サイケデリック・奇譚

永遠の日常は非日常。

タグ:妖怪

∧∧∧山にまつわる怖い話Part4∧∧∧


311 :雷鳥一号:03/11/28 21:40
知り合いの話。


学生の頃、友人にバーベキューに誘われた。
友人の家は酪農家で、町外れの山で小さな牧場を経営していた。

楽しく飲み食いしていると、敷地の片隅に変わった牛舎があるのに気がついた。
建物自体は普通だったが、入口が牢屋のように格子状になっていた。

「どんな牛をいれるんですか」と尋ねると、
友人の親父さんが教えてくれた。
「あれは牛を入れていたんじゃない。『くだん』を入れていたんだ」


『くだん』というのは、人間の顔に牛の身体を持つ化け物で、予知能力を持つという。
先の大戦中に生まれたそうで、当時では色々とまずかったことを予言していたらしい。
親父さんはこの話を、しごく平然と語っていたそうだ。




312 :雷鳥一号:03/11/28 21:41
後輩の話。


女の子二人だけで、ある渓谷の観光に出かけた時のこと。
渓谷近くのバス停で出会った小母さんに注意されたという。
「このあたりの山谷を歩く時は、『くだん』に気をつけるんだよ」

『くだん』とは何かと聞くと、人間と動物の合いの子みたいな人面獣身の化け物で、
山に入った女性に悪さをすると教えられたそうだ。
襲われた女性は、また別のくだんを産むのだという。

「本当なんだよ、私は実際に、猿のくだんと熊のくだんを見たことがあるんだ」
小母さんは真面目な顔で、声を潜めてそう言った。

信じたわけではなかったが、人影のないコース外の道は歩かなかったそうだ。



313 :雷鳥一号:03/11/28 21:42
知り合いの話。


真夜中、テントの中で休んでいた時のことだ。
外の荷物をがさごそする音で目が覚めた。
熊だと誰かがささやき、皆は緊張して息を殺したのだという。
その時、外から男の太い声がした。

「ろくな物がねえなあ」
驚いて入口を開けると、大きな毛だらけの黒いものがいた。
身体は熊だったが、顔部の真中についていたのは白い人間の顔だった。
そいつはニヤリと笑って山の中に消えた。
チョコレートや蜂蜜などの、甘い非常食だけが失くなっていたそうだ。



315 :雷鳥一号:03/11/28 21:48
>>311-313
以上、『くだん』にまつわるお話でした。
ちなみに話を採集した場所は、すべて中国地方なのです。
>>311や>>312の話は、
現地の人なら知っているかもしれませんね。



317 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/11/28 21:54
中国地方ですかぁ。
六甲山なんかが『くだん(件)』の伝説のメッカだと認識してたのに、意外な感じです。
くだんにも色々種類があるんですねぇ。



318 :雷鳥一号:03/11/28 22:10
くだんの言い伝えは、山陰にも山陽にも九州にもありますよ。
人面牛身の姿が有名ですが、
>>312によると、牛以外の獣人もくだんと呼ぶ地方もあるみたいですね。

六甲のくだんは牛面人身なので、
実は六甲側の方がくだんとしては異質なのかもしれません。
知名度は圧倒的ですが。
猿のくだんらしきものがあとをついて来る話を知っていますが、
イヤだろうな~実際に目撃しちゃうと(汗)。



319 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/11/28 22:27
へぇ~、民俗伝承がベースなんですね。



325 :雷鳥一号:03/11/28 23:35
民俗伝承がベースなんですね。

民俗伝承というのは、不可解な事象に遭遇した際の、
精神を安定させる、落とし所としての一つのパターンなのかもしれません。

理解不能なことが起こった時、
こう考えると日本人としてはしっくり来る、納得できる、といったような物語なのでしょう。
精神上の安全弁みたいな存在とでも言いましょうか。


だから人はくり返し伝承を伝えていくし、また妖怪も廃れないのでしょう。
私が山登りが好きなのも、それにまつわる話が好きなのも、
そういった理由なのかもしれません。



不可解な体験、謎な話~enigma~


432 :本当にあった怖い名無し:2007/05/03(木) 01:29:11 ID:taBCHxKG0
友達の話なんだけど・・・。

なんか幸せを運ぶとかいう生物?がいるらしく、それを捕まえたらしいんだよ。
エコエコアザラクとかマハリクマハリタとか、なんかそんな響きの名前だったと思う。

見せてもらったことがあるけど、なんかタンポポの綿毛が大きくなったような物体。
どう見ても、動物っぽいとは思えなかったんだよ。


でも偶然か何なのか、その友人ミニロトで1等あてやがった。
同じ年のうちに、ロト6で2等もあてやがった。
1年のうちに、数千万を手に入れちゃったわけですよ。

偶然かもしれないが、さすがに俺も興味持って、友人にその生物を貸してくれと頼んだ。
しかし断られ、結局その生物のこともすっかり忘れてしまったんだが・・・。


ここまでが約2年前の話。





433 :2:2007/05/03(木) 01:29:53 ID:taBCHxKG0
2006年の夏だったと思う。
その友人が、その生物を不注意で逃がしてしまったという。
「また捕まえたいからつきあってくれ」と、群馬の山のほうまで同行させられた。
何かの木の近くによくいる、とか何とかで、
その木がたくさん生えている一番近い場所が、群馬だということだった。


