに強くお札を握り締めた。



915: 8/9:2008/08/26(火) 09:53:50 ID:VFtYjtRn0
コツ、コツ、コツ
ガラスを叩く音が始まる。
周りに乗っている人も、短く「エッ」とか「ンン」とか声を出す。
アレは見えなくても、声は聞こえなくても、音は聞こえてしまうようだ。
Kさんの念仏に力が入る。


やがて声と音が途切れたと思ったとき、Kさんが「うまく抜けた」と声をあげた。
それまで黙っていた周りを囲む男たちも、「よかったなあ」と安堵の声を出した。


やがて車は道の広い所で止り、親父の車に移された。
親父とじいちゃんが他の男たちに頭を下げているとき、Kさんが「お札を見せてみろ」と近寄ってきた。
無意識にまだ握り締めていたお札を見ると、全体が黒っぽくなっていた。
Kさんは「もう大丈夫だと思うがな、念のためしばらくの間はこれを持っていなさい」と、
新しいお札をくれた。

その後は、親父と二人で自宅へ戻った。
バイクは、後日じいちゃんと近所の人が届けてくれた。

親父も八尺様のことは知っていたようで、
子供の頃、友達のひとりが魅入られて命を落とした、ということを話してくれた。
魅入られたため、他の土地に移った人も知っているという。

バンに乗った男たちは、すべてじいちゃんの一族に関係がある人で、つまりは、
極々薄いながらも、自分と血縁関係にある人たちだそうだ。
前を走ったじいちゃん、後ろを走った親父も当然血のつながりはあるわけで、
少しでも八尺様の目をごまかそうと、あのようなことをしたという。
親父の兄弟(伯父)は、一晩でこちらに来られなかったため、
血縁は薄くても、すぐに集まる人に来てもらったようだ。



916 :9/9:2008/08/26(火) 09:54:54 ID:VFtYjtRn0
それでも、流石に七人もの男が今の今、というわけにはいかなく、
また、夜より昼のほうが安全と思われたため、一晩部屋に閉じ込められたのである。
道中、最悪なら、じいちゃんか親父が身代わりになる覚悟だったとか。
そして、先に書いたようなことを説明され、「もうあそこには行かないように」と念を押された。


家に戻ってから、じいちゃんと電話で話したとき、
「あの夜に声をかけたか」と聞いたが、そんなことはしていないと断言された。
――やっぱりあれは…
と思ったら、改めて背筋が寒くなった。

八尺様の被害には、成人前の若い人間、それも子供が遭うことが多いということだ。
まだ子供や若年の人間が、極度の不安な状態にあるとき、
身内の声であのようなことを言われれば、つい心を許してしまうのだろう。


それから十年経って、あのことも忘れがちになったとき、洒落にならない後日談ができてしまった。
「八尺様を封じている地蔵様が、誰かに壊されてしまった。それも、お前の家に通じる道のものがな」
と、ばあちゃんから電話があった。
(じいちゃんは二年前に亡くなっていて、当然ながら葬式にも行かせてもらえなかった。
じいちゃんも起き上がれなくなってからは、絶対来させるなと言っていたという)


今となっては、迷信だろうと自分に言い聞かせつつも、かなり心配な自分がいる。
「ぽぽぽ…」という、あの声が聞こえてきたらと思うと…



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102 :>>98-101 :2014/04/26(土)14:38:51 ID:???
さて… 東葛地域の霊験話をしたところでもう一つ、
今度は私の体験談


もう十年以上前になるか、死体遺棄事件があった
ばらばらにされた死体がギターケースに詰められ、川縁に捨てられていたのである

実は、その死体を発見したのは私の友人であり、偶々川の近くで遊んでいたら見つけたという
しかしその日以降、霊感ある私はその友人の背後に男性の霊が憑いていることに気付いた
私自身は昔から霊は見えていたので驚きはしなかったが、
この霊はかなり自我が強いと見え、他の同級生にも見えていたらしい





103 :>>98-101 :2014/04/26(土)14:42:10 ID:???
その日から、友人は徐々に素行不良な少年になっていった
元々やんちゃな性分ではあったが、
当時の小学生にしては珍しく金髪に染めたり、性格も苛烈になっていた
他の同級生は気づいていなかったが、その姿は彼の背後霊と実によく似ていた


さすがに私もこれはまずいと思ったが、小学生時分の私には除霊などわかるはずもない
悲運な事に、近隣に除霊ができる大人もいなかった
その間にも友人は表情まで変わり、すっかり不良少年になってしまった


104 :>>98-101 :2014/04/26(土)14:44:59 ID:???
しかし、ある日を境に背後霊はいなくなり、そして友人も元の年頃なやんちゃ坊主に戻った

私は、その背後霊がギターケースの死体の者であると思っていたが、
そうではなかったのだ
それは犯人の生霊だったのである
おそらくはその犯人が逮捕された事で生霊がいなくなったのだろう

