『ムカデ人間2』(The Human Centipede II )公開は2011年。
前作に続きトム・シックス監督だが、世界観は全く違う。
続編というより、偏執的な人間の内面の狂気を描いた作品である。
以下、自己責任にて、閲覧注意。
【ムカデ人間 2】
【ストーリー】
・知的障害を持つマーティンは、ロンドンの地下駐車場で夜間警備員として働いている。
幼い頃から父親に性的虐待を受け続け、父親が逮捕されてからは母親に逆恨みされ罵倒され続けてきた。
(息子のせいで夫が逮捕されたと母親は思いこんでいる)
出来の悪い息子を殺し、自分も死にたいという母親と、ペットのムカデ1匹だけがマーティンの家族。
DVD「ムカデ人間」が大のお気に入りで、繰り返し繰り返し再生しては夢想にふける日々。
たったひとつの愉しみに、マーティンは抑制が効かなくなってゆく。
・夜、地下駐車場を訪れた人々を襲っては拉致、倉庫に監禁し始めるマーティン。
更に、DVDの出演者・リンジー役のアシュリン・イェニー(本人役)をも誘いだし監禁に成功。カツロー役の北村昭博とジェニー役のアシュリー・C・ウィリアムズは誘い出すことができなかった。
・着々と計画が進んでいるかのようだったが、マーティンの「ムカデ人間作成」ファイルが母親に見つかってしまう。激しい罵りの言葉と、大切なペットのムカデが処分されそうになったことで、激昂したマーティンは母親を殺害。だが、どうして良いのかわからず、逃げるように「ムカデ人間作成」にのめり込んでゆく。
(母親の依頼を受け、障害のカウンセリングのための医師はいるものの、彼もまた、マーティンに性的虐待を行っている)
・次々に集められる男女12人。
ついにマーティンはムカデ人間製作に取り掛かった。
DVDを参考に、ペンチやハンマー、ホチキスなどで手術を行ってゆく。
医学知識もないマーティンには、麻酔の知識もない。痛みに泣き叫ぶ人々を、必死につなげ続ける。
リンジー役のアシュリンを先頭にして。
しかし、何かが足りない。
しばらく考えていたマーティンは、カツローの迫力ある、素晴らしい名場面を思い出した。
繋げただけではダメなのだ。
生き物として活動できるように、全体に栄養を行き渡らせなければならない。
臀部に繋げた人間にも栄養が行き渡るように、マーティンは彼らに下剤を注射する。
声も出せず、すすり泣き、悶える彼らの中で、誇らしげに悦ぶマーティンだった。
・さらってきた女性のなかには、臨月の妊婦もいた。
抵抗する彼女の頭部を殴り、気絶したのを死んだと思いこみ放置していたのだが、歓喜に浮かれるマーティン
の隙を見て、彼女は倉庫から逃げ出した。
妊婦は陣痛が始まっており、逃げながらも赤ん坊を産みおとす。
迫りくるマーティンに恐怖の叫びをあげながら、死にもの狂いで近くの車に乗りこみ、産み落としたばかりの赤ん坊を轢きつぶしながらも走り去った。
・一方、素人の乱暴な接合などでは人間は連結しない。
被害者の1人が顔を引きはがすことに成功、「ムカデ人間」は失敗した。
怒りに燃えるマーティンは、感情のままに被害者たちを殺害していった。銃と、ナイフで、血まみれになりながら。
自分にとってはカリスマのように大切に扱ってきた(たとえそれが痛みに満ちた自己満足だったとしても)アシュリンを殺そうとした時、反撃され股間を蹴り上げられる。
悶絶するマーティンの肛門には漏斗が差しこまれ、大切なペットのムカデが放り込まれた。
・アシュリンの首にナイフを刺して殺し、マーティンはヨロヨロと倉庫から外の世界へと歩き出す。
・ラスト。
阿鼻叫喚の地獄絵図から一変し、もとの静かな地下駐車場。
やはりマーティンは、管理室内でDVDに夢中になっている。
夢か、妄想なのか。
地下駐車場には赤ん坊の泣き声が響いており、その車の中には、親はいない。
「ムカデ人間 2」は全編白黒のモノトーン映画である。
その内容に凄惨さに、各国で議論を呼んだ。
後味の悪さでは前作も相当ではあるが、カツローがハイター博士に復讐するだけまだ救いがある。
この作品には、全く救いがない。
もし事実であれば、言わずもがな。
もし妄想であれば、孤独なマーティンの生き地獄は終わらない。