大学も夏休みで暇だったので、ドライブがてら友人を乗せて群馬の山まで行ったんだ。
なんかの施設?植物園?そんな場所で男二人でうろうろ・・・。
正直、俺は半分どうでもよかった。
どうせ宝くじも偶然だろう・・・。そう思いつつも、もしいたら捕獲しようと考えてはいたんだがw


しかし夏は、群馬の山とはいえ暑い。
俺は2時間弱で限界。運転の疲れもあって、車に戻って仮眠をとった。

しばらくすると、友人がもどってきた。
おかしの空き箱を大事そうにかかえていた。
捕まえたとのこと。


みせてもらうと、以前みせてもらったやつは白かったのだが、
今度のは茶色?灰色?何かくすんだような色をしていた。
が、形は以前見せてもらったやつと一緒だった。



434 :32007/05/03(木) 01:31:15 ID:taBCHxKG0
前置きが長くなったが、ここからが本題。

その生物を捕獲してから友人がおかしいんだ。
正確には、友人の周囲がおかしくなっている、といった感じだが・・・。


一番最初は、これは笑い話なんだが、
雑貨屋で安い指輪を試着してみたら、外れなくなったそうだw
そして、そのままお買い上げをしたらしいw
まぁ1万弱だそうで、
その後消防署に行って、指輪を特殊な機械で切ってもらったそうだ。
(その生物を捕まえたすぐあとだった。
「幸運どころじゃねぇよw」と、友人が話していたのを覚えている)


最初に聞いた不幸話は指輪だが、
このあと彼女が妊娠
→堕ろすから金くれ(30万)→慰謝料もくれ(200万)→辛いから別れる。
しかし今年になって分かったことは、
その女は妊娠もしていなきゃ、友人と付き合っていたときに、他に彼氏が2人いた。



435 :4:2007/05/03(木) 01:31:57 ID:taBCHxKG0
他には、携帯をパケ放題にしてPCにつないだら、50万弱の請求が届いた。(自業自得だなw)

今年に入ってからすでに2回、自殺の瞬間をみている。
(駅で少し離れたところに立っていた女性が、電車に飛び込む。ビルから男性が降ってきた)


冬頃から友人の姉の言動がおかしくなり、手首どころか首を切ったり自傷行為に走り出した。
それまで一切メンヘルの気はなかったらしいし、俺も何度か会ってるが、
友人に似てなく、メイクが濃いが美人なOLさんって感じだった。
今は会社も辞め、そういった病院に入院して療養中とのこと。


夏から今日までで自爆、貰い事故を3回。
(原付で直進中、左折の乗用車にはねられる。車でバック中、電柱に衝突。あともう1回、何かあった)

今思い出しただけでもこれだけある。たぶんもっといっぱいあったはず。


で、友人なんだが、現在は原付の事故で太ももの骨を折ったらしく入院中。
もうすぐ退院するみたいだが、
あのくすんだ色の生物と何か関係があるんじゃないかと思うんだが・・・。
ただの偶然ならそれでいい。
偶然じゃなかったら怖いんだ。

友人はその生物を手放す気がないらしく、宝くじを購入し続けている。



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ケセランパサランとの遭遇

191 :8:2011/05/19(木) 23:35:19.55 ID:GMmQg5nH0
そして、俺達はE介の手足と肩をもち、外へと運び出そうと1階までE介を運んだ。
が、そこで問題がおきた。
ドアを開けようとしたB太が、声を震わせながら大声で「ドア開かねーよ!」と言ってきた。
俺達はE介を廊下に降ろし、みんなでドアを開けようとしたのだが、
さっきは簡単に開いたのに今はびくともせず、
6人の中で一番体格の良いA也がドアにタックルしてみたのだが、
それでもまるで開く気配が無い。


俺達は軽くパニックになり顔を見合わせていると、
2階から微かに「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」と、まるで抑揚の無い機械的な声というか、
音というかが聞こえてきた。

E介はまだ床に寝転がされたまま笑っている。

とにかく外にでないといけない、
そう考えた俺は、1階のリビングが、ガラスのサッシのみで割れば出れそうな事を思い出し、
4人にそれを伝えると、リビングへと向かう事にした。

その時、ふと俺は階段の上を見て絶句した。

階段の踊り場の少し上ところから、子供の顔がのぞきこんでいる。
月明かりが逆光になっていて、表情とかは何も分からないが、
顔のサイズや髪型からさっきの子供とわかった。
相変わらず「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という声も聞こえてくる。
どうやら声の主はこの子供らしい。