これにて一件落着と胸を撫で下ろした私だったが…

実はまだ悲劇は終わってはいなかった



105 :>>98-101 :2014/04/26(土)14:54:26 ID:???
なんとその生霊、およそ五年の歳月を経て、当時中学生であった友人に再び憑き始めたのだ
私は彼とは違う中学校に越境したので、
彼と再び会ったのは当時の担任教師の辞校式の場であったが…
生霊はあの日よりも更に過激な風貌に変わり、
友人のみならず、その周囲にまで多大な霊障を及ぼしていた


結局、その後友人がどうなったのかはわからない
音沙汰ないので死んではいないだろうが、
近所を通ってもなかなか見かけないので、ひきこもりにでもなってしまったのだろうか

聞けば、その辞校式の日、幾度にも渡った犯人の再審請求が遂に棄却され、刑が確定したらしい
死刑囚となった犯人は今も服役中だが、どうやら無期懲役ではないらしい……
彼の者が再び世に解き放たれた時、
生霊を作り出す程の彼の憎悪はどこまで暴走するのだろうか
今でも不安でならない


おしまい



106 :名無しさん :2014/04/26(土)17:00:51 ID:???
代償が凄いね、くわばらくわばら・・



http://toro.open2ch.net/test/read.cgi/occult/1395834994/l50

120 :ちーばくん :2014/04/29(火)22:48:35 ID:???
ご存じの方も多いでしょう、有名な心霊スポット『八柱霊園』。
様々な体験談が語られる事の多い場所ですが、
実はオカルト的な意味では八柱霊園は安全な墓地の部類に入ります。
そもそも危険な墓場というのは、
例えば無縁仏の墓であったり、管理人不在の整備されていない墓が殆どなのです。
八柱霊園はそのアクセスのしやすさ、歩きやすさ、
程よい郊外の静寂感と相まって、有名になったのでしょう。
しかして、本当に怖い心霊スポットというのはあまり有名にならない場所にこそあるものなのです。


その一つ、某所にある『首塚』。
その存在自体は割と有名で、建立したのは後の江戸城主・太田道灌。
文明十年、1478年に起きた千葉孝胤との酒井根合戦の跡で、
道灌は敵味方関係なく死体を丁重に葬ったと言われている。


さて……これから語るのは私の実体験ですが、
私自身霊との遭遇は度々あるので恐怖感は薄いかもしれません。
予めご了承くださいませ。





121 :ちーばくん :2014/04/29(火)22:55:53 ID:???
私は知り合いの家を訪ねており、その首塚の近くを通った。
太田道灌の手厚い葬儀のおかげで、首塚の辺りにうろつく霊は気性も穏やかだ。
しかし、ふとある道路に入った途端、寒気がした……
どうやらはぐれ者の霊がいるらしい。

私はその日、その道の近くにある知り合いの家に泊まる予定だったので、しばらく道を観察する事にした。

夜になると、たしかに数体ほど、
新しめの魂魄(何故そう断言できるのかといわれると曖昧だが…)が漂っている。

しかし暫く観察していると、首塚の方面から鈴の音が聞こえてくる。
音に導かれるように、霊たちは首塚の方へと向かったのだが…


突然、金属音のような鋭く不快な音が響いたかと思うと、霊たちが身を翻し逃げてゆく。
私はその様子が気になり、翌朝、知り合いと共に詳しく調べてみる事にした。



122 :ちーばくん :2014/04/29(火)23:04:38 ID:???
その知り合いもまた霊感のある人物で、
時折見かける『霊が逃げる』光景には彼女も疑問を持っていたという。
そこで、彼女と共に私は
首塚のある敷地の管理人(警備員経由なので時間は要したが)に事情を話した。

管理人の方が言うには、鈴の音というのは度々聞かれるが、
金属音と霊が逃げるという光景には出くわした事がないという。

管理人の方は偶然にも居合を心得た方であった。
件の金属音はどうやら刀を擦り合わせる、即ち『鎬を削る』音が近いらしい。

……ここからは私の推測に過ぎないが、彼女と共にある仮説を打ちたてた。

太田道灌は埋葬の際、敵味方なく一緒に葬ったという。もしかしたら、
武者の霊たちは未だ争っているのではないか。

気性が穏やかであるのは対外的なモノで、実際には『浮遊霊も逃げ出す程』
禍々しい怨念が未だ残っているのではないか。

これを解明すべく、私は彼女の家にもう一泊し、そして今度は道のすぐ脇で観察した。



123 :ちーばくん :2014/04/29(火)23:12:40 ID:???
鈴の音は聞こえてきた。そして、金属音。
私たちは首塚のある方を双眼鏡で見遣り、観察する。