192 :9:2011/05/19(木) 23:36:01.72 ID:GMmQg5nH0
しかし何かがおかしい、違和感がある。
俺はすぐに違和感の正体に気が付いた。

子供は階段の手すりからかなり身を乗り出しているはずなのだが、なぜか頭しか見えない。
あれだけ乗り出せば、肩辺りは見えても良いはずなのだが…
俺がそんな事を考えながら階段の上を凝視していると、
C広が「おい何してんだ、早く出ようぜ、ここやべーよ!」と、
俺の腕を掴んでリビングへと引っ張った。


俺には一瞬の事に見えたが、
どうも残りの4人がE介をリビングへ運び込み、窓ガラスを割り、
打ち付けてある板を壊すまで、ずっと俺は上の子供を凝視していたらしい。
俺は何がなんだか解らず、とりあえず逃げなければいけないと、皆でE介を担いで外へとでた。

外へ出ても相変わらず、「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という声は、家の中から聞こえてくる。
俺達はE介を担ぎ、D幸が合宿所へ先生たちを呼びに行った。



193 :ラスト:2011/05/19(木) 23:38:00.38 ID:GMmQg5nH0
その後、E介は救急車で運ばれた。
俺達は先生方に散々説教をされ、こんな事件があったので合宿はその日で中止となった。


帰宅準備をしていた昼頃、十台くらいの数の車が合宿所にやってきた。
中から20人ほどのおじさんやおじいさん、あと地元の消防団らしき人が降りて、
顧問の先生たちと何か話しをすると、
合宿所の裏に回り、例の家の周りにロープのようなものを貼り、柵?のようなものを作り始めた。

俺達は何事なのかと聞いてみたが、
顧問の先生たちは何も教えてくれず、そのままバスで地元へと帰った。

E介は2日ほど入院していたが、その後どこか別の場所へ運ばれ、
4日後には何事もなかったように帰ってきた。
後から事情を聞いてみると、
E介には、家に入ったところから昨日までの記憶が何もなかったらしい。



268 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:00:48.42 ID:x83Y3WRH0
E介が帰ってきた日の夜、俺が自分の部屋で寝転がってメールしていると、
一瞬、「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という、あの声が聞こえた気がした。
びっくりして起き上がり、カーテンを開けて外を見たりしたが、いつもの景色で何も無い。
俺は「気のせいかな?」と、起き上がったついでに
1階に飲み物を取りに行くことにした。


俺の家はL字型になっていて、自室は車庫の上に乗っかるような形になっている。
冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出し2階へ上がると、
丁度階段を上がったところの窓のカーテンの隙間から、僅かに自室の屋根の部分が少し見えた。
すると、屋根の上に何かがいる…


この前あんな事があったばかりなだけに、
ビビりまくった俺が窓からカーテンを少し開けて外の様子をのぞくと、
屋根の上に和服を着た子供が、両手を膝の上にそろえて正座しているのが見えた。
それだけでもかなり異様な光景なのだが、それだけではなかった。

子供は体を少し前かがみにして、下を覗きこむような姿勢なのだが、
首のあるはずの部分から、細長い真っ直ぐの棒のようなものが1mほどのびていて、
その先にある頭が、俺の部屋の窓を覗き込んでいた。



269 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:01:37.39 ID:x83Y3WRH0
「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という声も、窓越しにわずかに聞こえてくる。
俺はあまりの出来事に声も出せず、そのまま後ずさりすると1階へ下りた。

寝ている親を起そうかとも思ったが、
これで起してあれがもういなかったらそれこそ恥ずかしい…
その時なぜかそう思った俺は、そのまま1階のリビングで徹夜した。
たしか朝4時過ぎまで、「ホホホ…」という声は聞こえていたと思う。


翌朝、恐る恐る部屋に戻ってみたが、
あれはいなくなっており、室内にも特に変わった部分は無かった。

その日の昼頃、自宅の電話に顧問の先生から電話があった。
この前の件で話があるからすぐに来いという。
昨晩のこともあった俺は、嫌な予感がして大急ぎで学校へと向かう事にした。



270 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:02:19.49 ID:x83Y3WRH0
学校へ到着すると、生徒会などで使っている会議室に呼ばれた。
会議室に入ると、A也、B太、それにC広とD幸までいる。
更に、うちの学校とC広たちの学校の顧問の先生たち、それと見た事の無いおじさんたちも数人いた。


まず、顧問の先生のうち1人が話し始めた。
要約すると、E介にまた同じ症状だでたらしく、とある場所に運ばれたらしい。
そして、俺達に「昨夜おかしな事はなかったか?」と聞いてきた。

俺はすぐさま昨夜のあれを思い出し、
「あのー、深夜になんか変なのが俺の部屋を覗き込んでるのが見えて…」と事情を話した。
A也、B太、C広、D幸には特に異常はなかったらしい。

するとC広が、
「そういやお前(俺)さ、あの家の中で、階段の上眺めながらボーっとしてたよな?
あれ関係あるんじゃないか?」 と言い出した。



271 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:02:59.21 ID:x83Y3WRH0
そういえば… 俺はあのときの事を思い出し、
皆に「あの時さ、変な笑い声みたいなのと、なんか子供の姿見たよな?」と聞いてみた。
しかしみんなは、声はずっと聞こえていたけど、
子供の姿は最初のドアのところで見ただけで、家の中では見ていないという。

俺達がそんなやり取りをしていると、
さっきまで黙っていたおじさんが、事件の詳細を話し始めた。

非常に長い話だったので要約すると。俺達がであったのは、「ひょうせ」と呼ばれるものらしい。
これはあの土地特有の妖怪のようなもので、滅多に姿を見せないが、
稀に妊婦や不妊の家の屋根に現れて、笑い声をあげるらしい。
そうすると、妊婦は安産し、不妊の夫婦には子供が産まれるという、非常に縁起の良いものだそうな。
ただし、理由は全く分からないが、数十年に一度、
なぜか子供を襲い憑り殺してしまうという、厄介な存在でもあった。


ちなみにあの家は、全くいわくも何もなく、ただ「ひょうせ」が偶然現れただけの場所なのだが、
「ひょうせ」が子供を憑り殺そうとした場合、それに対する対抗策があり、
「ひょうせ」が最初に現れた場所に結界を作り封じ込め、
簡易的な祠をつくって奉ることで、殺されるのを防ぐ事ができるらしい。
合宿所から帰る直前、俺達が見たのは、その封じ込め作業だったわけだ。



272 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:03:29.67 ID:x83Y3WRH0
おじさんは続けて、ただ今回は何かおかしいのだという。
普通、祠をつくって奉ればそれで終るはずなのだが、今回はどういうわけだが逃げられてしまって、
E介がまた被害に会い、しかも俺のところにまで現れている。

それに、そもそも現れるだけでも珍しい「ひょうせ」が、
自分達の村とその周辺以外に現れる、というのも全く前例がないうえに、
「ひょうせ」が前回子供を襲ったのは20年ほど前で、早すぎるのだそうな。

ただ、おかしいおかしいといっても、現実に起きてしまっているのだから仕方が無い。

俺達は学校で、村から来たお坊さんに簡易的な祈祷をしてもらい、お札を貰って、
「君たちはこれで大丈夫だろう」と言われ帰された。
ちなみに、E介に関しては、暫らくお寺で預かって様子を見て、
その間にもう一度祠を建てて、「ひょうせ」を奉ってみるとの事だった。


学校から帰された俺達は、各々迎えに来ていた親に連れられて帰る予定だったのだが、
話し合って、ひとまず学校から一番近い俺の家に全員で泊まることにした。
安全と言われていてもやはり不安だし、全員でいたほうが少しは心細く無いと思ったからだった。


その夜、俺達が部屋でゲームしていると、
コン…コン…コン…コン…と、窓を規則的に叩く音がした。



273 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:04:40.52 ID:x83Y3WRH0
さっき説明した通り、俺の部屋は車庫の上にあり、
壁もほぼ垂直なので、よじ登って窓を叩くなどまずできない。
しかも、その窓は昨晩、例の子供が覗き込んでいた窓だ…

状況が状況だけに、全員が顔をこわばらせていると、
B太が強がって「なんだよ、流石に誰かの悪戯か風のせいだろ?」と、カーテンを開けようとした。
俺は大慌てでB太に事情を話し、カーテンをあけるのを踏みとどまらせた。


窓を叩く音はまだ続いている。
D幸が、「やっぱ正体確認したほうがよくね?分からないままのほうが余計こえーよ…」と言ってきた。
たしかに、何かその通りな気がした。
なんだか分からないものが一晩中窓を叩いている状況なんて、とても耐えられそうに無い。
俺達は階段のところまで移動し、カーテンを少し開けて、隙間から俺の部屋を見てみた。

いた…
昨日のあれが、やはり昨日と同じように首をらしき棒を伸ばし、窓から俺の部屋を覗き込んでいる。
そして時々、コン…コン…と頭を窓にぶつけている。



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535: 本当にあった怖い名無し 2012/03/12 20:23:54 ID:RSoX4Ryt0
流れぶった切るが、ある怪談本で、かの「八尺様」によく似た怪物の話を発見した





542: 1/6  2012/03/12 21:35:05 ID:RSoX4Ryt0
今から20年前、ある女性が大阪の企業に勤めていた
毎日続く激務に疲れ果て、そろそろ転職しようかと思っていた頃の話である