霊は見えた。
しかしそれは異様な光景であった。

錆びついたような色合いの日本刀が数本、刃を下に向け、円を描いて宙を舞っている。
漫画『BLEACH』の殲景・千本桜景巌の光景を思い浮かべてもらえればわかりやすいかもしれない。
その中央にあるのは、小さなお堂であった。

首塚ではない事に驚きつつも、私と彼女はもう暫く観察を続けた。

その時、昨日のものとは違う浮遊霊が一体、その近くを通りかかった。
すると、刀はその例の方に鋩を向ける。
霊は慌てて逃げ出す。
夜毎現れるその刀の群れは、
その小さなお堂を敵対者から守っているように、少なくとも私と彼女の目には映ったのである。



124 :ちーばくん :2014/04/29(火)23:20:30 ID:???
翌朝、管理人の方にお堂の件を話すと、その方は神妙な表情で語ってくれた。

そのお堂は首塚と対を為す『刀塚』の跡で、合戦で殉じた者の武具を纏めて祀ってあるという。


実は管理人の方もその正体に気付いていたらしい。
あの刀の群れは、
『付喪神に憑かれた刀が持ち主を喪った為に、拾ってもらうのを待ち続けている』ものなのだそうだ。
刀たちを意識的に見た者は付喪神に試されるらしいとのこと。
だから、金輪際あの浮遊する刀を見かけても
絶対に気にかけてはいけないとも念を押された我々であった。


八百万の神とはいうが、成程悲惨な運命を辿るのは人魂だけではないようだ。
しかし、もし仮に私たちがあの様子を観察している事が刀の付喪神たちに悟られてしまっていたら。
もしかしたら、私たちも危なかったのかもしれない。


人間の霊より動物霊の方が恐ろしいのは言葉が通じないからだという。
そういう意味では、物体の霊、付喪神の残留思念などは最たる危険なモノなのだろう。
皆さまも、そういったモノにはお近づきにならないよう……。




http://toro.open2ch.net/test/read.cgi/occult/1395834994/l50

272 :名無しさん@おーぷん :2015/07/04(土)20:27:16 ID:???

大学の頃の話。
当時、同じサークルで1学年上の先輩にBというのがいて、
適当な性格のためどこへ行っても
人との付き合いが自然と浅く広くという感じになる俺にしては珍しく、割と親しくしていた。
趣味が同じだったんだ。
もうとっくにやめたが、その趣味というのが特殊で、
それについて人に語ったり話を共有できる機会が本当に無く、
当時はそれがつまらなくストレスで、周りに同じ事をしている人間が全くいないと思い込んでいたから、
Bが自分と同じ趣味をやっていると知った時は本当に嬉しかった

趣味について話し相手が欲しかったのはBも同じだったんだろう、
俺以上に嬉しそうで、Bも俺も楽しくなってしまってついつい遅くまで話し込んだ。
そんなことから始まって、Bと俺は先輩後輩というより、
完全に同級生の友人同士のように付き合うようになった。

それから半年ほど経った頃だったか、
Bが疲れたような顔をしていることが多くなった。
気になってどうしたのか何回か訊いても、話したくないのか答えてくれない。
その時俺は、あまりしつこく訊いてもよくないと思い、
必要なら言える時にまた話してくれるだろうと、それを待つことにした。
大学やバイトでそこそこ忙しく、自分のことに集中したい思いもあった。

そんな中、しばらくして、Bについて妙な噂を耳にするようになる。

ぽつぽつと囁かれるあやふやで噂ともつかないような短い話の要点を言えば、
Bが一人暮らしをしている大学近くのアパートで、
近所の放置子らしき子供に纏わり付かれて参っているということのようだった。


その時には、気付けばBの姿を全く見なくなっていた。
最近大学に来ていないと聞いた。
その日の内にどうしているのかBのアパートに様子を見に行きたかったが、
言い訳をすれば忙しく、少し疲れてもいて、
結局Bに会いに行ったのはその数日後の夕方だった。


一緒に食べようと思い側にある中華料理屋で炒飯と餃子を一つずつ買って、
Bのアパートのインターホンを押したが、誰も出て来ず、物音もしない。
出掛けているのかもしれなかったが、
何だかそこで無性に不安が込み上げてきて落ち着かず、
何度もインターホンを押して、外から声を掛けて名前を呼んでみたりもした。
寝ていて出ない可能性も考えたが、
この際多少の迷惑を掛けても、Bが大丈夫か、顔を見て確認しておきたかった。


少しの間そうしていても相変わらず部屋の中からは物音一つせず、
Bが出て来る様子もないので、
やっぱり留守か、とBのことが気になりながらも仕方がないので
帰ろうと、身体の向きを変えたその時だった。