その企業の社宅の女子寮というのが、山奥の骨董品のようなボロアパートだった
かろうじてユニットバスをつけただけの古アパートを嫌い、
その社宅に住んでいるのはその人だけだった
会社が家賃の大半を払ってくれていることと、静かで環境が良かったためだという


ある日、激務を終えて夜中にへとへとになって帰ってくると、自分の部屋に明かりが点いている
おかしいな、消し忘れたのか……と思っていたが、
それからもしばし消したはずの部屋の電気が家に帰って来ると点いていることがあった。
会社の総務部に言って点検してもらったが、異常はなかったという


そのアパートには通常の階段の他に非常階段があり、その人の部屋は正面から見て左端にあった
そんなわけで、彼女は疲れ果てて帰ってくると
アパートの左端にある非常階段を使って部屋に帰っていた


その日の仕事も深夜になった。
くたびれて非常階段を登り、非常扉を開けると、人がいた
その人を見た瞬間、体験者はぞくっと寒気を感じたという

そこにいたのは女性だった。
しかし、知り合いではなかった

見たこともないような物凄い長身の女性で、白い、フリル付きのワンピースを着ていたという
しかもそのワンピースは汚れており、あちこちに枯れ葉がついている有様であった
汚れた白い靴に穴の開いたストッキング、
パサパサになった長髪には、すり切れかかったリボンが結ばれていたという


このアパートに私以外の住人はいない、ホームレスだろうか……と、そんなことを考え、
部屋に入ろうとバッグから鍵を取り出した瞬間だった


ひーぃぃいいいいーーー


悲鳴とも笑い声ともつかない絶叫が廊下に響き渡った



544: 本当にあった怖い名無し 2012/03/12 21:36:48 ID:RSoX4Ryt0
体験者は肝を潰してその女を見たという。
するとワンピースの女は、一歩一歩こちらに歩み寄ってきたのだという
薄暗い廊下の中で、そのワンピースの女をよく見ると、
肌が異様に白く、目の周りは汚れて落ち窪んでいた

その瞬間、体験者はこの女がこの世の者ではないとわかって、
背筋が凍りついた


ひーぃぃいいいいーーー


また甲高い声が女から発し、
身の危険を感じた体験者は非常扉の外に飛び出た
ゆらゆらと揺れるワンピースの女の影が非常扉の窓に映しだされた瞬間――


バン!

ひーぃぃいいいいーーー


ワンピースの女が非常扉にぶつかる物凄い音が非常階段に響き渡り、
同時にあの絶叫が耳を劈いた

(あっちに行って! あっちに行って!)

祈るような気持ちで非常扉のドアノブを握っていると、
女の影が窓から離れ、あの絶叫が徐々に遠ざかっていったという

しばらくして、体験者は恐る恐る非常扉を開け、廊下の向こうを見た

まだあのワンピースの女はそこにいたが、
こちらに背を向け、廊下の向こうにゆらゆらと歩いてゆく
そのとき、この女の目をかすめるには今しかないという直感が体験者を貫いたのだという

体験者は非常扉から飛び出るや、
急いで部屋の鍵をドアノブに差し込み、自分の部屋に入って鍵を掛けた

部屋の電気はまた点いていたという。
だが、この時だけはその奇妙な事態に感謝したという



545: 本当にあった怖い名無し 2012/03/12 21:38:20 ID:RSoX4Ryt0
しばらく部屋で息を殺していると、やがて廊下から物音が聞こえなくなった
もういいだろうと、体験者はそっと台所横の窓に近づき、窓から廊下を覗いてみた


女は、まだそこにいた

うわっと思った瞬間、こちらに背を向けていた女がこちらを振り向いた


ひーぃぃいいいいーーー


またあの絶叫が廊下に響き渡った。
見つかった、と思ったという
体験者は部屋に逃げ込んだことを後悔したという。
鍵を掛けたはいいが、あの女に見つかったら逃げ場がないのである

体験者は押入れから布団を引っ張り出し、
頭から布団をひっかぶってガタガタ震えるしかなかった 
その隙間から台所の窓を覗くと、その白い女の肩の部分が窓から見えたという


バン!


あの女が、先ほどと同じように非常扉に激突する音が聞こえた 
あまりの恐怖に、体験者は(なんで私がこんな目に……)とボロボロと涙を流しながら震えていたという

 
ひーぃぃいいいいーーー

 
またあの声だ。
体験者は布団の隙間から窓を覗いた。
女の薄汚れたワンピースを見て、体験者はぎょっとしたという

さっき窓に映った時は、確かに女の肩が窓に写っていた
だが、今は肩が見えない。
ただでさえ化物のように身長が高い女の肩が、まるで急に伸びたかのように見えたのだという



546: 本当にあった怖い名無し 2012/03/12 21:38:43 ID:RSoX4Ryt0
どういうことだ、女の身長が伸びているとでも言うのか――
そう思った瞬間、あの女の姿が窓のところで止まった


ひーぃぃいいいいーーー


一分、五分、十分……
例えようもなく長い時間が過ぎ、体験者は布団から顔を出し、窓を見てみた
その瞬間、気絶しそうになったという

あの女の顔が、廊下の窓にべったりと張り付いていたのだという

 
ひーぃぃいいいいーーー


ついに見つかった
女の両手が窓枠に掛けられ、(もうだめだ……)と体験者が絶望した瞬間だった


ドン! シャーーーン!!


物凄い音と金属音が聞こえ、その音に頭を蹴飛ばされるようにして、
体験者の体に自由が戻ったのだという
同時に、窓に張り付いたワンピースの女でさえもが、ビクッと見を震わせたのがはっきりと見えた



547: 本当にあった怖い名無し 2012/03/12 21:39:38 ID:RSoX4Ryt0
ドン! シャーーーン!!

またもう一度あの金属音が聞こえた瞬間、
今度は低い男性の声で読経が響き始めたという

ふと気がつくと、さっきは見えなかったはずのあの女の肩が見えて、体験者は目を剥いた

(縮んでる……)
体験者はそう思ったという

 
ワンピースの女が窓から離れ、再びフラフラと非常扉の方に歩き出すのが見えた
誰かが助けに来てくれた。
そう思うと急に力が湧いてきて、体験者は布団から飛び出し、廊下を覗いてみた


そこに立っていたのは、半円形の笠を被ったお坊さんだったという

顔は笠で見えず、身なりこそ女と同じように汚れていたが、手には立派な錫杖を持っていた

そのお坊さんが錫杖の先を床に振り下ろすたび、
ドン! シャーーーン!! 
と凄い金属音が鳴るのだという

すると、あの女がそのお坊さんに引き寄せられるようにしてフラフラと歩き出した



548: 本当にあった怖い名無し 2012/03/12 21:39:57 ID:RSoX4Ryt0
逃げ出すなら今しかない。
体験者は慌てて荷物をまとめたバッグを持ち、ドアをそっと開けて廊下に出た

見ると、あのお坊さんを見下ろすようにして、
あの白いワンピースの女がこちらに背を向けて立っていた
化物のように巨大な見下ろされているお坊さんは、
それでも唱える読経には全く乱れがなかったという


(このお坊さんは強い、あの女をきっと退治してくれる――)

急に勇気と安心感が湧いてきた女性は、部屋を飛び出して非常階段に走ったという

最後に体験者が背後を振り返ると、
そのお坊さんに射すくめられ、微動だにしないあの白い女の姿があった


ドン! シャーーーン!!
ひーぃぃいいいいーー―・・・・・


お坊さんが錫杖を床に叩き付けるたびに、
女の方がビクッと震え、その度に見上げるように高かった女の身長が縮んでゆく
間違いなかった。
お坊さんが錫杖を鳴らす度、女は小さく小さく、どんどんと縮んでいっていたのだ



549: 本当にあった怖い名無し 2012/03/12 21:41:02 ID:RSoX4Ryt0
もういい、これは最後まで見てはいけないと、体験者はアパートを飛び出した

アパートを離れ、必死に走っていると、
不意に体が軽くなり、
もう大丈夫だという安心感が全身を弛緩させたという

 
ドン! シャーーーン!!

ふとアパートを振り返ると、
あのお坊さんの錫杖の音が小さく聞こえたという

ひーぃぃーー・・・・


もう悲鳴とも言えないほど小さくなったあの女の声が最後に聞こえた瞬間、
何故か点いていたアパートの電気がフッと消えるのが見えたという


そのまま体験者は友人の家に転がり込み、今しがた起こったことを説明したという
「怖いからやめて!」と
途中で友人に話を遮られたが、それが却って、体験者に奇妙な安心を覚えさせたという
そのおかげでその会社をやめる決心がついた体験者は、ほどなくして
会社を退職し、今は東京で暮らしているという



550: 本当にあった怖い名無し 2012/03/12 21:46:45 ID:RSoX4Ryt0
以上だ。
最初こそノリコシ入道のような怪物なのかと思ったが、
読んでいる内にこれは正しく八尺様だと思い当たったので書いてみた

八尺様の「ぽぽぽ……」ではないが、
「ひーぃぃいいいいーーー」と繰り返される絶叫が気になった
さらに、白いワンピース、八尺ほどもある天を衝く長身というところに八尺様との共通点を見た


八尺様は封印されていたというが、もしこの女が八尺様だとすると、
八尺様は結界に閉じ込められたのではなく、
こういう強力な存在をくっつけられて封印されたのではないかとも思う



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八尺様 2

913 :本当にあった怖い名無し:2008/08/26(火) 09:51:23 ID:VFtYjtRn0
一目散に仏像の前に座ると、お札を握り締め
「助けてください」と必死にお祈りをはじめた。