ドン!と大きな音と、足もとに少し響くくらいの振動を受け、衝撃に面食らって
思わずその場に硬直して立ち尽くした。


少ししてショックを受けていたのが僅かにマシになり、混乱した頭で、
俺がインターホンを何回も鳴らしたり部屋の中に向かって声を掛けたのを、
近くの住人がうるさがって床か壁でも力任せに殴ったのだろうという考えに辿り着いた。
音や衝撃を感じた距離からおそらく、Bの部屋のすぐ左隣に住む住人だろう。


俺はそろりそろりと、息を潜めて音を立てないように気を付けながら、
しかし一刻も早くその場から逃れようと、できるだけ足早に階段の方へ向かった。
おっかない人がいるなと、
何度かアパートの方を振り返りながら、小走りに俺はその場を立ち去った。





273 :名無しさん@おーぷん :2015/07/04(土)21:45:42 ID:???

それから、Bを大学で見かけた。
よかったと内心ほっとしながらも、何だかやつれたBの姿に素直に喜べず、
Bが今まで見たことのないような硬い表情でいるので声を掛けそびれてしまって後悔した。


Bを知る共通の知り合いに、
噂の件でストレスを抱えているにしてはBの姿は痩せ過ぎな気がする、
事態をよく知らないが、そんなに酷いのか、
それとは別に、身体にどこか悪いところがあるんじゃないのか、といった考えを話した。


その時、その知り合いから聞いた話では、
俺がBのアパートに行ってから後日、噂の放置子のような子供の纏わり付きをやめさせようと、
Bとよくつるんでいる知り合い数人でBのアパートに行ったそうだ。

まず、そいつがどこの家の子供かつきとめようということになった。
周りを探し回ったり人に尋ねたり、交代で一日中Bの部屋やその周り、アパートを見張ったりした。
Bがそうしてくれと頼んだわけじゃなく、だから
何だかばつが悪いのと、逆に迷惑にならないように、できるだけこっそり静かにやったらしい。

当たり前だが、Bと親しくしていたのは俺だけではなく、
Bの知り合い達もBのことを心配していたんだ。


それで、結果だが、そんな子供はBの住むアパートにいなかった。
周囲の家々にも、それらしき子供は見当たらなかったと。

そう言えば、そもそもBの住むアパートは単身者用のつくりだ。
確認したところ、家族連れは住んでいなかったらしい。

その子供がアパート外から来ていて見つけられなかったのかもしれないが、
よく考えると一人暮らしの大学生が放置子に纏わり付かれるなんていうのも不思議な話だと。

Bのことを疑うわけではないが、確かに、と頷けた。


つまり、放置子は存在しておらず、最初からBが精神か身体かに何らかの不調を抱えていて、
そういう話になったのかもしれない、ということだった。

愕然とした。


Bはまれに大学に来てはいたが様子は元には戻らず、変に歳をとったような容姿になっていて、
最初は心配していた人達も噂のこともあり不気味に思うようになったのか、みんなBから離れていった。
酷なことを言うようだが、俺にも自分の生活がある。
俺もBを避けるようになった。


ある日自分の部屋の掃除をしていて、Bの本を借りっぱなしだったことに気が付いた。
それは最初の方に書いた特殊な趣味に関する本で、そう簡単に手に入るものでもない。
やってしまったと思いながら、
本を返すために俺は本当に最後だと思いBのアパートを訪れた。

インターホンを押す。
Bの声で返事があり、空いているから勝手に入ってくれと言われ躊躇したが
大切な本を借りっぱなしにしたことへの罪悪感が勝り、
その場に置いてとっとと退散、というのはやめておいた。


ドアを開ける。
中は想像と違って綺麗に片付けられていたが、あまりにも物が少ないように感じた。
生活感がほとんどない。

部屋の真ん中にある低い机の向こう側に、こちらの方を向いて、
脚を崩した格好でBは座っていた。

本当に老けて、やつれていて、
本当に病気ではないかと思ったが、Bが嬉しそうに笑うのが
今やひきつれたように不気味な嫌な感じの表情になっていて、悪いが怖くて早く帰りたかった。

机の上にBの本を荒っぽく置いて、
じゃあ、と一言だけ言おうとした時、
ゴトン!と大きな音がして、ガラッとBの部屋の押し入れが空き、
押し入れの上の段からボサボサの黒髪の後頭部がこちらの方に倒れ込むのが見えた。

顔は見えず、白い身体の2、3歳くらいの子供のマネキンのようだった。
薄汚れて汚く見えた。


Bはひきつれたようににやにや笑っていて驚いた様子の一つもなく、
俺は次の瞬間全力でドアの方へ外目掛けて走った。

外に出た瞬間、ドン!と、聞いたことのある音と振動が来て、心臓が止まるかと思ったが
転がるように走り抜け階段を下り、アパートを離れた。

それからBの姿を見ていない。

あれ以来、押入れと、狭い和室のアパートがトラウマになった。
あれは一体何だったんだろう?


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