そのとき、
「ぽぽっぽ、ぽ、ぽぽ…」
あの声が聞こえ、窓ガラスがトントン、トントンと鳴り出した。
そこまで背が高くないことは分かっていたが、
アレが下から手を伸ばして、窓ガラスを叩いている光景が浮かんで仕方が無かった。
もうできることは、仏像に祈ることだけだった。


とてつもなく長い一夜に感じたが、
それでも朝は来るもので、つけっぱなしのテレビが、いつの間にか朝のニュースをやっていた。
画面隅に表示される時間は、確か七時十三分となっていた。
ガラスを叩く音も、あの声も気づかないうちに止んでいた。
どうやら眠ってしまったか、気を失ってしまったかしたらしい。

盛り塩はさらに黒く変色していた。
念のため自分の時計を見たところ、ほぼ同じ時刻だったので、
恐る恐るドアを開けると、そこには、心配そうな顔をしたばあちゃんとKさんがいた。
ばあちゃんが「よかった、よかった」と涙を流してくれた。

下に降りると、親父も来ていた。
じいちゃんが外から顔を出して、「早く車に乗れ」と促し、
庭に出てみると、どこから持ってきたのか、ワンボックスのバンが一台あった。
そして、庭に何人かの男たちがいた。





914: 7/9:2008/08/26(火) 09:52:24 ID:VFtYjtRn0
ワンボックスは九人乗りで、中列の真ん中に座らされ、助手席にKさんが座り、
庭にいた男たちもすべて乗り込んだ。
全部で九人が乗り込んでおり、八方すべてを囲まれた形になった。

「大変なことになったな。気になるかもしれないが、これからは目を閉じて下を向いていろ。
俺たちには何も見えんが、お前には見えてしまうだろうからな。
いいと言うまで、我慢して目を開けるなよ」
右隣に座った五十歳くらいのオジさんがそう言った。

そして、じいちゃんの運転する軽トラが先頭、次が自分が乗っているバン、
後に親父が運転する乗用車、という車列で走り出した。

車列は、かなりゆっくりとしたスピードで進んだ。
おそらく、二十キロも出ていなかったんじゃあるまいか。

間もなくKさんが、「ここがふんばりどころだ」と呟くと、何やら念仏のようなものを唱え始めた。

「ぽっぽぽ、ぽ、ぽっ、ぽぽぽ…」
またあの声が聞こえてきた。
Kさんからもらったお札を握り締め、言われたとおりに目を閉じ下を向いていたが、
なぜか薄目をあけて、外を少しだけ見てしまった。

目に入ったのは白っぽいワンピース。それが車に合わせ移動していた。
あの大股で付いてきているのか。
頭はウインドウの外にあって見えない。
しかし、車内を覗き込もうとしたのか、頭を下げる仕草を始めた。
無意識に「ヒッ」と声を出す。
「見るな」と隣が声を荒げる。
慌てて目をぎゅっとつぶり、さらに強くお札を握り締めた。



915: 8/9:2008/08/26(火) 09:53:50 ID:VFtYjtRn0
コツ、コツ、コツ
ガラスを叩く音が始まる。
周りに乗っている人も、短く「エッ」とか「ンン」とか声を出す。
アレは見えなくても、声は聞こえなくても、音は聞こえてしまうようだ。
Kさんの念仏に力が入る。


やがて声と音が途切れたと思ったとき、Kさんが「うまく抜けた」と声をあげた。
それまで黙っていた周りを囲む男たちも、「よかったなあ」と安堵の声を出した。


やがて車は道の広い所で止り、親父の車に移された。
親父とじいちゃんが他の男たちに頭を下げているとき、Kさんが「お札を見せてみろ」と近寄ってきた。
無意識にまだ握り締めていたお札を見ると、全体が黒っぽくなっていた。
Kさんは「もう大丈夫だと思うがな、念のためしばらくの間はこれを持っていなさい」と、
新しいお札をくれた。

その後は、親父と二人で自宅へ戻った。
バイクは、後日じいちゃんと近所の人が届けてくれた。

親父も八尺様のことは知っていたようで、
子供の頃、友達のひとりが魅入られて命を落とした、ということを話してくれた。
魅入られたため、他の土地に移った人も知っているという。

バンに乗った男たちは、すべてじいちゃんの一族に関係がある人で、つまりは、
極々薄いながらも、自分と血縁関係にある人たちだそうだ。
前を走ったじいちゃん、後ろを走った親父も当然血のつながりはあるわけで、
少しでも八尺様の目をごまかそうと、あのようなことをしたという。
親父の兄弟(伯父)は、一晩でこちらに来られなかったため、
血縁は薄くても、すぐに集まる人に来てもらったようだ。



916 :9/9:2008/08/26(火) 09:54:54 ID:VFtYjtRn0
それでも、流石に七人もの男が今の今、というわけにはいかなく、
また、夜より昼のほうが安全と思われたため、一晩部屋に閉じ込められたのである。
道中、最悪なら、じいちゃんか親父が身代わりになる覚悟だったとか。
そして、先に書いたようなことを説明され、「もうあそこには行かないように」と念を押された。


家に戻ってから、じいちゃんと電話で話したとき、
「あの夜に声をかけたか」と聞いたが、そんなことはしていないと断言された。
――やっぱりあれは…
と思ったら、改めて背筋が寒くなった。

八尺様の被害には、成人前の若い人間、それも子供が遭うことが多いということだ。
まだ子供や若年の人間が、極度の不安な状態にあるとき、
身内の声であのようなことを言われれば、つい心を許してしまうのだろう。


それから十年経って、あのことも忘れがちになったとき、洒落にならない後日談ができてしまった。
「八尺様を封じている地蔵様が、誰かに壊されてしまった。それも、お前の家に通じる道のものがな」
と、ばあちゃんから電話があった。
(じいちゃんは二年前に亡くなっていて、当然ながら葬式にも行かせてもらえなかった。
じいちゃんも起き上がれなくなってからは、絶対来させるなと言っていたという)


今となっては、迷信だろうと自分に言い聞かせつつも、かなり心配な自分がいる。
「ぽぽぽ…」という、あの声が聞こえてきたらと思うと…



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7.ウキモノ
新潟の村上は、日本海側では随一の鮭どころとして知られ、冬ともなると
軒先に吊された鮭がひとつの風物詩となっている。
古い城下町の趣きを残すこの地にはまた、それと同じくらい昔から
ウキモノという変わった言い伝えが残されている。
 
村上藩の藩士某が、お役目で島に渡ろうと沖にこぎだすと、霧のむこうに
不思議な形をした大きなものが見える。
岩礁のたぐいかと訝しんだが、動いているので何かの生き物のようでもある。
近づいて真偽を確かめんとしたが、いつのまにか見えなくなってしまった。
 
何をするわけでもなく、この街の沖では
ときおりこうしたものが浮かんでいるのだそうだ。




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12.イソガキ
三浦半島は砂浜よりも岩場が多く、釣り人ならともかく
海水浴等の遊びには向かない土地柄だ。
そんな土地にはそれにふさわしい話が残っているもので、
以下は三浦に出かけた際、市役所の職員から聞いた話である。

 
昔からこの辺りでは、磯遊びや釣りに出かけるときは芋やカボチャを持っていけという教えがあるそうだ。
もしそれを忘れると、岩場で急に猛烈に腹が減りだし、甚だしくは
そのまま人事不省に陥ってしまうという。
地元の人はこれを「イソガキ」と呼ぶ。

 
深山に分け入った旅人が急に目が回って倒れるという「ヒダルガミ」という話とよく似ている。

あちらは握り飯をもっていれば難を逃れられるのだが、
なぜかこちらはイモタコナンキンだ。これも土地柄か。

イソガキとは磯餓鬼なのだろうが、
なぜ海に限った話なのかは判らない。




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20 :名無しさん :2014/03/28(金)23:56:49 ID:???
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14.アトゥイ
アトゥイとはアイヌ語で「海」を指す。
冬になって沖が見渡す限りの流氷に覆われ、果て知らぬ平原のようになったころ、
アトゥイは現れるという。

遙か遠い水平線のあたりに、人とも獣ともつかぬ灰色の影が立ち、
沖から吹き寄せる風に乗せて悲鳴にも似た叫びをびょうびょうと響かせるのだそうだ。
網走では、厳冬期を迎えるころこのアトゥイの声を聞き、狂い死にする者が後を絶たなかったとも聞く。
 
この地に生きる人にとって、アトゥイとは海そのものへの畏れに他ならなかったのだろう。
網走の海では、今でもときおり、アトゥイと思われる声が街に響く。




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21 :名無しさん :2014/03/28(金)23:59:15 ID:???
暗くなるころあの海で


15.ヤナムン
ヤナムンとは琉球方言で「悪霊」のことだ。
もっとも現代語である悪霊という言葉のもつ意味とは若干ニュアンスが異なるが。

琉球にはユタと呼ばれる巫女信仰が根強く残る。
ユタは、カミダーリーという憑神状態を経て一人前となるのだが、
この時各地のウタキという聖地を半ば心神喪失しながら経巡るのだという。

昔、このカミダーリーの際、恩納村の海岸でヤナムンにあったユタがいたそうだ。

ヤナムンはユタを見るとともに海の底に行こうと語りかけてきた。
ユタが嫌がると、それでは代わりに
お前の別れた夫のマブイ(魂)を連れて行こうといった。
それをも嫌がるとではお前たちのかわりにもっと多くのマブイをとってくるとしようと言い放ち、
ヤナムンは潮騒の向こうに消えた。

 
ただの言い伝えなので、ヤナムンが何のことを言ったのかは判らない。
戦前の話であれば何か判ったような気もするのだろうが、これは戦後の話だという。



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